生活保護基準部会では、本年5月から、2018(平成30)年度の基準見直しに向けての検証が再開されています。私たちは、75団体もの方々の賛同を得て、本日、厚生労働省に「今般の生活保護基準の検証にあたっての要望書」を提出しました。
 賛同をいただいた団体の方々、本当にありがとうございました(なお、個人でご賛同いただいた方については、今回は掲載を見合わせておりますので、ご容赦いただけますよう、お願い致します。)。

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2016年10月26日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿


今般の生活保護基準の検証にあたっての要望書


生活保護問題対策全国会議

ほか75団体(別紙)


 去る本年5月27日,2018(平成30)年度に予定される5年に1度の生活保護基準の見直しに向けた生活保護基準部会が再開されました。

基準部会による検証の無視・軽視
 前回の見直しについての基準部会報告書は2013年1月にまとめられましたが,貴省は,同報告書の検証結果をふまえた数値について,基準部会に何ら諮ることなく独断で,減額となる世帯だけでなく増額となる世帯についても2分の1としました(資料1・北海道新聞2016年6月18日朝刊,資料2・保護課作成「取扱厳重注意」文書)。さらに,貴省は,基準部会では全く検討されなかった「物価」下落を考慮し,しかも,「生活扶助相当CPI」なる通常のCPIとは全く異なる偽装数値を用いて,最大10%・平均6.5%という保護世帯の96%に対する生活扶助基準の引き下げを強行しました(資料3・中日新聞2013年4月10日朝刊)。

集団違憲訴訟における国の不誠実な態度
 これに対しては,約2万人が審査請求を提起し,さらに現在,全国27都道府県において900名を超える原告が違憲裁判を提起して争っています(資料4・朝日新聞2015年11月3日朝刊)。しかし,訴訟の場においても被告国は,引き下げの具体的な過程やデータを明らかにすることなく,時に必ずしも基準部会の意見を踏まえる必要はないという一方,時に基準部会の了解を得たという,不誠実な態度に終始しています。

今般の検証によるさらなる生活保護基準引下げの懸念
 今般,貴省が基準部会において示した「平成29年検証における検討課題(案)」には,「有子世帯の扶助・加算の検証」,「級地区分の在り方の検討」等があげられていますが,前回検証後の経過を踏まえると,貴省は,民主党政権下で復活された母子加算の再度の廃止等子どものいる世帯の扶助基準の引き下げや,1級地等都市部の扶助基準の引き下げを既定路線とし,基準部会の検証を,その免罪符として都合よく利用しようとしているのではないかと強く懸念されます。
 ナショナル・ミニマムである生活保護基準が安易に引き下げられれば,最低賃金,住民税非課税,国民健康保険,介護保険,保育料,就学援助等のさまざまな基準にその影響が及び,市民生活全般に重大な被害を与えることは必至です。
 
 そこで,私たちは,貴省に対し,以下の諸点を十分に考慮したうえで,基準部会の事務局運営をするよう強く要望いたします。

1 生活扶助基準引き下げの経過の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げに際し,基準部会に諮ることなく独断で,同部会の検証結果を踏まえた数値を2分の1とした点,及び,生活扶助基準相当CPIという独自の統計数値の捏造の上に成り立つ大幅な物価下落を考慮した点について,基準部会の議題として取り上げて検証すること。

2 各種生活保護基準引き下げの影響の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げ,2015年7月からの住宅扶助基準の引き下げ,同年10月からの冬季加算の引き下げについて,以下の影響を検証すること
(1) 生活保護世帯にどのような影響を及ぼしたか,世帯類型ごとの影響額,保護廃止世帯数,減額によって支出を抑制した経費などを検証すること。
(2) 生活保護基準と連動している他の制度(地方税,最低賃金,就学援助等の低所得者対策等)への影響の有無及び内容を検証すること

3 検証方法について
生活扶助基準を検証するにあたっては,問題が多い第1十分位(下位10%)との比較という手法は止め,何が健康で文化的な生活なのかを具体的に検討する手法を開発し,その新たな手法によって今回の検証を行うこと。

4 有子世帯への扶助・加算
一般低所得世帯の子どもとの均衡から安易に基準を引き下げることはあってはならず,子どもの貧困対策の推進に関する法律が求める,貧困の連鎖・貧困の固定化を防ぐ観点から,子どもの最低生活費がどうあるべきかを検証すること。

5 基準部会の審議内容及び検証結果の最大限の尊重
 2013年8月からの生活扶助基準引き下げや2015年7月からの住宅扶助基準引き下げの際のように,基準部会による検証を事実上無視するようなことはあってはならず,生活保護基準の改定にあたっては,基準部会の審議内容及び検証結果を最大限尊重すること。

以 上


[賛同団体]
公益社団法人日本社会福祉士会,認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい,特定非営利活動法人ほっとポット,全国生活と健康を守る会連合会,生存権裁判を支援する全国連絡会,沖縄県子ども総合研究所,有限会社おとくに福祉研究所,兵庫県精神障害者連絡会,個人社会福祉士事務所フリーダム,特定非営利活動法人自立生活センターたいとう,救護施設高槻温心寮,青年法律家協会弁護士学者合同部会,生存権がみえる会,住まいの貧困に取り組むネットワーク,ゆにおん同愛会,生活保護基準引き下げ違憲訴訟を支える大阪の会,きょうされん大阪支部,港合同南労会支部,怒っているぞ!障害者切りすて!ネットワーク関西,にいがた青年ユニオン,関西合同労働組合,生活保護引下違憲訴訟岡山弁護団,生存権アクションぎふ,生活保護基準引下げ違憲訴訟富山弁護団,近畿生活保護支援法律家ネットワーク,特定非営利活動法人大津夜まわりの会,秋田県生活と健康を守る会連合会,全京都生活と健康を守る会連合会,沖縄県社会保障推進協議会,自由法曹団,「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会,特定非営利活動法人ガチャバンともに生きる会,生存権裁判を支える愛媛の会,ささしまサポートセンター,生活保護改悪に反対する人々の会,怒っているぞ!障害者切りすて!全国ネットワーク(怒りネット),特定非営利活動法人ジョイフルさつき,なかまユニオンなかま大阪分会,反貧困ネットワークとやま,沖縄憲法25条を守るネットワーク(沖縄25条の会),中弘南黒社会保障推進協議会,青森民主医療機関労働組合,青森県医療労働組合連合会,中弘南黒地区労働組合総連合,自立障害者グループペンギン,NPO法人ペンギン,全国「精神病」者集団,京都山科生活と健康を守る会,生活保護支援九州・沖縄ネットワーク,生活保護支援ネットワーク静岡,NPO法人くまもと支援の会,NPO法人神戸の冬を支える会,生活保障支援ボランティアの会,反貧困ネットワーク大阪,八尾生活と健康を守る会,平野生活と健康を守る会,住之江生活と健康を守る会,吹田生活と健康を守る会,枚方交野生活と健康を守る会,門真・守口生活と健康を守る会,富田林生活と健康を守る会,松原生活と健康を守る会,住吉生活と健康を守る会,東住吉生活と健康を守る会,岸和田生活と健康を守る会,此花生活と健康を守る会,浪速生活と健康を守る会,摂津生活と健康を守る会,愛媛・人間らしく生きたい裁判弁護団,安心できる介護を!懇談会,全国金属機械労働組合港合同,全国金属機械労働組合港合同田中機械支部,全国金属機械労働組合港合同大熊鉄工支部,地域でつくる子どもの居場所・はぐくみ,フードバンク滋賀(以上75団体)



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福祉事務所から「一年に1回資産申告をしてもらうことになった」と資産申告書や通帳の提示を求められたりすることが、増えています。

これについて、各地でトラブルが発生しています。
どう対応すべきか、以下のQ&Aにまとめましたので、これを拡散して下さい。
「あきらめないで闘うすべはある。」を合い言葉に、対抗していきましょう!

