厚生労働省の社会保障審議会生活保護基準部会において、住宅扶助基準をめぐる議論が急ピッチで進められています。

 「引き下げありき」の拙速な議論であり、国土交通省が定めた最低居住面積水準もないがしろにされるなど、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための住環境についての議論も不十分です。さらに、生活保護利用世帯の居住実態の調査をする作業部会は非公開となっています。
 このような状態で11月にとりまとめが行われ、来年度予算案において、住宅扶助基準の引き下げが断行される可能性は極めて高いです。

 生活保護問題対策全国会議と住まいの貧困に取り組むネットワークでは、この動きに反対すべく、6月14日に共同声明を発表しました。声明文は、下記をご覧下さい。

 この共同声明に賛同していただける団体を募集したところ、217団体から賛同をいただきました。多くの団体に賛同していただき、ありがとうございました。7月9日の記者会見で発表させていただきました。

賛同団体は、声明末尾に記載させていただきました。




共同声明文・賛同団体入りの印刷用(PDF)ダウンロードはこちらから click
2014年6月14日

生活保護の住宅扶助基準引き下げの動きに反対する共同声明~「健康で文化的な最低限度の住生活」の基準を変更することは許されません~
           
 厚生労働省の社会保障審議会生活保護基準部会において、住宅扶助基準をめぐる議論が急ピッチで進められています。今年5月16日には第17回、30日には第18回と、立て続けに部会が開催されました。今後、7月以降に「生活保護受給世帯の居住実態に関する調査」(仮称)を実施し、11月には「住宅扶助に関する検討結果のとりまとめ」を行うとしています。

1.「引き下げありき」に議論を誘導
厚生労働省が2015年度から住宅扶助基準を引き下げる方針を持って、部会の議論を誘導しようとしていることは、部会の中で事務方が提示している資料から明白に読み取れます。
例えば、第17回部会で提出された、財務省財政制度等審議会の資料では、「住宅扶助と一般低所得者の家賃実態の比較(2人以上世帯)」という二本の棒グラフを示し、「住宅扶助の方が2割程度高い」と指摘しています。しかし、そこで用いられていたのは住宅扶助の「上限値」と一般低所得者の家賃実態の「平均値」で、公平な比較とは言えないものでした。これには「ミスリーディングではないか」という指摘が委員からもなされています。

2.最低居住水準をないがしろに
 また、第18回部会で、厚生労働省がまとめた「住宅扶助に関する主な論点」では、「住宅扶助特別基準額の妥当性を検証するにあたって、健康で文化的な最低限度の住生活を営むことができる住宅かどうかをみるための尺度は、住生活基本計画において定められている最低居住面積水準でよいか」としたうえで、わざわざ、「 全国の民営借家では、約1/3の世帯で、最低居住面積水準が未達成の状況にある」と述べています。
 これは、明らかに「健康で文化的な最低限度の住宅の尺度」から最低居住面積水準を外すことを狙ったものと言えるでしょう。生活保護世帯の暮らす住宅には、現在も最低居住面積水準未満のものがかなりの割合で含まれますが、「住宅扶助基準を下げるとさらに未達成の割合が増える」という批判をあらかじめ封じこめようとしているのでしょう。生活扶助基準引き下げでの際にも根拠とされた「一般低所得者世帯との均衡」という考え方で、最低居住面積水準を取り払おうとしているのです。
 そもそも最低居住面積水準とは、健康で文化的な住生活を確保するうえで必要不可欠な水準です(2006年以降の基準は単身世帯の場合、面積で25㎡以上など)。国土交通省が策定し、2011年に閣議決定された住生活基本計画(全国計画)の中でも、最低居住面積水準未満の住居は「早期に解消」することが指標として定められています。政府が閣議決定した指標を厚生労働省が有名無実化しようとする動きに対して、部会の中でも複数の委員から批判の声があがりました。最低居住面積水準は、公営住宅や行政による住宅改修費補助などの基準としても活用されています。このような重要な基準をないがしろにすることは、生活保護世帯のみならず、社会全体の住まいの貧困化を招きます。

3.非公開とされた「作業部会」
 第18回部会では、委員の一部からなる「作業部会」を設置し、7月以降に「生活保護受給世帯の居住実態に関する調査」(仮称)を実施することとしています。しかし、その「作業部会」の議論は非公開とすることが決定されました。非公開の調査により、生活保護世帯の暮らす住宅の家賃が一般低所得者の家賃よりも割高である、という結論を導き出し、「一般低所得者世帯との均衡」を口実として、住宅扶助基準を引き下げる報告書をまとめるつもりでしょう。居住実態調査は、言うまでもなくオープンに科学的に行わなければなりません。

4.問題は、国の住宅政策の失敗に起因している
 生活保護世帯が暮らす民間賃貸住宅は、その地域の住宅扶助基準の上限額に貼り付いてしまう傾向があることが以前から指摘されています。単身高齢者や障がい者、ひとり親家庭、外国籍住民などは、民間賃貸住宅への入居にあたって差別を受けることが多いため、貸主や仲介業者から「本来、その部屋にふさわしい家賃」よりも高い家賃を提示されても、その家賃額を受け入れざるをえない現状があります。身内に連帯保証人を頼める人がいない場合、その傾向はさらに強まります。
 住宅扶助の基準は現在でも充分であるとは言えません。特に都市部では現行の基準(東京都内で53700円、障がいなど特別な事情のある場合は69800円)で適切な賃貸住宅を確保することが困難な地域もあります。2013年には東京都千代田区で福祉事務所職員が「脱法ハウス」を生活保護利用者に紹介するという事例が発覚しました。特に、車イスの身体障がい者の部屋探しは困難を極め、やむをえず「管理費」「共益費」といった名目で、実質的な家賃の一部を生活扶助費から持ち出さざるをえないケースも珍しくありません。
 また、多人数世帯の住宅扶助基準は6人世帯であっても2人世帯と同じ基準(東京で69800円、大阪で55000円)に設定されており、子どもの多い世帯が劣悪な居住環境を強いられています。

