
コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るzoom学習会:第1回「コロナに負けない労働相談~休業補償と解雇・雇止め」
緊急事態宣言は解除されましたが、休業期間中の補償が未だ十分になされてなかったり、「パートはシフトを減らしただけだから休業手当の対象にならない」と言われたり、最悪の場合は休業期間終了と同時に解雇や雇止めを通告されたり…と、深刻な労働者の声が寄せられています。
今回は、労働問題にスポットを当てて、非正規労働者がコロナ禍を乗り越えていくためにはどうすればいいかを考えます。
■開催日時
7月11日(土)午前10時30分~12時
■参加費:1000円
以下の口座にお振り込み下さい。
京都銀行 尼崎支店
普通 30994
全国クレサラ・生活再建問題対策協議会
※なるべく事前にお振り込み下さい。
※振込人の名義の冒頭に「0711」をつけて下さい(つけられなかったらお名前でお振り込み下さい)
■プログラム
10:30~11:00 非正規労働者の失業補償 弁護士 中村和雄
11:00~11:30 解雇・雇止めへの対処法 弁護士 村田浩治
11:30~12:00 質疑応答 (進行 弁護士 小野順子)
■主催:全国クレサラ・生活再建問題対策協議会/非正規労働者の権利実現全国会議
コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る なんでも電話相談会実行委員会は、4月18日19日に開催した相談会の結果を受けて、賛同団体23団体とともに、本日4月23日、国に対して、緊急要請書を提出しました。
当会も、賛同団体の1つです。
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内閣総理大臣 安倍晋三 殿
厚生労働大臣 加藤信勝 殿
内閣府特命担当大臣(経済財政) 西村康稔 殿
財務大臣兼内閣府特命担当大臣(金融) 麻生太郎 殿
私たちは、全国39の諸団体、弁護士、司法書士、社会福祉士等のソーシャルワーカー、労働組合・支援団体関係者で臨時に結成した実行委員会です。
去る4月18日(土)・19日(日)の午前10時から午後10時まで(両日とも)開催した電話相談会には、全ての会場において開始から終了まで途切れることなく電話が鳴り続け、総件数は5009件に達しました。
今回の相談では、自営業(582件)と個人事業主・フリーランス(462件)の方々からの相談が特に多かったのが特徴的でしたが、パート・アルバイト(317件)、派遣(139件)、契約社員(103件)、正社員(216件)と全ての働く人々から、“呻き声”ともいえる悲痛な声が寄せられました。
共通するのは、「外出自粛・休業要請で仕事と収入が途絶え、今月又は来月の家賃(自宅・店舗)やローン(住宅・事業)が支払えない。生活費も底をつく」という“崖っぷち”の切迫した相談でした。相談種別では、生活費問題(2723件)が突出して高く、労働問題(669件)、健康問題(257件)、住宅問題(234件)と続くことにもそれが表れています。
これは、生活や事業の維持のための「補償」が全くなされないまま、外出・業務の自粛要請だけがなされていることの当然の帰結です。外出自粛・休業要請をするのであれば、「借金」が残るだけの融資や貸付ではなく、安心して休める「補償」(現金給付)がセットで行われるべきです。
さもなければ、数か月で大量の働く人たちが失業・廃業に追い込まれて生活の基盤を失い、“呻き声”は“阿鼻叫喚”に変わるでしょう。それは人々の尊厳と地域社会を破壊し、取り返しのつかない被害を日本社会にもたらすことを私たちは危惧します。
必要なことは、①とにかく一刻も早く、②直接当事者に対し、③自宅や店舗を維持確保し、生活を支えるための現金給付を、④単発ではなく感染拡大が収束するまで継続的に行うこと、⑤当面の生活を圧迫する納税や債務の弁済につき一時的にその支払いから解放することです。私たちは、かかる観点から、緊急事態宣言中及び終了後一定期間の間,以下のとおり、特別の措置を講じるよう、緊急に要望致します。
1 広報・相談体制の拡充と手続の簡略化による迅速な救済を
① 政府広報やマスコミ等を通じての情報提供を徹底し、外国人にも情報が行きわたるよう多言語での情報発信を行うこと
② 各種相談窓口(雇用、生活保護、生活困窮、社会福祉協議会等)の人員体制の強化と待遇(賃金、特別手当、感染防止策等)を改善し、「相談崩壊」を防止すること
③ 迅速な決定と感染拡大防止のため、オンライン申請の導入、調査事項・提出書類の簡素化等によって、各種の手続(生活保護、雇用保険求職者給付、各種貸付、臨時の給付金等)をできる限り簡略化すること
2 自営業者・フリーランス等の業務と生活基盤の確保を
① 新型コロナウイルスの影響による自営業者・フリーランス等に対する安易な契約解除・打ち切りを規制すること
② 「持続化給付金」について、より具体的な制度設計を直ちに明らかにし、申請の殺到に備えた体制を整えて速やかに支給すること
③ 少なくとも店舗の家賃、光熱費基本料金等業務基盤の維持に不可欠な経費を継続的に給付すること(仮称「店舗等確保給付金」の創設)
④ 自営業者・フリーランス等についても、3で述べるのと同等の雇用保険の求職者給付(いわゆる失業手当)を受給できる特例措置を講じること
⑤ 休業「要請」によって休業を余儀なくされた自営業者等に対し、不十分な額の感染拡大防止「協力金」だけでなく、発生した損失を国の責任で補償すべきであり、損失補償の方針を明らかにしないまま、「協力」しないことを理由に、事業者名を公表するなどの方法で社会的制裁を加えてはならないこと
