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自宅で死亡した生活保護利用者を3カ月間放置していたことが問題になっている東京都江戸川区。
私たちが、2023年8月21日、「生活保護行政に関する公開質問状」を提出したところ、同年9月4日付けで回答書が届きましたが、なお疑義が残ったため、同年9月19日、「生活保護行政に関する公開質問状⑵」を提出しました。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-492.html

これに対し、江戸川区から同年10月20日付けで下記の回答書が届きました。

今後、専門委員会が十分な審議検討を行うとともに、「公開できるものはできる限り公開」し、「議事録及び非公開の場合の議事概要の公表及び最終的な調査報告書の公表において説明責任を果たしていく」とのことですので、実効性のある検証が行われることを期待して、推移を注視したいと思います。

生活保護行政に関する公開質問状(2) (回答)





令和5年10月20日


生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜 様

江戸川区長 斉藤 猛


生活保護行政に関する公開質問状(2) (回答)


貴団体より受領した令和5年9月19 日付け「生活保護行政に関する公開質問状(2)」に対し、回答します。

1 検証・検討委員会の調査・検証方法等について
 本件事案に係る調査・検証等の当区方針については、2023年8月21月付け「生活保護行政に関する公開質問状(回答)」の「1委員の選任等について」「2検証・検討事項について」で回答したとおりであり、区として決定したものです。
 100人以上の関係職員のヒアリング、事務処理状況の確認のため180ケースの台帳調査等を含めた本件事案の事実調査や課題分析等には相当の人員、時間等を要し、全て外部専門家に委託すれば多大な時間、予算措置等の必要性が見込まれます。公正性・客観性を確保した十分な検証が必要である一方、再発防止策の策定及び当区の生活保護行政への反映はなるべく早期に着手する必要性があることを踏まえれば、内部検討委員会が基礎資料準備のための内部調査並びに第三者専門委員会の事務局としての調査補助等の役割を果たし、検証及び再発防止策の策定の円滑化を図ることは現実的かつ妥当な判断であると考えます。
 なお、関係職員へのヒアリングは、生活援護第三課の業務に関わりのない福祉部管理職と職員課係長級職員等が主体となり、原因分析の観点で一般的に必要と考えられる共通の質問項目をリスト化し、質問者の主観や聞き方によって差が生じないよう配應の上実施し、その調査方法及び結果については、全て第三者専門委員会に報告済みです。
 上記のヒアリング以外に、第三者専門委員会が、直接関係職員等からヒアリングを行う必要性があると判断した場合は、第三者専門委員会の意見・要望に即したヒアリング等を実現するよう諸調整を行い、実施されることになっています。
 既に回答したとおり、貴会の指摘するガイドラインが想定する第三者委員会は当区の方針とする調査・検証方法とは異なる上、組織不祥事に係る日本弁護士連合会のガイドライン等においても、内部調査に弁護士等が関与する手法も含め内部調査自体の有用性は否定されているものではありません。現実的には予算措置等の限界もある中で、外部有識者等による専門委員会を主催する基礎自治体が、事務局として委員会で作成する基礎資料の作成や調査及び報告書作成等の事務補助を担うことは一般的な運用となっており、殊更に当区のみに当てはまる運用との認識はありません。
 当区が、第三者専門委員のみの合議による検証体制を確保し、その公正性・客観性が担保されるよう配慮した体制をとっていることも既に回答したとおりであり、現に、第三者専門委員から種々の意見・要望を受け、内部検討委員会が追加調査・報告を実施しているところです。
 貴会が指摘するような「当区幹部にとって都合のいいストーリーに沿った「供述がため」」や第三者専門委員の意見・調査等を阻害するような対応を当区が行っている事実はありません。

2 検証・検討委員会の公開等について
 江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会設置要綱第6条第2項第1号及び第2号は、江戸川区情報公開条例第7条第1項各号で不開示情報が定められる趣旨及び行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)において非公開とされる各種情報の性質、関連する裁判例等を踏まえ、会議を非公開とすべき場合を定めたものです。貴会が問題であると主張する上記要綱第2号の規定も、情報公開法、情報公開条例等にも定めがある意思形成過程段階にある会議体内部の審議、検討、協議等を公開することで、外部の圧力、干渉等の影響を受け、率直な意見交換が妨げられ、意思決定の中立性が阻害されるおそれがある場合等に非公開とすることが認められる旨の規定と同種のものです。これらの規定は、相当数の裁判例、行政不服審査会の答申においても、協議・検討段階にある会議体の審議の公正性を確保するという規定の趣旨に基づき非開示判断の根拠とする適法性が認められており、関係法令及び裁判例等の基準に則した一般的な規定です。また、これらの規定の趣旨は、検証・検討委員会にも当てはまるため、上記要綱にも同様の規定を制定したものです。
 現実に、本件事案の性質に鑑みれば、専門委員会での検証過程においては、職員の安全衛生・健康管理を目的として実施した多数の職員の面談結果、守秘を前提とした内部検討委員会のヒアリングにおける多数の職員の発言、関係職員の病気休職の理由や具体的内容、亡くなられた方の病状や扶養義務者の状況など、(一部要配應個人情報に該当する)個人情報・プライバシーに関わる部分や人事管理に関する情報、公開すると当区の今後の事務事業に支障が生じ得る情報等、情報公開条例で非公開と指定される多数の情報について、第三者専門委員が具体的に触れ、それらをもとに議論される可能性があり、現にされているものと認識しています。当区においてもこれらの具体的な事項を包み隠さず専門委員会に開示し、専門委員会において必要なすべての情報に触れ、活発に議論することが、今後の改善に向けた提言に寄与するものと考えます。また、専門委員会が関係職員等にヒアリング調査等を行う場合、調査対象者が、自己の記憶に基づき正直にその認識する事実や考えを述べられるよう、環境設定への配慮の観点から非公開が必要な場合も考えられます。これらの諸事情を踏まえれば、特に専門委員会については、率直な審議や事務に支障が生じることについて、抽象的な可能性ではなく実質的な蓋然性が認められ、公正かつ必要十分な議論を行うために非公開とすべき場合が多いことについては、上記要綱のみならず、情報公開条例等関係法令に照らしても、合理性があると考えます。
 なお、第1回検証・検討委員会及び専門委員会、第2回専門委員会、第3回専門委員会は、いずれも、委員長が全委員の意見を確認の上、上記の観点から、委員会で取り扱う情報内容やヒアリング等の調査方法を踏まえ、公開・非公開の意見を決定しており、当区は、いずれもその判断内容に合理性があると考え、委員会の判断を尊重した決定を行っています。
 貴会は、「検証委員会の識論は市民の目からの批判に耐えうるものでなければならない」旨主張しますが、その前提として、専門委員会が審議、議論に必要十分な情報を得ること、及び、外部からの不当な圧力、干渉等を受け率直で自由な発言を躊躇するような影響を受けない環境が整備されること等、客観的で公正な審議が確保される体制が必要であると考えます。このような考えは、上記のとおり、会議情報を含む行政機関の保有する情報の公開に係る関係法令及び裁判例の基準に則っており、上記要綱に基づく検証・検討委員会の公開・非公開の決定に係る運用もそれらの観点で行っているものです。
 当区はこのような観点を踏まえ、公開できるもめは出来る限り公開していきますし、情報の公表は、公開における議事録及び非公開の場合の議事概要の公表及び最終的な調査報告書の公表において説明責任を果たしていく考えです。
 以上が、当区の公開・非公開の判断に係る貴会の指摘に対する基本的考えですが、それ以外に付随する貴会からの質問については以下のとおりです。