当会では、この内容をパンフレットにまとめ、配布しております(各福祉事務所にも送付手続中です)。

ぜひ、団体内や生活保護利用者への周知、相談活動などにお役立て下さい。
団体だけでなく、個人からの申込みも可能です。各地での運動にご活用下さい。

申込みの方法
(1)ネットから申し込む  
  申込みフォーム→http://my.formman.com/form/pc/4yGeACW4HMu3isGg/
(2)FAXで申し込む
  ①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を明記の上、072-970-2233までFAXをお送り下さい。
(3)メールで申しこむ
  メール(seihokaigi@hotmail.co.jp)にて①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を、お送り下さい。

なお、恐縮ですが、印刷協力金として費用のご負担(1口50部:1500円)をお願いしております。
なるべく多く印刷して、拡散させたいと思いますので、ご協力の程、よろしくお願いします!
 

 ※口数10口以上の場合は、費用のご相談に応じます。
 ※送料のご負担をお願いします。
 ※生活保護利用者のみの団体の方は、協力金は不要です。


パンフレットのPDFファイル(DLフリー) 
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資産申告書Q&Aパンフ










いったい、どうなってるの?
資産申告書問題Q&A
あきらめないで!闘うすべはある。


【「資産申告書問題」とは?】
Q1 ケースワーカーから「これからは年1回、資産申告書を提出してもらうよう取扱いが変わった」と聞きましたが、本当ですか。

A 本当です。
厚生労働省が平成27年3月31日に新たな通知を出しました。


厚生労働省社会・援護局保護課長は,平成27年3月31日,実施要領の取扱いを変更する通知(社援保発0331第1号。以下,「本件通知」といいます。)を出しました。そこでは,「被保護者の現金,預金,動産,不動産等の資産に関する申告の時期及び回数については,少なくとも12箇月ごとに行わせること」とされ,これまでは保護申請時のみに要求していた資産申告について,今後は最低年1回資産申告を求めることとされています。

これを踏まえ,各地で,生活保護利用中の者に対し,資産申告書の提出や通帳の提示等を求める運用が始まっていますが,単に任意の協力を求めるにとどまらず,事実上これを強制する扱いが横行しているため,生活保護利用者の中に不安と動揺が広まっています。

【年1回の資産申告書提出は法的な義務?】
Q2 年1回資産申告書を提出することは法律上の義務で必ず従わなければならないのでしょうか?


A 具体的必要性がないのに,年1回資産申告書の提出をしなければならない法律上の義務はありません。あくまで任意の協力を求めるものであり,提出を強制することは許されません。

生活保護法61条は,生活保護利用者の生計の状況に変動があった場合に届け出義務を課していますが,こうした変動がないにもかかわらず機械的定期的に届け出義務を課してはいません。
また,同法28条1項は,保護の決定若しくは実施のために具体的な必要性がある場合に福祉事務所の調査権限を認めていますが,一般的抽象的な調査権限を認めてはいません。
 したがって,本件通知が生活保護利用者の任意の協力を求めるものではなく義務を課すものであるとすれば,生活保護法61条と同法28条1項の趣旨に反し違法であると解されます。

 厚生労働省は,本件通知について,「平成26年7月に施行された改正法の第60条において,生活保護受給者の適切な家計管理を促す観点から,生活保護受給者が主体的に生計の状況を適切に把握する責務を法律上に具体的に規定し,福祉事務所が必要に応じて円滑に支援することを可能としたことを踏まえ,生活保護受給者から少なくとも年に1回の資産申告を求め,福祉事務所が預貯金等の資産の状況を適切に把握することについて,実施要領等の改正を行う」ものと説明しています(平成27年3月全国生活保護主管課長会議資料3(2)イ(イ)43頁)。
しかし,同条の改正案の審議にあたり,桝屋厚生労働副大臣(当時)は,

「あくまでも受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であって,この責務を果たさないことをもって保護の停廃止を行うというようなことは考えておりませんし,あってはならないと思っております。議員御懸念のようなことがないよう,こうした法改正の趣旨について,周知徹底を図ってまいりたいと思います。」

と明確に答弁しています(平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員に対する答弁)。これを踏まえ,厚生労働省も,
「健康管理や金銭管理は,あくまで受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であるため,本規定に定める生活上の義務を果たさないことだけをもって,保護の停廃止を行うことは想定していないことに十分ご留意いただくようお願いする。」

 と実施機関に対し特段の留意を求めていたのです(平成26年3月3日全国生活保護主管課長会議資料33ページ,3(4))。
したがって,改正法60条も,本件課長通知が求める資産申告を生活保護利用者に義務付ける根拠にはなり得ません。

●生活保護法61条「被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき(略)は,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない」

●生活保護法28条1項「保護の実施機関は,保護の決定若しくは実施(略)のため必要があると認めるときは,要保護者の資産および収入の状況(略),当該要保護者に対して,報告を求め(略)ることができる」


【協力しないと保護打ち切りに?】
Q3 
ケースワーカーから資産申告書と通帳の写しの提出を求められ、「提出しなければ指導指示違反で保護を打ち切ることもありえる」と言われました。従わないと保護が打ち切られるのでしょうか?


A 指導指示違反による保護の停廃止(打ち切り)は許されません。

 生活保護法62条3項による保護の停廃止の前提となる同法27条に基づく指導指示は,「被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない」とされています(同条2項)。Q2で述べたとおり,具体的必要性が認められないのに機械的に年1回の資産申告を求める本件通知に基づく指導指示は,生活保護法61条や28条1項の趣旨に反し「必要の最少限度」のものとは言えません。生活保護利用者の自発的努力を求めるに過ぎない改正法60条も指導指示の根拠とはなりません。
 協力を得られない生活保護利用者について,どうしても調査が必要と考えるのであれば,生活保護法29条に基づいて金融機関等に対する調査ができますから,利用者からの資産申告書等の提出に固執する必要もありません。

また,「指示違反の程度」と「課される制裁の重さ」はつり合っている必要があり,軽微な指示違反に対して保護の停廃止という重大な制裁を課すことは許されないとされています(比例原則)。仮に,指導指示が有効だとしても,具体的必要性が認められないのに単に資産申告書等を提出しないという軽微な指示違反を理由に保護の停廃止という重大な不利益処分を課すことは比例原則に反し許されません。
生活保護法29条に基づく金融機関等に対する調査の結果,未申告の収入(不正受給)が発覚したとすれば,当該不正受給に対して適切に対応すればよいことです。


【保護費が貯まると打ち切られる?~累積金問題】
Q4 ケースワーカーから通帳の写しを見せるように言われましたが,私の通帳には,保護費を節約して貯めた約150万円の預金が入っています。これが福祉事務所にわかると生活保護は打ち切られてしまうのでしょうか?


