生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケース。
国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める福島地裁の判決について福島市が控訴を断念したため、本日、原告勝訴の判決が確定しました。

福島市に「控訴するな」の声を寄せた全国の皆さまに感謝するとともに、今後の取り組みの決意を表明する声明を、原告弁護団が発表しました。

声明にも触れられているとおり、今後、福島市には、原告に対する真摯な謝罪と、保護行政全般の運用改善に向けた取り組みが求められています。




福島市奨学金収入認定事件の判決確定を受けての声明


2018年1月31日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


 去る1月16日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。この判決について,被告福島市福祉事務所長は,控訴期限である1月30日までに控訴をしなかったことから,本判決は確定し,本件訴訟は終了した。
 本判決の後,原告本人や原告の支援者をはじめ,全国の心ある市民から,福島市に対し,「本判決を真摯に受け止め,控訴をしないでほしい」との申入れなどが多数寄せられた。こうした全国からの声は,福島市が本判決について控訴しないという態度を決定する上で,大きな力となった。私たち弁護団は,全国の皆さんからのご支援ご協力に心から感謝の意を表明する。
 しかし,本件は,福島市が控訴せず本判決により命じられた慰謝料を支払っただけで完全解決に至ったという評価をすることはできない。様々な困難を乗り越えて本件訴訟を提起してたたかってきた原告らの真の思いは,福島市が本件処分の誤りを自ら認め謝罪するとともに,このような誤りが二度と生じないよう,生活保護の運用等の改善を図ってほしいという点にある。福島市は,違法な処分を行った行政庁として,また要保護者に対し最低生活の保障と自立助長に向けた支援を行うべき生活保護実施機関として,本判決確定を機に,これらの原告らの思いに真摯に向き合うことが求められている。
 各種報道によると,福島市長は,本判決を受けて「裁判の結果を,重く受け止めております。生活保護は,生活に困窮する方々の最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としております。本件の訴えは,この点への配慮に欠けていたことが原因であると考えております。生活保護法,実施要領等を遵守した支援につながるよう,研修を充実させるなど努めて参ります」旨のコメントを発表したとのことである。こうしたコメントに見られる福島市長の姿勢は,本判決について控訴しないという福島市の態度にも反映していると考えられ,私たち弁護団は,このような福島市長の姿勢を前向きなものと評価し,このコメントの内容を着実に実行することを求める。
 その第一歩は,本件への真摯な反省の上に立ち,原告らに対して謝罪するとともに,原告らとの話し合いのテーブルにつき,今後の運用改善などについて,原告らの意見に真剣に耳を傾けることである。
 原告ら及び原告団は,本件について,福島市との対話による完全解決を目指していくことを表明し,完全解決に向け,福島市民をはじめ,全国の皆さんの引き続きのご支援をお願いするものである。

以上



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福島市の生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケースで、1月16日、福島地裁が、国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める、原告勝訴の判決を言い渡しました。

奨学金の収入認定に関する厚生労働省通知の改善や、生活保護世帯の子どもの大学進学問題の社会問題化の切っ掛けともなったこの事件で、当たり前とはいえ、当事者の方の精神的苦痛を認める国賠判決が出たことには大きな意味があります。

福島市が控訴して、これ以上母子につらい思いをさせることのないよう、福島市に対して、「控訴するな!」の声を寄せていただければと思います。

<福島市HP「福島市へのご意見」>
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/skyodo-kocho/shise/kocho/300.html





福島市奨学金収入認定事件の判決を受けての声明


2018年1月16日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


  本日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。

1 福島市福祉事務所長の処分の違法性及び過失
 本判決は,給付型奨学金は自立更生のための恵与金(次官通知第8の3の⑶のエ)に該当し,給付型奨学金が保護費で賄うことができない費用等に使用されることを確認すれば収入認定除外されるということを前提に,次のとおり,違法性及び過失を認めた。

(1)保護費で賄えない就学費用が現実に発生した場合には,生活費に不足する結果となることが十分にありえるのであるから,給付型奨学金を収入認定することについては慎重な態度で臨むべきである。

(2)保護の実施機関としては,給付型奨学金の収入認定除外を検討することなく収入認定をした場合には,生活扶助費を割り込むおそれがあることに照らすと,被保護者に対して適切に助言するとともに,自ら調査すべき義務があった。