5.住宅扶助の目的は住宅の「質」を確保することにある
 こうした問題の背景には、公営住宅を増やさず、民間賃貸住宅市場へのコントロールを怠ってきた国の住宅政策があります。また、住宅行政と生活保護行政が全く連携をせず、福祉事務所に住宅の質をチェックする機能が存在しないことも問題を悪化させています。 
 国や地方自治体が従来の住宅政策を転換し、低所得者が入居できる低廉な住宅を大量に供給し、入居差別をなくすための法整備や公的保証人制度の導入、貧困ビジネスの規制など、民間賃貸住宅市場をコントロールしていく施策に本格的に取り組むのであれば、それと連動して生活保護の住宅扶助基準を見直すことも考えられるでしょう。住宅扶助の目的は住宅の「金額」ではなく「質」を確保することであり、低家賃で住宅の「質」を確保できる環境が整えば、基準自体は低くなっても問題は生じないからです。
 しかし、長年にわたる住宅政策の失敗により民間賃貸住宅市場が野放し状態になっている現状を放置して、住宅扶助の「金額」だけを切り下げることは、さらなる「質」の低下を招き、ますます生活保護利用者を劣悪な住宅に追いやることになります。

6.「住まいの貧困」を悪化させる引き下げに反対します
 私たちは、社会保障審議会生活保護基準部会が作業部会も含めて、すべての議論の過程をオープンにすることを求めるとともに、11月までに住宅扶助に関する検討結果をとりまとめるという拙速なスケジュールを撤回することを求めます。そして、生活保護の利用当事者や居住支援をおこなっている民間団体の関係者、住宅問題に詳しい研究者や法律家などから意見を聴収することを求めます。
 また、基準部会の議論と並行して、政府が国土交通省と厚生労働省の関連部局を中心に「住宅対策総合本部」(仮称)を設置し、「健康で文化的な最低限度の住生活をどう保障するか」という観点のもと、「脱法ハウス」問題など「住まいの貧困」への対策を進めていくことを求めます。そして、その対策の進捗状況を見極めながら住宅扶助についての議論も慎重に進めていくことを要求するものです。
 国が自ら定めた「健康で文化的な最低限度の住生活」の水準をないがしろにする動きは決して許されてはなりません。「住まいの貧困」を悪化させる住宅扶助基準の引き下げに断固として反対します。

生活保護問題対策全国会議(代表幹事:尾藤廣喜)
住まいの貧困に取り組むネットワーク(世話人:稲葉剛、坂庭国晴)

