「自動車を持っているから」と生活保護の申請を断念するという話を、特に地方でよく耳にします。しかし、ローカル路線のバスや電車が減っている地方では、「自動車は無ければ生活ができない物」になっています。それを裏付けるように、自動車保有率は首都圏(64.4%)より地方圏(83.7%)の方が約20%高く、地方圏でも大都市(74%)、周辺部(92%)と都市規模が小さくなるほど保有率が高い傾向にあります。
生活用品は、保有率が当該地域の全世帯の70%程度であれば「一般世帯との均衡を失することにならない」とされていること(課長通知問第3の6)からしても、自動車は、生活用品として保有が認められても良いはずです。しかし、これまで自動車はそのように取り扱われてはいないため、「生活保護か自動車か」という選択を迫られ、生活保護の利用を希望している人が申請を諦めざるを得なくなってしまっているのです。
地方は都市部に比べて保護率が低く、とりわけ母子世帯では、最も高い東京都(18.87%)と最も低い富山県(0.61%)とでは、31倍もの格差があります。このことからも、自動車保有が生活保護申請の大きな障壁になっていることが明らかです。
しかし、あきらめる必要はありません。現行の厚生労働省通知を前提としても、それを正しく解釈・運用することで自動車を持ったまま生活保護を利用できる場合は、かなり多くなるでしょう。少なくとも以下のことが可能です。
①公共交通機関の利用が著しく困難な場合の通勤や通院等のための保有が認められる
②通勤のための利用には保育園への送迎も含まれる
③保護を受ける際に仕事に就いていない場合でも、1年(場合によってはそれ以上)にわたって処分を保留してもらうことができる
当会では、パンフレットにまとめ、Q&A形式で「厚労省通知の徹底活用法」を解説しています。そして、申請者が自動車保有容認の条件を満たしているかをチェックリスト方式で確認でき、そのまま福祉事務所へ提出できる「自動車保有容認を求める申立書」を掲載しています。ぜひお役立てださい。
パンフレットは、販売しております。
ぜひ、団体内や生活保護利用者への周知、相談活動などにお役立て下さい。
団体だけでなく、個人からの申込みも可能です。各地での運動にご活用下さい。
(1)FAXで申し込む
申込用紙(PDF印刷版)に必要事項をご記入の上、072-648-3576までFAXをお送り下さい。
(2)ネットから申し込む
申込フォーム→https://my.formman.com/form/pc/RvirpT8MO57v69hV/
費用:1セット(50部) 5,000円(消費税込) ※送料別

自動車を持ちながら生活保護を利用するために!
Q&A
印刷版(PDF)のダウンロードはこちらから
Q1 福祉事務所から「車は『資産』だから、処分してもらう」と言われました。私の車はオンボロで売ってもお金にならないのに、「資産」と言えるのでしょうか?
A -1 いいえ、本来、処分価値ゼロのモノは「資産」ではありません。
生活保護法4条1項は、「利用し得る資産」の活用を要件としています。この「資産」とは、「土地、家屋を始め貨幣、債権、無体財産等プラスの財産の総称」とされており、本来、処分価値ゼロのモノは「資産」ではありません※。
次官通知第3でも、「1 その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有しているほうが生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの」や、「4 売却代金よりも売却に要する経費が高いもの」は処分せずに保有を認めています。
※小山進次郎「生活保護法の解釈と運用」121頁
A -2「車はゼイタク」という固定観念からの脱却が必要です。
ところが、車だけは、どんなにオンボロでも「資産」であるとして保有を認められません。その背景には、「生活保護利用者に車はゼイタク」という固定観念があります。例えば、判決②は、結論としては原告を勝たせたのですが、「『資産』としては、第一義的には処分価値のあるものを想定しているのは確かである」としつつも、「その時点の社会情勢や国民感情にもかんがみて、」「当該資産を所有するために一定の経済的支出を行うことや当該資産を利用することで一定の利益を得られることが、『最低限度の生活』として容認できるかどうか」を含めて検討すべきとし、「利用による利益を容認できるか」
(ゼイタクでないか)を問題にしていました。
しかし、こうした「生活保護利用者に車はゼイタク」という価値観を乗り越えた判決も現れています。判決③は、「『資産』とは、基本的には処分価値を有するものを意味する」が「処分するよりも保有して活用する方が生活維持及び自立助長に実効性があり、維持費等の経済的支出が社会通念上是認できる」かという観点から保有の可否が検討されるべきとしました。判決③では、「利用による利益の享受」が容認できるかどうか(ゼイタクでないか) は問題にせず、「経済的支出により最低生活を割り込む懸念」にのみ着眼しています。この考え方からすれば、維持費の捻出が可能であれば生活に必要な車の保有は認められることになります。
そもそも自動車の保有には移動の自由を保障するという側面があります。自動車を保有することによって、自立した生活を送ることができる、社会参加が可能になるといった面があり、その点からも保有が認められるべきものです。
車の保有が認められる場合
Q.2 自動車を保有したまま生活保護を利用したいのですが、現在の運用(厚労省通知)では、どのような場合であれば車を処分せずに生活保護が利用できますか?
