140325生活保護問題院内集会

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「窓口の運用は変えない」という国会答弁は
ウソだったのか?
 

今年2月27日に発表された「改正」生活保護法に関する省令案(3月28日までパブリックコメントを募集中)に、さまざまな疑念が寄せられています。
昨年の国会では、申請手続きや親族の扶養義務について議論がおこなわれ、その一部は法案の修正や附帯決議という形で反映されました。しかし、厚生労働省が発表した省令案はこれらの議論を全く踏まえない内容になっています。
各地で「改正」法に対する懸念を先取りするような問題ケースも相次いでいます。

また、昨年8月に始まった生活保護基準引き下げに対しては佐賀で裁判が提起されるなど抗議の声が高まっています。4月1日には断行される第2弾の生活保護基準引き下げを前に、改めて基準引き下げの問題点も検証します。

ぜひ多数ご参集ください。

●日時 2014年3月25日(火)12:00~14:00   

●場所 衆議院第2議員会館 多目的会議室      


一般参加の方は11:45から第2議員会館1階ロビーで通行証を配布します。
 定員は140名(先着順)です。定員を超えた場合ご参加いただけませんので
 ご了承下さい。

●プログラム(敬称略)                              

  ■ 当事者による開会宣言 川西 浩之

  第1部 基調報告
    「生活扶助相当CPI」の問題点と基準引き下げの最新情勢
         森田 基彦(弁護士)
        
  第2部 
   ・基調報告「法『改正』の問題と省令案、何が問題なのか?」
         小久保 哲郎 (弁護士) 

   ・報告「各地で頻発する『水際作戦』」
         今岡直之(NPO法人POSSE)
         稲葉剛
         (NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)

           
  まとめ~厚労大臣裁決や各種勝訴判決の成果も踏まえて 
      尾藤廣喜 (弁護士)

  この他当事者・支援者の声

【司会】雨宮処凛(作家)


【主催】生活保護問題対策全国会議
   


 田村厚生労働大臣が、3月7日の衆議院厚生労働委員会において、高橋千鶴子議員の質問に答えて、「(省令案については)パブコメのご意見を踏まえて対応させていただきたい」と繰り返し答弁し、パブリックコメントをふまえての修正に含みを持たせています。

 一つでも多くのパブリックコメントを厚生労働省に送って、このとんでもない省令案の修正を求めましょう。
 短くても構いません。ひと言でも構いません。

 パブコメは数です。多くの方の声を集まれば、力になります。
 まだ送ってなかったという方、ぜひよろしくお願いします!


パブコメ募集について
 ★提出方法もご案内してます。
《呼びかけ》国会審議を裏切る「改正」生活保護法省令案について、パブリックコメントを厚生労働省に送りましょう!



2014年3月7日 (金) 衆議院厚生労働委員会
動画→http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=43616&media_type=fp

(1:13:57頃~)
高橋千鶴子議員:…次にですね、改正生活保護法、昨年の12月6日に成立をいたしました、この政省令について、現在パブリックコメントを3月28日締め切りで行って、4月上旬公布を目指していると聞いております。5日付の東京新聞では水際作戦が助長されるとして批判され修正された元々の政府原案に近いものになっているのではないかという指摘をして、「まず書面」という形に逆戻りだとか、「国会の議論くみ取らず」、これがもし事実であれば重要な指摘でありますけどね、そのように指摘をしているんです。で、実際どうなのかということを確認をしたいと思います。資料に問題となった24条部分の省令案を示しました。で、アンダーラインのところなんですね、問題は。保護の開始時の申請、申請書を提出して、提出して行うものとすると、いう形で、これ、政府原案は「提出してしなければならない」というのがあったわけです。これに近い物になってしまったんではないか、国会のその後の議論がまた元に戻ったような気がいたしますが、なぜそうしたのか、大臣。

田村厚生労働大臣:もともと政府原案がですね、「申請書を保護の実施機関に提出してしなければならない」ということであったわけですけれども、成立したときには修正がありまして、「提出しなければならない」という風に修正された、今、委員の仰ったとおりであります。今回の省令は、パブコメ案ではですね、「提出して行うものとする」という風になっておりますから、その点に関して、ご心配をお持ちをいただいておるんだと思いますけれども、あくまでも申請書を提出してする場合の手続について規定したわけでありまして、申請書を作成することができない特別の事情があると認めた場合はこの限りではないというように但し書きで書かしていただいておる訳であります。これ自体がまたお気に召さないというご意見もあるわけではありますが、いずれにいたしましても、そういうご心配もございますので、パブコメのご意見、これを踏まえてですね、対応させていただきたいと、このように考えております。