賛同団体●
公益社団法人日本精神保健福祉士協会、生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット、生存権裁判を支援する全国連絡会、国民の住まいを守る全国連絡会、日本住宅会議、全国生活と健康を守る会連合会、全国生活保護裁判連絡会、全国クレサラ・生活再建問題対策協議会、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会、行政の生活再建対策の充実を求める全国会議、全国追い出し屋対策会議、賃貸住宅トラブル全国ネットワーク、全国青年司法書士協議会、日本自治体労働組合総連合、中央社会保障推進協議会、全日本民主医療機関連合会、特定非営利活動法人大阪医療ソーシャルワーカー協会、大阪精神保健福祉士協会、京都精神保健福祉士協会、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、東北生活保護利用支援ネットワーク、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、生活保護支援ネットワーク静岡、生活保護支援九州ネットワーク、東海生活保護利用支援ネットワーク、野宿者のための静岡パトロール、湘南ライフサポート・きずな、川口生活と健康守る会、樹花舎、NPO木パト、きょうと福祉倶楽部、ココカラ東海、兵庫県精神障がい者連絡会、NPO法人神戸の冬を支える会、中崎クィアハウス、泉州・精神障害者倶楽部「青い鳥」、にいがた青年ユニオン、和歌山あざみの会、ちがさきH・L支援の会、エースプロジェクト、特定非営利活動法人ほっとプラス、福岡第一法律事務所、NPO法人訪問看護ステーションコスモス、寿越冬闘争実行委員会、寿支援者交流会、横浜水曜パトロールの会、特定非営利活動法人仙台夜まわりグループ、特定非営利活動法人アジア女性資料センター、香川連帯ユニオン、ゆにおん同愛会、浦和生活と健康を守る会、さまりたんプログラム、公益財団法人神戸学生青年センター、三多摩自由労働者組合、高知医療生活協同組合・潮江診療所、なかまユニオン、一般社団法人自由と生存の家、関西新聞合同ユニオン(新聞労連加盟)、釜ヶ崎講座、歯科保健研究会、障害者生活支援センターぐっどらいふ、NPO法人Homedoor、NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー、神戸YWCA夜回り準備会、カトリック社会活動神戸センター、NGO神戸外国人救援ネット、平塚パトロール、NPO法人京都光、長野県民主医療機関連合会、社会医療法人中信勤労者医療協会、上伊那生協病院付属診療所、反貧困ネット北海道、反貧困ネットワークぐんま、反貧困ネットワーク神奈川、反貧困ネットワーク京都、反貧困ネットワークあいち、反貧困ネットワーク信州、反貧困ネット長野、反貧困セーフティネット・アルプス、反貧困ネットワークくまもと、反貧困ネットワーク大阪、反貧困ネットワーク栃木、特定非営利活動法人反貧困ネットワーク広島、もろもろの会、上小・東御生活と健康を守る会、石川県社会保障推進協議会、沖縄県社会保障推進協議会、貧コン!実行委員会、寿・関内夜回り仲間の会、特定非営利活動法人いっぽいっぽの会、怒っているぞ!障害者切りすて!全国ネットワーク、生存権がみえる会、山谷生活保護よりあい(準)、長崎民医連(長崎県民主医療機関連合会)、社会医療法人健和会、全国「精神病」者集団、のじれん(渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合)、(有)長崎健康企画、東京青年司法書士協議会、生存権裁判を支援するいわての会、広島生活保護裁判を支援する会、生存権裁判を支える愛媛の会、生活保護基準引き下げにNO!えひめ争訟ネット、愛媛県社会保障推進協議会、高崎中央病院、NPO朝日訴訟の会、社会医療法人健友会上戸町病院、政治的ミニスカ党、大阪子どもの貧困アクショングループ、生活支援センターわをん、NPO法人多重債務による自死をなくす会コアセンター・コ、スモス三重はなしょうぶの会、日中友好協会山梨支部、NPO法人山形さくらんぼの会、東京多摩借地借家人組合、NPO労働と人権サポートセンター・大阪、キノ・キュッヘ、NPO法人さんきゅうハウス、自由法曹団、特定非営利活動法人生活相談サポートセンター、NPO法人金沢あすなろ会、NPO法人熊本クレ・サラ被害をなくす会、ビデオ工房AKAME、あぱけん神戸(アルバイト・派遣・パート非正規等労働組、合)アフターケア相談所ゆずりは、京都ユーザーネットワーク、国民共同戦線、特定非営利活動法人ささしまサポートセンター、三島ふれあいユニオン、首都圏青年ユニオン、特定非営利活動(NPO)法人日本スローワーク協会、熊本多重債務対策協議会、大阪いちょうの会、福岡地区合同労働組合、特定非営利活動法人・桐生ひまわりの会、京都生協の働く仲間の会、関西非正規等労働組合(ユニオンぼちぼち)、横浜生活保護利用者の会、つちっくれ、自由労働者連合、高知うろこの会、京都平安の会、大阪司法被害者連絡会、精神障害者カワセミの会、死刑廃止・タンポポの会、訪問看護ステーションKAZOC、働く女性の全国センター(ACW2)、西濃れんげの会、埼玉県精神障害者団体連合会、健和友の会、釜ヶ崎医療連絡会議、武庫川ユニオン、夜まわり三鷹みやぎ青葉の会(宮城県クレジット・サラ金問題を解決する、会)賃貸住宅トラブル阪神ネットワーク、NPO法人かごしまホームレス生活者支えあう会、つくし法律事務所、尼崎あすひらく会、宝塚スプーンの会、びわ湖あおぞら会、奈良若草の会、派遣労働ネットワーク・関西、山口県自治体労働組合連合、岩手県自治体労働組合総連合、自治労連秋田県本部、札幌陽は昇る会、日本自治体労働組合総連合愛知県本部、自治労連福島県本部、富士見市職員組合、広島県生活と健康を守る会連合会、名古屋市職員労働組合、きょうされん愛知支部、LANえどがわ、NPO法人くまもと支援の会、NPO法人TENOHASI、言論・表現の自由を守る会JapaneseAssociationforthe、RighttoFreedomofSpeech(JRFS)関西合同労働組合、自治労連千葉県本部、大阪自治労連、新潟県公務公共一般労働組合、蕨市職員労働組合、首都圏なかまユニオン、生活保護の改悪に反対する人々の会、神奈川自治労連、和歌山自治体労働組合連合、社会医療法人南信勤労者医療協会、神奈川県職員労働組合総連合、企業組合労協ながの、北海道自治労連、社会医療法人平和会医療ソーシャルワーカー部会、自治労連山梨自治体一般労働組合、上田生協診療所社保平和委員会、オープンハンドまつやま、自治労連四国ブロック香川事務所・公務公共一般、周南市職員労働組合、自治労連蒲郡市職員組合、みらくる∞未来を創るにんげんアクション、STOP原子力★関電包囲行動、大阪此花発!STOPがれき近畿ネットワーク、群馬青年司法書士協議会、滋賀自治労連、上伊那医療生活協同組合、深谷市職員労働組合、利根沼田生活と健康を守る会、利根沼田平和委員会、栃木公務公共一般労働組合、新日本婦人の会栃木県本部壬生支部、大阪民主医療機関連合会、根室市職員労働組合連合会、障害者問題を考える兵庫県連絡会議、長居公園仲間の会、特定非営利活動法人長居公園元気ネット、新潟生存権訴訟弁護団、全京都生活と健康を守る会連合会、沖縄クレジット・サラ金被害をなくす会 以上(217団体)