① 傍聴について
 会議を公開する場合の傍聴申込期間は、今後は十分な期間を設定する予定ですが、オンライン申し込みについては、対応する環境を有しない傍聰希望者がいる可能性もあるため、現在予定しておりません。また、マスコミ関係者も含め、傍聴可能人数は、その都度会場の広さにあわせて決定します。なお、第1回の委員会では、マスコミ関係者、傍聴人ともに、希望者全員が会場に入ることができています。

② 特設ページ開設、議事録等の公開について
 特設ページ開設の予定はありませんが、公開された会議の議事録については、できる限り迅速に区公式ホームページに掲載する予定です。
上記のとおり非公開の会議については、議事要旨を区公式ホームページに掲載する予定です。

③ 小田原市の検証作業経験者の意見聴取等について
 当区は、既に回答したとおり、本件事案の性質及び事実関係等に鑑み、必要・適切な調査・検証等に係る方針を策定し、それに則り、現在専門委員会の検証を中心とした検証作業を進めていると考えています。
小田原市の事案と当区の事案は基本的事実関係が異なり、特に検証において法令に照らし非公開と取り扱うべき情報を多数取り扱うことが想定される点に相違があるため、公開・非公開の判断が一概に比較できるものとは考えていません。
以上



2023/10/30


 2020年2月、八尾市で生活保護を利用している母子が餓死するという痛ましい事件が起きました。
 調査団を結成して調査を重ね、2021年2月16日、同市に対して、「母子餓死事件をふまえて生活保護行政の改善を求める要望書」を提出したところ、八尾市からは、同年3月31日付で簡素な回答書が届きました。
 また、大阪府も八尾市に対する事務監査を実施し、これを受けて八尾市は、3月25日、大阪府に報告書を提出しています。

■令和3年2月25日付 大阪府の八尾市に対する「生活保護法施行事務監査の結果について(令和2年度)
■令和3年3月25日付 八尾市の大阪府に対する「令和2年度 生活保護法施行事務監査の措置結果について(報告)
安否確認マニュアル・辞退チェックシート

 私たちは、こうした書面を検討したうえで、2021年7月28日朝、八尾市役所の門前でチラシを配布するとともに、改めて「生活保護行政に関する意見書」を提出し、意見交換を行いました。
 意見交換において、八尾市側は、事件については内部で十分に検証していると言いながら、「確認できる事実関係を整理した書面は今つくっているところで、いつ完成するかは明確には言えない」と述べるなど、事実解明に消極的な態度に終始しました。残念ながら、事件を真摯に分析し反省する姿勢は全く見られず、このままでは第二、第三の悲劇が起きかねません。
 
■チラシ「二度と悲劇を起こさないためにもケースワーカーの増員が必要です!




2021年7月28日


母子餓死事件を踏まえた生活保護行政に関する意見書


八尾市長 大松 桂右 殿
       

八尾市母子餓死事件調査団
共同代表 井上 英夫(金沢大学名誉教授)
同    尾藤 廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事)
同    矢部あづさ(八尾社会保障推進協議会会長)
 
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局 弁護士 小久保 哲郎



 2020年2月,貴市で生活保護を利用していた女性(当時57歳)及び同居の長男(当時24歳)が居室内において死体で発見された件(以下,「本件餓死事件」といいます。)について,当調査団が本年2月16日付で提出した要望書に対して,貴市からは令和3年3月31日付回答書による回答をいただきました。また,大阪府が貴市に対して令和3年2月25日付で通知した「生活保護法施行事務監査の結果について」に対して,貴市は,大阪府に対し,令和3年3月25日付で「令和2年度 生活保護法施行事務監査の措置結果について(報告)」を提出しました。
 当調査団は,これらの書面を検討しましたが,貴市の対応策は,本件餓死事件についての真摯な分析と反省を欠いたまま,的外れで表面的な弥縫策を列記するにとどまっています。本件のような餓死事件が発生するという事態の深刻さに対する自覚がないため,本質的な改善策とは程遠いものと言わざるを得ません。
 以下,問題点を具体的に指摘しますので,改めてご検討のうえ,対応方法について,本年8月末日までに書面にて,ご回答いただけますよう,お願い致します。


第1 本件餓死事件の事実関係解明と検証委員会設置について
1 当調査団の要望内容
 「貴市において発生した母子餓死事件の事実関係を徹底的に解明し,再発防止策を提言することを目的とした,学識経験者及び当事者等の第三者による検証委員会を設置してください。」

2 貴市の回答内容
 「内部で当該事案の事実確認を行うとともに,民生委員・児童委員と協力しながら安否確認マニュアルを作成し,組織としてしっかり対応しながら,職員自らも主体的に業務改善に取り組んでいるところであり,第三者委員会の立ち上げについては,考えておりません。」

3 評価
(1)  本件餓死事件についての真摯な反省と分析を欠いていること
 そもそも貴市は,事件発覚当初から「個人情報」を盾として本件餓死事件の事実関係の解明に消極的で,当調査団が要望書を提出した当初から,第三者による検証委員会の設置はしない旨断言するなど,事件を真摯に反省した上で再発防止策を構築するという姿勢が全く見られません。
 当調査団は,要望書において,本件餓死事件の問題点として,①長男がいるのに母親単身世帯としての保護費しか支給していなかったこと,②厚労省が示す目安の4倍である月2万円もの保護費の返還をさせていたこと,③2カ月にわたり保護費を受け取りに来なかったのに安否確認を怠ったこと,④安易かつ杜撰な「失踪」を理由とする保護廃止決定を行ったことを指摘しました。
 しかし,当調査団への回答書や大阪府への報告書を見ても,上記の諸点を問題であると自覚した上での具体的な改善策の記載は全く存在せず,大阪府への報告書では,「実施機関としての対応の統一化」「ケース診断会議による組織的検討」「訪問調査活動の充実強化及び組織的進行管理」といった表面的な対応策が列記されるにとどまっています。
 本質的な反省を欠いたまま形式を整えることに汲々としていることからすれば,様々な書類の作成や形式的な診断会議が増えることによって,より一層実質的なケースワークが行えなくなるリスクさえあります。