A 自動車の保有については、以下の場合に認めることができるとされています。
認められる場合1
事業用品としての自動車
生活保護利用者が何らかの個人事業を営んでいて、その営業のために自動車が必要となる場合(例えば商品の運搬用など)です。このような事業用自動車については「当該事業が事業の種別、地理的条件等から判断して当該地域の低所得世帯との均衡を失することにならない」場合には保有が認められます(別冊問答集第1 編問3-14)。
認められる場合2
「公共交通機関の利用が著しく困難」な場合の通勤や通院・通所・通学用自動車
この場合については、①本人が障害者か交通不便な場合か、②利用目的が通勤か通院等かによって、以下のとおり要件が異なります。
一見、非常に厳しい要件に見えますが、「保有が社会的に適当と認められるときには…その〔通知の〕要件を一定程度緩和して解釈・運用する必要がある」とされています(判例①、②・③でも同旨が述べられています)。
そのため、要件を1つ1つ細かく見過ぎて抑制的に考えるよりも、自動車保有の必要性があれば、要件を緩和して解釈するよう福祉事務所に求めていくことも大事です。
障害者 | 交通不便な場合 | ||
通勤(課第3-9) | 自動車による以外に通勤する方法が全くないか、又は通勤することがきわめて困難であり、かつ、その保有が社会的に適当と認められるときには、「社会通念上処分させることを適当としないもの」(次官通知第3の5)として容認 | (交通不便な場合に課される右記(1)~ (4)の条件は求められない。) | 居住地もしくは勤務先が、公共交通機関利用困難地にあるか、深夜業務従事者であって、かつ(1)~(4)の全ての条件必要 (1)勤務が自立に役立つ、 (2)地域の普及率、自動車非保有低所得者との均衡 (3)処分価値が低い (4)当該勤務の収入>維持費 |
通院等(課第3-12) | 通院、通所及び通学(以下「通院等」)のために自動車を必要とする場合 | (1)~(5)の全ての条件が必要 (1)定期的利用 (2)自動車利用が真にやむを得ないこと (公共交通機関の利用が著しく困難、送迎サービス活用困難、タクシーより自動車を利用する方が妥当等) (3)処分価値低く、2000cc以下 (4)維持費が他からの援助や他施策で賄われる (5)本人や生計同一者が運転 | 公共交通機関利用困難地域に居住する者かつ(1)~(5)の条件が必要 (1)定期的利用 (2)自動車利用が真にやむを得ないこと (公共交通機関の利用が著しく困難、送迎サービス活用困難、タクシーより自動車を利用する方が妥当等) (3)処分価値低く、2000cc以下 (4)維持費が他からの援助や他施策で賄われる (5)本人や生計同一者が運転 |
認められる場合3
就労を中断している場合の自動車保有
生活保護の開始時において失業や傷病により就労を中断している場合の通勤用自動車について処分を求めると、そのことによって就労が困難になり、就労による自立の可能性を奪うことになりかねません。
そこで、課長通知問第3の9-2では、「概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれるものであって、保有する自動車の処分価値が小さいと判断されるもの」については6か月間、処分指導をしなくてもよいとしています。また、6か月が経過しても、具体的に就労による自立に向けた活動が行われていれば、概ね1年まで延長してよいとされていますし、さらにそこから延長が認められるケースも多くあります。
ただし、これによって認められているのは処分指導を行わないことまでで、求職活動に必要な場合には利用を認めるものの、それ以外での利用を認めるものではないとされているところは問題です。
認められる場合4
保育園等の送迎のための通勤用自動車の保有
生活保護手帳別冊問答集問3-17は、「子の託児のために保育所等を利用しており、保育所等へ送迎して勤務するためには自動車による以外に通勤する方法が全くないか、又は通勤することがきわめて困難である」場合には、公共交通機関等での利用が可能な保育所等への転入所を検討すべきとする一方で、「公共交通機関の利用が可能な保育所等が全くない場合若しくはあっても転入所が極めて困難である場合、又は転入所することが適当ではないと福祉事務所が判断する場合」には、通勤用自動車の保有を認めるとしています。ここでは「転入所することが適当ではないと福祉事務所が判断する場合」も保有が可能とされており、認められる範囲は広がっています。
また、厚労省が新型コロナウイルス対策で出した令和2年4月7日付け事務連絡「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」では、求職活動のために保育園に子どもを預ける必要がある場合に自動車を利用することを認めるとしています。こういった柔軟な対応が、他の場面にも広がることが望まれます。
Q.3 「公共交通機関の利用が著しく困難」というのはどういう場合ですか?
