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 福島市は、奨学金収入認定除外事件の敗訴判決確定後も現地弁護団・支援の会との話し合い自体を拒否しているということです。その後、不正受給徴収金を本人の同意ないまま保護費から天引き徴収している問題なども生じていることから、当会は、本日福島市に対して、以下の公開質問状を送付しました。
 当会は、いただいた回答の分析結果もふまえて、同市と意見交換をしていきたいと考えています。






                           
2018年8月8日


生活保護行政に関する公開質問状



福島市長 木幡 浩 殿

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜

(連絡先)530‐0047  大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
弁護士 小久保 哲郎


 当会は,弁護士,司法書士,研究者,ケースワーカー,生活保護利用当事者,その支援者等で構成され,生活保護制度の違法な運用を是正するとともに同制度の改悪を許さず,生活保護法をはじめとする社会保障制度の充実を図ることを目的として活動している市民団体です。
 今般,福島市で発生した奨学金収入認定事件について以下のとおり,意見を申し述べるとともに,質問および資料提供の要請をいたします。御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが,2018年9月10日(月)までに上記の連絡先宛にご回答いただきますようよろしくお願い致します。
 また,いただいた回答をふまえて意見交換の場をお持ちしたいので,2018年10月12日(金)午後に貴市市役所において懇談の場を設定していただきますようお願いいたします。
 なお,本公開質問状及び貴市のご回答ご対応内容はすべて公開いたしますので,予めご承知おき願います。
 
第1 貴市の生活保護行政に関する疑問点
1 奨学金収入認定事件について
 2014年4月に,生活保護世帯の高校生が支給を受けた給付型奨学金について,収入認定除外についての調査検討を行わず,一方的に収入認定を行い,生活保護費を減額した事件(以下,「本事件」といいます)が発生し,審査請求・再審査請求が行われるとともに,福島地方裁判所に対して国家賠償請求の訴訟が提起されました。再審査請求において,当該生活保護減額処分は取り消され,裁判所は,2018年1月16日に当該処分は違法であると認定し,当事者親子に10万円の慰謝料を認める判決が言い渡され,確定しました。
 しかし,貴市は,市長が「裁判の結果を重く受け止めております。」等とマスコミに公表するにとどまり,謝罪の記者会見もなく,当該事件が起きた原因究明,再発防止策の検証結果の公表も行わないばかりか,支援団体との懇談も拒否し続けていると伺っています。本事件の支援団体evergreen project及び弁護団は,判決を得た後も,貴殿に対する申入れ,スタンディング,署名活動(奨学金については自立更生計画書の提出を要しないで収入認定除外すること,本事件につい市民との対話の場を設定すること又は検証委員会を設立して検証結果を公表すること要請する内容)等の活動を行ってきたということですが,貴殿は「意見として承ります」「話し合いの場につきましては,こうした個別具体の対応には馴染まないものと考えていることから,相談をとおして市民一人一人に寄り添った対応を行って参りたいと考えております。」等と回答し,対話を拒否しており,当該事件は完全解決に至っていない状況とお聞きしています。
 支援団体と直ちに同一の見解に立つことが困難であるとしても,対話の場を持つこと自体を拒否することは行政機関として信じがたい対応と言わざるを得ません。

 2 その他の問題点について
 貴市の生活保護行政についての問題はこの事件に限られず,最近では生活保護法78条返還決定を受けた生活保護利用者が,個別に天引きに同意した覚えもないのに,保護費から天引き徴収されたケースが複数件報告され,63条返還決定についても同様のケースがあることが報告されているといいます。
 また,貴市HPの「生活保護制度について」に生活保護制度に関する実質的な説明が全くなく,生活保護の相談又は申請者に配布されている「生活保護のあらまし」にも,以下に指摘するとおり,誤解を招きかねない記載が多々見受けられます。

 3 まとめ
 こうした事実経過からすると,奨学金収入認定事件が発生した背景には,貴市の生活保護行政が抱える組織的構造的な問題があるのではないかとの疑念が生じます。そして,その組織的構造的な問題が是正されないままでは,今後も同種の事件が発生し,貴市の生活保護利用者をはじめとする生活困窮者の権利侵害が生じるおそれがあります。
そこで,当会は,貴市に対し,奨学金収入認定事件についてなぜ収入認定除外について事前の調査検討を全くすることなく奨学金を収入認定することに至ったのか,この事件以外に保護行政の歪みはないのか等について,調査を実施したいと考えております。
 当会は,今回の事件の背景に何があるのか,貴市における生活保護利用者の憲法上の権利を実現するために何が必要か,を貴市とともに考えたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