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生活保護バッシングは何をもたらしたのか

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生活保護問題対策全国会議 設立7周年記念集会
「”生活保護バッシング”は何をもたらしたのか」


 2012年春、人気タレントの母親が生活保護を利用していたことを契機に激しい“生活保護バッシング”が起きました。
 そして、2013年、史上最大の生活保護基準の引き下げと生活保護法の「改正」が決められ、今、それが順次実行されつつあります。

 一部の政治家に扇動されたバッシングは、バッシングに加担した人々の生活をも脅かし始めています。

 あの”生活保護バッシング”は何をもたらしたのか。
 現場の第一線で活動する皆さんのリレートークで考えたいと思います。

【日時】7月20日(日)13時~16時40分
    (受付開始12時30分)
【場所】日司連ホール(司法書士会館地下1階) 
     東京都新宿区元塩町9-3 アクセス
 
事前申込不要・入場無料(但しカンパ大歓迎です)


【プログラム】
● 基調講演「生活保護バッシングは何をもたらしたのか」
  f安田浩一さん(ジャーナリスト)

● 特別報告「シングルマザー調査から見えるもの」
  徳丸ゆき子さん(大阪子どもの貧困アクショングループ代表)

● 特別報告「就学援助制度と子どもの貧困対策を考える」
  青砥恭さん(NPO法人さいたまユースサポートネット代表)

● リレー報告
 「基準引き下げ・法「改正」はDV被害者に何をもたらすか」
    吉祥眞佐緒さん(エープラス代表)
 「ハウジングプアと『住宅扶助基準の引き下げ』」
    稲葉剛さん(自立生活サポートセンター・もやい代表)
 「大阪で今、何が起きているか」
    普門大輔さん(弁護士・大阪市生活保護行政問題調査団事務局長)
 「生活保護基準引き下げにどう対抗するか」
    安形義弘さん(全国生活と健康を守る会連合会会長)
    徳武聡子さん
   (司法書士・生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット事務局)

● まとめ
  尾藤廣喜さん(弁護士・生活保護問題対策全国会議代表)

【主催】生活保護問題対策全国会議


大阪市生活保護行政問題調査団は、5月29日に以下のとおりの要望書を大阪市に対して提出しました。
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〈要望書の内容〉
第1 要望の趣旨

第2 要望の理由
1 はじめに ~ なぜ調査団活動を行ったのか ~
(1)大阪の生活保護行政は全国に大きな影響がある
(2)全国唯一の保護世帯数減少とそれを支える大阪独自方式

2 稼働年齢層等の生活保護からの排除問題
(1)稼働年齢層の異常な減少
(2)「申請時のガイドライン」の問題点
(3)「連絡票」「相談受付票」の問題点

3 扶養義務の強化問題
(1)「仕送り額(月額)の『めやす』」の問題点
(2)扶養照会の問題点

4 介護扶助等の利用抑制と自己負担強要問題
(1)生活保護利用者が非利用者よりも低サービスに甘んじさせられていること
(2)支給されるべき介護扶助費を支給せず自己負担を強要されること
(3)支払わされた自己負担金は全額遡って返還すべきである

5 「不正受給対策」に名を借りた管理・支配体制の強化問題
(1)警察官OB配置による福祉事務所の性格の変質
(2)不正受給(法78条)のずさんな認定
(3)監視カメラの設置等による威嚇

6 実施体制上の問題
(1)脆弱な実施体制に対して繰り返される厚労省の指摘
(2)400人規模の恒常的な人員不足
(3)全国平均を下回る資格取得率(専門性の欠如)
(4) 任期付き雇用など身分の不安定


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2014(平成26)年5月29日

大阪市の生活保護行政の真の適正化を求める要望書


大阪市長 橋 下  徹 殿
大阪市生活保護行政問題調査団
団 長  井 上 英 夫

第1 要望の趣旨
1 生活保護法27条等に違反する「保護申請時における就労にかかる助言指導のガイドライン」,保護申請権を侵害する「連絡票」及び「相談受付票」は,速やかに廃止されたい。
2 扶養の事実上の強制につながる「生活保護受給者に対する仕送り額の『めやす』」は,速やかに廃止し,生活歴等から扶養の可能性が期待できない者(抽象的扶養義務者)に対する扶養照会は厳に行わないよう徹底されたい。
3 医療及び介護に関して,生活保護利用者に対してのみ安価なサービスの利用を求めたり,介護扶助や各種一時扶助等の制度上認められている給付を行わず自己負担を求めることのないよう徹底されたい。また,今般の調査で判明した介護扶助費を自己負担させた133件を含む問題事例については,全額遡及して保護費を支給されたい。
4 社会福祉主事の資格を有しない警察官OBの福祉事務所配置を止め,法78条の適用は「不正の意図」が認定できる事例に限定するよう徹底するとともに,各福祉事務所の相談ブース内に設置された監視カメラ,録音禁止の張り紙等を速やかに撤去するよう指導されたい。
5 任期付ケースワーカーを正規雇用するとともに,社会福祉法が求める標準数(80対1)を充足するようケースワーカー及び査察指導員を大量増員し400人規模の恒常的な人員不足を解消されたい。また,同法が求める社会福祉主事任用資格の取得率を100%にするとともに,社会福祉士等の専門職採用を積極的に行い,福祉専門職としてのスキルを発揮できる人事政策に転換されたい。


