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 通院移送費の不支給決定の違法性が認められた奈良地裁判決は、奈良市が控訴せず4月11日確定しました。
 原告H氏は判決確定を見届けたうえ、翌12日未明に亡くなりましたが、「本件個別事案についての認定であり、通院方法に関する奈良市の認定方針に影響するものではない」との奈良市のコメントには疑問が残ります。原告弁護団と原告の声明をご覧ください。




[弁護団声明文]


生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書


2018(平成30)年4月12日


声明文


原告H氏代理人弁護士  古川雅朗
         

同       西村香苗
         

同      佐々木育子
         

同       幸田直樹



 生活保護の通院移送費制度のあり方が争われた奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求、国家賠償請求事件については、原告及び被告のいずれからも控訴はなされず、昨日、奈良地方裁判所の判決が確定しました。
 しかし、原告であるH氏は、判決確定を見届けたうえ、昨日未明に亡くなられました。
 私たちとしては、国家賠償請求を全く認めなかった判決には不満もありますが、当事者である原告H氏の体調等にも鑑み、早期の解決及び救済のため、あえて控訴をしないこととしていました。しかし、最終的な救済が間に合わなかったことは大変に残念です。
 今後、H氏の死去を受けて、奈良市が、判決で命じられた通院移送費の支給決定及びその支払をどのように取り扱うかは未だ不明です。しかし、奈良市においては、4月6日の時点でもはや控訴はしないということを対外的にも表明しており、そうであればその時点で速やかに決定及び保護費支払を行っていればよかったのですから、今更決定をしない、支払をしないということは許されないと考えます。

判決確定を受けての発表を準備していたH氏のコメントをここに掲載します。




 判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのかということです。
 奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
 様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を鳴らしてほしいと考えています。
 ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。




 私たちは、本件を受けて、奈良市及びその他の実施機関が、通院移送費制度を生活保護利用者にきちんと周知及び教示することを望みます。この点、奈良市は、奈良地裁判決について、「奈良市の保護費支給の基準ないし方針が誤ったものであるとは認定されておらず、本件はあくまで個別事案についての判断であり、本判決の確定によっても、今後の奈良市の方針変更を要する等保護行政の適正な執行に支障を来すものではなく、かつ過去の別件事案の適法妥当性に影響を与えるものではないことを確認しました」とコメントしていますが、確かに判決の判断はそこまで踏み込んだものでなかったとはいえ、しかし、奈良市のこれまでの通院移送費制度についての態度が法の趣旨に沿ったまっとうなものであったとは、私たちは必ずしも考えておりません。
 したがって、私たちは、H氏の遺志に沿って、引き続き、生活保護利用者及びその支援者と連携して、生活保護行政が真に利用者のためにあるように、改善の取り組みを続けていく所存です。
 最後になりましたが、本件活動を様々な面で支えていただいた奈良及び全国の支援者のみなさんに対し、ひとまず現時点でお礼を申し上げます。ありがとうございました。
以上




[原告声明文]

奈良市通院移送費裁判判決確定にあたって

                                     
2018年4月7日


原告H

 

一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのるかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を慣らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。





 本来医療扶助から支給される通院移送費(交通費)について、奈良市福祉事務所が本人に制度を教示せず、また本人から相談があったにも関わらず生活扶助から費用を捻出するよう指導した事案で、奈良地方裁判所は、2018年3月27日、原告の訴えを認め、処分の取り消しを認めました。

 以下のとおり、原告は判決をふまえて声明を出し、弁護団は奈良市長に控訴をしないよう申し入れました。

 趣旨にご賛同いただける方は、奈良市長に控訴しないよう求めるファックスを送っていただくようお願いいたします。

「要請文」印刷版(PDF) のダウンロードはこちらから click!




[弁護団申入書]


2018(平成30)年4月2日

奈良市長 仲川元庸殿


申入書


原告H氏代理人弁護士  古川雅朗
         

同     西村香苗
         

同    佐々木育子
         

同     幸田直樹



私たちは、奈良市を被告とする奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求事件、国家賠償請求事件における原告H氏の訴訟代理人団として、次のとおり意見を述べます。