3 正社員・契約社員・パート等の職場と生活基盤の確保を
① 新型コロナウイルスの影響による安易な解雇・雇止めを規制すること
② 新型コロナウイルスの影響による減収の場合は、外国人労働者を含め、6カ月の被保険者期間がなくても雇用保険の求職者給付を受給できる特例措置を講じること
③ 「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」25条の「雇用保険法による求職者給付の支給に関する特例」を活用又は準用して、事業者が休業した場合に、雇用者が実際には離職していなくても失業しているものとみなすことにより、雇用者が求職者給付を受給できるようにすること
④ 新型コロナウイルスの影響による「自己都合退職」について、3カ月の待期期間なく求職者給付を受給できるようにすること
⑤ もともと低賃金であったため通常の求職者給付の金額で生活できない者に対しては、平均賃金の最大10割の給付を受けられるよう特例措置を講じること
⑥ 求職者給付の給付日数を大幅に増やす特例措置を講じること
4 債務・税金等の支払い負担からの一時的解放を
① 銀行等の金融機関に対する住宅ローン・事業者ローン・カードローン等の各種借入れ債務の支払いを猶予し、利息・遅延損害金の発生を止めること
② 個人再生手続における再生計画に基づく返済期間の進行を停止すること
③ 国税、地方税、社会保険料を問わず、法定期限の到来の前後を問わず、延滞税を免除した上で納税を猶予する制度を創設すること
④ 明らかに資産の余裕がある案件を除いては、滞納処分に基づく差押を差し控えること
⑤ 納税者からの各種申出に対し、これまで以上に生活・事業の維持により一層配慮した丁寧な聞き取りをすること
5 生活の基盤である住まいの確保を
① 住居確保給付金の「求職の申込み・求職活動」要件を完全に撤廃し、失業に至っていない者、自営業者・フリーランス等も利用できることを明確にすること
② 住居確保給付金の支給額の上限を撤廃し家賃の実額を支給すること
③ 家賃滞納を理由とする賃貸借契約の解除及び立退き要請を規制すること
④ 住居喪失者に対し、災害救助法における「みなし仮設住宅」制度を参考に、公的住宅(公営・UR・公社)の空き室、行政が借り上げた民間住宅の空き家・空き室を無償提供すること
6 生活保護の適用要件の緩和による生活の保障を
① 生活保護に対する誤解や偏見を払拭するための広報を行うこと
② 緊急性のある案件では数日で保護開始決定をすること
③ 預貯金等の資産は最低生活費の3カ月分まで保有を認めること(現在は1カ月分)
④ 自動車の保有を認めること
⑤ 開始時の資産調査は自己申告を前提とし簡略化すること(事後に虚偽が判明した場合に生活保護法63条・78条による返還請求を行うことで対応)
⑥ 本人聞き取りによって「扶養義務を履行することが明らかに期待できる者」以外の扶養義務者に対する扶養照会を行わないこと
⑦ 住宅扶助の上限を撤廃し、家賃の実額を支給すること
⑧ 生活保護の準用を認める外国人の在留資格について、オーバーステイ等も対象とする要件緩和を行うこと
7 すべての人に対し速やかに10万円の「特別定額給付金(仮称)」の支給を
① 申請を待つことなく、マスクと同様、現金書留等の方法で直ちに一律支給した上で、一定収入以上の高額所得者については、年末調整等により給付後に返還を受けるなどの方法により調整すること
② 定額給付金に準じて生活保護の収入認定除外をする処理基準を設定すること
③ 受給権者は、世帯主ではなく、個人の尊厳を尊重し、個々人とすること
④ 住民票所在地に居住していないDV被害者・長期入院患者・ホームレス生活者・受刑者等にも支給できる体制を構築すること。特に、ホームレス生活者については、自治体が把握している場合は、自治体の責任において支給するとともに、市民・市民団体が把握している場合は、行政と市民・市民団体が協力して、支給を受けられるようにすること
⑤ 求職者給付等の他の所得補償制度が整備されるまでは、随時、追加支給すること
8 連休中の行政による支援体制の強化を
5月4日から同月6日の連休中においても、生活保護、生活困窮、各種給付・貸付等の窓口を閉ざすことなく通常対応をおこなうこと
以 上
【賛同団体】
新型コロナ災害緊急アクション
あじいる/蒲田・大森野宿者夜回りの会(蒲田パト)/官製ワーキングプア研究会/共同連/くらしサポート・ウィズ/寿医療班/コロナ災害対策自治体議員の会/自立生活サポートセンターもやい/奨学金問題対策全国会議/住まいの貧困に取り組むネットワーク/首都圏青年ユニオン/女性ユニオン東京/生活保護問題対策全国会議/滞納処分対策全国会議/地域から生活保障を実現する自治体議員ネットワーク「ローカルセーフティネットワーク」/つくろい東京ファンド/「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会/労働組合「全労働」/非正規労働者の権利実現全国会議/反貧困ネットワーク/避難の協同センター/POSSE/公正な税制を求める市民連絡会
当会も、賛同団体の1つです。
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内閣総理大臣 安倍晋三 殿
厚生労働大臣 加藤信勝 殿
内閣府特命担当大臣(経済財政) 西村康稔 殿
財務大臣兼内閣府特命担当大臣(金融) 麻生太郎 殿
緊急要望書
~国は、自営業者・フリーランス・働く人々の“呻き声”を聴け!~
~国は、自営業者・フリーランス・働く人々の“呻き声”を聴け!~
2020(令和2)年4月23日