A 保護の目的趣旨に反しない預貯金は保有できます。150万円程度であれば、違法不当な目的で貯金していた場合以外は保有が認められるべきです。

1 保護の目的・趣旨に反しない預貯金は保有できる
 現行生活保護制度上,資産の保有は認めるが購入費用までは支給されない耐久消費財などについては,保護費のやり繰りをした累積預貯金で購入することが当然の前提とされています。したがって,累積金があることがわかっても,このような経費のための費用として保有を容認することが基本的な姿勢とされなければならなりません。
このような観点から,最高裁判決を含めた裁判例(※1,※2)や厚生労働省通達(※3)も,保護費を原資とした預貯金は,預貯金の目的が生活保護費支給の目的や趣旨に反するものでない限り,収入認定せず保有を認めるべきとしています。
 したがって,預貯金の使用目的として,①耐久消費財(テレビ,冷蔵庫,洗濯機等の家電製品,布団,食卓,タンス等の家財道具)などの買い換え費用,②子どもの教育費(進学,就学費用で高校等就学費等の保護費で賄えない費用や大学入学にかかる費用),③家族の葬式代(葬儀費用で葬祭扶助では不足する額や墓石等),④その他当該世帯に必要な費用(不意の入院に必要な雑費等)など,それぞれだいたい幾らくらいかの金額も含めて説明できれば,何ら問題なく,そのまま保有し続けることができます。

そして,下記裁判例(※1)は,保有目的が抽象的であっても保護の趣旨目的に反しなければ保有が容認されると述べており,最近,「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて預貯金を収入認定した事案(※4)や,累積金の使途が不明であることのみをもって収入認定を行った事案(※5)について処分の取り消しを命じる裁決も出ています。つまり,保有目的はある程度抽象的なものでもよく,保有目的が保護の趣旨目的に反することの立証責任は福祉事務所の側にあるということです。
したがって,累積預貯金が判明した段階で保有目的が不明確であったとしても,違法不当な目的(例えば覚せい剤購入等)であることが明らかでない限り,保有が認められるべきです。

※1 秋田地裁平成5年4月23日判決
 生活保護費で蓄えた約81万円の預貯金のうち約27万円を収入認定して保護費を減額する処分と,残額についてはその使途を弔慰の用途に限定する指導指示をしたケースについて,「収入認定を受けた収入と支給された保護費は,国が憲法,生活保護法に基づき,健康で文化的な最低限度の生活を維持するために被保護者に保有を許したものであって,こうしたものを源資とする預貯金は,被保護者が最低限度の生活を下回る生活をすることにより蓄えたものということになるから,本来,被保護者の現在の生活を,生活保護法により保障される最低限度の生活水準にまで回復させるためにこそ使用されるべきものである。したがって,このような預貯金は,収入認定してその分保護費を減額することに本来的になじまない性質のものといえる。更に,現実の生活の需要は時により差があり,ある時期において普段よりも多くの出費が予想されることは十分あり得ることであり,そのことは被保護世帯も同様であるから,保護費や収入認定を受けた収入のうち一部を預貯金の形で保有し将来の出費に備えるということもある程度是認せざるを得ないことである。」とし,「生活保護費のみ,あるいは,収入認定された収入と生活保護費のみが源資となった預貯金については,預貯金の目的が,健康で文化的な最低限度の生活の保障,自立更生という生活保護費の支給の目的ないし趣旨に反するようなものでないと認められ,かつ,国民一般の感情からして保有させることに違和感を覚える程度の高額な預貯金でない限りは,これを,収入認定せず,被保護者に保有させることが相当で,このような預貯金は法4条,8条でいう活用すべき資産,金銭等には該当しないというべきである。なお,被告は,具体的な耐久消費財の購入等預貯金の目的が相当具体的で,かつ,それが生活保護法の趣旨に反しない預貯金である場合以外は保有は許されず,将来の不時の出費に備えるという程度では足りないと主張するが,生活保護費と収入認定を受けた収入で形成された預貯金については,前記のような源資の性格からして目的がそこまで具体的でなくとも,生活保護法の目的ないし趣旨に反しないものであれば,これを保有させるべきである。」と判示している。

※2 最高裁平成16年3月16日判決(いわゆる中嶋学資保険訴訟)
「生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(略)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。」として,上記秋田地裁の判断を追認した。

※3 実施要領問答第3の18
「(預貯金の)使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については,活用すべき資産にはあたらない」。

※4 平成27年2月10日石川県知事裁決
 保護費の累積金による預貯金約150万円について「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて収入認定し保護廃止した事案について,事後的に「生涯独り身であることから,将来の入院費用や介護施設入所のための保証金,階段の上り下りが困難になった時の転居費用等のためのものである」との説明がなされていることから,「累積預貯金の使途目的について新たに説明を行っていることについては(略),前審査請求に係る裁決後に判明した事実により,処分内容を検討することは可能であると認められ」,処分庁は,「新たな証言である前記の事実を踏まえ,あらためて累積預貯金の使用目的を聴取した上で処分を決定すべきであった」として保護廃止処分を取り消した。この裁決を受け,処分庁は改めて調査した結果「将来への積み立てという目的があり,生活保護費を充てることが制度に反しているとはいえない」として廃止決定を取り消した。この裁決を受け,処分庁は累積金認定による保護廃止期間の保護費130万6,989円を支給した。

※5 平成27年12月7日高知県知事裁決
 転入移管前に消費した保護費の累積金の使途を確認し,使途不明金約6万円について使用目的が生活保護の趣旨目的に反するものとして収入認定した事案について,「使途不明であることのみを以て,生活保護の趣旨目的に反するとして(略)収入認定を行っている」のは,「生活保護の趣旨目的に反するとする合理的な根拠が示されていないことから,原処分には法第56条に規定する正当な理由があるとは認められない。」として,原処分を取り消した。


2 福祉事務所に求められるケースワーク
東京都運用事例集問8-34(※6)は,一定額を超える預貯金等の保有が判明した場合には,まずは預貯金の目的等を確認し,「保有を容認できない資産性のあるものの購入(略)や一般低所得者との均衡を失するような消費(略)に充てる目的であれば,法の趣旨を説明し目的を変更するよう指導助言すること」とし,「特に目的等がなく単に累積したものである場合」でも,「直ちにこれを収入認定することは適当でなく,まず,最低限度の生活に欠ける部分を補い,生活基盤を回復させるために使うよう指導助言する。必要に応じては,自立更生計画書等の作成を通じて累積金の費消目的を定めながら,より安定した自立の助長を促すことが望ましい」として,事案に応じた適切なケースワークを求めています。
 したがって,ケースワーカーとしては,資産申告書等の提出を求めるに先立ち,①保護費の累積金は預貯金の目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定されないこと,②当該目的はある程度抽象的なものでも良いことを説明し,③累積金が発見され使用目的がない場合でも直ちに収入認定するのではなく,生活基盤の回復に向けて家電製品の買い換えや生活必需品の購入などを助言指導することが求められます。