奈良市は、本件につき、控訴をするべきではありません。

1 頭書事件についての本年3月27日の奈良地方裁判所の判決では、H氏の通院交通費の平成25年8月以前の遡及分につき、奈良市側がいったんはその支給をすることを表明しながら、後にこれを覆してH氏の申請を却下したことが、「禁反言の法理」の適用によりもはや行政裁量の範囲を逸脱するものとして違法と宣言されました。
 「禁反言の法理」は行政関係にも適用され得る法の一般原則であり、あえていうならば子どもでも自然に理解できる社会の当然のルールです。すなわち、行政たるもの、市民に対していったん行政サービスを提供するとの態度を表明し、何らかの教示等を行ったならば、そのような態度をその後に易々と変えてはならないというのはごく当たり前のことであって、このようなことから、申請却下処分の違法を宣言した奈良地裁判決は、もし控訴審においてこの点が争われたとしても、そうそう覆るとは思われません。

2 更にいえば、私たちは、そもそも、奈良市側が当初に表明した「診療のレセプト等で確認できれば、可能な限り遡及して通院移送費の支給を行う」との考えが、むしろ、行政として正しい態度であったと考えます。
 奈良市側が通院移送費制度に関する周知文書を生活保護利用者に対し配布したのが平成26年10月ころに至ってであったことは、訴訟上も争いがなく、奈良地裁も判決の当然の前提にしています。本来、的確に保護利用者に周知されるべき通院移送費制度について周知を行っていなかったのはこと奈良市側の問題です。保護変更も申請主義とはいうものの、生活保護制度のすべてについて利用者の側に自ら知っているべきこと、調査して把握すべきことを前提に自発的な申請を求めるのは酷であり、むしろ支援する側が困窮している利用者の目線に立って必要・有益と思われる助言を行うのが福祉のケースワークのあり方であろうと思います。この点、奈良地裁判決は、平成22年通知は実施機関が通院移送費制度に関する周知を怠っている限りはそれまでに発生した交通費につきすべて事後申請を認める趣旨であるとの私たちの主張を必ずしも採用しませんでしたが、しかし、平成22年通知の趣旨如何に関わらず、奈良市は、生活保護利用者に対する的確なケースワークができていなかったという誹りを免れないと私たちは考えます。したがって、この点を認め、可能な限り遡及しての移送費支給を行うとした当初の態度こそが、行政としてあるべき態度だったのです。
 つまり、本件は、本来、「最初に誤った教示をしてしまったが、それでも後でそれを撤回・修正してはならない」という事案ではなく、「当初の態度こそが行政としてあるべき態度であったが、形式論に拘泥する余り後に態度を翻したことが違法と断罪された」事案というべきです。奈良地裁判決も、仮に本件が「最初に誤った、本来違法である内容の教示をしてしまったが、それでもいったんこれをしてしまった以上は後でそれを撤回・修正してはならないのか」という事案であれば禁反言の法理の適用を躊躇したと思われますが、そうではなかったということを念押ししておきたいと思います。

3 一方、奈良地裁判決においては、H氏が生活保護受給開始後間もなくからケースワーカーに対し通院に要する交通費の支給如何に関する質問・相談を複数回していたという原告側の主張については、これを奈良市のケースワーカー側がみな否認する供述を行ったということもあり、立証が不十分とされてしまいました。
 しかし、H氏から直接聴き取りをし、事実関係を確認した私たち代理人団は、この主張は紛れもない真実であると確信しています。H氏が本当に正直な、実直な人柄であるゆえに、淡々と、質問・相談の日時等の詳細は特定できない旨供述されたことが立証不十分との評価を受けました。しかし、高齢・持病ありゆえに頻繁に通院治療を受けておりしたがって交通費の負担も重かったと思われるH氏が、ただでさえ十分でない生活扶助費からこれを支出することに苦労し、困ったであろうことは、想像に全く難くないところです。H氏は、転居の際の敷金や、眼鏡の購入費用については保護費として支給されないのかとケースワーカーに尋ねていたことはケース記録票にも記載されていますから、通院の際の交通費についても、同様に尋ねたと考える方が全く自然です。他方で、奈良市側の担当ケースワーカーの通院移送費制度に関する知識・理解が本来の制度のあり方に比べて全く不十分・不正確・誤りであったことは、本件訴訟において行われた各ケースワーカーに対する証人尋問結果からも明らかであり(多くの傍聴者は一様にこの点について義憤や失望を感じたとのことです。)、そのようなケースワーカーが、H氏からの質問・相談に対し的確な対応をしなかったであろうことも、ほぼ間違いないものと考えます。
 奈良市においては、訴訟上の勝訴・敗訴という結論如何に関わらず、このことを真摯に受け止めていただきたいと思います。