高橋議員:最後の結論を仰って、「パブコメを踏まえて」ということでありましたけども、もう少し今のところを議論していきたいと思うんですけど、なぜ「して行う」ということにしたかということについては正確な答弁がなかったかなと思うんですけど。昨年12月4日の質疑のときに私は与野党修正案、5月に出されたときのですね、「特別の事情があるときはこの限りではない」という修正案が政府案の本文に組み込まれたということで、もともと政府原案のときでも「現行と変わらない」と答弁していたわけですよね、運用は変わりませんと。言ってたのに、わざわざ「特別の事情」って書いていたおかげで、いってみれば特別な事情が何かっていうことになって、そうじゃなければ書類が原則よっていう打ち消し効果っていうんですかね、寧ろ限定的になるんではないかってことを指摘をしたわけです。で、これが、今回、省令案に、いま読んだところの続きですけど「但し、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合、その他保護の実施機関が当該書類を作成することのできない特別な事情があると認める場合はこの限りではないこととする」とこういう風に書いてしまって、やっぱりこれ、身体上の障害ってことでかなり限定的だなっていう風に受け取れるんですね。やっぱりこれ私の指摘したとおりなんじゃないか、しかもその下の段のアンダーラインで「上記ただし書の場合において、申請者の口頭による陳述を当該職員に聴取させた上で、必要な措置を採ることによって受理に代えることができる」、だから、口頭の場合はこうですよって、さらに二重に限定がかかっていることになりませんか。

田村大臣:これは法案審議のときにも御議論させていただいたところでありますけども、基本的には書面を提出すると。これが基本であることは基本であります。ただ、一方で事情がある場合にはですね、口頭での申請もこれは認められるということでございまして、決して、ここを持ってきて厳格化をしたわけではございません。条文修正いただいたわけでありまして、省令はこの規定を踏まえた上でですね、必要があると考えているわけでありますが、いずれに致しましても、これも、先程来申し上げておりますとおり、パブリックコメントをいま募集中でございまして、いろんなご心配の声もあろうという風に思いますので、それを踏まえた対応をさせていただきたいと考えております。

高橋議員:既に12月の法律が通った以降、ホームページの書きぶりが変わっていないとか、逆に窓口は厳しくなったとか、様々なことが指摘をされているわけです。そして、実際に保護の窓口がかなり人員的にも厳しいと、一人の持つケースが非常に多いとかいうことはこれまでにも指摘をされてきたわけですよね。そういうときに、柔軟にやりなさいとか、これまでと変わりませんとか言って、いくら答弁をしてもですね、やっぱり、一番頼るところは、その、たくさん煩雑な業務の中で、あるいは引継をして仕事に慣れていない中で、一番頼りになるのは書かれていることなんですよ。規則そのものなんですよ。だから、この省令案を、本当にきちんと見なければ。いろいろ、心を読んでといったって、書いていたらその通りやるのが一番間違いないと、指摘されずに済むだろうということになっちゃうんですよ。そこをちゃんと踏まえて、書くということはこういうことなんだということを、敢えて言いたいなあと思っているんです。それで、3月3日に関係主管課長会議が行われて、現行の運用の取扱いをこの規程により変更するものではないってことを、改めて強調されています。その次にですね、「保護の申請書類が整っていないことをもって申請を受け付けないということのないよう、法律上認められた保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為自体も厳に慎むべきであることについては法改正後も何ら変わるものではないので御了知いただきたい」ってことを敢えていっているということは非常に大事なことだと思うんです。つまり、私、12月の質疑のときも、申請権というのは7条に書いていてそれ自体は変えていませんよねと、そのことを敢えて確認をさせていただいたんですよ。やっぱりそこが、この趣旨がちゃんと条文に…省令案に滲むものでなければ、読んでわかるものでなければ駄目なんだということで、もう一言お願いを。