第2 要望の理由
1 はじめに ~ なぜ調査団活動を行ったのか ~
(1)大阪の生活保護行政は全国に大きな影響がある

 2008(平成20)年秋のリーマンショック以降,全国的にも生活保護利用者が激増したが,大阪市においても,その傾向は顕著であり,全国で最も高い保護率(平成24年度で5.7%)となっている。大阪市は,2009(平成21)年9月以降,生活保護行政について全市的な検討を行い,国に対し要望を行ってきたが,2012(平成24)年7月には,「生活保護制度の抜本的改革にかかる提案」を発表し,稼働可能な者を生活保護の対象から外すこと,医療費・介護費の自己負担制を導入することなど,保護費削減を目的とした過激な改革提言を行った。
 2013(平成25)年12月,制度発足以降初の生活保護法の大「改正」がなされたが,そこでは,調査権限の強化,後発医薬品の使用促進,返還金と保護費の相殺など,大阪市の提案が数多く盛り込まれている。このように,大阪市の生活保護行政の動向は,全国に大きな影響を与えており,一地方の問題として軽視することはできない。
(2)全国唯一の保護世帯数減少とそれを支える大阪独自方式
 大阪市の被保護世帯数と保護率は年々増え続けていたが,2012(平成24)年度(11万8744世帯,5.71%)をピークに完全に減少局面に転じている。平成25年7月の被保護世帯数は対前年同月比99.9%の11万8449世帯であり,大阪市以外の政令市はいずれも被保護世帯数を増やしている中(平均102.5%),極めて特異な動向を示している。そして,同月以降も着実に減少傾向は続いており,2013(平成25)年12月時点で被保護世帯数11万8161世帯,保護率5.62%となっている。2012(平成24)年度の生活保護決算は22年ぶりのマイナス(対前年比24億円減)であり,2014(平成26)年度の同予算は2年連続のマイナス(同前23億円減)である。
 これは,大阪市が,国による法「改正」を待つことなく独自の方式を導入することによって,①稼働年齢層の生活保護からの排除,②扶養義務の強化,③介護費の一部自己負担,④過度の不正受給対策などを強行していることに原因があることが強く疑われた。そして,その背景には,⑤ケースワーカーの人数と専門性の不足という実施体制上の問題があるとうかがわれた。こうした問題点を放置したまま,闇雲に生活保護の適用を絞り込むことが続けば,ここ大阪で,餓死・孤立死・自死等が頻発することになりかねない。また,大阪独自の方式が全国に波及することによって,そうした悲劇が全国的に拡大することにもなりかねない。
 そこで,当調査団は,上記①ないし⑤の視点から調査を行った。その結果,以下述べる通り,明らかに違法であるか,少なくとも生活保護法等の精神に反する不当な運用がまま見られ,現実に少なくない被害事例が発生していることが判明したので,要望の趣旨記載のとおりの要望を行うものである。

2 稼働年齢層等の生活保護からの排除問題
(1)稼働年齢層の異常な減少

 大阪市においても高齢世帯は,2013(平成25)年9月時点で58,105世帯と対前年同月比で104.5%と2531世帯も増加している。にもかかわらず,前記のとおり,全体として減少しているのは,稼働年齢層世帯(正確には,高齢世帯以外の母子,障がい・疾病,その他世帯)が59,086世帯と対前年同月比で95.1%と3003世帯も減少しているからである。
 そして,その背景には次の大阪独自の取り組みがあると考えられる。
(2)「申請時のガイドライン」の問題点
ア 内容

 大阪市は,2011(平成23)年1月17日,生活保護担当課長事務連絡「保護申請時における就労にかかる助言指導のガイドライン」(以下,「申請時のガイドライン」という。)を発出した。その内容は,稼働能力があるとみなされた生活保護を申請する者に対して,「一週間に一度,求職活動状況報告書を提出すること」などを求める「助言指導書」を交付して,積極的な求職活動を行求め,努力が不十分とみなせば,14日の法定期間内の判断を延期し,最終的には申請を却下するというものである。
イ 違法性
① 生活保護法4条違反