(2)  全く的外れの「安否確認マニュアル」
 唯一上記③に対する具体策として策定された「安否確認マニュアル」は,「安否確認が取れない事態が発生した場合」に,「可能な範囲で被保護者宅の室内及び居宅の様子を窺う」,「電気メーター,ガス使用量,水道メーターをそれぞれ確認し,記録する」,「現在の状況を迅速に査察指導員に報告し,今後の対応を協議する。」等の“言わずもがな”のごく当たり前の事柄を何度も重複しながら9ページにもわたって列記する内容となっています。
 本来,安否確認を行わなければならないような深刻な事態に陥らないために日常的にどのような支援をする必要があったのかという点こそ,反省し解明しなければならないことのはずです。こうした基本的視点を欠いたまま,「安否確認マニュアル」を策定したことをもって「組織としてしっかり対応」している旨強調するのは,「最悪の死亡事例さえ回避できればよい」という前提に立っているものであり,的外れの対応というほかありません。

第2 実施体制について
1 当調査団の要望内容
 「ケースワーカーの人員を増やして「標準数」を満たすとともに,福祉専門職採用を進め,外部の専門家による研修を充実させるなどして,その専門性を強化してください。」

2 貴市の回答内容
 「生活保護制度の適正な運営を図るためにも,実施体制を整備することの必要性は十分に認識しておりますが,未だ現業員は社会福祉法に定める標準数に比して著しく不足している状況となっており,現業員の増員等については,検討してまいりたいと考えております。
 また,現業員等の研修については,さらなる充実や改善を図るため,その内容や方法等を検討して参ります。」

3 評価
(1) 却って悪化している実施体制~1人あたり133世帯、大阪府内最悪の配置数
 貴市におけるケースワーカーの人員配置については,大阪府の監査でも,平成27年には27人,平成28年と平成29年には23人,平成30年には25人,令和元年には27人の人員不足を指摘されていましたが,令和2年も27人が不足しています。
 府の監査でも,毎年,訪問計画に沿った訪問頻度が確保されていない事例,長期未訪問の事例等が指摘され,訪問実績等に何らかの問題があると判断されたケースの割合(訪問問題率)は,令和元年度で47.9パーセントに及びます。また,令和2年度の監査でも,「今回の監査において,是正改善が必要であると認められた事項については,実施体制の未整備が少なからず影響しているものと思われ,このことは,現業員及び査察指導員に対し過度の負担を強いることとなり,結果として効果的な指導援助ができず,ケースワークの停滞を招くことになります。」と指摘されているところです。
 都市部のケースワーカー一人当たりの担当ケース数の「標準数」は80世帯ですが,貴市のそれは,「標準数」を大きく上回るだけでなく,平成24年4月の120世帯から令和2年4月の128世帯へと悪化していました。これは、大阪府内の自治体で最悪の配置数です。他の中核市も、豊中市(116世帯)、高槻市(106世帯)、寝屋川市(101世帯)、東大阪市(110世帯)と、決して褒められるべき配置数ではありませんが、その中でも八尾市の担当世帯数の多さが突出していることが分かります(2020年度大阪社保協自治体キャラバン資料130頁)。
 今般の母子餓死事件をふまえて、さすがに人員増加が図られることが期待されていましたが、蓋を開けてみると、令和3年4月においては133世帯と更に悪化し、大阪府内最悪の配置数を更新している始末です。

ケースワーカー数被保護世帯数1人当たり世帯数
平成28年4月475,657120
平成29年4月475,714121
平成30年4月465,744124
平成31年4月455,797128
令和2年4月465,905128
令和3年4月45(実質)5,987133


 専門職である社会福祉士については3名から7名に増員されたことは評価できますが,肝心の担当世帯数がより悪化しているようでは,専門職が専門性を発揮して充実したケースワークを行う前提条件を欠くと言わざるを得ません。第1で述べたとおり,形式的な書類作成や会議の業務が増えることとなれば,より一層ケースワークの崩壊が進むことが危惧されます。

(2) 求められる,首長をはじめとする貴市幹部の決断
 「実施体制を整備することの必要性は十分に認識しており,従前から人事担当課等に対しては現業員等の増員を強く要求してまいりました。」等の大阪府に対する報告内容も合わせ検討すると,貴市生活保護部局としては増員の必要性を十分に認識しつつも,人事担当部局の理解が得られず増員に至っていない状況がうかがえます。
 その意味では,貴市生活保護部局だけの責任ではなく,首長をはじめとする貴市幹部の理解と決断が強く求められるところです。

(3) 職員研修について
 大阪府への報告書には,「職場研修を抜本的に拡充し,現業員,査察指導員,管理職全ての職員に対して,生活保護法の制度改正及びその内容,様々な援助困難ケースへの対応経過,関係部署の業務内容等から月1回テーマを決めた上で,研修を実施します。」と記載されていることからすると,基本的に講師も含めて職場内での研修実施を想定されているようです。
 しかし,本件餓死事件に表れた貴市の対応から見ると,貴市職員が生活保護制度や保護の実施要領等に関する十分な理解をしていると評価することは困難であり,内部研修のみでは限界があると考えられます。
 法の基本理念や争訟の具体例,他の自治体における運用事例なども踏まえた外部講師による研修を行うことが強く望まれます。面談時にも申し上げたとおり,当調査団としては,研修内容の検討や講師の派遣等について協力する用意がありますので,ぜひご相談ください。

第3 組織的検討体制の確立
1 当調査団の要望内容
 「被保護者の安否不明等の重大事態が発生した場合や,保護の停廃止等の重要な判断を行う場合には,組織内で情報共有し,適時にケース診断会議を開催できるよう,組織的な検討体制を確立してください。」

2 貴市の回答内容
 「特に複雑困難な問題を有するケースについての援助方針や措置内容等について検討審査を要する場合や,安否不明など緊急的な対応が求められる場合等において,組織的な情報共有を図り,管理職を含め係長以上の職員が出席するケース診断会議等に諮り,速やかに具体的対応について,組織的検討を行う体制を確立します。」