(3)被告福祉事務所は,本件各奨学金について収入認定除外の対象となるか否かの検討を行わず,したがって,原告Aから提出された自立更生計画書や添付資料の検討をせずに,除外認定に当たって必要な資料の追加提出等の指示もしないままに,本件各処分を行ったものであって,公務員に与えられた裁量権を逸脱したものということができ,本件各処分はいずれも国家賠償法1条1項にいう違法がある。
 本判決は,生活保護法等に照らし処分が法的に違法であることを認めており,行政による違法な運用を是正し,生存権をよりよく保障しようとするものであるとともに,子どもの積極的な学びの機会を保障し子どもの貧困をなくすという観点から極めて当然かつまっとうな司法的な判断であると評価できる。福島市のみならずすべての自治体において本判決を真摯に受け止め,給付型奨学金を一方的に収入認定することがないよう求める。

2 原告らが受けた損害
 本判決は,事後的に奨学金相当額を追加支給したために損害は発生していないとの福島市の主張を排斥し,次の要素に着目して,原告親子にそれぞれ5万円(計10万円)の損害の発生を認めた。

(1)奨学金が収入と認定され,生活保護費が減額されたとしても,高等学校への通学を継続しなければならないから,その結果,生活費をきりつめて困窮した生活を送らなければならなくなる。このようなことから,事後調整や追加支給は合理性がない。

(2)実際にきりつめた生活を余儀なくされ,高校就学を経済的に支えることができなくなるかもしれない母親の深刻な不安,努力して奨学金を獲得したにもかかわらず,これを事実上没収されたことにより,自らの努力を否定されるような経験をした子どもの精神的苦痛を認定し,賠償に値する損害が現に生じたことを認めた。
 通常,経済的な損害が補填されれば精神的な苦痛はないとみる裁判例が多い中,本判決は,生活保護世帯の母親と子どものそれぞれの精神的苦痛に踏み込んで損害の発生を認めたもので,その点は高く評価できる。

3 最後に
 原告ら,支援者及び弁護団は,福島市を含む自治体において本件と同様に奨学金を奪われるという事件が再び起こらないことを願い,闘いを継続してきた。本判決を受け,我々は次の事項を求める。

(1)子どもの貧困対策の観点から,そもそも奨学金は収入認定の対象とすべきではない。訴訟において原告らが提出した末冨芳氏の意見書にも,自立更生計画の弊害が言及されている。それにもかかわらず,その点を適法として十分な検討をしていない本判決には不十分な点がある。
 奨学金の充実・拡充が検討され,実現されようとしている現在,かかる取り扱いは,法の趣旨・政府の方針とそぐわない。我々は,厚生労働省に対し,早急に生活保護実施要領を見直し,奨学金を収入認定の対象から除外するよう求める。

(2)また,福島市を含むすべての生活保護実施機関に対し,生活保護世帯の子どもが奨学金を学びのために有効かつ適時に使用することができるよう,生活保護法が掲げる自立助長の観点から適法な運用をするよう求める。

以上



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東北生活保護利用支援ネットワークが自治体HPの調査を実施しました。



自治体ホームページ調査結果概要

平成29年10月25日
東北生活保護利用支援ネットワーク


 東北生活保護利用支援ネットワークでは、今年度、東北地方の各自治体(県を含む。)のホームページに生活保護制度の説明が掲載されているかを調べた。そのきっかけとなったのは、「『生活保護なめんな』ジャンパー問題」で話題になった小田原市のホームページに、生活保護制度の説明に関して問題のある記載が見られたことである。同様の記載が無いか、東北地方の自治体のホームページを見ていったところ、そもそもホームページが無い自治体が散見されたため、まずはホームページの有無について調査を行うこととした。
 独自調査の結果、生活保護制度の情報が掲載されていないことを確認した自治体には、今後そのようなページを作成する予定があるか否かを尋ねるアンケート調査を実施した。

1 生活保護制度を説明したページのある自治体の数
  青森県 41自治体中22自治体(53.7%)
  岩手県 34自治体中21自治体(61.7%)
  秋田県 26自治体中18自治体(69.2%)
  宮城県 36自治体中23自治体(63.9%)
  山形県 36自治体中16自治体(44.4%)
  福島県 60自治体中17自治体(28.3%)
  全体  233自治体中117自治体(50.2%)

2 講評
(1)生活保護制度を説明するページの有無

◯県によって大きなバラツキがあった。秋田県で多いのは、生活保護についての運動団体が強いことも影響していると思われる。

◯福島市は、県庁所在地では唯一、生活保護制度の説明ページを持っていなかった(同市は、給付型奨学金を収入認定するという誤った運用を行い、厚労省から処分取消裁決を受けた自治体でもある)。