第2 質問事項
1 貴市の市民団体等との対話の姿勢について
(1)貴殿は,2つの市政運営方針の1つめに「開かれた市政」を掲げ,「市民の皆さまへの情報開示と対話によるコミュニケーションを大事にして,その思いを政策に反映させてまいります。」としていますが,市民団体等からの対話の要請があった場合,どのような手順や姿勢で臨むこととしていますか。協議の要綱の有無及び内容を明らかにしてください。

(2)奨学金収入認定事件の支援団体及び弁護団が再三協議の場を求めたにもかかわらず,協議の場を持つこと自体を拒否された理由は何ですか。
 支援団体側が貴市の生活保護行政のあり方にかかわる問題であると考えても,貴市がそう考えなければ,協議の場を持たないことも正当化されるものとお考えでしょうか。

2 奨学金収入認定事件について
(1)なぜ収入認定除外について事前の調査検討を全くすることなく奨学金を収入認定することに至ったのか,その具体的な経過を明らかにしてください。

(2)再審査請求における取消裁決,福島地方裁判所における国家賠償認容判決を受けて,奨学金等の収入認定に関して具体的に実務運用を改めた点があればご教示ください。実務運用に変更がないとすれば,その理由をご教示ください。

(3)上記再審査請求における取消裁決の前後で,貴市において給付型奨学金を受けた子どものいる世帯は,それぞれ何世帯ありましたか(わかる範囲でお答えください)。それぞれの世帯について,本来行うべき収入認定除外の対応(又は謝罪その他の事後的是正)はどのように行いましたか。

(4)大阪府堺市が行っているように,学齢期の子どもがいる全ての生活保護世帯に対して,奨学金やアルバイト等の収入認定除などについて積極的に周知徹底すべきと考えますが,そのような取り組みを行う予定はありますか。予定がないとすれば,その理由をご教示ください。
[参照]生活保護世帯の中高生向け未来応援BOOK「ココから!」(堺市HP)

(5)今後,給付型奨学金を受けた世帯から収入申告があった場合に,自立更生計画書の提出を求める予定ですか。

(6)自立更生計画書の提出を求める場合,その記載方法等について誰が具体的にどのような説明を行うことになりますか。

(7)自立更生計画書の提出を求める場合,その裏付け資料としてどのような資料をどの程度求める予定ですか。

(8)当事者からの申告又は自立更生計画書提出から,どれくらいの期間で収入認定除外するか否かの回答を行うことになりますか。また,回答は口頭,書面その他どのような方法で行いますか。

3 貴市の「生活保護制度のあらまし」について
 貴市の「生活保護制度のあらまし」には,下記のとおり,誤解を招きかねない記載が多々あります。「保護のしおり」を全面改定した神奈川県小田原市のように,誤解を招かない記載に改める必要があると考えますが,その予定はありますか。仮に,その予定がないとすれば,その理由を下記の記載内容の各項目ごとに明らかにしてください。
[参照]神奈川県小田原市「保護のしおり」(同市HP「生活保護について」。改定前のしおりは,生活保護行政のあり方検討会のページに掲載されています)

(1)生活保護制度について,憲法25条に基づく権利であるとの明示がありません(生活保護のあらまし1頁)。

(2)「一日も早く自分の力で生活できるよう援助する制度です」の「一日も早く」との記載(同1頁)は,経済的自立だけを考慮した記載であり,自立には,生活保護を利用しながらの「社会生活自立」「日常生活自立」もあることを明記すべきです。

(3)「7 生業扶助」(同1頁)について,高校生の就学費用が明示されていません。

(4)「生活保護は,次のように活用できる能力や資産などをすべて活用したあとに,はじめて適用されるものです。」との記載(同2頁~3頁)は,これが保護適用の前提要件であるとの誤解を招きます。

(5)田畑,山林及び原野などについては「現在活用していない資産は,処分して生活して生活費にあててください。」という記載(同3頁)には,居住用不動産が原則保有可能であるとの記載がなく不親切です。

(6)その他生活必需品以外のものについて,「生命保険,自動車…は処分して生活費にあててください。」(同3頁)とありますが,一定の生命保険や学資保険については保有可能ですので,誤った記載です。自動車についても,通勤や通院のための保有が認められる場合があることを明記する必要があります。