3 評価
 組織的検討を行う体制を確立する姿勢を示されたこと自体は一歩前進ではあります。しかし,第1及び第2で指摘したとおり,本件餓死事件に関する真摯な反省を欠いたまま,人員体制はむしろ悪化し,管理職を含めて専門性を確保するための研修が担保されていない状況では,形式的な会議が増えて新たな業務負担となったり,会議をしても正しい方針が出せずにむしろ組織的に迷走を深めるおそれがあります。
 組織的検討も,人員体制の改善と専門性の確保と車の両輪で行わなければ,効果がないことが明らかであり,後者の点の改善策を緊急に講じることが求められています。

第4 辞退廃止の乱発を止めること
1 当調査団の要望内容
 「本来,極めて例外的にしか認められない辞退廃止の乱発を直ちに改めるとともに,稼働年齢層に対して保護の適用を抑制する姿勢を速やかに是正してください。」

2 貴市の回答内容
 「保護受給中の者から辞退届が提出された場合には,(略)辞退届が任意かつ真摯な意思に基づく有効なものかを確認するとともに,自立の目途を十分に聴取し,保護を廃止することで直ちに急迫した状況に陥ることのないよう留意し,組織的検討の上,決定を行っております。」

3 評価
(1) 辞退廃止の異常な多さについての振り返りと反省を欠いていること
 当調査団が要望書で問題を指摘したのは,貴市における保護廃止総数に占める「親類縁者の引取り」「他市転出」「辞退」の件数と割合の異常な多さです。これらは,いずれも要保護性の消滅が確認できていない場合であり,特に辞退廃止の異常な多さは,貴市職員側から不適切な辞退の働きかけが行われていることが強く疑われるのであり,こうした実務運用の問題の重大性に対する振り返りと反省を欠いたままでは,不適切な運用が改善されるとは到底考えられません。

(2) 全く改善されていない不適切な「辞退チェックシート」
 貴市は,「辞退チェックシート」を「改善」したとしていますが,上記のとおり,問題の本質を理解していないため,新シートも以下のとおり問題だらけです。
・そもそも「架電」による確認を可としている。
・肝心の「辞退理由」の確認がない。
・保護を継続利用する権利があることの教示をすることとされていない。
・最低生活費と今後の収入見込みの具体的金額を記入し,教示することとなっていない。保護廃止後の生活の見通しについても,その具体的内容を記載する欄がない。
 これでは,以前からの不適切な辞退廃止を温存強化することとなる恐れがあると言わざるを得ません。
 
以 上






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2020年2月、八尾市で生活保護を利用している母子が餓死死体で発見されるという痛ましい事件が起こりましたが、私たちは、弁護士、研究者、元ケースワーカー、支援者等で調査団を結成し、調査を重ねてきました。

その結果、八尾市は、①母子が同居していることを認識しながら母親一人の保護費しか支給していなかったこと、②その保護費から更に毎月2万円の返還金を徴収していたこと、③2019年12月と1月の2回にわたって保護費を受け取りに来なかったのに徹底した安否確認を行わなかったこと、④単に本人と連絡が取れないことをもって「失踪」との理由で保護廃止したこと、⑤同市では「親類縁者の引取り」「辞退」による保護廃止が異常に多いことなど、保護の実施機関としてあるまじき違法・不当な対応が多々存在することが明らかになりました。

そこで、私たちは、「第三者による検証委員会の設置」等を求めて、八尾市に要望書を提出しました。




2021年2月16日


八尾市母子餓死事件を踏まえて
生活保護行政の改善を求める要望書


八尾市長 大松 桂右 殿
       

八尾市母子餓死事件調査団
共同代表 井上 英夫(金沢大学名誉教授)
同    尾藤 廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事)
同    矢部あづさ(八尾社会保障推進協議会会長)


 
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局 弁護士 小久保 哲郎


第1 要望の趣旨
1 貴市において発生した母子餓死事件の事実関係を徹底的に解明し、再発防止策を提言することを目的とした、学識経験者及び当事者等の第三者による検証委員会を設置してください。

2 ケースワーカーの人員を増やして「標準数」を満たすとともに、福祉専門職採用を進め、外部の専門家による研修を充実させるなどして、その専門性を強化してください。

3 被保護者の安否不明等の重大事態が発生した場合や、保護の停廃止等の重要な判断を行う場合には、組織内で情報共有し、適時にケース診断会議を開催できるよう、組織的な検討体制を確立してください。

4 本来、極めて例外的にしか認められない辞退廃止の乱発を直ちに改めるとともに、稼働年齢層に対して保護の適用を抑制する姿勢を速やかに是正してください。

第2 要望の理由
1 はじめに
2020年2月22日、貴市において、生活保護を利用していた母親(57)と長男(24)が餓死死体で発見された事件(以下、「本件」という。)について、私たちは、公開質問状を2回発出(2020年9月7日付、同年10月23日付)し、貴市より回答を頂くなどして、調査と検討を重ねてきました。
 その結果、私たちは、本件における貴市の対応には極めて重大な問題が多々見受けられ、それは貴市における生活保護行政の構造的な問題に起因していると考えるに至りました。以下順に指摘します(事実認定の根拠は別紙時系列表の№)。

2 本件における貴市対応の問題点
(1) 長男がいるのに母親単身世帯としての保護費しか支給していなかったこと
 貴市は、2018年11月、長男が木工製作所で働き始め、長男が祖母宅に転出したとして長男を「世帯員削除」した後は、母親単身世帯として保護を適用してきました(12、13)。
 しかし、祖母が「孫と暮らしたことは一度もない」と述べていること(8)、母や長男の友人も「母と長男は常に一緒に行動していた。長男が祖母宅に行ったとは考えられない」と述べていること(6,7)、2019年5月ころ、公園で寝泊まりしていた母子が母の友人宅に宿泊したこと(19~21)、同月ころ、長男の友人に長男からラインがあった後、母からお金を貸してほしいという電話があったこと(22)、同年6月10日、洋服が汚れた母子が市役所を訪れたこと(23)、同年秋頃まで母子が母の友人宅に食事やお風呂の提供を受けに来ていたこと(34、35)、母子が自宅で餓死死体で発見されたこと(51)などからすれば、長男が「世帯員削除」された後も母子は常に一緒に暮らしていたものと考えられます。
 そうすると、長男が2019年1月に仕事を辞めた後は(15)、母親単身の保護費だけで母子2人が生活してきたことになります。母子は家賃5万5000円の物件に居住していましたが、2018年暮れからは3万9000円の単身基準の住宅扶助費しか支給されず(14)、生活扶助費も単身基準の7万6310円しか支給されていませんでした(2人世帯の12万3490円との差額は4万7180円)。
 母子は、3月26日と5月9日には、料金滞納によって水道の停水措置を受け、5月末には家賃滞納によって前住居を追い出されてホームレス状態となります(16~19)。住宅扶助も含めて一人分の保護費で二人が生活しなければならなかったことからすれば、これらの支払滞納は当然の帰結といえます。
 また、“就労に伴う祖母宅への転出”を理由に「世帯員削除」されていた長男が、2016年春には所持金21円、2018年夏には所持金115円で母親宅で同居しており、母子での保護を再開していること(8、11)、2019年6月10日、母子が一緒に市役所を訪れたこと(23)などからすれば、貴市は、二人が同居していることを容易に認識し得たはずです。のみならず、長男や母親が祖母や長男の友人に「住民票だけ祖母宅に移すよう市から言われた」と語っていたこと(6、7)、母子が長男の保護再開を求めたところ、貴市担当者から「これ以上かばい切れない。何度も見逃すことはできないから生活保護から外れたままでいて欲しい」と言われたと長男の友人に語っていたこと(9)、2019年6月10日のやり取りの際、貴市係長が「長男が母のもとで暮らし働いても収入は申告しないだろう」と考えたこと(23)などからすれば、貴市は、二人が同居していることを知りながら、故意に長男がいないものと扱っていたものと考えられます。
 二人が同居していることを把握していれば、当然二人分の保護費を支給すべき義務が貴市にはあります。貴市は、その義務を果たさず、二人をホームレス状態に追いやったのです。