コロナ災害を乗り越える
いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 実行委員会
コロナ災害を乗り越える
いのちとくらしを守る なんでも電話相談会 実行委員会
私たちは、全国39の諸団体、弁護士、司法書士、社会福祉士等のソーシャルワーカー、労働組合・支援団体関係者で臨時に結成した実行委員会です。
去る4月18日(土)・19日(日)の午前10時から午後10時まで(両日とも)開催した電話相談会には、全ての会場において開始から終了まで途切れることなく電話が鳴り続け、総件数は5009件に達しました。
今回の相談では、自営業(582件)と個人事業主・フリーランス(462件)の方々からの相談が特に多かったのが特徴的でしたが、パート・アルバイト(317件)、派遣(139件)、契約社員(103件)、正社員(216件)と全ての働く人々から、“呻き声”ともいえる悲痛な声が寄せられました。
共通するのは、「外出自粛・休業要請で仕事と収入が途絶え、今月又は来月の家賃(自宅・店舗)やローン(住宅・事業)が支払えない。生活費も底をつく」という“崖っぷち”の切迫した相談でした。相談種別では、生活費問題(2723件)が突出して高く、労働問題(669件)、健康問題(257件)、住宅問題(234件)と続くことにもそれが表れています。
これは、生活や事業の維持のための「補償」が全くなされないまま、外出・業務の自粛要請だけがなされていることの当然の帰結です。外出自粛・休業要請をするのであれば、「借金」が残るだけの融資や貸付ではなく、安心して休める「補償」(現金給付)がセットで行われるべきです。
さもなければ、数か月で大量の働く人たちが失業・廃業に追い込まれて生活の基盤を失い、“呻き声”は“阿鼻叫喚”に変わるでしょう。それは人々の尊厳と地域社会を破壊し、取り返しのつかない被害を日本社会にもたらすことを私たちは危惧します。
必要なことは、①とにかく一刻も早く、②直接当事者に対し、③自宅や店舗を維持確保し、生活を支えるための現金給付を、④単発ではなく感染拡大が収束するまで継続的に行うこと、⑤当面の生活を圧迫する納税や債務の弁済につき一時的にその支払いから解放することです。私たちは、かかる観点から、緊急事態宣言中及び終了後一定期間の間,以下のとおり、特別の措置を講じるよう、緊急に要望致します。
1 広報・相談体制の拡充と手続の簡略化による迅速な救済を
① 政府広報やマスコミ等を通じての情報提供を徹底し、外国人にも情報が行きわたるよう多言語での情報発信を行うこと
② 各種相談窓口(雇用、生活保護、生活困窮、社会福祉協議会等)の人員体制の強化と待遇(賃金、特別手当、感染防止策等)を改善し、「相談崩壊」を防止すること
③ 迅速な決定と感染拡大防止のため、オンライン申請の導入、調査事項・提出書類の簡素化等によって、各種の手続(生活保護、雇用保険求職者給付、各種貸付、臨時の給付金等)をできる限り簡略化すること
2 自営業者・フリーランス等の業務と生活基盤の確保を
① 新型コロナウイルスの影響による自営業者・フリーランス等に対する安易な契約解除・打ち切りを規制すること
② 「持続化給付金」について、より具体的な制度設計を直ちに明らかにし、申請の殺到に備えた体制を整えて速やかに支給すること
③ 少なくとも店舗の家賃、光熱費基本料金等業務基盤の維持に不可欠な経費を継続的に給付すること(仮称「店舗等確保給付金」の創設)
④ 自営業者・フリーランス等についても、3で述べるのと同等の雇用保険の求職者給付(いわゆる失業手当)を受給できる特例措置を講じること
⑤ 休業「要請」によって休業を余儀なくされた自営業者等に対し、不十分な額の感染拡大防止「協力金」だけでなく、発生した損失を国の責任で補償すべきであり、損失補償の方針を明らかにしないまま、「協力」しないことを理由に、事業者名を公表するなどの方法で社会的制裁を加えてはならないこと
3 正社員・契約社員・パート等の職場と生活基盤の確保を
① 新型コロナウイルスの影響による安易な解雇・雇止めを規制すること
② 新型コロナウイルスの影響による減収の場合は、外国人労働者を含め、6カ月の被保険者期間がなくても雇用保険の求職者給付を受給できる特例措置を講じること
③ 「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」25条の「雇用保険法による求職者給付の支給に関する特例」を活用又は準用して、事業者が休業した場合に、雇用者が実際には離職していなくても失業しているものとみなすことにより、雇用者が求職者給付を受給できるようにすること
④ 新型コロナウイルスの影響による「自己都合退職」について、3カ月の待期期間なく求職者給付を受給できるようにすること
⑤ もともと低賃金であったため通常の求職者給付の金額で生活できない者に対しては、平均賃金の最大10割の給付を受けられるよう特例措置を講じること
⑥ 求職者給付の給付日数を大幅に増やす特例措置を講じること
4 債務・税金等の支払い負担からの一時的解放を
① 銀行等の金融機関に対する住宅ローン・事業者ローン・カードローン等の各種借入れ債務の支払いを猶予し、利息・遅延損害金の発生を止めること
② 個人再生手続における再生計画に基づく返済期間の進行を停止すること
③ 国税、地方税、社会保険料を問わず、法定期限の到来の前後を問わず、延滞税を免除した上で納税を猶予する制度を創設すること
④ 明らかに資産の余裕がある案件を除いては、滞納処分に基づく差押を差し控えること
⑤ 納税者からの各種申出に対し、これまで以上に生活・事業の維持により一層配慮した丁寧な聞き取りをすること