4 これに関連して、証拠保全申立に関する大阪高裁決定(大阪高等裁判所平成28年(行ス)第103号)において指摘された「開示されたケース記録票の不自然さ」の問題についても、目を背けないでいただきたい。
 真実は私たちにはわかりませんが、H氏がケースワーカーに対し通院交通費に関する相談をしたはずの時期のみ全く記載がないとされるケース記録票は、大阪高裁決定も「ケース記録にこのような長期間の空白があることは、その間に7日間の入院があることを併せ考えれば、余りに不自然といわなければならない」と述べるとおり、やはり不自然としかいえません。
 昨今様々なところで問題が発覚しているような公文書の改ざんや抜取りが奈良市にもあったとは想像したくありませんが、爾後、そのような疑念を抱かせることのないよう、ケース記録票には通しページ・番号を付すなどの改善策を直ちにとるべきです。

5 判決は保護費の支払を義務付けるものであったために、控訴如何は厚生労働省との協議が必要である、ということなのかもしれません。
 しかし、仮にそうであれば、奈良市においては、厚生労働省に対し、控訴を断念すべきである旨主張するとともに、むしろ、本件訴訟を機に、改めて、各実施機関に対し、通院のために合理的に必要な交通費については移送費の支給が可能であること、そのことを実施機関は生活保護利用者に対し一般的に周知し、かつ、個別的に教示すべきこと、逆に「原則的には生活扶助費から捻出すべきものである」とか「一定額を超えない限り支給されない」とかいった誤った教示を行うべきでないことを通知して徹底周知し、「現場」の混乱を招かないようにすべきことを進言すべきです。
 私たちは、前述のとおり、奈良市においてケースワーカーを担当された職員たちが、不十分・不正確・誤った知識によりH氏に対し苦痛を与えたであろうことを厳しく批判しつつも、個々の職員についての人格非難まで行いたくはありません。根本的には、通院移送費制度に関する厚生労働省のスタンスが「現場」からわかりにくい、あるいは、支給について抑制的であるようにみえる、といったことが問題なのだろうとも考えています。仮にそうであれば、奈良市は、本件を機に、過ちを真摯に振り返ってこれを正すとともに、生活保護行政全体のあり方を改める先頭を走っていただきたい。

6 最後に、H氏は、現在、重篤な疾病により生命の危機にありながらも、「生活保護行政が利用者のためにあってほしい」との思いのもとに、当事者として訴訟を遂行してこられました。保護受給中に通院移送費の支給がなされないばかりに通院治療の受け控えもしたことと、現在の病状の因果関係の有無はわからないにしても、いずれにせよ、市民が命を賭して「正しいこと、あるべきこと」を追及していることに対し、かたちばかりの控訴をして救済を先延ばしにするような、あるいは救済を与えないような不誠実で応えるべきではありません。H氏が存命の間に適切な救済がなされることが当然であり、是非とも必要です。
したがって、私たちは、本件につき、奈良市が控訴しないことを求めます。
以上




[原告声明文]

奈良市通院移送費裁判判決にあたって

                                     
2018年3月22日


原告H
 

一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。



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生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケース。
国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める福島地裁の判決について福島市が控訴を断念したため、本日、原告勝訴の判決が確定しました。