(2) 月2万円(目安の4倍)もの保護費の返還をさせていたこと
 2019年6月10日、洋服が汚れた母子が突然市役所を訪れました(23)。この時、母子は前住居を追い出されホームレス状態となって公園で野宿しており、自殺を試みたと母の友人に話したり、長男の友人に金銭支援を求めて断られていたことからしても(18~22)、貴市に救いを求めて来庁したものと考えられます。ところが、貴市は、母子に対し、2018年暮れに使い込んだ転居費用約20万円の一括返還という不可能なことを求め、結果的に月2万円の分割払いを約束させます(23)。
 いわゆる不正受給による徴収金を本人の申し出に基づいて徴収する場合であっても、その額は「被保護者が最低限度の生活を維持することができる範囲」でなければならず(生活保護法78条の2第1項、同法施行規則22条の4第2項)、厚生労働省は、その目安額について単身の場合は月5000円としています(平成30年10月1日付課長通知)。その4倍に及ぶ2万円を徴収し続ければ、「最低限度の生活を維持すること」は到底できませんので、貴市の対応は明らかに違法です。
 貴市は、2019年7月5日、最後の住居に転居した後も母親一人世帯として保護を再開し、保護費を窓口払いとして、毎月2万円を返還させ続けました(24、25、28)。一人分の保護費で母子二人が生活していたことを貴市が把握していたと考えられることからすれば、さらに2万円も返還させれば母子の生活が破綻に追い込まれることが容易に想像できるはずです。貴市の対応は、住民の生存権保障を職責とする保護の実施機関として、あるまじき対応と言わざるを得ません。
 実際、母子は、保護再開後間もない8月5日には水道料金を滞納し、督促を受け始め(32)、11月にも停水予告通知を投函されるなど水道局からたびたびの督促を受けるに至っています(36~38)。生活の展望を抱けない母子が誰にも助けを求めることができない日々の積み重ねの中で、絶望の淵に陥っていったことが想像に難くありません。

(3) 2か月にわたり保護費を取りに来なかったのに安否確認を怠ったこと
 2019年12月26日、1月分の保護費の支給日に母親は保護費を取りに来ませんでした。この日、保護費を取りに来なかった人のうち最後まで連絡がつかなかったのは当該世帯だけだったのに、貴市は、居室に立ち入るなどして安否確認を行うことをしませんでした(39、40)。
 2020年2月5日、2月分の保護費の支給日にも保護費を取りに来なかったのに、貴市は、同月10日になって自宅を訪問したものの、無施錠の居室内に立ち入ることもなく、連絡票を投函しただけで帰りました(46~48)。
 生存の命綱である保護費を取りに来ないことは異常事態であり、年末年始の閉庁期間に入る前でもあることからすれば、福祉事務所を挙げて生存確認の努力をするのが通常の対応です。とりわけ、貴市が当該世帯に最低生活費を相当下回る生活を強いていたことからすれば、最悪の事態が生じているという危機感を抱いてしかるべきです。
 ところが、貴市は、1か月以上にわたって安否を確認しないまま放置し続けたのであり、もはや「保護の実施機関」の体をなしていないと言わざるを得ません。
 2020年1月8日、水道局から停水予告書の投函があり(41)、同月15日には水道が止められます(43)。母親は、このころ、病院で処方された薬を大量服薬し、「急性薬物中毒」で死亡しています(51、52)。母親が、かつて友人に自殺未遂の経験を訴えていたことからしても(21)、前途に絶望しての自死と考えるのが自然です。長男は、それからしばらくして隣のベッドで低体温症で死亡しています(51)。自死した母親の遺体を前に、なすすべもなく、食べる物も飲む物もなく、20代の若者が生きる力を失って死に至ったのです。
 貴市の違法・不適切な対応の積み重ねが母子を死に追いやったといっても過言ではありません。

(4) 安易かつ杜撰な保護廃止決定を行ったこと
 ところが、貴市は、2月10日に自宅を訪問し応答がなかったことだけを根拠として、2月18日には「失踪」を理由として、1月分の保護費を取りに来ていないことから1月1日に遡って保護を廃止しています(貴市令和2年10月14日付回答書第1の11項)。1カ月半にわたって安否確認を怠りながら、保護廃止だけは1週間で迅速に行ったのです。
 しかし、そもそも「失踪」という保護廃止理由はありません。本件であり得るとすれば、「転出」による生活保護法19条1項の実施責任消滅ですが、その判断をするためには、これまで居住事実があった以上、その居住事実がなくなったことを具体的根拠をもって積極的に確認する必要があります。2019年6月10日の市議会において、貴市地域福祉部長は、「ケースワーカー等から必要な連絡をしても、連絡が取れない状況が続いて、保護費を受け取れない状況」と答弁していますが、このような状況だけで保護を廃止することは明らかに違法です。
 また、上記理由で保護を廃止し得るのは、居住事実がなくなった時からであって、「保護費を受け取りに来なかった日」に遡及する理由もありません。

(5) 小括
 以上見てきたとおり、本件に表れた貴市の対応には違法又は著しく不当な点が多々認められます。その検証を怠り、小手先の対処に終始すれば、いずれ同種の悲劇が起きかねません。学識経験者等の第三者による検証委員会を設置して、事実関係の徹底解明と再発防止策を策定することが必要不可欠です。