田村大臣:何度も申し上げて恐縮ではございますけど、この省令案自体ですね、いろんなご意見をいただいておるわけであります。言われるとおり、申請権がですね、これが邪魔されてはいけないわけでありますし、言われるとおり、決してですね、これ、口頭で申請する、言うなれば確かに基本は書面で申請でありますけども、書面で申請できない方が口頭で申請すること自体阻害されてはならないわけでございます。で、そのようなところも含めながら、いま、省令案に対してパブリックコメントをいただいておる最中でございますので、いろんなご心配の点もいただいておるわけでございますから、そのパブリックコメントのいただいたご意見、これにしっかりと対応させていただきたいと、このように考えております。

高橋議員:大いに意見を出してもらえれば、大臣は尊重してくれるんだと言うことを、いま考えました。で、もう一点、確認をしたいと思うんですが、扶養義務者に対する通知の問題、これは通知と報告の求めについても同じような書きぶりになっております。つまり、当該通知を行うことが適当でない場合が何かということで、①、②、③、という風に書いているわけですよね。で、保護の実施機関が当該扶養義務者に対して法第77条第1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合と。ですから、答弁はですね、これまでの答弁は「極めて限定的なものだ」っていう表現をしているんですが、高くないと認めた場合というと、何か例外の方が多いっていうのは普通は考えにくい話ですよね。つまり、高くないっていったときには、普通は例外っていうものは少ない、これはこっちが通知しない人の方が例外な訳ですよね、この書きぶりは。それで、「高くない」っていうのはどういうことなんだろうかと。逆に、例外ではなく、絞られてくるんじゃないかと受け取られますが。ここだけ確認を。

田村大臣:逆に、高いと判断する場合というのは、ご承知のとおり、交際状況が良好でありますとか、それから、扶養手当を企業から受け取っておったりでありますとか、税法上の扶養控除等々を受けている場合、さらにはですね、十分に資力がある、このようなことが認められる場合でありまして、それじゃない場合がですね、まさに蓋然性が高くない場合ということであります。これはもう、いま仰られましたとおり24条の8項は「あらかじめ通知することが適当でない場合」と書いてあるもんでありますから、それに合った書きぶりをするとそのようにならざるを得ないということでありますが、これもご心配がありますので、いろんな工夫を考えさせていただきたいという風に思っております。

高橋議員:しっかり見ていきたいと思います。今後の取り組み、よろしくお願いいたします。(1:24:46)

(反訳:徳武聡子)


申請、扶養で厚生労働大臣の認容裁決相次ぐ! 吉永 純(花園大学)

 平成26年2月14日付で、2つの重要な厚生労働大臣の認容裁決(請求人の主張を認めるもの)が出されました。滅多に出ない大臣の認容裁決であることはもちろんですが、争点が、それぞれ保護申請と扶養に関するものであることが重要です。いずれの論点も、生活保護法改正で、水際作戦の法制化や、扶養の要件化として危惧され、批判を浴びた点だからです。厚生労働省は、しきりに、現行の運用を変わらないと言明していますが、本裁決の両事案とも、現場の運用が、現行法のもとでも逸脱したものであることが明らかになっており、大臣の認容裁決は当然のものです。改正法施行を7月に控え、重要論点に関する大臣裁決が連続して出されるのは、当会や利用者の皆さんのこれまでの運動の成果でもあります。すべての自治体は、両大臣裁決の重みをしっかりと受け止め、自らの生活保護行政を点検すべきです。

(注)厚生労働大臣裁決とは
 生活保護では、福祉事務所の不利益処分(保護費の減額や停廃止)に対して、すぐには裁判でできません。まず、都道府県知事に不服申立て(審査請求)を行わなければなりません(審査請求前置主義といいます)。知事が請求人の主張を認めない場合(却下、棄却)に初めて裁判ができますが、その場合でも、さらに厚生労働大臣に対して再審査請求ができます。今回の2つの裁決は、知事が請求人の主張を棄却したため、大臣に対して再審査請求を行ったもので、これに対する大臣の判断が示されたものです。