※6 東京都運用事例集問8-34
 生活基盤の回復に向けた指導助言が必要な理由として,「保護費を繰越しして一定額を超える預貯金を保有するに至った経緯には,単に節約を図っただけでなく,食事や衣料品等の生活必需品を極度に切りつめた生活をしてきた結果当該被保護世帯はどこかに最低限度の生活に欠けるところが生じている可能性が推測される。」と説明している。


3 最大幾らまで保有が許されるか
 金額が幾らまで保有が許されるかについては,世帯の状況によって異なるので一律に基準を示すことは困難ですが,秋田地裁平成5年4月23日判決(※1)では約81万円、平成27年2月10日石川県知事裁決(※4)では約150万円の累積預貯金が認められています。
東京都運用事例集問8-34は,「目安としては,累積金のすべてが目的のない状態であった場合,保護の停廃止の期間の考え方を用いれば,当該世帯の基準生活費の概ね6月分相当の額に達した場合と考えられる」としています。
つまり,家電製品,家財道具等の買い換え費用や教育費,葬式代などその世帯の状況に応じた使途と金額を積み上げた上で,さらに当該世帯の基準生活費の概ね6か月分相当の額(例えば大阪市の単身世帯であれば70万円程度)を加えた額に達して初めて収入認定し保護を打ち切ることが許されるということになります。したがって,単身世帯であっても200万円程度であればそのまま保有を認められるべきことが多いと思われます。


意 見 書


2016年3月9日

別府市長 殿
大分県知事 殿
厚生労働大臣 殿

生活保護支援九州・沖縄ネットワーク
(共同代表)弁護士 永 尾 廣 久
弁護士 椛 島 敏 雅

生活保護問題対策全国会議
(代表幹事)弁護士 尾 藤 廣 喜


第1 意見の趣旨 
1 別府市福祉事務所が,遊技場を訪れていた生活保護利用者25名に対して指導指示を行い,2015年10月5日~30日のうちの5日間に2回以上にわたって遊技場を訪れていた9人に対して行った,生活保護を1~2ヶ月停止する処分(以下「本件処分」という。)は違法である。
2 別府市に対しては,今後,生活保護利用者に対し,遊技場に行かないよう求める指導指示を行わないこと,及び,過去に行った同様の処分も含めて,遊技場への立ち入りを行わないよう求める指導指示への違反を理由とする保護停止処分を速やかに取り消すことを求める。
3 大分県及び厚生労働省に対しては,別府市に対し,上記2の趣旨の指導を行うことを求める。

第2 意見の理由
 1 問題となる事実

新聞報道及び別府市議会インターネット中継によれば,別府市では,生活保護開始時に遊技場に行くのは慎むとする誓約書を生活保護利用者から徴取しており,2015年10月5日ないし30日の間の5日間,市内13のパチンコ店と市営別府競輪場を巡回し,生活保護利用者25人を見つけて市役所に一人ずつ呼び出し,行かないように文書で指導指示した上,調査した5日間で再び見つけた生活保護利用者9人については,支給額の大半を1ヶ月間ないし2ヶ月間停止したとのことである。
また,同市はパチンコ店や競輪場における調査を数十年前から行っており,平成28年3月までに本年度2度目の調査を行うとされている。
上記誓約書提出や調査の根拠について,別府市は,生活保護法(以下「法」という。)60条が「被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」と定めていることを挙げているとのことである。

2 指導指示が違法であること
(1)指導指示の要件を欠くこと

 法27条1項は,「保護の実施機関は,被保護者に対して,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。」と規定しているが,同条2項は,「前項の指導又は指示は,被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない。」としており,同条3項は,「第一項の規定は,被保護者の意に反して,指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」と規定している。
 これは,生活保護が,憲法に由来する権利として行われている以上,生活保護利用者の生活に対する干渉は極力抑えなければならないとする理念に基づくものと解される。
 同条の規定に照らせば,指導指示は,①保護の目的達成に必要なものであること,②生活保護利用者の自由を尊重した必要最小限度のものであること,③生活保護利用者の意に反して強制するものでないことが必要であり,これらの要件を欠く場合には違法となる。
 このように,法が,実施機関の裁量に対して多方面からの制約を課している趣旨について,生活保護法の立法担当者(厚生省保護課長)であった小山進次郎は,次のように述べて,安易な指導指示の濫用を強く戒めている。
 「従来,ともすると生活保護を恩恵的,慈恵的とする風潮が社会の各層においてみられたのであって,そのため保護の実施機関側も被保護者の人格を軽視して必要以上の指導,指示を行い,これがために被保護者の全生活分野において好ましからざる影響を与え,被保護者も亦卑屈感に流れ唯々諾々としてこれに盲従するという極めて好ましくない傾向に陥ることがないではなかったが,この点特に注意し,指導,指示が濫用されぬようにする必要があるのである。換言すれば,生存権の保障は,個人の人格権の侵害を許容するものでは決してないのである(「生活保護法の解釈と運用」414頁)」
「(解釈及び運用の如何によって全能的な指示権の行使とならないよう)その行使の目的と共に,内容及び限界を明確に法律において規定し濫用の起こる余地をなからしめたのである。(同前)」

 これを,パチンコ店や競輪場等(以下「遊技場」という。)に行かないことを求める指導指示(以下「本件指導指示」という。)について検討する。
 まず前提として,生活保護費の使途は生活保護利用者の自由に任されている。すなわち,福岡高裁平成10年10月19日判決(中嶋訴訟)は,
「生活保護制度は,被保護者に人間の尊厳にふさわしい生活を保障することを目的としているものであるところ,人間の尊厳にふさわしい生活の根本は,人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるのであるから,被保護者は,(略)支給された保護費についても,最低限度の生活保障及び自立の助長といった生活保護法の目的から逸脱しない限り,これを自由に使用することができるものというべきである。」
と判示している(保護費使途自由の原則)。そして,パチンコ店などの遊技場へ出入りする行為は,それが生活保護費の範囲内で,ささやかな楽しみ(娯楽)として行われる限りは,何ら法の目的に反するものではない。したがって,遊技場への立入りを禁じる指導指示は①保護の目的達成に必要であるとは当然にはいえない。
また,本件で別府市が立ち入り調査を行ったパチンコ店は違法賭博場で  はなく,一般市民が適法に自由に遊技を行うことができる店舗であるはずである。市営別府競輪場に至っては,別府市自身が運営している公営ギャンブルである。このような遊技場への立入りは,市民としての日常的な行動であって,生活保護利用者だというだけでこのような市民としての自由を制限することは不合理な差別である。本件指導指示は,②生活保護利用者の自由を尊重した必要最少限度のものとは到底いえないし,③生活保護利用者の意に反して強制する指導指示となっている可能性が高い。

なお,別府市としては,生活保護利用者から保護開始時に遊技場に立ち入らないとの誓約書を徴取していることを根拠に,本件指導指示が生活保護利用者の意に反していないというのかもしれない。しかし,生活保護利用者は誓約書を提出しなければ保護を受けられないと誤解し,真意に反して保護を受けるためにやむを得ず誓約書を提出した可能性も大いにある。そもそも,一般市民は自由に出入りできる適法な遊技場に立ち入らないとの誓約書を徴取すること自体,生活保護利用者の私生活に対して過度の制約を課すものであって著しく不適切である。