(7)「扶養義務者からの援助」(同4頁)については,「よく相談してできる限りの援助をお願いしてください。」と本人が直接扶養の依頼をする必要があるとの記載となっており,誤っています。

(8)「生活保護を受けた場合には」との記載(同4頁)の中に,一時扶助,特に医療移送費が支給できることの記載がありません。相談の前提として,説明されるべき事項です。また,高校生の就労収入について,未成年控除や収入認定除外される場合の記載がありません。

(9)「生活の相談ごとは近くの民生委員や福祉事務所へ」(同6頁)の福祉事務所についての説明の中に,守秘義務があることが明示されていません。

4 徴収金の保護費からの天引きについて
(1)生活保護法78条返還決定を受けた保護利用者について,貴市が生活保護法78条の2が定める要件(本人の申出及び生計を維持できると認める場合)に反して,2018年4月から6月にかけて月3万円を天引きしたことについて,同保護利用者に対してどのような影響を与えたと考えていますか。また、そのような運用が違法であるとの認識はありますか。

(2)上記以外に貴市が生活保護法78条返還決定をした保護利用者に対して,個別の天引き同意のないまま生活保護費からの天引き徴収を行ったことはありますか。ある場合には,過去3年間の各件数をご回答ください。また、どのような条件を満たした場合に天引きを行いましたか。

(3)生活保護法63条返還決定をした保護利用者に対して,生活保護費からの天引き徴収を行ったことはありますか。ある場合には,過去3年間の各件数をご回答ください。また、どのような条件を満たした場合に天引きを行いましたか。

5 生活保護行政全般について
貴市における直近3年間の以下のデータ及び資料をご提供ください。
(1) 生活保護行政全般
① 保護費総額
② 被保護世帯数
③ 被保護人員数
④ 保護率(③÷市人口)
⑤ 高齢,障害・傷病,母子,その他世帯の各割合
⑥ 相談件数
⑦ 申請件数
⑧ 申請率(⑦÷⑥)
⑨ 開始件数
⑩ 開始率(⑨÷⑥)
⑪ 申請から14日以内に決定した件数,30日以内に決定した件数,それ以上要した件数
⑫ 文書による指導指示件数,それに基づく停廃止処分の件数
⑬ 指導理由の内訳(例:自動車の処分)及び内訳別件数
⑭ 廃止件数
⑮ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
特に,「辞退」については,辞退理由及び世帯類型別の内訳及び内訳別件数。また,「市外転居」については,その転出先自治体の内訳及び内訳別件数。

(2)職員体制について
 ① 生活保護査察指導員,同ケースワーカーの各人数
 ② ①のうち社会福祉主事の任用資格取得者の人数,社会福祉士,精神
保健福祉士,臨床心理士の各資格取得者の人数
 ③ ①の年齢別,在職年数別人数の内訳,平均在職年数,平均年齢
 ④ ケースワーカー一人あたりの持ちケース数
 ⑤ 貴市職員全体の男女比率と貴市の生活保護担当部署職員の男女比率
 ⑥ 生活保護担当部署職員に対して実施した研修の具体的な内容

(3)生活保護行政の運営に関する書面
① 生活保護実務運用のための年度別生活保護運営方針または計画書面
② 県の監査における指摘事項書面及び県に対する回答書面
③ 各種自立支援プログラムの実施要領等書面

以 上





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 厚労省は、本年6月27日、本年4月以降に保護開始等された生活保護利用世帯にエアコン購入費等の支給を認める通知を発出しました。しかし、この通知が現場に周知されていないことから、私たちが、本年7月26日、厚労省に対し、同通知の改善・周知等を求める緊急要望を行ったところ、厚労省は、本年8月4日、「実施機関の担当者がこの取り扱いを承知していない旨の指摘がある」として通知の内容の再周知依頼の事務連絡文書を発出しました(下記PDF参照)。
 私たちは、厚労省が要請を真摯に受け止め迅速な再周知を行ったことについては感謝し評価するとともに、本年3月以前に保護開始された者も対象とする等の運用改善を図るよう、改めて強く求めるものです。


第12回総会記念集会

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厚労省から、
エアコン購入費・設置費支給を認める通知!


要点を1枚にわかりやすくまとめたチラシを作成しました。ご活用ください!