◯町村ではホームページを持っていない自治体が多かった。ただ、その理由として、生活保護を実施する責任が県にあるためとの回答が複数見られた。しかし、生活保護制度の相談は、町村が第1次的には受けることになっている。町村のホームページに記載が無いとすれば、どこに相談に行って良いかの情報を、住民が得られないことになる。

◯今回は掲載内容を問う調査ではないが、極めて簡素な説明に留まるページも多く、また、内容的にも問題のあるもの(扶養義務を強調するもの等)もあり、今後は内容面の調査も必要と思われる。



(2)生活保護制度を説明するページを作成する予定の有無

◯「有り」や「検討中」という回答が多かったが、「無し」という回答も少なくなかった。しかし、生活保護という重要な制度の情報を、ホームページに載せないことは望ましくない。

◯今回の調査を受けて、ホームページに生活保護制度の説明をするページを作ったとの回答も複数あり、その重要性を受け止めてもらえたことは良かったと考える。





[調査結果]
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青森県 岩手県  秋田県 宮城県 山形県  福島県





緊急院内集会

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緊急院内集会

ガマンくらべを終わらせよう。


生活保護でも大学に!

下げるな!上げろ!生活保護基準

 来年度、5年に一度の生活保護の基準見直しが予定されています。
 5年前の改定の際には、基準部会での結論とは全くかけ離れた形で基準の引き下げが行われましたが、今回も、母子加算の削減など子どものいる世帯などの基準の引き下げが懸念されています。
 生活保護世帯の子どもの大学等への進学を認めるべきだとの世論も高まる中、大学進学も認めず保護基準を引き下げたのでは、貧困の連鎖が強まる一方です。
 道理のない保護基準引き下げを許さず、誰もが「健康で文化的な生活」をおくることができるよう、私たちの声を国会に届けましょう!
 

【日時】2017年11月15日(水)

12:30~14:30


※事前申込み不要・入場無料


(12時から参議院議員会館1階ロビーで通行証を配布します。)


【場所】参議院議員会館講堂

永田町駅(地下鉄 有楽町線・半蔵門線・南北線)、国会議事堂前駅(地下鉄 丸ノ内線・千代田線)アクセスはこちら







司会

雨宮処凛さん (作家)


稲葉剛さん (住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人)



基調講演「憲法25条が保障する生存権と生活保護基準引き下げ」

木村草太さん (首都大学東京大学院教授)



基調報告「生活保護基準部会での議論の状況」

田川英信さん (いのちのとりで裁判全国アクション事務局)



特別報告「生活保護世帯の大学生の現状と課題~堺市実態調査から」

桜井啓太さん (名古屋市立大学講師、元堺市ケースワーカー)



当事者の声
 ・子どもの専門学校進学で「世帯分離」された母子世帯の方
 ・生活保護を利用する高齢世帯、障がい世帯、母子世帯等の方々

国会議員あいさつ

集会アピール・行動提起

閉会あいさつ


【主催】いのちのとりで裁判全国アクション
[問い合わせ先]あかり法律事務所 弁護士 小久保 哲郎
TEL:06-6363-3310 Fax:06-6363-3320


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大阪市の生活保護費プリペイドカード支給事業について、反貧困ネットワーク大阪が、プリペイドカード事業者である三井住友カード株式会社に対し、以下のとおりの公開質問状を提出しました。回答期限は、4月14日(火)とのことです。