3 貴市における生活保護行政の構造的問題
(1) ケースワーカーの人員不足と専門性の欠如
 都市部のケースワーカー一人当たりの担当ケース数の「標準数」は80ケースですが、貴市のそれは、「標準数」を大きく上回るだけでなく、平成24年4月の120から令和2年4月の128へと悪化しています。大阪府による監査でも、平成27年には27人、平成28年と平成29年には23人、平成30年には25人、令和元年には27人の人員不足を指摘されています。
 また、ケースワーカー46人のうち社会福祉士資格取得者はわずか3名(6.5%)、臨床心理士資格取得者は1名(2.2%)に過ぎず、査察指導員に至っては6名のうち福祉関係の資格を有している者は皆無です。全国平均では社会福祉士の資格取得率が13.1%であること(厚生労働省「平成28年福祉事務所人員体制調査)からしても低すぎます。
本件の経緯や公開質問状に対する貴市の回答内容を見ても、その対応の遅さや杜撰さ、生活保護法や保護の実施要領に関する基礎的な理解不足等の専門性の欠如が如実に伺えます。その意味では、ケースワーカー個人の責任というよりは、福祉事務所全体の実施体制の脆弱さに、本件が発生した根本原因があると言えます。
 ケースワーカーの人員増加と充実した研修や福祉専門職採用の推進による専門性の確保が必要です。
 とりわけ、専門性と的確な指導力のある査察指導員の養成は急務と思われます。また、生活保護実務に関する貴市における研修は、内部の職員を講師とした「保護の実施要領研究」「面接相談について」が各2回行われているだけです。外部の大学教員や弁護士等による憲法・生活保護法の理念、争訟事例もふまえた保護の実施要領のあるべき運用方法に関する研修や、社会福祉、精神保健等の専門家(研究者や実務者)による障害や依存症等への理解を深める研修等を行うべきです。

(2) 組織的検討体制の欠如
「1月分、2月分の保護費を受け取りに来なかったことに対する対応について、担当ケースワーカー・査察指導員だけでなく、福祉事務所内で情報を共有し、組織的検討を行ったのはいつで、どのような検討を行いましたか」という私たちの質問に対し、貴市が、「この度の結果については、非常に重く受け止め、組織的に情報共有し、迅速かつ的確に対応してまいりたいと考えております」(令和2年11月4日回答書10-2)と回答していることからすれば、本件では、保護廃止に至るまで一度も福祉事務所内での情報共有や組織的検討が行われていないようです。しかし、2カ月にわたって保護費を受け取りに来ない世帯に対して保護廃止をするに至るまで、一度もケース診断会議を開かないなどというのは、福祉事務所としてあり得ない対応です。
 大阪府による監査でも、平成28年度から令和元年度まで、例外なく毎年、組織的検討が確認できないことや組織的検討が不十分であることなど、組織の運営管理の問題点が指摘されています。この指摘に対する対応策として、貴市は、毎年「査察指導員又は管理職等との協議」や「監督職以上の職員を含む複数職員での対応」という小手先の改善策を回答するにとどまっており、本来必要な「ケース診断会議の開催」という改善策を講じていません。
 被保護者の安否不明等の重大事態が発生した場合や、保護の停廃止等の重要な判断を行う場合には、組織内で情報共有し、適時にケース診断会議を開催できるよう、組織的な検討体制を確立する必要があります。

(3) 稼働年齢層に対する排斥的な対応
 貴市における被保護世帯の平成27年度から令和元年度にかけての世帯構成の変化を見ると、母子世帯は、661世帯(11.7%)から484世帯(8.2%)へ177世帯(3.5%)減少し、その他世帯は、772世帯(13.6%)から731世帯(12.4%)へ41世帯(1.2%)減少しています。このように、貴市においては、稼働年齢層の世帯構成割合が一貫して減少しており、特に母子世帯の減少傾向は顕著です。
 また、貴市の平成28年度の「生活保護実施方針及び事業計画書」(平成28年度~令和2年度)では、「死亡」、「辞退」、「他管内への転出」の3つで保護廃止の7~8割を占めることや、特に「辞退」と「他管内転出」の件数が多いことの指摘がされています。

廃止数親類縁者の引取他市転出辞退割合計
H30年643304.7%284.4%16024.9%33.9%
H31年685273.9%334.8%12117.7%26.4%
R1年634193.0%345.4%8613.6%21.9%


 過去3年間の保護廃止総数に占める「親類縁者の引取り」「他市転出」「辞退」の件数と割合は、上記のとおり2~3割と高い割合を示しています。これらはいずれも未だ要保護状態にあることが疑われる廃止事由ですが、特に辞退廃止の件数の多さは異常であり、分類の存在自体が異例である「親類縁者の引取」の件数の多さも異常です。大阪府の監査でも、辞退廃止にあたり自立の目途について確認されていない事例や組織的判断が確認できない事例、辞退届を徴収していない事例(平成28年度、平成29年度)、増収や就労を開始した者から収入申告書等を徴収することなく辞退届を受理している事例、要否判定により廃止とすべきところを廃止とせず辞退廃止としている事例、働き手の転入により廃止となるケースにおいて辞退届を徴収している事例(平成30年度)等、不適切な辞退廃止の事例が繰り返し指摘されています。
 こうした経過から見ると、貴市においては、稼働年齢層について真に要保護性が消滅したか確認することのないまま、「親類縁者の引取り」「他市転出」「辞退」等を理由に安易に保護を廃止していることが強く疑われます(この点は、検証委員会で、上記廃止理由の年齢構成をさらに調査・確認するなどして分析を深めることが望まれます。)。
 本件においても、貴市が、就労の不安定な長男について、就労後の収入額やその継続の有無等について確認することなく、祖母宅に転出したものとして繰り返し世帯員削除(長男の保護を廃止)しているのは、こうした貴市の不適切な運用の表れであると理解することができます。
 本来、極めて例外的にしか生じ得ない辞退廃止が異常に多いのは、大阪府の監査でも繰り返し指摘されているとおり、実施要領に反する運用が常態化しているからであり、速やかに是正することが求められます。
 また、コロナ禍で稼働年齢層の要保護者が増えていることからしても、本件にも表れているような稼働年齢層に対して保護の適用を抑制する貴市の姿勢もまた、速やかに是正することが必要です。
以 上

八尾市要望書
八尾市要望書
八尾市要望書





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八尾市から餓死事件に関する公開質問状に対する回答が届きましたが、不十分なので再質問状を送付しました。

八尾市からは令和2年11月4日付で回答がありました。
                          


2020年10月23日


八尾市の母子餓死事件及び
生活保護行政に関する公開質問状(2)