チラシ


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〔厚労省通知改善〕
 本年4月1日以降に一定の条件を満たす方に対して、エアコン購入費(上限5万円)と設置費の支給が認められるようになりました。

 厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました。
 酷暑で熱中症が心配される中、通知を存分に活用しましょう!
 通知の内容は以下のとおりです。

エアコン購入費等が認められる場合
 以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合

2018年4月1日以降に
(ア)保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
(イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
(ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
(エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない


※「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)とは?
 課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。
 「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とされているのは、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものです。
 日本全国が灼熱列島となっている今、エアコンの持ち合わせがない方は、積極的に福祉事務所に申請しましょう。
 
※本年3月以前に保護を開始された人は?
 本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
 しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給が認められてしかるべきです。例えば、2月や3月に保護開始された人と4月に開始された人のおかれた状況に大差がないことは明らかです。積極的に申請し、仮に却下されたら審査請求や訴訟で争う余地があると考えられます。

「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能なはずです
 本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずで(実施要領局長通知第7-4(2)ア)。
エアコンが壊れていて使えない方は、「住宅維持費」として修理費を請求してみましょう。




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 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、厚生労働省に緊急要望をしました。



2018年7月26日

厚生労働大臣 加藤勝信 殿
いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護問題対策全国会議


厚労省通知の改善・周知と夏季加算創設等を
求める緊急要望書


第1 要望の趣旨
 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、以下の諸点を緊急に要望します。
1 生活保護利用者にエアコン購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認める厚労省通知に関し、実施機関の柔軟な運用が可能であり必要であることを含め、改めて周知徹底してください。
2 上記通知について、本年3月以前に保護開始された者も対象とするよう改正してください。
3 実施要領局長通知第7-4(2)アの「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能であることを周知してください。
4 生活保護利用者が電気代を心配せずエアコンを使えるように、この間引き下げられ続けている生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算を元に戻し、夏季加算を創設してください。

第2 要望の理由
1 エアコン購入費等の支給を認める本件厚労省通知の内容
 厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました(以下、「本件厚労省通知」といいます。)。
 通知の内容は以下のとおりです。

(1)エアコン購入費等が認められる場合
 以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合
(ア)2018年4月1日以降に保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
(イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
(ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
(エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない

(2) 「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)の解釈
 課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。

2 本件厚労省通知の評価
(1)周知がまったく不十分である
 酷暑にあたり冷房器具購入費等の支給を認める本件厚労省通知が発出されたこと自体は評価できます。
 しかし、私たちの知る範囲でも、本件厚労省通知の内容を知らないケースワーカーも多く、福祉事務所の現場への周知はまったく進んでいません。通知の対象となり得る生活保護利用者にきちんと情報が届くよう、周知を徹底する必要があります。

(2)実施機関の柔軟な運用が可能であり、必要であることを周知すべき
 また、「熱中症予防が特に必要とされる者」について、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とした点も、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものと理解できます。
 しかし、実施機関によっては、上記の例示の場合に限定した厳格な運用を行うことも想定されます。近年、日本全国において記録的猛暑が続き、健康な者でも熱中症を発症するリスクが高い以上、できる限り柔軟な運用が求められていることを重ねて周知することが必要です。

(3)本年3月以前に保護を開始された人も対象にすべき 
 一方、本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
 しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、もともと「最低生活費」である保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
 したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給を認めるよう本件通知は改善されるべきです。

3 「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給が可能であることも周知すべき
 本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
 したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずです(実施要領局長通知第7-4(2)ア)。
 本件厚労省通知の改めての周知に際しては、この点についても併せて周知すべきです。

4 生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の復活と夏季加算の創設
 先に述べたとおり、この間のあいつく生活保護基準の引き下げのため、生活保護利用者の多くは、エアコンが自宅にあったとしても、電気代を節約するためにほとんど使わないようにしています。これでは、せっかくエアコンを設置したとしても熱中症対策にはならず「宝の持ち腐れ」です。
 悲劇が起きる前に、国は、一連の生活保護基準引き下げを撤回して元に戻し、夏季加算を創設すべきです。