 生活保護法4条が求める稼働能力の活用がされているかどうかの判断は,「その具体的な生活環境の中で実際にその稼働能力を活用できる場があるかどうか」という観点から(林訴訟の名古屋地裁平成8年10月30日判決),単に「年齢や医学的な面からの評価だけではなく,そのものの有している資格,生活歴・職歴等」を前提として,「育児や介護の必要性などその者の就労を阻害する要因を踏まえて行う」べきものとされている(厚生労働省の社会・援護局長通知第4)。そして,特に申請段階においては,面接のための交通費等もままならないこともあることから,求職活動等は「一般的な社会的規範に照らして不十分な又は難のあるもの」であってもよく,「最低限度必要とされる程度の努力を行う意思」が認められれば良いというのが確立した裁判例である(東京高裁平成24年7月18日判決,大阪地裁平成25年10月31日判決)。
  したがって,求職活動状況報告書の提出の有無や求職活動や面接の件数等の形式的な理由のみで稼働能力活用の有無を判断することは,生活保護法4条に違反する。
② 生活保護法27条,27条の2違反
 法27条の指導指示は,保護開始後の「被保護者」に対して行うものであって,保護開始前の申請者に対して行うことはできない。申請者に対して行うことができるのは,法27条の2による「助言」だけであり,それは「要保護者から求めがあったとき」に「要保護者からの相談に応じ」て行うものである。
 にもかかわらず,申請時のガイドラインによる「助言指導書」は,「求職活動報告書」の提出や一定回数以上の求職活動や面接といった具体的行為を行うよう指導し,「これに従わないときは」申請の却下等の制裁を予定している点において,助言の範囲を超えた事実上の指導指示であり,法27条及び27条の2に違反する。この点は,厚生労働省も,「ハローワークでの具体的な求職活動の指導等は,保護の開始決定前には認められていない」から「不適切」であると指摘をするに至っている(平成25年12月10日自治体向け説明会)。
ウ 問題事例の発生
① 浪速区・37歳男性
10月25日(2013年) 1回目の申請
11月14日 「熱心に求職活動を行い,継続的かつ自立を目指した仕事に就くこと」等と記載した助言指導書を交付される。
 手持ち金なく買い置きの米のみ1日1食で体調不良の中,ハローワーク等で求職活動(5日,6件)を行い,面接も1社受けるが,「少ない」と言われる。
11月22日 稼働能力不活用として申請却下(28日目)
11月26日 再申請(弁護士同行)
11月28日 所持金11円で食べるに事欠く状態であるため貸付を求めるが1日500円分しか貸付されず。体調すぐれない中,求職活動を継続し,たびたび報告するも「検討中」を繰り返す。
12月2日  代理人弁護士より抗議申入書を提出
12月13日  保護開始決定(17日目)
 →後日,医療機関でパニック障害・外出恐怖症と診断され,療養専念となる。
②大正区・30代男性
「一週間にハローワークへ三回以上行き,一社以上会社の面接を受けること」などと記載された「助言指導書」を交付されて署名を求められた。なお,同区は,平成24年度実施方針において,独自のフローチャートを作成し,「1週間にハローワークへ3回以上求人検索を行・・っていること」「1週間に1社以上,ハローワークから紹介を受けた会社の面接を受けていること」という通常達成不可能な「求職活動基準」を定めている。
(3)「連絡票」「相談受付票」の問題点
ア 内容

 厚生労働省が,平成23年度の監査に際して,「保健福祉センターが独自に作成した『連絡票』と題する書面を面接相談の際に使用,住宅賃貸借契約書や預貯金通帳など,申請行為の成立に際して必要がないものの提出を求めている」と指摘したのに対し,大阪市は,「現場感覚とはかけ離れた内容」とあからさまな反発を示している。
 また,浪速区が相談受付時に使用している「相談受付票」と題する書面には,「生活保護制度の説明だけを聞きたい」「生活保護制度以外の説明を聞きたい」のチェック欄のみがあり,肝心の「生活保護を申請したい」というチェック欄がない。
イ 違法性
 本来,生活保護の申請は,口頭でも可能なのであり,実施機関には窓口を訪れた者の申請意思を確認し,申請を援助すべき義務がある。申請の前提として書類の提出を求めたり,申請意思の確認を意図的に怠ることは申請権(法7条)の侵害であって違法である。なお,今般の法「改正」によっても,この扱いは変わらないというのが政府答弁,附帯決議であり,むしろ,新施行規則1条2項は,「保護の実施機関は,・・・申請者が申請する意思を表明しているときは,当該申請が速やかに行われるよう必要な援助を行わなければならない」との規定を新設している。
ウ 問題事例の発生
(ア)厚労省監査での指摘事項
①鶴見区(平成22年度)
「本来相談者が提出義務を負わない診断書等の提出を求め,申請は,後日これらの書類が提出された時点で受理する扱い」とするなど,相談者が提出義務を負わない資料の提出を事実上申請の要件とし,このため申請が遅延していることから申請権の侵害が認められると指摘。
②住之江区(平成24年度)
 相談に来た者に相談段階で「診断書」の提出を求めているのは不適切と指摘。
③ 住吉区(平成21年度)
 保護の申請前なのに相談者に対して何らかの指導指示をしている事例,次回申請時に持参する書類を示し,書類が揃わないと申請を受理していないと思われる事例,DVケースなのに夫に養育料の請求を指示した事例,高額家賃は保護申請できないと説明した事例,居住地がなければ保護申請できないと説明した事例
(イ)調査団による2014年5月9日ホットラインに寄せられた事例
① 中央区(聴覚障害をもつ60代女性)
 家賃6万円のUR住宅に単身で生活。障害年金が受けられず,借金で生活してきたが,もう無理と4月に生活保護の申請に行ったところ,家賃が42000円以下でないとだめだと言われた。
② 西成区(野宿状態の69歳男性)
 長く野宿生活を続けてきたが,もう年で疲れたので生活保護を利用したい。福祉事務所に行くが,家がなければ生活保護申請できないと言われた。待機施設もいっぱいだと断られた。

3 扶養義務の強化問題
(1)「仕送り額(月額)の『めやす』」の問題点
ア いわゆる「めやす」の内容

 大阪市は,2013(平成25)年11月8日,「生活保護受給者に対する仕送り額の『めやす』」(以下「めやす」という。)を策定した。その内容は,扶養義務者を生活保持義務関係と生活扶助義務関係に分けたうえ,それぞれ,年収に応じた仕送り額の具体的金額の目安幅を市独自に設けたものである。
イ 違法・不当性
 生活保護と私的扶養の関係について,生活保護法上扶養は保護に優先する旨規定されているところ(法4条2項),これは,扶養は保護の要件ではなく,現実に扶養が行われた場合には収入認定の対象となるという意味において,事実上,扶養は保護に優先するに過ぎないことを明らかにした規定であると解されている。しかしながら,「めやす」が運用されれば,扶養義務者は,年収のみを基準に機械的に「めやす」で定められた一定額の仕送りを求められ,法4条2項の趣旨に反し,扶養を事実上強制される被害事例が発生する可能性が極めて高い。
(2)扶養照会の問題点
ア 行われている扶養照会の実態