A 障害のある方以外で、居住地もしくは勤務先が公共交通機関利用困難地にあるか、深夜業務に従事している場合です。
この要件が課されるのは、障害のある方以外の場合です。具体的には①居住地もしくは勤務先が公共交通機関利用困難地にあるか、② 深夜業務に従事しているという場合を指します(②の場合はそもそも公共交通機関が運行していません)。
このうち、①については、「例えば、駅やバス停までの所要時間や、公共交通機関の1日あたりの運行本数、さらには当該地域の低所得者の通勤実態等を勘案したうえで、自動車によらずに通勤することが現実に可能かどうかという観点から実施機関で総合的に判断」(別冊問答集問3-16)とされています。
実際に福祉事務所と交渉をする際には、公共交通機関の運行本数等を調べた上で、実際にそれを利用するとどのくらい時間がかかるのかを、事前に準備しておいた方がよいでしょう。そして、季節や天候による影響、ご本人の年齢などの事情も合わせて説明し、公共交通機関を利用しての通勤や通院・通所・通学ができないことを、具体的に説明するのが望ましいでしょう。
公共交通機関を使うとすれば、バスを8時15分に降車して、そこから1.2キロを徒歩で歩き8時半までに出勤しなければならないが、年齢(63歳)及び雨天時などを考慮すれば確実に通勤可能とは判断できない。
Q.4障害者の方に自動車保有が認められるための要件としての「障害」はどのように考えられていますか。
A 自動車税等が減免される障害者(中略) を標準とし、個別に判断されます。障害者手帳がなくても認められた例もあります。
ここでいう「障害」とは、「自動車税等が減免される障害者(中略)を標準とし、障害の程度、種類及び地域の交通事情、世帯構成等を総合的に検討して、個別に判断する」とされています。(別冊問答集問3-15)
その障害の程度については、「身体障害にあっては下肢、体幹の機能障害、内部障害等により歩行に著しく障害を有する場合、知的障害にあっては多動、精神障害にあってはてんかんが該当する」(別冊問答集問3-18)という見解が厚労省から示されています。
ただ、上記の場合以外では認められないということではありません。また、障害者手帳が無ければ認められないということでもありません。実際に障害者手帳が無い場合でも、精神疾患(パニック障害等)や指定難病の方などで保有が認められた例もあります。
障害者手帳の有無を問わず、公共交通機関の利用が困難な障害や疾病等があれば、自動車の保有を認めるよう交渉しましょう。そして、福祉事務所は、主治医に状態を確認し、診断書の記載等から公共交通機関の利用の困難性について柔軟に判断することが求められます。
Q.5 自動車の保有が認められる「通院・通所・通学」に含まれるのは、 どのような場合ですか?
A 生活保護利用者の生活維持及び自立助長のために必要不可欠な施設訪問の場合です。
自動車利用が認められるのは、通勤以外では「通院・通所・通学」とされています。ただ、これらはあくまでも例示に過ぎないと考えるべきです。
実際に判決③でも、「医療や教育を目的とする施設ではなくても、障害者の生活維持及び自立の助長のため必要不可欠な施設等への定期的な訪問が『通所』に該当する場合もある」とされています。そのため、「通院・通所・通学」の範囲を狭く捉えず、生活保護利用者の生活維持及び自立助長のために必要不可欠な施設訪問か否かという観点から検討すべきです。
また、「定期的」かどうかについては、「通院回数や通院頻度が多いことが要件とはされておらず、通院頻度が少ないとしても定期的な通院の必要性があるといえる以上は要件①を満たすのであるから、…通院頻度の多寡を問題とすることには合理性がない」(判例③)とされています。
Q.6 どの程度の価値の自動車であれば保有が認められるのですか?