八尾市長 大松 桂右 殿
       

八尾市母子餓死事件調査団
共同代表 井上 英夫(金沢大学名誉教授)
同    尾藤 廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事)
同    矢部あづさ(八尾社会保障推進協議会会長)


 
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局 弁護士 小久保 哲郎


本年2月22日,貴市において起きた,無職の母親(54)と長男(24)が餓死死体で発見されるという痛ましい事件について,9月7日付でお送りした公開質問状に対し,貴市より,10月14日付でご回答をいただきました。ご多忙中にご回答をいただいたことに感謝申し上げます。
ただ,回答が可能と思われるのに回答がなかった点,回答内容自体に矛盾等があると思われる点について,以下のとおり,重ねて質問させていただきます。
御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが,2020年10月30日までに上記の連絡先宛に書面でご回答いただけますようお願い致します
 なお,本公開質問状及び貴市のご回答ご対応内容についても,すべて公開いたしますので,予めご承知おき願います。

第1 貴市で発生した母子餓死事件の事実経過について
9 2019年12月26日,1月分の生活保護費を受け取りに来なかった後の家庭訪問の際,「異臭もなく,緊急性を感じられなかったことから無断での立ち入りを行わなかったものです」との回答ですが,「1月分の保護費を受け取りに来なかったこと」,「訪問しても応答がないこと」自体からは緊急性を感じなかったということでしょうか。八尾市としては,「外部まで異臭が漂う状態に至って初めて緊急性を感じる」と理解してよいでしょうか。

10 2020年2月10日,家庭訪問した際,解錠されていたということですが,声掛けをしながら室内立ち入りをしなかったのは何故でしょうか。

10-2 1月分,2月分の保護費を受け取りに来なかったことに対する対応について,担当ケースワーカー・査察指導員だけでなく,福祉事務所内で情報を共有し,組織的検討を最初に行ったのはいつで,どのような検討を行いましたか。

11 「失踪」廃止の法的根拠は,「法第19条1項に規定する管内の現在地を有するとは認められなくなったこと」ということですが,当該世帯に対しては,法19条1項1号の「居住地」保護ではなく,同条項2号の「現在地」保護を実施していたという理解なのでしょうか。
  また,廃止の法的根拠を法19条1項の実施責任の消滅に求めながら,廃止時期については受け取られなかった1月分の保護費発生時に遡っており,廃止理由と整合していないのは何故ですか。

第2 貴市における生活保護行政全般について
貴市における過去5年間の以下のデータをご提供ください。
(下線部についても漏れなくご回答ください)
1 生活保護行政全般
⑪ 申請から14日以内に決定した件数,30日以内に決定した件数,それ以上
要した件数

 特に下線を付して漏れなく回答を求めたにもかかわらず,回答がありませんでした。しかし,開示いただいた各年度の「生活保護実施方針及び事業計画書」には,法定期間内処理の遅延件数と遅延理由ごとの件数調査があることを前提とした記載が例年なされています。
 法定期間内処理の遅延件数と遅延理由ごとの件数でもかまいませんので,ご回答ください。

⑭ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
「その他」が異常に多いのは何故か。「その他」にはどのような事由がある
のかと,それぞれの件数(特に「その他」中の「辞退」の件数)。

 同様に下線を付して漏れない回答を求めたにもかかわらず,「その他」にどのような事由があるかを回答いただいたのみで,それぞれの件数(特に「辞退」の件数)についてはご回答いただけませんでした。
 しかし,開示いただいた各年度の「生活保護実施方針及び事業計画書」において,廃止事由としては「辞退」「他管内への転出」の件数が多い旨の記載が例年なされていることから,少なくともこれらの件数調査はあるはずです。また,大阪府監査でも例年のように「保護廃止の適切な取扱い」(特に辞退廃止)について指摘を受け,貴市からこれに対応する措置結果の報告を踏まえて実施方針及び事業計画においても「保護廃止の適切な取扱い」が掲げられていることからしても,廃止事由ごとの件数調査は最低限なされているはずです。
①「その他」の中の廃止事由ごとの件数の推移を可能な限り具体的にご回答ください。万一仮に件数調査がなされていないのであれば,実施方針に「保護廃止の適切な取扱い」を掲げながら,件数調査を行っていない理由をご回答ください。
②辞退にかかる面談時に作成することとしている「チェックシート」(毎年の大阪府監査に対する報告書で言及)の書式を開示してください。また,辞退届の書式を作成していたら開示してください。

3 貴市において作成している文書資料類
以下の資料類があれば,過去5年分について,開示,ご提供ください。

③ 各種自立支援プログラムの実施要領等書面。
④ 「失踪」廃止を含む保護廃止に至る手順等を定めたプログラム等があれば当該書面
 これらの書面の有無をご回答のうえ,あれば写しを交付してください。
 令和2年度生活保護実施方針及び事業計画書6頁記載の「被保護者の居住確認が取れなくなった場合の確認項目」に関する書類を開示してください。併せて,NHKで報道されていた「安否確認マニュアル」も開示してください。

4 追加質問
 平成30年度大阪府監査の2項で,「穴埋めとして実態のない一時扶助を支給した上で、法63条を適用し分割にて返還を求めている事例」が指摘されていますが,実態のない一時扶助を支給する法的根拠は何ですか。

以 上


八尾市への公開質問状(2)(2020年10月23日付)[PDF]

八尾市長からの回答文書(2020年11月4日付)
公開質問状(2)に対する回答文書[PDF]




八尾市長からの回答文書(2020年10月14日付)

公開質問に対する回答文書[PDF]
生活保護法施行事務監査資料(平成28年度~令和元年度)[PDF]
生活保護実施方針及び事業計画書(平成28年度~令和2年度)[PDF]



八尾市への公開質問状(2020年9月7日付)

2020年9月7日付公開質問状



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八尾市長に対し、「八尾市の母子餓死事件と生活保護行政に関する公開質問状」を出しました。




2020年9月7日


八尾市の母子餓死事件及び生活保護行政に関する
公開質問状


八尾市長 大松 桂右 殿
       
八尾市母子餓死事件調査団
共同代表 井上 英夫(金沢大学名誉教授)
同    尾藤 廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事)
同    矢部あづさ(八尾社会保障推進協議会会長)
 