5 生活の基盤である住まいの確保を
① 住居確保給付金の「求職の申込み・求職活動」要件を完全に撤廃し、失業に至っていない者、自営業者・フリーランス等も利用できることを明確にすること
② 住居確保給付金の支給額の上限を撤廃し家賃の実額を支給すること
③ 家賃滞納を理由とする賃貸借契約の解除及び立退き要請を規制すること
④ 住居喪失者に対し、災害救助法における「みなし仮設住宅」制度を参考に、公的住宅(公営・UR・公社)の空き室、行政が借り上げた民間住宅の空き家・空き室を無償提供すること
6 生活保護の適用要件の緩和による生活の保障を
① 生活保護に対する誤解や偏見を払拭するための広報を行うこと
② 緊急性のある案件では数日で保護開始決定をすること
③ 預貯金等の資産は最低生活費の3カ月分まで保有を認めること(現在は1カ月分)
④ 自動車の保有を認めること
⑤ 開始時の資産調査は自己申告を前提とし簡略化すること(事後に虚偽が判明した場合に生活保護法63条・78条による返還請求を行うことで対応)
⑥ 本人聞き取りによって「扶養義務を履行することが明らかに期待できる者」以外の扶養義務者に対する扶養照会を行わないこと
⑦ 住宅扶助の上限を撤廃し、家賃の実額を支給すること
⑧ 生活保護の準用を認める外国人の在留資格について、オーバーステイ等も対象とする要件緩和を行うこと
7 すべての人に対し速やかに10万円の「特別定額給付金(仮称)」の支給を
① 申請を待つことなく、マスクと同様、現金書留等の方法で直ちに一律支給した上で、一定収入以上の高額所得者については、年末調整等により給付後に返還を受けるなどの方法により調整すること
② 定額給付金に準じて生活保護の収入認定除外をする処理基準を設定すること
③ 受給権者は、世帯主ではなく、個人の尊厳を尊重し、個々人とすること
④ 住民票所在地に居住していないDV被害者・長期入院患者・ホームレス生活者・受刑者等にも支給できる体制を構築すること。特に、ホームレス生活者については、自治体が把握している場合は、自治体の責任において支給するとともに、市民・市民団体が把握している場合は、行政と市民・市民団体が協力して、支給を受けられるようにすること
⑤ 求職者給付等の他の所得補償制度が整備されるまでは、随時、追加支給すること
8 連休中の行政による支援体制の強化を
5月4日から同月6日の連休中においても、生活保護、生活困窮、各種給付・貸付等の窓口を閉ざすことなく通常対応をおこなうこと
以 上
【賛同団体】
新型コロナ災害緊急アクション
あじいる/蒲田・大森野宿者夜回りの会(蒲田パト)/官製ワーキングプア研究会/共同連/くらしサポート・ウィズ/寿医療班/コロナ災害対策自治体議員の会/自立生活サポートセンターもやい/奨学金問題対策全国会議/住まいの貧困に取り組むネットワーク/首都圏青年ユニオン/女性ユニオン東京/生活保護問題対策全国会議/滞納処分対策全国会議/地域から生活保障を実現する自治体議員ネットワーク「ローカルセーフティネットワーク」/つくろい東京ファンド/「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会/労働組合「全労働」/非正規労働者の権利実現全国会議/反貧困ネットワーク/避難の協同センター/POSSE/公正な税制を求める市民連絡会
通院移送費の不支給決定の違法性が認められた奈良地裁判決は、奈良市が控訴せず4月11日確定しました。
原告H氏は判決確定を見届けたうえ、翌12日未明に亡くなりましたが、「本件個別事案についての認定であり、通院方法に関する奈良市の認定方針に影響するものではない」との奈良市のコメントには疑問が残ります。原告弁護団と原告の声明をご覧ください。
[弁護団声明文]
生活保護の通院移送費制度のあり方が争われた奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求、国家賠償請求事件については、原告及び被告のいずれからも控訴はなされず、昨日、奈良地方裁判所の判決が確定しました。
しかし、原告であるH氏は、判決確定を見届けたうえ、昨日未明に亡くなられました。
私たちとしては、国家賠償請求を全く認めなかった判決には不満もありますが、当事者である原告H氏の体調等にも鑑み、早期の解決及び救済のため、あえて控訴をしないこととしていました。しかし、最終的な救済が間に合わなかったことは大変に残念です。
今後、H氏の死去を受けて、奈良市が、判決で命じられた通院移送費の支給決定及びその支払をどのように取り扱うかは未だ不明です。しかし、奈良市においては、4月6日の時点でもはや控訴はしないということを対外的にも表明しており、そうであればその時点で速やかに決定及び保護費支払を行っていればよかったのですから、今更決定をしない、支払をしないということは許されないと考えます。
判決確定を受けての発表を準備していたH氏のコメントをここに掲載します。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を鳴らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
私たちは、本件を受けて、奈良市及びその他の実施機関が、通院移送費制度を生活保護利用者にきちんと周知及び教示することを望みます。この点、奈良市は、奈良地裁判決について、「奈良市の保護費支給の基準ないし方針が誤ったものであるとは認定されておらず、本件はあくまで個別事案についての判断であり、本判決の確定によっても、今後の奈良市の方針変更を要する等保護行政の適正な執行に支障を来すものではなく、かつ過去の別件事案の適法妥当性に影響を与えるものではないことを確認しました」とコメントしていますが、確かに判決の判断はそこまで踏み込んだものでなかったとはいえ、しかし、奈良市のこれまでの通院移送費制度についての態度が法の趣旨に沿ったまっとうなものであったとは、私たちは必ずしも考えておりません。