福島市に「控訴するな」の声を寄せた全国の皆さまに感謝するとともに、今後の取り組みの決意を表明する声明を、原告弁護団が発表しました。

声明にも触れられているとおり、今後、福島市には、原告に対する真摯な謝罪と、保護行政全般の運用改善に向けた取り組みが求められています。




福島市奨学金収入認定事件の判決確定を受けての声明


2018年1月31日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


 去る1月16日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。この判決について,被告福島市福祉事務所長は,控訴期限である1月30日までに控訴をしなかったことから,本判決は確定し,本件訴訟は終了した。
 本判決の後,原告本人や原告の支援者をはじめ,全国の心ある市民から,福島市に対し,「本判決を真摯に受け止め,控訴をしないでほしい」との申入れなどが多数寄せられた。こうした全国からの声は,福島市が本判決について控訴しないという態度を決定する上で,大きな力となった。私たち弁護団は,全国の皆さんからのご支援ご協力に心から感謝の意を表明する。
 しかし,本件は,福島市が控訴せず本判決により命じられた慰謝料を支払っただけで完全解決に至ったという評価をすることはできない。様々な困難を乗り越えて本件訴訟を提起してたたかってきた原告らの真の思いは,福島市が本件処分の誤りを自ら認め謝罪するとともに,このような誤りが二度と生じないよう,生活保護の運用等の改善を図ってほしいという点にある。福島市は,違法な処分を行った行政庁として,また要保護者に対し最低生活の保障と自立助長に向けた支援を行うべき生活保護実施機関として,本判決確定を機に,これらの原告らの思いに真摯に向き合うことが求められている。
 各種報道によると,福島市長は,本判決を受けて「裁判の結果を,重く受け止めております。生活保護は,生活に困窮する方々の最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としております。本件の訴えは,この点への配慮に欠けていたことが原因であると考えております。生活保護法,実施要領等を遵守した支援につながるよう,研修を充実させるなど努めて参ります」旨のコメントを発表したとのことである。こうしたコメントに見られる福島市長の姿勢は,本判決について控訴しないという福島市の態度にも反映していると考えられ,私たち弁護団は,このような福島市長の姿勢を前向きなものと評価し,このコメントの内容を着実に実行することを求める。
 その第一歩は,本件への真摯な反省の上に立ち,原告らに対して謝罪するとともに,原告らとの話し合いのテーブルにつき,今後の運用改善などについて,原告らの意見に真剣に耳を傾けることである。
 原告ら及び原告団は,本件について,福島市との対話による完全解決を目指していくことを表明し,完全解決に向け,福島市民をはじめ,全国の皆さんの引き続きのご支援をお願いするものである。

以上



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福島市の生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケースで、1月16日、福島地裁が、国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める、原告勝訴の判決を言い渡しました。

奨学金の収入認定に関する厚生労働省通知の改善や、生活保護世帯の子どもの大学進学問題の社会問題化の切っ掛けともなったこの事件で、当たり前とはいえ、当事者の方の精神的苦痛を認める国賠判決が出たことには大きな意味があります。

福島市が控訴して、これ以上母子につらい思いをさせることのないよう、福島市に対して、「控訴するな!」の声を寄せていただければと思います。

<福島市HP「福島市へのご意見」>
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/skyodo-kocho/shise/kocho/300.html





福島市奨学金収入認定事件の判決を受けての声明


2018年1月16日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


  本日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。

1 福島市福祉事務所長の処分の違法性及び過失
 本判決は,給付型奨学金は自立更生のための恵与金(次官通知第8の3の⑶のエ)に該当し,給付型奨学金が保護費で賄うことができない費用等に使用されることを確認すれば収入認定除外されるということを前提に,次のとおり,違法性及び過失を認めた。

(1)保護費で賄えない就学費用が現実に発生した場合には,生活費に不足する結果となることが十分にありえるのであるから,給付型奨学金を収入認定することについては慎重な態度で臨むべきである。

(2)保護の実施機関としては,給付型奨学金の収入認定除外を検討することなく収入認定をした場合には,生活扶助費を割り込むおそれがあることに照らすと,被保護者に対して適切に助言するとともに,自ら調査すべき義務があった。

(3)被告福祉事務所は,本件各奨学金について収入認定除外の対象となるか否かの検討を行わず,したがって,原告Aから提出された自立更生計画書や添付資料の検討をせずに,除外認定に当たって必要な資料の追加提出等の指示もしないままに,本件各処分を行ったものであって,公務員に与えられた裁量権を逸脱したものということができ,本件各処分はいずれも国家賠償法1条1項にいう違法がある。
 本判決は,生活保護法等に照らし処分が法的に違法であることを認めており,行政による違法な運用を是正し,生存権をよりよく保障しようとするものであるとともに,子どもの積極的な学びの機会を保障し子どもの貧困をなくすという観点から極めて当然かつまっとうな司法的な判断であると評価できる。福島市のみならずすべての自治体において本判決を真摯に受け止め,給付型奨学金を一方的に収入認定することがないよう求める。

2 原告らが受けた損害
 本判決は,事後的に奨学金相当額を追加支給したために損害は発生していないとの福島市の主張を排斥し,次の要素に着目して,原告親子にそれぞれ5万円(計10万円)の損害の発生を認めた。

(1)奨学金が収入と認定され,生活保護費が減額されたとしても,高等学校への通学を継続しなければならないから,その結果,生活費をきりつめて困窮した生活を送らなければならなくなる。このようなことから,事後調整や追加支給は合理性がない。