(2)文書指導・指示の前提としてのケースワークを欠くこと
 確かに,保護費の全額に近い金員をパチンコ等に費消し,生活の維持ができなくなる生活保護利用者もいないではない。今回の指導指示の対象者にそのような者がいたかどうかは不明であるが,仮にいたとすれば,そのような者に対し,何らかの対策を講じることまで否定されるべきではない。しかし,そうだとしても,いきなり文書による指導指示をして停止を行った今回の処分は違法である。

 すなわち,法27条の趣旨について,小山は,
「(「自由を尊重」の趣旨は)当該被保護者の能力,社会的関係等の具体的事情からみて,その者が人間として存在する上において必要とする人格を確保するに足る自由を維持しつつ,指導,指示に服従し得るものでなければならない。(同前・415頁)」,「その具体的要領を詳細に記載した書面を交付して被保護者に十分に熟知,徹底せしめる必要がある。(同前・416頁)」,「指導,指示は単純にして形式的なものに止めることなく,社会福祉主事等をして被保護者の家庭訪問を励行せしめ,指導,指示の結果を常に具体的に把握してこれを検討し,更によりよき適切,妥当な指導,指示を行うことが必要である。(同前)」
と述べている。つまり,指導指示が形式的にならないよう,当該生活保護利用者の能力や置かれている状況に合わせて,口頭(面談)及び書面の双方によって十分に説明し,できる限り,生活保護利用者が納得して自発的に指導指示に従うよう,最大限の努力をすることを実施機関に求めているのである。

この点,保護の実施要領第9の2もまた,法27条の指導指示について,次のように定めている。
「(3)指導指示を行うにあたっては,必要に応じて,事前に調査,検診命令等を行い状況の把握に努めるとともに本人の能力,健康状態,世帯の事情,地域の慣行等に配慮し,指導指示が形式化することのないよう十分留意すること。」
「(4)法第27条による指導指示は,口頭により直接当該被保護者(略)に対して行うことを原則とするが,これによって目的を達せられなかったとき,または目的を達せられないと認められるとき,及びその他の事由で口頭によりがたいときは,文書による指導指示を行うこととする。」

生活保護は,「ケースワーク付きの金銭給付制度」と言われることがあるが,保護の実施要領をまとめた「生活保護手帳」の冒頭には,「生活保護実施の態度」と題し,福祉事務所職員の基本的な心得として,次のとおり記載されている。
「4 被保護者の立場を理解し,そのよき相談相手となるように努めること。
(略)被保護者の個々についてその性格や環境を把握理解し,それに応じた積極的な援助をたゆまず行うようつとめること。」
「6 被保護者の協力を得られるよう常に配意すること。
(略)法令に定める責務について被保護者が進んでこれを果すよう配意すること。」
法27条の指導指示に関する保護の実施要領の規定(第9の2(3)(4))は,先にも述べたとおり,できる限り生活保護利用者が納得して自発的に指導指示に従い得るように,生活保護利用者が置かれている具体的状況に合わせて,口頭で十分に説明することの重要性を具体化したものである。すなわち,法62条3項に基づく制裁に近づいていく文書による指導指示に先立ち,ケースワーク的な援助と配意をもって,まずは,口頭での指導指示を行うことを求めた。例外的に口頭による指導指示を省略し得る「目的を達せられないと認められるとき」とは,口頭による指導指示に効果がないことが明確である場合を意味すると解されるが,一度も口頭指導を行わずに,そのように断定できる場合は通常は想定し得ない。また,「その他の事由で口頭によりがたいとき」とは,生活保護利用者に聴覚障害があって耳が聞こえない場合や生活保護利用者が面談を拒否するなどして会うことができない場合などが想定される。

 以上のとおり,文書による指導指示の前に,口頭による十分な説明と指導(すなわちケースワーク)を行うことは,法27条の極めて重要な要請であると言える。
 ギャンブル依存症のために遊技場等に入り浸っている生活保護利用者がいたとすれば,そのような者に対して,単に文書で高圧的に遊技場への出入りを禁じても何らの実効性がない。依存症治療のための専門的な医療機関や自助グループにつなげるケースワーク的な口頭の指導こそ必要であることは依存症者への対人援助の常識である。したがって,かかる本人の自発的服従を促す口頭による指導,すなわちケースワークの努力を一切放棄して,文書指導と停止を行った本件処分が違法であることは明らかである。

3 保護停止処分が違法であること
「被保護者の自由を侵害し,必要の最少限度を越えた指導,指示は,保護の実施機関の無権限に基く無効であり,取り消し得べき行為に止まるものではなく,被保護者はこれに従う必要はなく,又その違反の由をもって保護の変更,停止又は廃止の処分をすることはできない(前掲小山・416頁)」。法27条1項に基づく指導指示が違法である場合,その指導又は指示に従わなかったことを理由にされた保護の停止や廃止等の不利益処分は,当然に違法となる。
 上記2で述べたように,本件指導指示は法27条に反し違法であるから,9人の生活保護利用者に対してなされた本件指導指示違反に基づく保護停止処分も違法となる。
 また,実施機関が,法62条3項に基づく制裁権限を発動して,生活保護利用者に対し,保護の変更,停止又は廃止という不利益処分を課す際には,法の一般原則である比例原則が当然に適用され,その意味でも本件停止処分は違法であるから,この点についても念のため付言する。
 すなわち,比例原則には,①手段は目的に適合したものでなければならないという「目的適合性の原則」,②手段は目的達成に必要不可欠なものでなければならないという「必要性の原則」,③目的達成によって得る利益と犠牲(コスト)とを比較して,コストが利益を上回る場合には,目的達成(追求)自体を断念しなければならないという「均衡の原則」という3つの要請が含まれている(稲葉馨・人見剛・村上裕章・前田雅子「行政法・第2版」有斐閣・41頁)。すなわち,科される不利益処分は,指導指示違反の程度や悪質性に適合し,均衡している必要があり,軽微で悪質性を欠く違反に対して,停止や廃止等の重大な不利益処分を科すことは許されないのである。
 この点,実施機関が同法62条3項に基づいて制裁的に保護の変更,停止又は廃止をする場合に拠るべき手順について,実施要領問答第11の1は,次のように規定している。
「1 当該指導指示の内容が比較的軽微な場合は,その実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行うこと。
2 1によることが適当でない場合は保護を停止することとし,当該被保護者が指導指示に従ったとき,又は事情の変更により指導指示を必要とした事由がなくなったときは,停止を解除すること。
なお,保護を停止した後においても引き続き指導指示に従わないでいる場合には,さらに書面による指導指示を行うこととし,これによってもなお従わない場合は,法62条の規定により所定の手続を経たうえ,保護を廃止すること。」
以上のとおり,問答第11の1が,①当該指導指示の内容が比較的軽微な場合は,その実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行うこと,②これによることが適当でない場合(つまり,指導指示の内容が軽微とはいえない場合)は保護を停止することとし,保護を停止した後においても引き続き指導指示に従わないでいる場合には,さらに書面による指導指示を行うこととし,これによってもなお従わない場合は,法62条の規定により所定の手続を経たうえ,保護を廃止することとしており,指示内容の軽重,違反態様の悪質性等に応じて,不利益処分の程度を加重していく内容となっているのも,まさしく比例原則のあらわれである。
ここで留意しなければならないのは,指導指示の内容が比較的軽微な場合には,あくまでも①によって「実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行う」べきとされている点である。生活保護の停止処分が,他に最低生活を維持する収入のない被処分者にとっては生命に危険を及ぼしかねない重大な不利益を被る処分であること,並びに,生活保護の停廃止は憲法及び生活保護法によって無差別平等に認められた生活保護受給権を剥奪する処分であることに鑑みれば,特に厳格に比例関係が要求されなければならず,停止処分を行うには,当該指導指示に従わなければ保護の要件を欠くことになる場合など(例えば,真に保有が容認されず客観的にも容易に売却可能な,高額な資産を売却しないなど),あえて重大な不利益処分を科してまでも是正しなければならない違法状態があることが必要であることはもちろんである。また,例え重大な違法があったとしても,保護停止処分によって被処分者の生命身体に危険が及ぶようなことになってはならないから,その場合には保護変更により対応すべきであって,いきなり停止処分をすることは許されない。
 したがって,当該指導指示が,それに従わなければ保護の要件を欠くことになるなど法の趣旨に照らして重要な指導指示であること,かつ,指導指示違反の態様も悪質であること,さらに,保護停止となっても直ちに被処分者の生命身体に危険が及ばないことが明らかであるという場合に初めて,保護停止処分が許容されると解される。
 しかるところ,本件指導指示は,それに従わなければ保護の要件を欠くことになるような重要な指導指示とはいえない。また,生活保護利用者の行為は,支給された保護費の範囲内で,一般市民が利用を許されている適法なパチンコ店でパチンコを楽しんだに過ぎず,パチンコに使う保護費を追加支給せよと要求したわけではなく,何ら虚偽の申告をしたり,不正の手段を用いたりしたわけでもないのであって,指導指示違反があったとしても,その程度は極めて軽微である。仮に,これを比較的軽微でなかったと解するとしても,生活保護利用者らは,保護の停止によって直ちに困窮状態に陥ることが容易に予想されるのであるから,本件停止処分は,相当性を欠き,法62条3項に反し,違法である(北九州市障害者自動車保有事件に関する福岡地方裁判所平成21年5月29日判決参照)。