したがって、私たちは、H氏の遺志に沿って、引き続き、生活保護利用者及びその支援者と連携して、生活保護行政が真に利用者のためにあるように、改善の取り組みを続けていく所存です。
最後になりましたが、本件活動を様々な面で支えていただいた奈良及び全国の支援者のみなさんに対し、ひとまず現時点でお礼を申し上げます。ありがとうございました。
[原告声明文]
一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのるかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を慣らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
原告H氏は判決確定を見届けたうえ、翌12日未明に亡くなりましたが、「本件個別事案についての認定であり、通院方法に関する奈良市の認定方針に影響するものではない」との奈良市のコメントには疑問が残ります。原告弁護団と原告の声明をご覧ください。
[弁護団声明文]
生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書
2018(平成30)年4月12日
声明文
原告H氏代理人弁護士 古川雅朗
同 西村香苗
同 佐々木育子
同 幸田直樹
記
生活保護の通院移送費制度のあり方が争われた奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求、国家賠償請求事件については、原告及び被告のいずれからも控訴はなされず、昨日、奈良地方裁判所の判決が確定しました。
しかし、原告であるH氏は、判決確定を見届けたうえ、昨日未明に亡くなられました。
私たちとしては、国家賠償請求を全く認めなかった判決には不満もありますが、当事者である原告H氏の体調等にも鑑み、早期の解決及び救済のため、あえて控訴をしないこととしていました。しかし、最終的な救済が間に合わなかったことは大変に残念です。
今後、H氏の死去を受けて、奈良市が、判決で命じられた通院移送費の支給決定及びその支払をどのように取り扱うかは未だ不明です。しかし、奈良市においては、4月6日の時点でもはや控訴はしないということを対外的にも表明しており、そうであればその時点で速やかに決定及び保護費支払を行っていればよかったのですから、今更決定をしない、支払をしないということは許されないと考えます。
判決確定を受けての発表を準備していたH氏のコメントをここに掲載します。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を鳴らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
私たちは、本件を受けて、奈良市及びその他の実施機関が、通院移送費制度を生活保護利用者にきちんと周知及び教示することを望みます。この点、奈良市は、奈良地裁判決について、「奈良市の保護費支給の基準ないし方針が誤ったものであるとは認定されておらず、本件はあくまで個別事案についての判断であり、本判決の確定によっても、今後の奈良市の方針変更を要する等保護行政の適正な執行に支障を来すものではなく、かつ過去の別件事案の適法妥当性に影響を与えるものではないことを確認しました」とコメントしていますが、確かに判決の判断はそこまで踏み込んだものでなかったとはいえ、しかし、奈良市のこれまでの通院移送費制度についての態度が法の趣旨に沿ったまっとうなものであったとは、私たちは必ずしも考えておりません。
したがって、私たちは、H氏の遺志に沿って、引き続き、生活保護利用者及びその支援者と連携して、生活保護行政が真に利用者のためにあるように、改善の取り組みを続けていく所存です。
最後になりましたが、本件活動を様々な面で支えていただいた奈良及び全国の支援者のみなさんに対し、ひとまず現時点でお礼を申し上げます。ありがとうございました。
以上
[原告声明文]
奈良市通院移送費裁判判決確定にあたって
2018年4月7日
原告H
一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのるかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を慣らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。
本来医療扶助から支給される通院移送費(交通費)について、奈良市福祉事務所が本人に制度を教示せず、また本人から相談があったにも関わらず生活扶助から費用を捻出するよう指導した事案で、奈良地方裁判所は、2018年3月27日、原告の訴えを認め、処分の取り消しを認めました。
以下のとおり、原告は判決をふまえて声明を出し、弁護団は奈良市長に控訴をしないよう申し入れました。
趣旨にご賛同いただける方は、奈良市長に控訴しないよう求めるファックスを送っていただくようお願いいたします。
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[弁護団申入書]