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局 弁護士 小久保 哲郎

 本年2月22日,貴市において,無職の母親(54)と長男(24)が餓死死体で発見されるという痛ましい事件が起きました。母親は(一時は長男も)生活保護を利用していたにもかかわらず,2019年12月26日と2020年2月5日の支給日に生活保護費を取りに来庁することなく,水道の給水が停止され,民間事業者であるケアマネージャーによって遺体が発見されるという経過は極めて異常です。
 そこで,私たちは,こうした悲劇を二度と起こさないためには,なぜこのような事件が起きたのか,その背景と原因を明らかにする必要があると考え,生活保護などの貧困問題に取り組む民間団体や個人で本調査団を結成しました。
 つきましては,今般,上記の母子餓死事件について以下のとおり,質問および資料提供の要請をいたします。御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが,2020年9月30日までに上記の連絡先宛に書面でご回答いただけますようお願い致します。(いただいた回答をふまえて意見交換の場をお持ちいただきたいと考えております。)
 なお,本公開質問状及び貴市のご回答ご対応内容はすべて公開いたしますので,予めご承知おき願います。
 
第1 貴市で発生した母子餓死事件の事実経過について
1 当調査団の調査によると,貴市で発生した母子餓死事件の事実経過は別紙時系列表のとおりです。
別紙時系列表記載の事実経緯に誤りがあれば,具体的にご指摘ください。

2 新聞報道及び本年6月10日の貴市議会議事録によると,2019年7月5日以前にも母子が生活保護を利用していたこと,過去にも何回か長男を生活保護から外したことが推測されます。貴市における母子の生活保護の利用状況を明らかにして下さい。また,いつ,どのような理由で長男を生活保護から外しましたか。また,その間の長男の生活実態をどのように把握していましたか。

3 2019年3月,5月の料金滞納による給水停止や,同月末の家賃滞納による退去の原因はどのように把握していましたか。母子2人が母親だけの生活保護費で生活していたことが原因となっていたのではありませんか。

4 母親が,同年7月5日,最後の居住地へ転居した際,貴市は転居費用を支給したのですか。

5 上記転居直前,母子が公園で寝泊まりしているところを警察に保護されたことが生活保護利用の契機であったのなら,なぜ母子2人ではなく母親だけの単身世帯として生活保護を再開し,転居費用を支給したのですか。長男の居所,収入についてはどのように聞き取り,把握しておられましたか。

6 生活保護再開後,貴市では母親から毎月2万円の返還金の回収を始めたということですが,何の費用の返還金だったのですか。また,返還決定にあたっての生活保護法上の根拠条文は何条ですか。また,何を根拠に毎月2万円という返還金額を決めたのですか。厚労省が示す返還金の目安額(単身世帯5000円,複数世帯1万円)に照らしても高すぎるとは考えませんでしたか。

7 生活保護再開後,母親一人の生活保護費で母子2人が生活していたと考えられますが,その事実は把握していましたか。把握していないとすれば,この間,長男はどこでどのように生活しているか,母親に質問しましたか。貴市ではどのように認識していましたか。

8 保護再開後,母親は来庁して生活保護費を受領していたとのことですが,支給日に遅れて来庁することはありましたか。来庁した際に,最低生活費より月2万円低い生活費でどのように生活しているか,問題は起きていないか,聞き取りや話し合いをしましたか。

9 同年12月26日,1月分の生活保護費の受け取りに来庁しなかったということですが,生活保護費以外に収入の当てがなく,年始年末を過ごすための預貯金があるはずもない(同年7月に保護再開されたばかりで月2万円の返還を行っていれば預貯金する余裕などないと考えます)母親がこれを受け取りに来ないというのは異常事態です。年末年始を挟むこともあり,不測の事態をも想定して,連絡票投函に留まらず家主・警察等とも調整するなどして住居に踏み込んで安否確認するのが,母親の生活と生存を守る立場である福祉事務所の通常の対応と考えられます。なぜ,そのような対応をとらなかったのですか。
 また,年内最終の開庁日である翌12月27日には何らかの対応をとられましたか。とらなかったとすれば,その理由も教えてください。
本年6月10日の貴市議会での議事録では,法28条の立入調査権について地域福祉部長は,「住居の中に立ち入る権限まであるものではないと認識しております」と答弁されていますがその根拠をお示し下さい。

10 2020年2月5日,2月分の生活保護費の受取に来庁しなかった際にも,上記同様の安否確認の対応をとらず,2月10日になって自宅訪問して投函するにとどめたのは何故ですか。

11 同年2月18日,1月1日に遡及して「失踪」を理由に保護廃止したということですが,生活保護法上「失踪」という廃止理由はありません。本年6月10日の貴市議会議事録では,地域福祉部長は,「保護をしている場合に,ケースワーカー等から必要な連絡をしても,連絡がとれない状況が続いて,保護費を受け取られない状況」と答弁していますが,その根拠をお示し下さい。保護廃止の法律上の根拠は生活保護法何条ですか。また「失踪」を理由とした保護廃止をするにあたって,失踪の事実をどのように確認しましたか。
 仮に「転出」による実施責任の消滅(法19条)ということであれば,「転出」の事実を具体的にどのようにして確認したのですか。
また,保護廃止日を「1月1日」とした根拠は何ですか。

第2 貴市における生活保護行政全般について
貴市における過去5年間の以下のデータをご提供ください。
(下線部についても漏れなくご回答ください)
1 生活保護行政全般
① 保護費総額
② 被保護世帯数
③ 被保護人員数
④ 保護率(③÷市人口)
⑤ 高齢,障害・傷病,母子,その他世帯の各割合
⑥ 相談件数
⑦ 申請件数
⑧ 申請率(⑦÷⑥)
⑨ 開始件数
⑩ 開始率(⑨÷⑥)
⑪ 申請から14日以内に決定した件数,30日以内に決定した件数,それ以上
要した件数
⑫ 文書による指導指示件数,それに基づく停廃止処分の件数
⑬ 廃止件数
⑭ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
「その他」が異常に多いのは何故か。「その他」にはどのような事由がある
のかと,それぞれの件数(特に「その他」中の「辞退」の件数)。

2 職員体制について
① 生活保護査察指導員,同ケースワーカーの各人数
② ①のうち社会福祉主事,社会福祉士,精神保健福祉士,臨床心理士の各資格取得者の人数
③ ①の年齢別,在職年数別人数の内訳,平均在職年数,平均年齢
④ ケースワーカー一人あたりの持ちケース数
⑤ 貴市職員全体の男女比率と貴市の生活保護担当部署職員の男女比率
⑥ 生活保護担当部署職員に対して実施した研修の具体的な内容

3 貴市において作成している文書資料類
以下の資料類があれば,過去5年分について,開示,ご提供ください。
① 生活保護実務運用のための年度別生活保護運営方針または計画書面
② 府の監査における指摘事項書面及び府に対する回答書面
③ 各種自立支援プログラムの実施要領等書面。
④ 「失踪」廃止を含む保護廃止に至る手順等を定めたプログラム等があれば当該書面

以 上


八尾市
八尾市


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