4 仮に弁明の機会が与えられていないとすれば,その点でも違法であること
 新聞報道等からは,9人の生活保護利用者に対して保護停止処分を行うに際し,弁明の機会を与えたのか否かが判然としない。
仮に弁明の機会を与えていないのであれば,停止処分は手続的にも違法である。

5 結語  
 以上のとおり,本件指導指示は法27条の趣旨に反し違法であり,本件停止処分も違法な指導指示違反を根拠とするものであって,かつ保護の要件に関わらない軽微な指導指示違反を理由とするものであるから違法である。
そこで,意見の趣旨記載のとおり,別府市に対しては今後の同様の指導指示の中止と,過去分も含めての停止処分の速やかな取消し,大分県及び厚生労働省に対しては別府市がこれらの措置をとるよう指導することを強く求めるものである。

以上


当会は、現在、保護課長通知に端を発して各地の福祉事務所でトラブルが発生している資産申告書提出問題について、2月1日、厚生労働大臣に対して、以下のとおり、保護課長通知の撤回等を求める要望書を提出いたしました。
なお、この件についてはQ&Aパンフレットを作成して頒布する予定です。



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2016(平成27)年2月1日

厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿

資産申告書に関する保護課長通知の
撤回等を求める要望書
 
             
生活保護問題対策全国会議
                       代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨

1 生活保護利用者に対して最低年1回の資産申告を行わせるよう求める平成27年3月31日付厚生労働省社会・援護局長保護課長通知(社援保発0331第1号)は,生活保護法28条1項,60条及び61条の趣旨に反するので撤回されたい。

2 上記通知を撤回しないのであれば,通知の運用にあたって以下の諸点に留意し,生活保護利用者に対しても十分な周知説明を行うよう実施機関に周知されたい。
(1)上記通知が求める定期的な資産申告は生活保護利用者の義務ではなく,あくまでも被保護者の自発的協力を求める範囲で許容されるものであり,ましてや,保護の停廃止を前提とする生活保護法27条に基づく指導指示の対象となり得ないこと。
(2)保護費のやり繰りによって生じた預貯金等については,
① その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない場合には保有が容認されること,
② 使用目的はある程度抽象的でも良いこと,
③ 使用目的が生活保護の趣旨目的に反することの立証責任が実施機関の側にあること,
④ 目的がない場合でも生活基盤の回復に向けた助言指導が必要であること。

第2 要望の理由
1 はじめに

 厚生労働省社会・援護局保護課長は,平成27年3月31日,実施要領の取扱いを変更する通知(社援保発0331第1号。以下,「本件通知」という。)を発した。そこでは,「被保護者の現金,預金,動産,不動産等の資産に関する申告の時期及び回数については,少なくとも12箇月ごとに行わせること」とされ,これまでは保護申請時のみに要求していた資産申告について,今後は最低年1回資産申告を求めることとされている。
これを踏まえ,各地で,生活保護利用中の者に対し,資産申告書の提出や通帳の提示等を求める運用が始まっているが,単に任意の協力を求めるにとどまらず,事実上これを強制する扱いが横行しているため,生活保護利用者の中に不安と動揺が広まっている。

2 会計検査院の指摘は金銭管理能力の不十分な被保護者に対するものである
本件通知発出の契機となった会計検査院の指摘は,「金銭の管理を委ねている救護施設入所者」及び「金銭の管理を委ねているグループホーム等入居者」の手持金に関するものである。換言すれば,金銭管理能力が不十分で,かつ,施設等に入所しているため累積金費消の必要性が類型的に乏しい被保護者の手持金に関するものである。
このような場合であっても,後述する東京都のような丁寧なケースワークが求められるところであるが,かかる会計検査院の指摘を一般の保護利用世帯(金銭管理能力があり,後述するような累積金費消の必要性があるのが通常である)の保護費の累積金にまで拡大することは明らかな過剰反応である。