2015年3月24日

三井住友カード株式会社
代表取締役社長 島田 秀夫 様
反貧困ネットワーク大阪
代表 生田 武志


生活保護受給者に対する
「Visaプリペイドカード」配布への公開質問状


 大阪市は、2014年12月26日、全国で初めてプリペイドカードによる生活保護費の支給をモデル事業として2015年4月から実施すると発表しました。貴社はこれまで大阪市に対して「受給者の利便性確保」と「生活扶助費の透明化(利用実態把握)」があわせて実現可能だとしてVisaプリペイドカードの活用を提案しており、大阪市と協定を締結してモデル事業を推進しています。また、貴社は本モデル事業を通して全国の自治体への展開を行うこと・公的分野への本格的な参入も明らかにしています。
 しかし本ネットワークは、本モデル事業が「貧困ビジネス」になりはしないかと危惧いたします。「貧困ビジネス」とは、生活保護受給者の囲い込み・支援費徴収や消費者金融・ヤミ金融など、貧困層をターゲットにした反社会的な営利行為のことです。なかには暴力団など反社会的勢力が関わるものもあると言われ、近年、日本社会に貧困が広がるなか社会問題となりました。
 日本弁護士連合会が「生活保護費をプリペイドカードで支給するモデル事業の中止を求める会長声明」において本モデル事業の違法性を指摘するなど、本モデル事業が生活保護受給者の人権を侵害し、貧困の固定化につながる「貧困ビジネス」になりかねないという社会的な関心は高まっております。
 また、当然ながら生活保護費は公費によって運営されており、公共事業に携わることの透明性の確保として、必要な情報を公開することは貴社の持つ自明の責任であると考えています。
 つきましては、貴社の経営理念・コンプライアンスを信頼し、下記に「生活保護受給者を利用したVisaプリペイドカード」配布に関してお尋ねいたします。



①プリペイドカード支給によって、生活保護受給者が得られる利点を具体的に教えてください。

②モデル事業後の生活保護分野に対する事業受託の計画内容・公的分野への参入について具体的に教えて下さい。

③全国自治体の生活保護分野へのプリペイドカードの導入によって貴社が得ることのできる預託金・決済手数料・入金手数料等の試算総額を具体的に教えてください。

④いわゆる「生活保護バッシング」で明らかとなったように、生活保護を利用するのは負の烙印だというような誤解・偏見が社会的に根強くあり、受給すべき人々が受給を避けてしまう大きなハードルとなっています。プリペイドカードを使わざるえないことで、生活保護の利用が妨げられてしまうのではないかと危惧しています。貴社はこの点をどのように認識されていますか。

⑤貴社は「スーパー、コンビニだけでなく、オンラインショッピングを含め幅広くVisaの加盟店で利用できる」と利便性を謳っていますが、受給者が利用する安売りスーパーや地域社会にある商店・食堂といった小規模店舗などでは利用できないといった問題があると私たちは考えています。また、アレルギーや疾病のために特定の店舗で生活必需品を購入する生活保護受給者にとっては死活問題です。貴社はこの点についてどのように考えていますか。

⑥プリペイドカード支給による「支出管理」を通して、「自立支援」を行うことについて、具体的にはどのようなことを想定されているのでしょうか。また、自立支援に関する福祉専門家や依存症専門の精神保健福祉士、生活保護受給者支援団体と連携した事前の検証は行われているのでしょうか。


⑦日本弁護士連合会「生活保護費をプリペイドカードで支給するモデル事業の中止を求める会長声明」及び大阪弁護士会「生活保護費をプリペイドカード支給する大阪市モデル事業の撤回を求める会長声明」にて、「生活保護法第31条第1項に反することは明らか」との指摘がありますが、経営理念の中で「社会的公正」を掲げる貴社ではこの声明全文及び法律違反の指摘についてどのように受け止めているのでしょうか。


⑧生活保護受給者とケースワーカーの取り決め・ニーズに応じて既存のデビットカードを使うことで利便性の確保は担保されると考えていますが、事業として推進する必要性があるのでしょうか。

⑨大規模災害時や貴社側のシステム不具合等のリスクから支給及び利用そのものができない状況が懸念されます。このようなリスクに対して対策は取られているのでしょうか。

⑩個人の生活全てを把握できる膨大な個人情報が貴社の管理に置かれることとなりますが、このデータの管理についてどのような利用目的を考えられているのでしょうか。また、漏洩といったリスクはないのでしょうか。


【以下、提出理由】
 「どうして、生活保護の生活扶助費支給にプリペイドカード導入を目指すのだろうか」と疑問が尽きません。公開質問状提出に至った理由についてこちらで述べさせていただきます。

①生活保護利用者の利便性確保について
 生活保護利用者の利便性につながることが貴社が表明した「国内初!公的給付にVisaプリペイドカードを活用するソリューションの提供開始」より謳われており、家計の把握や管理が行いやすいと提起されています。しかし、現金は一般的にどこでも使える点と比較してプリペイドカードは加盟店のみでしか使えず、選択肢が狭まれることは明らかです。モデル事業後に効果検証を行い、全国地方自治体に対して提案・本格化を追求されるとのことですが、プリペイドカードとは現金が使えることの選択肢がある上で利便性が担保されるのではないでしょうか。現行に於いても受給者それぞれがデビットカード等を用いることでVisaカードの利点を生かした家計の把握などは行うことができるものと考えています。また、金銭管理に不安なひと・困っているひと向けに生活支援員や相談員が個別具体的に関わる日常生活自立支援事業があります。