1 保護申請に関する平成26年2月14日厚生労働大臣裁決
(1)事案と裁決要旨

「…しかしながら、関係資料によれば、請求人が平成24年4月9日に処分庁に相談に訪れた際に、病気で仕事がなく、生活費、住宅費及び医療費に困窮しており、唯一の収入である失業手当は、同年2月で終了していることを申し立てていることを踏まえれば、請求人が生活に困窮しており、保護の申請意思を有していることも優に推定されるにもかかわらず、処分庁が、請求人に対して保護の申請意思を確認したことは窺えず、また、面接結果の欄に何ら記載のない日もある等、面接相談時の処分庁の対応が不適切であったものと認められる。
 そして、面接相談時においては、基本的には相談者の保護の申請意思を確認すべきものであるところ、処分庁の面接相談記録の様式には、そもそも相談者の申請意思の有無を記載する欄がなく、たとえ相談者が申請の意思を示したとしても、その旨を客観的に記録する様式とはなっていなかったこと、また、特別監査結果通知によると、相談者が申請の意思を示したとしても、申請させるか否かを処分庁が判断していたこと等、処分庁が面接結果において極めて不適切な対応を行っていることが認められるといった事情を踏まえると、処分庁において生活保護の受給歴のある請求人が、病気による失業で収入がない状況で、処分庁に相談に訪れた際に、明確に口頭で保護を受けたいとの申請の意思を示さなかったとする処分庁の一連の主張は採用し難いものと言わざるを得ない。
 したがって、平成24年4月9日の相談時において、口頭で明確に保護の申請意思を表示したという請求人の主張を認め、請求人に対する保護開始日を6月21日とした原処分については、これを取り消すことが相当である」

(2)意義 ― 口頭の保護申請を認めた画期的な厚生労働大臣裁決
 本裁決の内容は、生活保護法改正で最も懸念された水際作戦の合法化(保護申請書や給与明細などの書類を役所に出さないと申請とみなさない)に対して、申請者の困窮状況から申請意思が推定される場合には福祉事務所は申請意思を確認すべきとし、申請書が提出された2カ月以上も前に口頭の申請があったことを認めました。これまでは、本件の京都府知事裁決をはじめ、福祉事務所がなかなか申請書を渡さないことは不問に付して、申請書が提出されたときからしか申請を認めないとする判断が多数でしたが、本裁決は、そうした運用が誤りであると認めました。国は改正後も申請権の尊重を再三明言しています。すべての自治体は、法改正(7月施行)に当たり、申請窓口での対応や面接票の様式(申請意思の確認欄を設けること)をしっかりと再点検すべきです。

2 扶養に関する平成26年2月14日厚生労働大臣裁決
(1)事案と裁決要旨
 扶養能力、扶養意思のある兄からの同居を条件とした扶養申出があったとしても、この申出は同居を条件とした扶養であり、請求人と兄との関係は良好とは言い難い状況の下で、処分庁が兄との同居を求めることは、「扶養義務者の側が扶養の履行と引き換えに要保護者に対してかなりの努力を必要とするような行為を要求する場合」(別冊問答集問5-9)に該当するとして、法4条1項の要件を欠くとして申請却下した原処分の運用は誤っているとして取り消しました。

(2)意義 ― 同居を条件とする扶養の強制は違法
 本件事案は、兄から請求人への事実上の障害者虐待事例(請求人は審査請求後の判定で知的障害B判定)であり、その障害ゆえに兄の期待通りに生活できないことや金銭管理能力が低いことを理由にして生活の場であるトイレ、浴室、洗面所を自由に使うこともできなくさせられ、「野たれ死にすればいい」と言われていました。すでに1年6カ月間兄とは一切の連絡がない状態ですが、請求人は兄の金銭的扶養を拒否していません。請求人は「同居による扶養」を受けることができないと主張しているのです。虐待を受けていてもなお「同居の条件」による扶養を受けるべきとし、生活保護申請は却下にするという福祉事務所の処分は、もともと保護開始要件ではない扶養を、それも同居を条件とする扶養を要件化するものです。さらに、本件のように、障害者虐待にあっている請求人に同居を求めることは虐待を容認する行為に他ならず、個人の人権、生存権を侵害するものです。本裁決が、処分庁、それを容認した審査庁の処分を取消したのは当然です。

(本稿は、吉永純先生に当会のNEWSLETTERに寄稿していただいたものです)


2月27日、「改正」生活保護法の厚生労働省令案(概要)が発表され、パブリックコメントが求められています。(意見募集締切日は3月28日)

パブコメ募集(厚生労働省HP)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495130294&Mode=0
省令案概要
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000109782

 この省令案ですが、「申請手続を厳格化するものではなく口頭申請も従前どおり認められる」「扶養義務者への報告要求等は極めて限定的な場合に限る」という国会答弁や附帯決議の内容を反古にする法技術的な操作が行われており、極めて背信的な内容となっています。