私たちは、奈良市を被告とする奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求事件、国家賠償請求事件における原告H氏の訴訟代理人団として、次のとおり意見を述べます。
奈良市は、本件につき、控訴をするべきではありません。
1 頭書事件についての本年3月27日の奈良地方裁判所の判決では、H氏の通院交通費の平成25年8月以前の遡及分につき、奈良市側がいったんはその支給をすることを表明しながら、後にこれを覆してH氏の申請を却下したことが、「禁反言の法理」の適用によりもはや行政裁量の範囲を逸脱するものとして違法と宣言されました。
「禁反言の法理」は行政関係にも適用され得る法の一般原則であり、あえていうならば子どもでも自然に理解できる社会の当然のルールです。すなわち、行政たるもの、市民に対していったん行政サービスを提供するとの態度を表明し、何らかの教示等を行ったならば、そのような態度をその後に易々と変えてはならないというのはごく当たり前のことであって、このようなことから、申請却下処分の違法を宣言した奈良地裁判決は、もし控訴審においてこの点が争われたとしても、そうそう覆るとは思われません。
2 更にいえば、私たちは、そもそも、奈良市側が当初に表明した「診療のレセプト等で確認できれば、可能な限り遡及して通院移送費の支給を行う」との考えが、むしろ、行政として正しい態度であったと考えます。
奈良市側が通院移送費制度に関する周知文書を生活保護利用者に対し配布したのが平成26年10月ころに至ってであったことは、訴訟上も争いがなく、奈良地裁も判決の当然の前提にしています。本来、的確に保護利用者に周知されるべき通院移送費制度について周知を行っていなかったのはこと奈良市側の問題です。保護変更も申請主義とはいうものの、生活保護制度のすべてについて利用者の側に自ら知っているべきこと、調査して把握すべきことを前提に自発的な申請を求めるのは酷であり、むしろ支援する側が困窮している利用者の目線に立って必要・有益と思われる助言を行うのが福祉のケースワークのあり方であろうと思います。この点、奈良地裁判決は、平成22年通知は実施機関が通院移送費制度に関する周知を怠っている限りはそれまでに発生した交通費につきすべて事後申請を認める趣旨であるとの私たちの主張を必ずしも採用しませんでしたが、しかし、平成22年通知の趣旨如何に関わらず、奈良市は、生活保護利用者に対する的確なケースワークができていなかったという誹りを免れないと私たちは考えます。したがって、この点を認め、可能な限り遡及しての移送費支給を行うとした当初の態度こそが、行政としてあるべき態度だったのです。
つまり、本件は、本来、「最初に誤った教示をしてしまったが、それでも後でそれを撤回・修正してはならない」という事案ではなく、「当初の態度こそが行政としてあるべき態度であったが、形式論に拘泥する余り後に態度を翻したことが違法と断罪された」事案というべきです。奈良地裁判決も、仮に本件が「最初に誤った、本来違法である内容の教示をしてしまったが、それでもいったんこれをしてしまった以上は後でそれを撤回・修正してはならないのか」という事案であれば禁反言の法理の適用を躊躇したと思われますが、そうではなかったということを念押ししておきたいと思います。
3 一方、奈良地裁判決においては、H氏が生活保護受給開始後間もなくからケースワーカーに対し通院に要する交通費の支給如何に関する質問・相談を複数回していたという原告側の主張については、これを奈良市のケースワーカー側がみな否認する供述を行ったということもあり、立証が不十分とされてしまいました。
しかし、H氏から直接聴き取りをし、事実関係を確認した私たち代理人団は、この主張は紛れもない真実であると確信しています。H氏が本当に正直な、実直な人柄であるゆえに、淡々と、質問・相談の日時等の詳細は特定できない旨供述されたことが立証不十分との評価を受けました。しかし、高齢・持病ありゆえに頻繁に通院治療を受けておりしたがって交通費の負担も重かったと思われるH氏が、ただでさえ十分でない生活扶助費からこれを支出することに苦労し、困ったであろうことは、想像に全く難くないところです。H氏は、転居の際の敷金や、眼鏡の購入費用については保護費として支給されないのかとケースワーカーに尋ねていたことはケース記録票にも記載されていますから、通院の際の交通費についても、同様に尋ねたと考える方が全く自然です。他方で、奈良市側の担当ケースワーカーの通院移送費制度に関する知識・理解が本来の制度のあり方に比べて全く不十分・不正確・誤りであったことは、本件訴訟において行われた各ケースワーカーに対する証人尋問結果からも明らかであり(多くの傍聴者は一様にこの点について義憤や失望を感じたとのことです。)、そのようなケースワーカーが、H氏からの質問・相談に対し的確な対応をしなかったであろうことも、ほぼ間違いないものと考えます。
奈良市においては、訴訟上の勝訴・敗訴という結論如何に関わらず、このことを真摯に受け止めていただきたいと思います。
4 これに関連して、証拠保全申立に関する大阪高裁決定(大阪高等裁判所平成28年(行ス)第103号)において指摘された「開示されたケース記録票の不自然さ」の問題についても、目を背けないでいただきたい。
真実は私たちにはわかりませんが、H氏がケースワーカーに対し通院交通費に関する相談をしたはずの時期のみ全く記載がないとされるケース記録票は、大阪高裁決定も「ケース記録にこのような長期間の空白があることは、その間に7日間の入院があることを併せ考えれば、余りに不自然といわなければならない」と述べるとおり、やはり不自然としかいえません。