以 上




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各通知書面

「一時扶助二おける家具什器費の見直しについて」

『「生活保護法による保護の実施要領について」の一部改正について』

『「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正について(通知)』

『「生活保護問答集について」の一部改正について』



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当会は、本日以下の緊急声明を発表しました。



2017年12月11日


子どもとお年寄りを狙い撃ちにし

市民生活の底下げをもたらす生活保護基準引下げの提案に強く抗議する緊急声明


生活保護問題対策全国会議


第1 引き下げの内容の過酷さ
1 前代未聞を更新する大幅引き下げ
 厚労省は,2017年12月8日の第35回生活保護基準部会において,2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に引き下げる方針を示しました。
 最大で13.7%もの削減となる世帯(夫婦子2人世帯)も生じる可能性があり,これは,後に述べる2013年から2015年までに行われた「前代未聞」の削減をも上回る大幅削減案です。
2004年からの老齢加算の段階的廃止,史上最大であった2013年からの生活扶助基準の削減(平均6.5%,最大10%),2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の削減に引き続くもので,生活保護利用世帯の厳しい生活をさらに追い詰める過酷な仕打ちというほかありません。
 特に,子どものいる世帯,高齢世帯が狙い撃ちされており,この国の生活保護バッシングは,国による一種の「児童虐待」「高齢者虐待」の域に達しつつ感があります。

2 子どものいる世帯の大幅削減
 部会で配布された資料(1・14~15頁)によると,生活扶助費は,夫婦子2人世帯(都市部)で18万5270円から15万9960円へと2万5310円(13.7%),子2人の母子世帯(都市部)で15万5250円から14万4240円へと1万1010円(7.1%)もの大幅削減となる可能性があります。また,母子加算についても,平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円)削減の可能性があると報じられています(2017年12月9日付毎日新聞朝刊)。
 夫婦子2人の多人数世帯は2013年の引き下げでも,平均18万6000円から16万9000円へ1万7000円(9%)もの削減をされています。このような,子どものいる世帯に対する相次ぐ引き下げは,一方で,国が「子どもの貧困対策の推進に関する法律」で進めようとしている貧困の連鎖解消の方針に真っ向から反するものです。
 生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると「世帯分離」され当該子どもの保護費が打ち切られることもあり,一般世帯の大学等進学率が73.2%(浪人を含めると80%)であるのに対し,生活保護世帯の大学等進学率はわずか36%と半分以下です。
 このことが社会問題となり超党派の国会議員連盟が是正を求めたこともあり,国は,来年度,生活保護世帯の大学生等の住宅扶助費の削減を取りやめ,入学時の一時金を支給するという,ごく小幅の改善を検討していると報じられています。
 しかし,その原資を捻出するために,子どものいる世帯の保護費を大幅削減するというのであれば,全く本末転倒です。わずかな貧困対策をしても「焼け石に水」どころか,大学進学にたどり着く前に生活保護世帯の子どもたちの成長の芽を摘み,大学等進学率はより一層悪化することになるでしょう。

3 高齢世帯に対する相次ぐ削減
 部会で配布された資料(1・15頁)によると,単身高齢(75歳)世帯(都市部)で7万4630円から6万8840円へと5790円(7.8%),高齢(65歳)夫婦世帯(都市部)で11万9200円から10万6020円へと1万3180円(11.1%)の削減がされる可能性があります。
 しかし,単身高齢世帯については,2013年検証の際の生活保護基準部会報告書では,平均7万3000円から7万7000円に4000円(5%)の引き上げが必要とされていました。これは,2004年からの老齢加算(都市部で1万7930円)の段階的廃止で下げ過ぎたので,第1十分位(下位10%)の低所得層と比べても生活扶助基準が低くなり過ぎていたことによるものです。
 ところが,このとき国は,基準部会報告書を全く無視して,部会が出した数値を勝手に2分の1にし,さらに,「デフレ考慮」と称して「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」という全く独自の計算方法で,生活保護世帯は,一般世帯の消費者物価指数の下落率(2.34%)の2倍以上(4.78%)もデフレの恩恵にあずかっているというあり得ない数値を偽装しました。そして,結局,高齢単身世帯の生活扶助基準は,平均7万1000円へと2000円引き下げられたのです。
 このような,相次ぐ高齢世帯の生活保護費削減は,財政の削減効果を出すために,生活保護世帯の大多数を占める高齢世帯をターゲットにしたものとしか考えられません。