②生活保護利用者に対する金銭管理について
 同じく貴社の表明した「国内初!公的給付にVisaプリペイドカードを活用するソリューションの提供開始」に海外や米国で「幅広く活用されている」との表現があります。同時に今回のプリペイドカード問題では生活保護受給者の金銭管理が大阪市で謳われています。一例として、米国の公的給付の一制度であるSNAP(補助的栄養支援プログラム)の事例を引用しますと、米国農務省の報告書(2013年)によれば約8.58億ドル(約1032億円)が本来の利用目的から外れているとの記述があります。プリペイドカードで配布され、食品の購入のみに限られている同プログラムでは、一部のプログラム利用者が食品以外のものを買うために反社会勢力等を経由してプログラム利用者にとって悪いレートで換金され、食品以外のものを購入するに当てられているとのことです。
 この点からも生活保護利用者の金銭管理につながるのか、また「機械的な金銭管理で依存症の改善につながるのか」「依存症を持つひとが機械的に金銭管理を受けることで、よりしんどい状況に至るのではないか」という疑問が拭えません。尚、当方は生活保護利用者の尊厳・自己決定権を守るといった観点から、生活保護利用者を一律に、将来的に強制的な金銭管理下へ置くことに反対だということを明確に表明します。

③個人情報流失・不正利用被害の危険性について
 クレジットカード先進国の米国でも個人情報流出が起きていますし、また日本でも個人情報の流失が相次いでおります。また、モデル事業終了後にプリペイドカード事業が生活保護分野に全国的・本格的に参入するとなると、個々人の選択ではなく生活保護を利用するのに不可避な形で一民間企業に個人情報が渡ることとなります。民間企業に個人情報が委ねられることに疑問です。加えて、一般のVisaカード同様に「カード情報が何らかの形で盗まれ、悪用される」といった不正利用の被害対象となるリスクにさらされることとなります。

 また、公開質問状にある通り④大規模災害時やカードシステム委託先のシステムダウンといった非常時での電子マネーの効力⑤生活保護受給者を利用するような形で三井住友カード株式会社を始め関連企業が営利を得続けるのではないか、といった疑問を持っております。今月5日には生活保護問題対策全国会議他160団体が大阪市に対して「プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書」を提出しております。この事実を認識頂きたいのと、貴社にはこちらの要望書をご一読頂きたいと存じます。

 本件について、日本弁護士連合会から「生活保護費をプリペイドカードで支給するモデル事業に対して中止を求める会長声明」が出され、大阪弁護士会から「生活保護費をプリペイドカード支給する大阪市モデル事業の撤回を求める会長声明」が出されています。法曹界から生活保護法第31条1項に反するとの指摘、プリペイドカード支給のモデル事業の中止・撤回を求める声明が上がっていることの事実をここで改めて提起させて頂きます。

 生活保護は日本社会における最後のセーフティネットであり、他の手段では人間的な生活・健康で文化的な最低限度の生活を営むことができないがゆえに利用する制度です。生活保護を利用して始めに、具体的な支援をするひととつながれるのがケースワーカーの存在です。「いまの生活の課題」や「これからどうしようか」「この機関や制度を使ってみよう」と一緒に考えてくれる存在が都市部では平均100世帯以上も担当せざるえず、中には480世帯も担当している事例もあることが報告されています。カード化推進以前の状況ではないでしょうか。

 また、生活保護は不幸にして誤解・バッシングの多い制度でもあります。こうしたなかで「管理」が謳われるカード化が推進されることによって、ブラック企業で働き続けたことによって心身を壊した方やDVの状況から逃れた配偶者や子、様々な環境・背景によってしんどい状況にも関わらず、誰からの支援を得ることのできないようなひとが生活保護の利用を避けてしまうかもしれない。大阪市では2013年5月に「最後におなかいっぱい食べさせられなくて、ごめんね」と書き残し餓死した母子の遺体が発見されています。営利を追求する挑戦は否定しませんが、営利を追求しようとする対象が弱い立場にあるひとの人生を左右する分野だということをご認識頂きたいです。 

 以上のことから事業主体である三井住友カード株式会社に対して公開質問状を作成いたしました。一大企業が、人間の生を左右する公共事業に本格的に携わろうとしている。このことに対して真摯に向き合ってほしいという率直な願いを込めて公開質問状をお渡しした次第です。

三井住友カード株式会社で働くひとに敬意を込めて。

以上



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