 生活扶助義務関係にある扶養義務者に対し,要保護者の生活歴等から扶養の可能性が期待できないものとして取り扱うべき事案であるにもかかわらず,扶養義務者全員に対し,一律に扶養照会を行っている。
イ 違法・不当性
要保護者の生活歴等から扶養義務の履行が期待できない者については,通知上も直接照会を行わなくてよい扱いとされているところである(課長通知・問(第5の2)答)。にもかかわらず,このような者に対してまで,一律に扶養照会を行うことになると,扶養義務者たる親族に迷惑がかかることを危惧して保護申請を断念するケースが増加し,事実上扶養が保護の要件化されると共に,要保護者の申請権を侵害する結果を招くこととなる。
ウ 問題事例の発生
① 35年間音信不通の扶養義務者に対する扶養照会(住之江区)
 ドメスティック・バイオレンス事案によって離婚,別居に至り,以降,35年間にわたって音信不通であった保護申請者の子らや,保護申請者の別居当時,まだ出生していない孫らに対し扶養照会をおこなった。
② 生活保護利用者等に対する扶養照会(住之江区)
 脳梗塞の後遺症で働けなくなった60歳の男性(妻と2人世帯)が保護開始申請をしたところ,扶養義務者を全てリストアップさせられ,年金生活者や生活保護利用者を含む高齢の兄弟姉妹全員に対し,扶養照会を行うといわれている。
③ 全親族一律の扶養照会(都島区)
 現在35歳の息子は10年前からうつを発症し就労できず,ずっと自分たちが面倒を見てきた。以前,都島区役所に生活保護の相談に行ったら「援助ができるだろう。」「親類全部調べることになる。」と言われ保護申請を諦めた。現在は淀川区に住んでいるが,もうこれ以上の支援は限界。
④ 扶養照会に対する不安(淀川区)
 扶養義務者をすべて書き出すよう求められて書類を渡されている。この間の芸能人バッシング,市職員の親族の保護受給をめぐる報道を目の当たりにして不安を感じており,保護申請を取り下げようかと思案している。

4 介護扶助等の利用抑制と自己負担強要問題
(1)生活保護利用者が非利用者よりも低サービスに甘んじさせられていること
ア 大阪市の現状

 大阪市では,生活保護利用者が医師から薬を処方される際にジェネリック(後発)医薬品を使用するよう強制されたり,ケアマネージャーが必要と判断して購入しようとした福祉用具について,区役所が一番安いものに変更するよう求めるといった事態が生じている。
イ 違法・不当性
 生活保護法52条1項は,医療扶助について「国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例による」とし,同法54条の2第4項は,これを介護扶助についても準用している。これは,医療扶助・介護扶助は命や健康に直接に関わる基幹的ニーズに対応する扶助であるため,他の一般人と同様の給付水準を保障し,生活保護利用者も最適保障水準の医療・介護が受けられるようにする趣旨であり,そのための方法として現物給付を採用している。
にもかかわらず,利用者の意思に反して後発医薬品の使用を強制したり,ケアマネージャーが専門的見地から必要と判断した福祉用具につき安価な商品に変更するよう求めることは,生活保護利用者に限って劣位な扱いを持ち込むものであり,最適水準の医療・介護を保障した生活保護法52条・同法54条の2に反する。
ウ 問題事例の発生
① 生野区・60代単身女性
区役所から薬をジェネリック品に変更するよう強く求められている。障害年金受給に診断書が必要だが,自己負担で取得するようにも言われている。
② 区は不明
要介護5の方が風呂に入りたいと這って風呂場で一人でしゃがむなどしていたため,シャワーチェアが必要とケースワーカーに相談したところ,安価のチェアにしてほしいと言われ,最終的には自己負担にするよう言われた。ケースワーカーにどうしてもシャワーチェアが必要と訴えたら「要介護5で動けないんだからいらんやろ」と言われた。
③ 住吉区
 ウォシュレット付ポータブルトイレの購入を申請するとウォッシュレットが却下された。本人には必要だから申請したのに贅沢品としてみなされているのはおかしい。
④ 西成区
ポータブルトイレの給付は認められないと言われた。福祉用具購入については安いものにするように指示されることが多い。
(2) 支給されるべき介護扶助費を支給せず自己負担を強要されること
ア 大阪市の現状