A 自動車の処分価値が小さいことが挙げられています。
自動車保有の要件として、自動車の処分価値が小さいことが挙げられています。
その判断基準は、「全国統一して決められる性格のものではなく、地域の実情等を勘案した上、社会通念で判断することが最も妥当な方法」で「地域の実情、世帯の状況を的確に把握した上」で保有の可否を判断すべきとされています(別冊問答集問3-13)。
この点、日本弁護士連合会の2010年(平成22年)5月 6日付け「生活保護における生活用品としての自動車保有に関する意見書」では、「処分価値の小さい」ことの基準として、当該世帯の6か月分の最低生活費を目安とする考え方を示しています。その理由を同意見書は「前掲課長通知第3の9-2が、『概ね6か月以内に就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者』の通勤用自動車保有を認めていることや、『保護の停止又は廃止の取扱い基準』について定めた課長通知問第10の12が,臨時的な収入の増加等により,『以後おおむね6箇月を超えて保護を要しない状態が継続すると認められるとき』に限って保護を廃止するとしていること」としています。
以上のような考え方を踏まえつつ、地域や家庭の個別事情を考慮して保有を容認すべきかどうかを判断すべきです。
Q.7保有を認められた目的以外で、日常的に利用することはできないのでしょうか?
A 認められるよう求めていくべきです。
福祉事務所が自動車の保有を認める際、「保有を認めた目的以外に使用しない」ように求めることは少なくありません。
でも、保有目的以外の使用ができなければ買い物などもできず、生活に支障を来してしまいます。そもそも「保有目的以外で利用してはならない」とする規定はありません。
判決③は、「日常生活において保有する自動車を利用することなく、費用を負担してタクシーを利用したり、第三者の介護を求めたりすることは補足性の原則(生活保護法4条1項)にも反する」とした上で、「当該自動車を通院等以外の日常生活の目的のために利用することは、被保護者の自立助長(同法1条)及びその保有する資産の活用(同法4条1項)という観点から、むしろ当然に認められるというべきである」と述べています。また、秋田県知事平成19年1月31日裁決(裁決DB№ 3217)も、生活用品として認めた自動車を通勤に使用したことを「生活保護の趣旨に反しない」とした上で、勤労収入から維持費(燃料費や車検代)の控除を認めており、参考になります。
そこで、保有を認められた段階から、日常生活でも用いることがどれだけ必要であるかを具体的に述べて、保有目的以外の利用も容認するよう求めていく必要があります。
Q.8 自動車を借用することは許されないのでしょうか?
A 借用も「保有」に含まれるとされています。
日常用語からすると違和感があるのですが、「借用」についても「保有」に含まれるとされているので(別冊問答集問3-20)、借用の場合にも、これまで述べてきたような保有の要件を満たす必要があるということになります。後述するように「遊興」のための保有を認めないとしていること等からすると、資力の問題と生活態度の問題を混同する解釈だといえます。
ただ、別冊問答集問3-20では「遊興等単なる利便の ため度々使用すること」は認めないと明示する一方で、「緊急かつ妥当な理由が無いにも拘わらず」と「緊急かつ妥当な理由」がある場合の借用はやむを得ないとする表現もあり、必ずしも保有する場合と同じではありません。例えば、急病の子どもを連れて行くのに隣人の自動車を借りることは認められるべきです。
また、判決①は、障害のあるシングルマザーが自動車を借用していたためになされた保護廃止処分が争われた事案ですが、バス停までの距離( 約1. 5キロメートル)、バスの通勤時間(片道1時間30分)、自宅を出る時刻(朝6時)という勤務先については、原告の健康状態から自転車による通勤は困難だとして、自動車の借用を理由とした保護廃止処分を取り消しています。
Q.9 自動車保険や車検などの経費はどうやって賄えばいいでしょうか?