3 本件通知は生活保護法の趣旨に反する
生活保護法61条は,「被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき(略)は,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない」と規定している。これは,生計の状況に変動があった場合に限り届け出義務を課すもので,こうした変動がないにもかかわらず機械的定期的な届け出義務を課すものではない。
また,同法28条1項は,「保護の実施機関は,保護の決定若しくは実施(略)のため必要があると認めるときは,要保護者の資産および収入の状況(略),当該要保護者に対して,報告を求め(略)ることができる」と規定している。これは,具体的な必要性が認められる場合に限り調査権限を認めるもので,かかる必要性が認められない場合に一般的抽象的な調査権限を認めるものではない。
 しかるに,本件通知が生活保護利用者の任意の協力を求めるものではなく義務を課すものであるとすれば,生計の状況に変動がない被保護者に対して機械的定期的に届け出義務を課し,具体的必要性が認められない場合に一般的抽象的に調査をする点において,生活保護法61条及び同法28条1項の趣旨に反し違法であると解される。
 ところで,厚生労働省は,本件通知について,「平成26年7月に施行された改正法の第60条において,生活保護受給者の適切な家計管理を促す観点から,生活保護受給者が主体的に生計の状況を適切に把握する責務を法律上に具体的に規定し,福祉事務所が必要に応じて円滑に支援することを可能としたことを踏まえ,生活保護受給者から少なくとも年に1回の資産申告を求め,福祉事務所が預貯金等の資産の状況を適切に把握することについて,実施要領等の改正を行う」ものと説明している(平成27年3月全国生活保護主管課長会議資料3(2)イ(イ)43頁)。しかしながら,同条の改正案の審議にあたり,桝屋厚生労働副大臣(当時)は,「あくまでも受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であって,この責務を果たさないことをもって保護の停廃止を行うというようなことは考えておりませんし,あってはならないと思っております。議員御懸念のようなことがないよう,こうした法改正の趣旨について,周知徹底を図ってまいりたいと思います。」と明確に答弁している(平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員に対する答弁)。これを踏まえ,厚生労働省も,「健康管理や金銭管理は,あくまで受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であるため,本規定に定める生活上の義務を果たさないことだけをもって,保護の停廃止を行うことは想定していないことに十分ご留意いただくようお願いする。」と実施機関に対し特段の留意を求めていたのである(平成26年3月3日全国生活保護主管課長会議資料33ページ,3(4))。
したがって,改正法60条が,本件課長通知が求める資産申告を生活保護利用者に義務付ける根拠になり得ないことは明らかである。
以上から,本件課長通知は,あくまで生活保護利用者の自発的協力を求める範囲で許容されるものであり,同通知を根拠として資産申告書の画一的提出等を事実上強制する運用が行われれば,生活保護法28条1項,60条及び61条に違反し違法であることとなる。本件課長通知は,実施機関がかかる違法な運用を行う契機となり,現場に無用の混乱を発生させるものであるから撤回されるべきである。少なくとも,生活保護利用者に対して自発的協力を求めることが許されるにとどまり,資産申告書の提出を義務付けるものでないことについて周知徹底するべきである。

4 資産申告書不提出の者に対して指導指示違反の停廃止を行うことは許されない
 本件通知に基づいて資産申告書の提出等を求められたにもかかわらず,協力しない生活保護利用者がいた場合,指導指示違反により保護の停廃止を行うことは許されない。その意味において,生活保護利用者は本件通知に基づく資産申告書の提出に従う法的義務があるわけではない。
 なぜなら,生活保護法62条3項による保護の停廃止の前提となる同法27条に基づく指導指示は,「被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない」とされているところ(同条2項),上記のとおり,具体的必要性が認められないにもかかわらず機械的に年1回の資産申告を求める本件通知に基づく指導指示は,生活保護法61条及び28条1項の趣旨に反し「必要の最少限度」のものとは言えないからである。ましてや,先にも述べたとおり,生活保護利用者の自発的努力を求めるに過ぎない改正法60条が法27条に基づく指導指示の根拠となり得ないことは,より一層明らかである。実施機関の側がどうしても年1回預貯金の状況を確認する必要があると考えるのであれば,協力を得られない生活保護利用者については,生活保護法29条に基づいて金融機関等に対する調査を実施すれば良い話であって,生活保護利用者からの資産申告書等の提出に固執する必要はない。
また,仮に指導指示が有効であるとしても,指示違反の程度と課される制裁の重さは比例均衡している必要があり,軽微な指示違反に対して保護の停廃止という重大な制裁を課すことは許されないこと(比例原則)からすれば,具体的必要性が認められないのに単に資産申告書等を提出しないという軽微な指示違反を理由に保護の停廃止という重大な不利益処分を課すことは比例原則に反し許されない。前述のとおり,生活保護法29条に基づく金融機関等に対する調査の結果,未申告の収入(不正受給)が発覚したとすれば,当該不正受給に対して厳正に対処すれば良いのであって,法的義務ではない年1回の資産申告書等の不提出に対する制裁等を科す必要はない。
厚生労働省は,かかる法的解釈についても,実施機関に対して十分に周知するべきである。

5 保護費の累積金の収入認定は原則として許されない
 本件通知に基づいて資産申告書の提出等が行われた場合,保護費をやりくりした貯蓄の存在が明らかになることが予想される。かかる預貯金の存在が判明することで保護を打ち切られるのではないかとの不安を抱く生活保護利用者も少なくない。
 しかし,現行生活保護制度上,資産の保有は認めるが購入費用までは支給されない耐久消費財(テレビ、冷蔵庫、洗濯機等)などについては,保護費のやり繰りをした累積預貯金で購入することが当然の前提とされている。また子どもの進学,就学費用で高校等就学費等の保護費で賄えない費用や大学入学にかかる費用,さらに高齢者の葬儀費用で葬祭扶助では不足する額や墓石等も同様である。不意の入院等に必要な雑費等の備えも必要である。
生活保護制度自体がこのような保護費累積金を当然の前提としている以上,累積金があることがわかっても,このような経費のための費用として保有を容認することが基本的な姿勢とされなければならない。
 このような観点から,最高裁判決を含めた裁判例(※1※2)や厚生労働省通達(※3)も,保護費を原資とした預貯金は,預貯金の目的が生活保護費支給の目的や趣旨に反するものでない限り,収入認定せず保有を認めるべきとしている。そして,秋田地裁判決(※1)は,保有目的が抽象的であっても保護の趣旨目的に反しなければ保有が容認される旨判示しており,近時,「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて預貯金を収入認定して保護廃止した事案(※4)や,累積金の使途が不明であることのみをもって生活保護の趣旨目的に反するとして収入認定を行った事案(※5)について処分の取り消しを命じる裁決も言い渡されている。
 また,東京都運用事例集問8-34は,一定額を超える預貯金等の保有が判明した場合には,まずは預貯金の目的等を確認し,「保有を容認できない資産性のあるものの購入(略)や一般低所得者との均衡を失するような消費(略)に充てる目的であれば,法の趣旨を説明し目的を変更するよう指導助言すること」とし,「特に目的等がなく単に累積したものである場合」でも,「直ちにこれを収入認定することは適当でなく,まず,最低限度の生活に欠ける部分を補い,生活基盤を回復させるために使うよう指導助言する。必要に応じては,自立更生計画書等の作成を通じて累積金の費消目的を定めながら,より安定した自立の助長を促すことが望ましい」として,事案に応じた適切なケースワークを求めている(※6)。
 したがって,資産申告書等の提出を求めるに先立ち,保護費の累積金については,預貯金の目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定されないこと,当該目的はある程度抽象的なものでも良いこと及び目的がない場合でも生活基盤の回復に向けた助言指導が必要であることを実施機関及び生活保護利用者に対して周知徹底すべきである。
以 上
 