 実務に直接影響を与えるのは、省令や通達です。
 この省令案を、そのまま、決定させてはいけません
 ★パブリックコメントは数が勝負です。★  

「厚労省は国会答弁・附帯決議を守れ!」など一言で良いので、是非、多くの個人・団体としてパブリックコメントを寄せてください。(当会のパブコメを参考にしていただいて構いません)


→生活保護問題対策全国会議のパブコメ
「改正」生活保護法に関する国会答弁はペテンだったのか? 生活保護法改正に関する省令案の抜本修正を求めるパブリックコメント



●パブリックコメント提出の方法

①インターネット
 パブリックコメント募集ページclick!の下部にある「投稿フォーム」から

②メール hogo-hourei@mhlw.go.jp

③郵送
 〒100-8916東京都千代田区霞が関1-2-2
 厚生労働省社会・援護局保護課企画法令係宛て
 
④FAX:03-3592-5934
 厚生労働省社会・援護局保護課企画法令係宛て

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2014年3月5日
 
「改正」生活保護法に関する国会答弁はペテンだったのか?
生活保護法改正に関する省令案の抜本修正を求めるパブリックコメント


生活保護問題対策全国会議


第1 はじめに(意見要旨)
 厚生労働省は、「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」を発表し、パブリックコメントを募っている。しかし、そこで記載されている内容は、国会での答弁内容や参議院厚生労働委員会附帯決議の内容を骨抜きにするものである。この省令案がまかり通れば、「申請手続を厳格化するものではない」「扶養義務者に対する圧力を強化するものではない」という国会答弁は、ペテンであったということになる。
 いずれも極めて基本的な法技術的な操作であって法律家の目からすれば、その欺瞞や不正義は明らかである。しかし、一般市民からすれば分かりにくいであろう。分かりにくいことを良いことに国会答弁を反故にする姑息な操作が行われている点で極めて背信的である。
 私たちは、このような省令案の内容は到底容認できない。厳重に抗議の意思を表明するとともに、国会答弁や附帯決議の内容を真摯に反映させた省令案に修正するよう強く要求する。

 なお、私たちは、多くの市民や団体が、この不当な省令案の修正を求めるパブリックコメントを厚生労働省に提出するよう呼びかける。

(リンク)
本パブリックコメントに関する厚労省HP(意見募集締切日は3月28日)
省令案概要(PDF)


第2 申請手続について
1 改正24条1項本文関係
(1)省令案の内容

「保護の開始の申請等は申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする。」
(2)問題点
 改正24条1項本文は当初、「保護の開始の申請は、・・・申請書を保護の実施機関に提出してしなければならないという表現であり、「申請=申請書の提出」としか読めないため厳しく批判され、保護を申請するものは、・・・申請書を保護の実施機関に提出しなければならないと「申請≠申請書の提出」であることが明確となる表現に修正された。この点について、平成25年5月31日付け衆議院厚生労働委員会において、提案者の柚木議員は、「口頭による保護の申請も申請意思が明確である場合には認めているところで、修正案の趣旨はその取扱いが変わるものではないことを条文上も明確化するもの」と説明している。
 また、平成25年11月12日付け参議院厚生労働委員会附帯決議も「申請行為は非要式行為であり、・・・口頭で申請することも認められるというこれまでの取扱い・・・に今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」としていた。
 にもかかわらず、上記省令案は、修正前の本文とほぼ同じ表現を採用することで、「申請=申請書の提出」というメッセージを発する内容となっている。批判を浴びて法文を修正したのに、省令案の方では、こっそりと修正前の当初の表現に戻しており、極めて姑息かつ背信的である。
(3)修正案
「保護の申請は非要式行為であり、申請意思が確定的に表示された場合には、口頭による申請も認められる」という上記附帯決議と裁判例(福岡地裁小倉支部平成23年3月29日判決(賃金と社会保障1547号42頁))の到達点を明記し、仮に原案と同趣旨の表現を残すのであれば、「保護を申請するものは、・・・申請書を保護の実施機関に提出しなければならないという修正後の文言を採用すべきである。