A 収入や援助などで賄うほか、一時扶助を求めることが考えられます。
維持費が賄われることは、自動車の保有が認められる要件にもなっています。
通勤用自動車の場合
給与収入から賄うことが前提とされています。そして、賄った費用は必要経費として給与収入の収入認定額から控除されます(実質的には保護費から経費を出したのと同じことになります)。
この経費の中には、自宅から勤務先まで最短距離で算定したガソリン代、小破修理費、車検費用、自賠責保険・任意保険の保険料、自動車税が含まれます(別冊問答集問8-20)。
それ以外の場合
課長通知問第3の12において、他からの援助、他法他施策の活用等により確実にまかなわれる見通しがあることが必要とされています。この点、障害者の方については、維持費が障害者加算(他人介護料を除く)の範囲で賄われる場合は、上記の「等」にあたるとされていて、要件を満たすことができます( 別冊問答集問3-19)。
生活扶助の一時扶助としての移送費( 局長通知第7-2(7)ア)や通院移送費(医療扶助実施要領第3-9(2) イ)での支給を求めることが考えられ、現に支給している自治体もあります。
Q.10 オートバイや原動機付自転車の保有は認められますか?
A 自動車よりも緩和された要件で認められています。
オートバイ及び原動機付自転車の保有については、生活保護手帳別冊問答集の問3-23で規定されています。
それによると、総排気量125ccを超えるオートバイについては自動車の取扱いに準じて考えられることになっています。
一方、総排気量125cc以下のオートバイと原動機付自転車については、以下の4つの要件を満たす場合は生活用品として保有が認められます。生活用品として認められるということは、通勤や通院に限らず使用できるということです。
①当該オートバイ等が現実に最低生活維持のために活用されており、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立助長に実効があがっていると認められること
②保有を認めても当該地域の一般世帯との均衡を失することにならないと認められること
③自動車損害賠償責任保険及び任意保険に加入していること
④保険料を含む維持費についての捻出が可能であると判断されること
①②は通常満たすので、自動車の保有容認要件よりもかなり緩やかに規定されています。
Q.11 どうすれば自動車を持ったまま生活保護を利用できるでしょうか?
A 申立書を作って提出したり、支援団体に相談したりしてください。
現在の運用では、当事者の方が「自動車の保有を認めてほしい」と口頭で交渉してもなかなか認めない自治体が多いと思います。
そのような場合に備え、自動車保有容認を求める申立書のひな形があります。これは、これまで紹介してきた自動車保有を認める場合の要件を一枚の申立書にまとめたものです。
この申立書を申請の際に持参し、それでも自動車の保有を認めないという回答があった場合には、裏表紙にある各地の「生活保護支援ネットワーク」や「生活と健康を守る会」などの支援団体に相談して支援を求めてください。
【申立書ダウンロードURL】
https://note.com/otashin2/n/ne63824d7c800
都道府県別自動車普及率(2014年)グラフはこちら
Q.12 『生活保護制度における自動車保有のあり方』は今後、どのように変わっていくべきですか?
A
あり方1 自治体から国への要望「自動車保有条件の緩和」
全国市長会が国に毎年提出している「国の施策及び予算に関する要望書」の「保健福祉施策に関する要望」では、以下のように自動車保有条件の緩和を要望してきています。
●平成20年度 「自動車保有制限を緩和し、受給者の就労自立に向けた体制を強化すること」
●平成23~25年度 「地理的条件の悪い地域に居住する生活保護受給者が日常生活上の用に供する自動車の保有が可能となるよう制度の改善を図ること」
●平成26~令和2年度 「地理的条件の悪い地域に居住する生活保護受給者が日常生活上の用に供する自動車の保有条件を緩和すること」
あり方2 「生活用品」として自動車保有の容認
では、どのような点の改正が望ましいでしょうか。
まず、自動車保有容認の基準を緩和することです。処分価値が無い場合とある場合で要件を分けて、その要件を満たせば、「生活用品」としての保有を認めるようにすべきです。
処分価値のない自動車
「資産」に当たらないことから維持費(ガソリン代、車検代、任意保険料)の捻出が可能であれば保有を認めるべきです。
処分価値がある自動車
以下の要件を満たせば保有を認めるべきです(この場合、借用(レンタル・リースも含まれます。)も同様の要件で認めることになります)。
①処分価値が乏しい(当該世帯の最低生活費6か月分以下)
②維持費の捻出が可能
③当該地域の自動車普及率が70%以上または、公共交通機関の利用が困難(障害・疾病等のため)
あり方3 自動車維持費の負担方法
もう1つは維持費の負担ができない場合への対応策です。
1つの方法として、社会福祉協議会の福祉資金貸付(現在は障がい者用自動車購入経費は貸付対象となっている)の中に自動車維持費を新設して、福祉事務所が当該世帯の自立更生に資すると認めた場合には当該貸付金を収入認定除外できるようにすることが考えられます。