4 「引き下げありき」の「引き下げ部会」か
 現在,政府の政策もあり,物価は上昇局面にあります。ところが,今回の検証ではインフレを考慮するという話は一切出てきていません。「デフレは考慮するがインフレは考慮しない」というのは,まさしく「引き下げありき」で検証がされていることが明らかです。
 第25回の生活保護基準部会で岩田正美部会長代理が「次々と保護課の方からお題が出てきて,部会が開かれるごとに何かを下げている。引き下げ部会みたいなイメージがある」と指摘したとおり,生活保護基準部会は「引き下げ部会」に成り下がるのでしょうか。

第2 引き下げの根拠の乏しさ
 今回の引き下げの考え方は,第1十分位という,所得階層を10に分けた一番下(下位10%)の階層の消費水準に合わせて生活保護基準を引き下げるというものです。
 しかし,以下述べるとおり,この手法自体が根本的に間違っていますし,これまでの生活保護基準部会での議論の流れにも反しています。

1 引き下げスパイラルを招く
 日本では,生活保護の捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割以下といわれ,先進諸国と比べても著しく低くなっています。つまり,第1十分位(下位10%)層の中には,生活保護以下の生活をしている人たちがもともと大量に含まれているのであり,その人たちが放置されていることこそが問題です。国に求められているのは,ドイツのように国が生活保護の利用を呼び掛けて捕捉率を上げること,最低賃金を上げ,最低保障年金制度をつくって低所得者層の生活水準を底上げすることです。
 生活保護を利用していない低所得者層と生活保護基準を比べれば,当然生活保護基準が高いという結果になり,これをもとに保護基準のあり方を考えれば,保護基準を下げるしかありません。これでは,どこまでも生活保護基準を下げ続ける引き下げスパイラルを招きます。
 生活保護基準は,ナショナル・ミニマム(国民生活の最低水準)ですから,最低賃金,住民税非課税基準,就学援助など様々な低所得者施策と連動しています。生活保護基準の引き下げスパイラルは,生活保護を利用していない市民全般の生活水準の引き下げスパイラルにつながります。実際,生活保護基準が下げられた後,就学援助の基準が下がる自治体が続出し,年金,医療,介護とあらゆる社会保障制度が削減,自己負担増となり,今や市民生活全般が危機に瀕しています。
 ドイツでは,2010年2月9日の連邦憲法裁判所が,「参照世帯に含まれるのは,統計上確実に社会扶助受給レベルを上回る個人及び世帯でなければならない」として基準額違憲判決を言い渡しています。
 これを契機として,「基準算出需要法」が制定され,単身世帯については下位15%,家族世帯については下位20%を参照世帯とすることが法律で定められました。それでもなお,「隠れた貧困層」(社会扶助を受けられるのに受けていない層)が参照世帯に含まれているのは問題ではないかという議論が続いているのです(ヨハネス・ミュンダー「貧困研究」14号34頁以下,嶋田佳広「ドイツにおける社会扶助基準設定の新たな展開」)。

2 これまでの生活保護基準部会での議論の流れに反する
(1)2013年検証の際の議論
 2013年検証の際の第9回と第11回の生活保護基準部会では,富裕層が「富の取り分」を増やす一方,中間層を含む低所得層が「富の取り分」を減らしているデータが示されました。
緊急声明グラフ
 これを見ると上位30%はいずれも「富の取り分」を増やし,全体所得の約6割を占めていること,「平均的世帯」とされてきた第5・6十分位(=第3五分位)以下の階層のシェアは全体の3割の位置にあること,第1十分位のシェアも減少傾向でほとんど地べたに張り付いていることが分かります。
 この点に関する議論をふまえ,駒村部会長は,このような傾向が続くのであれば,「今後もこの方法(第1十分位を比較対象とする方法)でいいのだろうか。将来この方法を使えるだろうかという懸念がある」と言及していました(第11回部会)。

(2)2013年検証の際の部会報告書~「新たな検証手法の開発が部会の使命」
 こうした議論も踏まえ,どうやって水準均衡方式の相対比較をするのかという手法の開発こそが基準部会の使命と責任である旨の岩田部会長代理の意見で(第12回部会),2013年の基準部会報告書(9頁)に「本部会の議論においては,国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり,将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。」と記載されました。