2 改正24条1項但し書き関係
(1)省令案の内容

「ただし、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではないこととする。」
(2)問題点
 1の記載とあいまって、口頭申請が認められる場合が身体障害等の場合に限定されるように読める内容となっている。本来、口頭申請は申請意思が確定的に表示されれば認められるものであるのに、省令案は、申請書を物理的に書けるかどうかの問題にすり替えているのである。
 国会審議において「現行の運用を変えない」と繰り返し答弁された運用根拠である生活保護手帳別冊問答集問9-1(「口頭による保護申請について」)では、「口頭による保護申請については、申請を口頭で行うことを特に明示して行うなど、申請意思が客観的に明確でなければ、申請行為と認めることは困難である。実施機関としては、そのような申し出があった場合には、・・・申請者の状況から書面での提出が困難な場合等には、実施機関側で必要事項を聞き取り、書面に記載したうえで、その内容を本人に説明し署名捺印を求めるなど、申請行為があったことを明らかにするための対応を行う必要がある。」と記載されているだけで、口頭申請に対する実施機関側の対応義務が生じる場合を身体障害の場合などに限定してはいない。省令案は、現行の運用基準を後退させる内容となっている。
 さらに、改正24条1項但し書きは、単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに、省令案は、保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合はとして、特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねる表現にしている。
(3)修正案
 削除すべきである。
 あるいは、少なくとも身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合という例示と保護の実施機関が・・・認める場合はとの表現は削除し、現行問答の表現を参考に、「申請者の状況から書面での提出が困難な場合等申請書を作成することができない特別の事情がある場合は」とすべきである。

3 改正24条2項関係
(1)省令案
 一切触れられていない。
(2)問題点
 平成25年5月20日付全国係長会議資料では、「(要否判定に必要となる)書面等の提出は申請から保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いには今後も変更はない。」と記載され,同年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員の質問に対して村木厚子社会・援護局長(当時)も同旨の答弁を行い,前記附帯決議も「要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いに今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」と繰り返し、確認されてきた。
 また、但し書きについては、上記中根議員の質問に対して提案者の柚木議員が「隠匿などの意図もなく書類を紛失したり、あるいは必要書類を本人が所持していない場合なども、書類を添付できない特別な事情に当たるものと理解をしております。」と答弁していた。
 特に附帯決議では省令等に明記することが確認されているのに、一切触れられていないのは背信的である。
(3)修正案
「当該書類の提出は、可能な範囲で保護決定までの間に行えばよいものであること」及び「当該書類の紛失や不所持も24条2項但し書きにいう『書類を添付できない特別な事情』に該当するものであること」を明記すべきである。

第3 扶養義務者に対する通知(24条8項)と扶養義務者に対する報告の求め(28条)について
(1)省令案の内容 
 通知については「当該通知を行うことが適当でない場合」として、報告の求めについては「次のいずれの場合にも該当していない旨を確認するものとする」として、以下の①②③を掲げ、原則として通知を行い、報告を求めるが、①②③に該当する場合のみ例外的に通知や報告要求を行わないとしている。
 ①  保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第77条第1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合
 ② 保護を開始する者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第1条第1項に規定する配偶者からの暴力を受けているものであると認めた場合
 ③  ①及び②のほか、保護の実施機関が、当該通知を行うことにより保護を開始する者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがあると認めた場合
(2)問題点
 これらの規定の適用場面については、前記「生活保護関係全国係長会議資料」において、「福祉事務所が家庭裁判所を活用した費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる極めて限定的な場合に限ることにし、その旨厚生労働省令で明記する予定である。」と記載され、25年5月31日衆議院厚生労働委員会にて村木局長(当時)も同趣旨の答弁をしていた。
 つまり、原則として通知や報告要求は行わず、これらを行うのは「家裁を活用した費用徴収を行う蓋然性が高いと判断される」極めて例外的な場合に限るものとしていた。
 しかし、省令案は、原則と例外を完全に逆転させ、原則的に通知や報告要求を行うが、通知等を行わない例外的場合として①②③を規定する方法をとっている。つまり、実施機関が①②③の場合であると積極的に認定した場合以外においては通知を行い、報告要求も行うことになる。家裁を使った費用徴収を行うか行わないか判断しかねる場合、国会答弁では、通知や報告要求をしないはずであったが、省令案を前提とすれば通知や報告要求を行うべきこととなる。
  これでは、「極めて限定的な場合に限る」という説明や答弁が全くの虚偽であったということになり到底容認できない。
(3)修正案
 係長会議での説明や国会答弁どおり、通知や報告要求を行うのは、「福祉事務所が家庭裁判所を活用した費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる極めて限定的な場合に限る」と修正すべきである。このように表記すれば、省令案の②や③の場合を挙げる必要はなくなるが、言うまでもない念のための規定として②や③も注記してもよい。