昨今様々なところで問題が発覚しているような公文書の改ざんや抜取りが奈良市にもあったとは想像したくありませんが、爾後、そのような疑念を抱かせることのないよう、ケース記録票には通しページ・番号を付すなどの改善策を直ちにとるべきです。
5 判決は保護費の支払を義務付けるものであったために、控訴如何は厚生労働省との協議が必要である、ということなのかもしれません。
しかし、仮にそうであれば、奈良市においては、厚生労働省に対し、控訴を断念すべきである旨主張するとともに、むしろ、本件訴訟を機に、改めて、各実施機関に対し、通院のために合理的に必要な交通費については移送費の支給が可能であること、そのことを実施機関は生活保護利用者に対し一般的に周知し、かつ、個別的に教示すべきこと、逆に「原則的には生活扶助費から捻出すべきものである」とか「一定額を超えない限り支給されない」とかいった誤った教示を行うべきでないことを通知して徹底周知し、「現場」の混乱を招かないようにすべきことを進言すべきです。
私たちは、前述のとおり、奈良市においてケースワーカーを担当された職員たちが、不十分・不正確・誤った知識によりH氏に対し苦痛を与えたであろうことを厳しく批判しつつも、個々の職員についての人格非難まで行いたくはありません。根本的には、通院移送費制度に関する厚生労働省のスタンスが「現場」からわかりにくい、あるいは、支給について抑制的であるようにみえる、といったことが問題なのだろうとも考えています。仮にそうであれば、奈良市は、本件を機に、過ちを真摯に振り返ってこれを正すとともに、生活保護行政全体のあり方を改める先頭を走っていただきたい。
6 最後に、H氏は、現在、重篤な疾病により生命の危機にありながらも、「生活保護行政が利用者のためにあってほしい」との思いのもとに、当事者として訴訟を遂行してこられました。保護受給中に通院移送費の支給がなされないばかりに通院治療の受け控えもしたことと、現在の病状の因果関係の有無はわからないにしても、いずれにせよ、市民が命を賭して「正しいこと、あるべきこと」を追及していることに対し、かたちばかりの控訴をして救済を先延ばしにするような、あるいは救済を与えないような不誠実で応えるべきではありません。H氏が存命の間に適切な救済がなされることが当然であり、是非とも必要です。
したがって、私たちは、本件につき、奈良市が控訴しないことを求めます。
[原告声明文]
一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
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[弁護団申入書]
2018(平成30)年4月2日
奈良市長 仲川元庸殿
申入書
原告H氏代理人弁護士 古川雅朗
同 西村香苗
同 佐々木育子
同 幸田直樹
私たちは、奈良市を被告とする奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求事件、国家賠償請求事件における原告H氏の訴訟代理人団として、次のとおり意見を述べます。
記
奈良市は、本件につき、控訴をするべきではありません。
1 頭書事件についての本年3月27日の奈良地方裁判所の判決では、H氏の通院交通費の平成25年8月以前の遡及分につき、奈良市側がいったんはその支給をすることを表明しながら、後にこれを覆してH氏の申請を却下したことが、「禁反言の法理」の適用によりもはや行政裁量の範囲を逸脱するものとして違法と宣言されました。
「禁反言の法理」は行政関係にも適用され得る法の一般原則であり、あえていうならば子どもでも自然に理解できる社会の当然のルールです。すなわち、行政たるもの、市民に対していったん行政サービスを提供するとの態度を表明し、何らかの教示等を行ったならば、そのような態度をその後に易々と変えてはならないというのはごく当たり前のことであって、このようなことから、申請却下処分の違法を宣言した奈良地裁判決は、もし控訴審においてこの点が争われたとしても、そうそう覆るとは思われません。
2 更にいえば、私たちは、そもそも、奈良市側が当初に表明した「診療のレセプト等で確認できれば、可能な限り遡及して通院移送費の支給を行う」との考えが、むしろ、行政として正しい態度であったと考えます。
奈良市側が通院移送費制度に関する周知文書を生活保護利用者に対し配布したのが平成26年10月ころに至ってであったことは、訴訟上も争いがなく、奈良地裁も判決の当然の前提にしています。本来、的確に保護利用者に周知されるべき通院移送費制度について周知を行っていなかったのはこと奈良市側の問題です。保護変更も申請主義とはいうものの、生活保護制度のすべてについて利用者の側に自ら知っているべきこと、調査して把握すべきことを前提に自発的な申請を求めるのは酷であり、むしろ支援する側が困窮している利用者の目線に立って必要・有益と思われる助言を行うのが福祉のケースワークのあり方であろうと思います。この点、奈良地裁判決は、平成22年通知は実施機関が通院移送費制度に関する周知を怠っている限りはそれまでに発生した交通費につきすべて事後申請を認める趣旨であるとの私たちの主張を必ずしも採用しませんでしたが、しかし、平成22年通知の趣旨如何に関わらず、奈良市は、生活保護利用者に対する的確なケースワークができていなかったという誹りを免れないと私たちは考えます。したがって、この点を認め、可能な限り遡及しての移送費支給を行うとした当初の態度こそが、行政としてあるべき態度だったのです。