(2)実際にきりつめた生活を余儀なくされ,高校就学を経済的に支えることができなくなるかもしれない母親の深刻な不安,努力して奨学金を獲得したにもかかわらず,これを事実上没収されたことにより,自らの努力を否定されるような経験をした子どもの精神的苦痛を認定し,賠償に値する損害が現に生じたことを認めた。
 通常,経済的な損害が補填されれば精神的な苦痛はないとみる裁判例が多い中,本判決は,生活保護世帯の母親と子どものそれぞれの精神的苦痛に踏み込んで損害の発生を認めたもので,その点は高く評価できる。

3 最後に
 原告ら,支援者及び弁護団は,福島市を含む自治体において本件と同様に奨学金を奪われるという事件が再び起こらないことを願い,闘いを継続してきた。本判決を受け,我々は次の事項を求める。

(1)子どもの貧困対策の観点から,そもそも奨学金は収入認定の対象とすべきではない。訴訟において原告らが提出した末冨芳氏の意見書にも,自立更生計画の弊害が言及されている。それにもかかわらず,その点を適法として十分な検討をしていない本判決には不十分な点がある。
 奨学金の充実・拡充が検討され,実現されようとしている現在,かかる取り扱いは,法の趣旨・政府の方針とそぐわない。我々は,厚生労働省に対し,早急に生活保護実施要領を見直し,奨学金を収入認定の対象から除外するよう求める。

(2)また,福島市を含むすべての生活保護実施機関に対し,生活保護世帯の子どもが奨学金を学びのために有効かつ適時に使用することができるよう,生活保護法が掲げる自立助長の観点から適法な運用をするよう求める。

以上



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東北生活保護利用支援ネットワークが自治体HPの調査を実施しました。



自治体ホームページ調査結果概要

平成29年10月25日
東北生活保護利用支援ネットワーク


 東北生活保護利用支援ネットワークでは、今年度、東北地方の各自治体(県を含む。)のホームページに生活保護制度の説明が掲載されているかを調べた。そのきっかけとなったのは、「『生活保護なめんな』ジャンパー問題」で話題になった小田原市のホームページに、生活保護制度の説明に関して問題のある記載が見られたことである。同様の記載が無いか、東北地方の自治体のホームページを見ていったところ、そもそもホームページが無い自治体が散見されたため、まずはホームページの有無について調査を行うこととした。
 独自調査の結果、生活保護制度の情報が掲載されていないことを確認した自治体には、今後そのようなページを作成する予定があるか否かを尋ねるアンケート調査を実施した。

1 生活保護制度を説明したページのある自治体の数
  青森県 41自治体中22自治体(53.7%)
  岩手県 34自治体中21自治体(61.7%)
  秋田県 26自治体中18自治体(69.2%)
  宮城県 36自治体中23自治体(63.9%)
  山形県 36自治体中16自治体(44.4%)
  福島県 60自治体中17自治体(28.3%)
  全体  233自治体中117自治体(50.2%)

2 講評
(1)生活保護制度を説明するページの有無

◯県によって大きなバラツキがあった。秋田県で多いのは、生活保護についての運動団体が強いことも影響していると思われる。

◯福島市は、県庁所在地では唯一、生活保護制度の説明ページを持っていなかった(同市は、給付型奨学金を収入認定するという誤った運用を行い、厚労省から処分取消裁決を受けた自治体でもある)。

◯町村ではホームページを持っていない自治体が多かった。ただ、その理由として、生活保護を実施する責任が県にあるためとの回答が複数見られた。しかし、生活保護制度の相談は、町村が第1次的には受けることになっている。町村のホームページに記載が無いとすれば、どこに相談に行って良いかの情報を、住民が得られないことになる。

◯今回は掲載内容を問う調査ではないが、極めて簡素な説明に留まるページも多く、また、内容的にも問題のあるもの(扶養義務を強調するもの等)もあり、今後は内容面の調査も必要と思われる。



(2)生活保護制度を説明するページを作成する予定の有無

◯「有り」や「検討中」という回答が多かったが、「無し」という回答も少なくなかった。しかし、生活保護という重要な制度の情報を、ホームページに載せないことは望ましくない。

◯今回の調査を受けて、ホームページに生活保護制度の説明をするページを作ったとの回答も複数あり、その重要性を受け止めてもらえたことは良かったと考える。





[調査結果]
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青森県 岩手県  秋田県 宮城県 山形県  福島県





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