第4 費用の支払の申し出等(徴収金の保護費天引)(改正78条の2)について
(1)省令案の内容
  「保護の実施機関は、当該申出に係る徴収金の額を決定するに当たっては、当該徴収金の徴収後においても被保護者が最低限度の生活を維持することができるよう配慮するものとする。」
(2)問題点
   改正78条の2第1項の法文は「実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは」と「生活の維持に支障がない」ことが要件とされ、村木局長も,「保護費から差し引く金額につきましても,保護の実施機関が最低生活の保障に支障がないと個別具体的に判断をされた範囲内にとどめる」と説明(前掲中根議員質問に対する答弁)しているにかかわらず、省令案は実施機関が「配慮」しさえすれば良いように読める内容となっている。省令案は、むしろ「生活の維持に支障がない」と判断するための具体的な基準を規定すべきである。
(3)修正案
 徴収の上限額の認定が実施機関の恣意に流れないため,例えば保険料額に関する定め(別冊問答集問3‐24)に準じて、「医療扶助を除く最低生活費の1割程度以下を上限としつつ,当該被保護者の生活状況や希望を十分聴取して個別具体的に生活の維持に支障がない額を設定すること」等と定めるべきである。

以上


1 2013年5月31日衆議院厚生労働委員会議事録 back
○ 桝屋副大臣「(略)事情がある方には口頭申請を認めている現在の取り扱いを決して変えるものではない、これは大臣も御答弁を申し上げているわけであります。修正案についてお話がございました。この趣旨を明確にする観点から修正案をお出しになったんだろうと思っておりますが、(略)こうした取り扱いにつきましては今後省令や通知において明確にすることとし、引き続き、支援が必要な人に確実に保護を実施できるよう、関係者への周知にも努めてまいりたいと思ってございます。」
○ 中根(康)委員「ただし書きの「申請書を作成することができない特別の事情」とは、身体障害等で文字が書けず代筆を要する場合だけではなく、申請意思が表明されたのに申請書が交付されなかった場合なども含むと理解してもよろしいでしょうか。」
○ 柚木委員 「現状でも、(略)口頭による保護の申請も、申請意思が明確である場合には認めているところというのは重ねて申し上げた上で、修正案の趣旨は、その取り扱いが変わるものではないことを条文上も明確化するものでございます。御指摘のような、障害などで文字が書けない方が申請される場合も当然含まれていると考えております。また、申請意思が明確になされたにもかかわらず申請書が交付されないこと、これはあってはならないことだと認識をしております。したがいまして、万々が一そのようなことが起こり得た場合であっても、そのこと自体がまさに正されるべきことであると認識をしておりまして、厚生労働省としても同様の認識であるのではないかと承知しております。」



(参考)
「改正」生活保護法の施行にあたって制定される省令等の内容に関する要請書
 ・生活保護法改正法附帯決議 
 ・平成25年12月10日生活保護制度の見直しに関する説明会資料「運用の留意事項について」 
 ・平成25年5月20日生活保護関係全国係長会議資料
 ・平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会議事録


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書籍のご案内

生活保護に関する書籍を監修・編著・発行しています。
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入会案内・寄付お願い

当会の活動・趣旨に賛同いただける方の入会・寄付を、随時受け付けています。
 →当会の設立趣旨と活動
会員には年1~2回の会報をお送りするほか、メーリングリストで生活保護問題についての情報交換をしています。
入会は、こちらから入会申込書をダウンロード(クリックしてください) の上、事務局までFAXをお願いします。

年会費
○弁護士・司法書士 5,000円
○団体      5,000円
○一般      2,000円
(生活保護利用者、それに準じる所得の方は1,000円)

会費・寄付のお振り込みは以下の口座までご送金下さい。
 りそな銀行 柏原支店
 普通 0096268
 生活保護問題対策全国会議

問い合わせ先


【お願い】個別事例に対する相談はお受けしておりません。各地の生保ネット clickにご相談下さい。

(事務局)
〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所
  弁護士 小久保 哲郎
 電話 06-6363-3310
 FAX 06-6363-3320

(ブログ作成担当)
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とくたけ司法書士事務所
司法書士 徳武聡子
電話 072-970-2232
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