(3)突然登場した第1十分位との比較論
 こうした経緯から,今回の2017年検証に際しても当初は,「新たな検証手法の検討」が検討課題としてあげられる一方,第1十分位を比較対象とするといった議論はなされてきませんでした。むしろ,岩田部会長代理や山田委員などから第1十分位などの低所得層を比較対象とすることに対して否定的な意見が述べられ,駒村部会長や阿部委員,岡部委員など多くの委員が,その意見に賛意を示していたのです。
 それが,「新たな検証手法の検討」については,2017年6月6日開催の第29回部会の参考資料1における,「現行の水準均衡方式が導入された昭和59年に比べて,雇用基盤や世帯構成などの変化によって社会経済情勢は大きく変化しており,今日の状況により相応しい生活扶助基準の改定方式の開発を目指して,新たな検証手法を検討する必要がある。」等の記述を最後に消えてしまいました。そして,報告書のとりまとめ直前になって,なぜ突然,2013年検証においても疑問視され始め,今回の2017年検証においても委員の多くが疑問を呈していた第1十分位との比較をすることが結論とされたのか,全く理解できません。
 第35回の部会資料1によると,第1十分位と比較する方法と全所得層と比較する方法がありうる(4頁)としながら,後者をとらなかった理由については一応の説明があるものの(13頁「18~64歳の年齢別指数に特異な傾向がみられたほか,2類費について3級地で費用が増加する結果となった」。要はデータに不具合があったということのようですが,中身が分からないので本当かどうかも不明です。),なぜ前者をとるのかの説明は一切ありません。
 (4)アで紹介する2007年検討会報告書が示唆したように,またドイツの法律が定めているように,第1五分位(下位20%)層と比較するなど,別の方法がなぜ検討されていないのか不可解というほかありません。

(4)これまでの検証手法とも矛盾
ア 第1十分位の高齢単身世帯の消費水準が著しく低いことが無視されている
 第35回基準部会資料1(17頁)によると,第3・五分位(平均的所得階層)と比較した第1十分位の消費水準は,夫婦子1人世帯は66%ですが,高齢夫婦世帯は61%,高齢単身世帯は50%にとどまっています。
 2007年検証でも,同様に「平均的所得階層」とされていた第3五分位と第1十分位の消費水準の比較がなされ,夫婦子1人世帯は70%だが,単身高齢世帯は50%にとどまることから,単身高齢世帯について第1十分位を比較対象とすることについて委員から強い異論が出ました。
 そのため,検討会報告書にも,「単身世帯(60歳以上)では,第1十分位の消費支出は第3五分位の消費額の5割程度にとどまっていて低いことから,第1十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは,その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意すべきである(5頁脚注6)」こと,そして,この点を考慮して,「仮に第1五分位を基準にした場合,現在の生活扶助基準額は均衡した状態にあると評価される(5頁2つ目の〇)」ことが記述されました。そして,引下げに反対する世論が高まる中,検討会委員5名全員が連名で出した「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」という異例の文書でも,「『生活扶助基準額の引き下げには,慎重であるべき』との考えを意図し,全委員の総意により,確認されたところである」と説明されているのです。
 このように,2007年検証では,第3五分位と比較した第1十分位の消費水準が単身高齢世帯で50%に止まることが引き下げ見送りの理論的根拠とされました。にもかかわらず,今回の検証では,この点が全く問題とされていないのは一貫性を欠きます。 今の基準部会には,2007年の検討会と同じ委員(駒村康平部会長,岡部卓委員)もおられるのに,なぜこの点を無視した案が提出されているのか不可解でなりません。
イ 必需的耐久消費財の保有率の検討がされていない
 また,2007年検証,2013年検証では,いずれにおいても,「必需的な耐久消費財の保有率」が第1十分位層と第3五分位層とで遜色ないことが,第1十分位を比較対象とすることの正当性として検討されていました。
 上記の2007年検証,2013年検証が必需的耐久消費財のみを検討対象としたこと,何を「必需的」と見るかの選別方法も厳格に過ぎることから,私たちには,両検証の結論そのものに強い異論があります。しかし,それを措くとしても,今回はその検討がされた形跡さえありません。なぜ検討されていないのか,仮に同じような検討をしたらどうなるのか,この点にも疑問が残ります。

第3 これ以上の引き下げは許されない
 2013年からの生活扶助基準の引き下げに対しては,現在,全国29都道府県において955名の原告が違憲訴訟(いのちのとりで裁判)を提起して闘っています。
 既に憲法が保障する「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者をさらに追い詰め,市民生活全般の底下げをもたらす生活保護基準の引き下げは断じて容認できません。
 私たちは,この暴挙に対して最大限の抗議の意思を表明するとともに,全国の当事者,支援者に対して,ともに声をあげることを呼びかけます。

以 上




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