 
※1 秋田地裁平成5年4月23日判決は,生活保護費で蓄えた約81万円の預貯金のうち約27万円を収入認定して保護費を減額する処分と,残額についてはその使途を弔慰の用途に限定する指導指示をしたケースについて,「収入認定を受けた収入と支給された保護費は,国が憲法,生活保護法に基づき,健康で文化的な最低限度の生活を維持するために被保護者に保有を許したものであって,こうしたものを源資とする預貯金は,被保護者が最低限度の生活を下回る生活をすることにより蓄えたものということになるから,本来,被保護者の現在の生活を,生活保護法により保障される最低限度の生活水準にまで回復させるためにこそ使用されるべきものである。したがって,このような預貯金は,収入認定してその分保護費を減額することに本来的になじまない性質のものといえる。更に,現実の生活の需要は時により差があり,ある時期において普段よりも多くの出費が予想されることは十分あり得ることであり,そのことは被保護世帯も同様であるから,保護費や収入認定を受けた収入のうち一部を預貯金の形で保有し将来の出費に備えるということもある程度是認せざるを得ないことである。」とし,「生活保護費のみ,あるいは,収入認定された収入と生活保護費のみが源資となった預貯金については,預貯金の目的が,健康で文化的な最低限度の生活の保障,自立更生という生活保護費の支給の目的ないし趣旨に反するようなものでないと認められ,かつ,国民一般の感情からして保有させることに違和感を覚える程度の高額な預貯金でない限りは,これを,収入認定せず,被保護者に保有させることが相当で,このような預貯金は法4条,8条でいう活用すべき資産,金銭等には該当しないというべきである。なお,被告は,具体的な耐久消費財の購入等預貯金の目的が相当具体的で,かつ,それが生活保護法の趣旨に反しない預貯金である場合以外は保有は許されず,将来の不時の出費に備えるという程度では足りないと主張するが,生活保護費と収入認定を受けた収入で形成された預貯金については,前記のような源資の性格からして目的がそこまで具体的でなくとも,生活保護法の目的ないし趣旨に反しないものであれば,これを保有させるべきである。」と判示している。

※2 最高裁平成16年3月16日判決(いわゆる中嶋学資保険訴訟)も,「生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(略)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。」として,上記秋田地裁の判断を追認した。

※3 実施要領問答第3の18「(預貯金の)使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については,活用すべき資産にはあたらない」。

※4 平成27年2月10日石川県知事裁決は,保護費の累積金による預貯金約150万円について「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて収入認定し保護廃止した事案について,事後的に「生涯独り身であることから,将来の入院費用や介護施設入所のための保証金,階段の上り下りが困難になった時の転居費用等のためのものである」との説明がなされていることから,「累積預貯金の使途目的について新たに説明を行っていることについては(略),前審査請求に係る裁決後に判明した事実により,処分内容を検討することは可能であると認められ」,処分庁は,「新たな証言である前記の事実を踏まえ,あらためて累積預貯金の使用目的を聴取した上で処分を決定すべきであった」として保護廃止処分を取り消した。この裁決を受け,処分庁は累積金認定による保護廃止期間の保護費130万6,989円を支給した。

※5 平成27年12月7日高知県知事裁決は,転入移管前に消費した保護費の累積金の使途を確認し,使途不明金約6万円について使用目的が生活保護の趣旨目的に反するものとして収入認定した事案について,「使途不明であることのみを以て,生活保護の趣旨目的に反するとして(略)収入認定を行っている」のは,「生活保護の趣旨目的に反するとする合理的な根拠が示されていないことから,原処分には法第56条に規定する正当な理由があるとは認められない。」として,原処分を取り消し,「使用目的が生活保護の趣旨目的に反すること」の立証責任が実施機関側にあることを明らかにした。

※6 東京都運用事例集問8-34は,生活基盤の回復に向けた指導助言が必要な理由として,「保護費を繰越しして一定額を超える預貯金を保有するに至った経緯には,単に節約を図っただけでなく,食事や衣料品等の生活必需品を極度に切りつめた生活をしてきた結果当該被保護世帯はどこかに最低限度の生活に欠けるところが生じている可能性が推測される。」と説明している。なお,同問答は,「保有を容認する範囲を超えた額の基準(目安)」について,「一律に定めることは困難である。世帯の状況を把握したうえで,慎重に見極める必要がある」としつつも,「目安としては,累積金のすべてが目的のない状態であった場合,保護の停廃止の期間の考え方を用いれば,当該世帯の基準生活費の概ね6月分相当の額に達した場合と考えられる」としている点も参考になる。




2015(平成27)年10月6日


「就学援助実施状況等調査」結果発表をふまえた緊急声明

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


 本日,文部科学省は,就学援助実施状況等に関する調査結果を発表した。
→「平成25年度就学援助実施状況等調査」等結果

 同省の発表によると,次のとおり,平成27年度の準要保護認定基準にかかる生活扶助基準の見直しに伴う影響が生じていない市町村数は1734(98.5%)で対前年度比で2.5ポイント改善しているという。
 しかしながら,実際は,影響が生じていると思われるにもかかわらず,「影響が生じていない市町村数」に分類されている自治体が少なからず存在し,上記の文科省の発表には,生活保護基準の引き下げによる就学援助認定基準への波及効果を小さく見せるための看過しがたい数値操作がなされている。

 まず,「25年度に対象であった世帯等については,25年8月以前の基準を踏まえて認定」するという179の自治体においては,新規ケースは生活保護基準の引き下げに伴って下げられた認定基準によって判断されることになるので,本来は「影響が生じる自治体」に分類されるべきである。「特別な事情のある世帯については,別の生活保護基準に一定の係数を掛けた基準額を用いて認定」するという6の自治体についても,特別の事情のない世帯については影響が生じるので,同様である。そうすると,少なくとも212(179+6+27)の自治体が影響を受けるのであり,その割合は12.0%にのぼる。
 また,就学援助の準要保護認定基準に「生活保護基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額が変わると自動的に要件が変わるもの)」を採用している865自治体のうち,「係数を維持した」という自治体が188,「その他」と回答した自治体が218もあり,同基準に「生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額を参照して額を定めているもの)」を採用している265の自治体のうち,「認定基準を下げた」という自治体が18,「その他」と答えた自治体が38もある。これらの自治体も,少なくとも潜在的には生活保護基準引き下げの影響を受ける可能性がある。実際,文科省の発表によっても,「直接的な対応を行っていない自治体」の数は,昨年9月時点の17から27に大きく増えている。現在は影響が出ないよう特別対応を行っている自治体も,自治体財政厳しき折柄,時の経過とともに特別対応を止めることが容易に予想される。そうすると,674(188+218+18+38+212)の自治体が影響を受ける可能性があるのであり,その割合は実に38.3%に上る。
 私たちは,生活保護基準の引き下げによって,同基準を参照して認定基準を定めている多くの低所得者施策が影響を受けることになる旨繰り返し指摘してきた。これに対し,国は,「影響が及ばないよう対応するから問題ない」と弁明してきた。しかし,今回の調査結果の発表によっても,国の弁明が単なる建て前に過ぎないことが明らかとなった。そして,生活保護基準が憲法25条の保障する生存権保障水準を示すナショナル・ミニマムである以上,時の経過とともに,生活保護基準引き下げの影響を受ける諸制度の利用者数が激増していくことは火を見るよりも明らかである。
 問題の根本的解決のためには,根幹となる生活保護基準をもとに戻すしかない。私たちは,国が道理なく強行した生活保護基準の引き下げを撤回するよう,改めて強く求めるものである。

以上


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