つまり、本件は、本来、「最初に誤った教示をしてしまったが、それでも後でそれを撤回・修正してはならない」という事案ではなく、「当初の態度こそが行政としてあるべき態度であったが、形式論に拘泥する余り後に態度を翻したことが違法と断罪された」事案というべきです。奈良地裁判決も、仮に本件が「最初に誤った、本来違法である内容の教示をしてしまったが、それでもいったんこれをしてしまった以上は後でそれを撤回・修正してはならないのか」という事案であれば禁反言の法理の適用を躊躇したと思われますが、そうではなかったということを念押ししておきたいと思います。
3 一方、奈良地裁判決においては、H氏が生活保護受給開始後間もなくからケースワーカーに対し通院に要する交通費の支給如何に関する質問・相談を複数回していたという原告側の主張については、これを奈良市のケースワーカー側がみな否認する供述を行ったということもあり、立証が不十分とされてしまいました。
しかし、H氏から直接聴き取りをし、事実関係を確認した私たち代理人団は、この主張は紛れもない真実であると確信しています。H氏が本当に正直な、実直な人柄であるゆえに、淡々と、質問・相談の日時等の詳細は特定できない旨供述されたことが立証不十分との評価を受けました。しかし、高齢・持病ありゆえに頻繁に通院治療を受けておりしたがって交通費の負担も重かったと思われるH氏が、ただでさえ十分でない生活扶助費からこれを支出することに苦労し、困ったであろうことは、想像に全く難くないところです。H氏は、転居の際の敷金や、眼鏡の購入費用については保護費として支給されないのかとケースワーカーに尋ねていたことはケース記録票にも記載されていますから、通院の際の交通費についても、同様に尋ねたと考える方が全く自然です。他方で、奈良市側の担当ケースワーカーの通院移送費制度に関する知識・理解が本来の制度のあり方に比べて全く不十分・不正確・誤りであったことは、本件訴訟において行われた各ケースワーカーに対する証人尋問結果からも明らかであり(多くの傍聴者は一様にこの点について義憤や失望を感じたとのことです。)、そのようなケースワーカーが、H氏からの質問・相談に対し的確な対応をしなかったであろうことも、ほぼ間違いないものと考えます。
奈良市においては、訴訟上の勝訴・敗訴という結論如何に関わらず、このことを真摯に受け止めていただきたいと思います。
4 これに関連して、証拠保全申立に関する大阪高裁決定(大阪高等裁判所平成28年(行ス)第103号)において指摘された「開示されたケース記録票の不自然さ」の問題についても、目を背けないでいただきたい。
真実は私たちにはわかりませんが、H氏がケースワーカーに対し通院交通費に関する相談をしたはずの時期のみ全く記載がないとされるケース記録票は、大阪高裁決定も「ケース記録にこのような長期間の空白があることは、その間に7日間の入院があることを併せ考えれば、余りに不自然といわなければならない」と述べるとおり、やはり不自然としかいえません。
昨今様々なところで問題が発覚しているような公文書の改ざんや抜取りが奈良市にもあったとは想像したくありませんが、爾後、そのような疑念を抱かせることのないよう、ケース記録票には通しページ・番号を付すなどの改善策を直ちにとるべきです。
5 判決は保護費の支払を義務付けるものであったために、控訴如何は厚生労働省との協議が必要である、ということなのかもしれません。
しかし、仮にそうであれば、奈良市においては、厚生労働省に対し、控訴を断念すべきである旨主張するとともに、むしろ、本件訴訟を機に、改めて、各実施機関に対し、通院のために合理的に必要な交通費については移送費の支給が可能であること、そのことを実施機関は生活保護利用者に対し一般的に周知し、かつ、個別的に教示すべきこと、逆に「原則的には生活扶助費から捻出すべきものである」とか「一定額を超えない限り支給されない」とかいった誤った教示を行うべきでないことを通知して徹底周知し、「現場」の混乱を招かないようにすべきことを進言すべきです。
私たちは、前述のとおり、奈良市においてケースワーカーを担当された職員たちが、不十分・不正確・誤った知識によりH氏に対し苦痛を与えたであろうことを厳しく批判しつつも、個々の職員についての人格非難まで行いたくはありません。根本的には、通院移送費制度に関する厚生労働省のスタンスが「現場」からわかりにくい、あるいは、支給について抑制的であるようにみえる、といったことが問題なのだろうとも考えています。仮にそうであれば、奈良市は、本件を機に、過ちを真摯に振り返ってこれを正すとともに、生活保護行政全体のあり方を改める先頭を走っていただきたい。
6 最後に、H氏は、現在、重篤な疾病により生命の危機にありながらも、「生活保護行政が利用者のためにあってほしい」との思いのもとに、当事者として訴訟を遂行してこられました。保護受給中に通院移送費の支給がなされないばかりに通院治療の受け控えもしたことと、現在の病状の因果関係の有無はわからないにしても、いずれにせよ、市民が命を賭して「正しいこと、あるべきこと」を追及していることに対し、かたちばかりの控訴をして救済を先延ばしにするような、あるいは救済を与えないような不誠実で応えるべきではありません。H氏が存命の間に適切な救済がなされることが当然であり、是非とも必要です。
したがって、私たちは、本件につき、奈良市が控訴しないことを求めます。
以上
[原告声明文]
奈良市通院移送費裁判判決にあたって
2018年3月22日
原告H
一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
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