 2013年9月25日,大阪社保協生野区役所キャラバンにおいて,同区担当者が「被保護者で福祉用具購入の場合は,本人が真に用具を必要としているかどうか,自分で負担ができないかどうかという2点について確認をしている。」「介護の部分だけではなく,いろんな部分で自己負担を求めることはある。」などと説明した。これが発端となり,大阪市が調査したところ,2013年4月から11月までの8ヶ月間で,生活保護利用者が介護保険を利用して福祉用具(主に入浴・排泄関係)を購入したり住宅を改修した場合に,本来介護扶助として支給されるはずの1割部分を生活保護利用者に自己負担させている事例が,大阪市内で133件あることが判明した。
 大阪市は,2013年8月に発表した「生活保護の適正化に向けて」において,「保護費の適正化を図るために,医療機関等への受診や介護サービスを受ける際に自己負担を導入することが効果的である」と明言していること,生野区は平成25年の「生活保護業務実施方針」において「一時扶助(特に移送費・治療材料費・紙おむつ等)の申請を受理する際には,被保護者自身による自弁が真に不可能なのかどうか可能な限り確認・・する。」と明記していること,上記133件の介護扶助自己負担事例は大阪市27区のうち24区において見られることからすると,大阪市全体が組織的・意識的に医療扶助・介護扶助等の自己負担を推進していることが明らかである。
イ 違法性
 先に述べたとおり,医療扶助・介護扶助は命や健康に直接に関わる基幹的ニーズに対応する扶助であることから,生活保護利用者も非利用者と同じ最適水準の医療・介護を受ける権利が保障されている。そのために,介護保険でまかなわれない1割の自己負担部分を支給するのが介護扶助である。こうした介護扶助費やその他の一時扶助費を支給せず,自己負担させることは,当該生活保護利用者が「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る生活を余儀なくされることを意味し,明らかに違憲・違法である。法「改正」を提言するにとどまらず,違法な自己負担を実務運用において組織的に強行するのは,法の実施機関としてあるまじき蛮行と言わざるを得ない。
ウ 問題事例の発生
① 生野区
 ポータブルトイレの購入代金と住宅改修の一部負担金について,ケースワーカーから「住宅改修と福祉用具購入について支払余力がある方には負担をおねがいしている」と言われたので,利用者に確認し,介護保険1割分の自己負担をしてもらった。
② 阿倍野区
 福祉ベッドを自費で負担するように求められた。
③ 西成区
 浴室椅子の購入時に1割負担を出せない,自己負担をするようにと言われた。
④ 浪速区
 往診や訪問歯科のプランについて必要性を強く問われるが,ケースワーカーはご本人の状態を全く把握しておらず,ただ単に必要ないと言われることに対して怒りを持っている。
手すり設置の住宅改修が自己負担となった。少ない保護費で食事をきりつめて対応されており,大変だと感じた。
⑤ 生野区
住宅改修や福祉用具の1割負担分について,原則自己負担が必要であり,自己負担ができない場合はその理由が必要と言われる。そのため,生活保護開始時に提出している生保開始届を毎回提出している。同じ書類を記入,提出しなければならず,手間と時間の負担増である。
⑥ 西成区・72歳男性(要介護3)
 脳梗塞の後遺症で右上下肢マヒがあり,歩行や段差の上り下りが困難。ケアマネが室内と共同トイレの移動用に手すりをとりつけ,玄関にスロープを設置しようとしたところ,ケースワーカーが共同スペースの手すりの設置を認めず,スロープのみの設置となった。その後もケースワーカーから杖や歩行器の利用ではダメな理由を記載した資料の提出を求められ,提出する。見積もり(改修費78,000円)を提出した際,ケースワーカーがケアマネに対し「上からの指示で,本人の生活保護の残金があれば,そこから1割負担(7,800円)を出してくれ」と述べ,1割自己負担を前提条件として住宅改修が許可された。 
(3)支払わされた自己負担金は全額遡って返還すべきである
 役所は,生活保護費の不払いがあり不払いが誤りだったとしても2か月を超えて遡って返還することには応じないことが多い。その理由としては,①最低生活費の認定変更を必要とするような事項については利用者に届出義務が課せられていること,②一旦決定された行政処分をいつまでも不確定にしておくことは妥当でないこと,また行政処分の不服申立期間が60日間とされていること,③生活保護の扶助費は生活困窮に直接的に対処する給付であることが挙げられている(別冊問答集2013年度版問13-2)。
 しかし,1割負担分を介護扶助として支給せずに自己負担させることは,役所自身が引き起こした明白な違法行為であり,届出をしない責任を利用者に転嫁するのは筋違いである。また,違法な行政行為に安定の要請などないし,2ヶ月間不服の申立てがないことや支払われるべき保護費が支払われずとも生活を維持できたことを理由に違法行為の誤りが正当化され,是正の必要がなくなるわけでもない。
 過去の審査請求や裁判を通じて処分庁が2ヶ月を超えて返還した事案もあり,2ヶ月を超える遡及を拒む理由はない。大阪市は,本来支給すべきであった保護費を全額遡って支給すべきである。
① 現実には得ていない収入を収入認定して生活保護費を減額した点を違法とした秋田県知事裁決平成21年7月9日を受けて,処分庁は2ヶ月を超えて生活保護費を返還した。
② 処分庁が同居家族による介護について家族介護料を計上し忘れて支給しなかった点について,福岡県知事裁決平成21年12月25日は「遡及する時期は(2ヶ月が)原則であると解されます。しかしながら,不作為など特別な事情がある場合は,・・・(2ヶ月分)を超えて遡及することも考慮されるべきであると思料されます」と述べて,2ヶ月分の遡及しか認めなかった処分庁の処分を取り消した。
③ 大阪市も,精神障害2級の原告に対して,手帳申請時に福祉事務所が自ら検診書を発行して障害の程度を把握していたにもかかわらず障害者加算が漏れていた事案で,平成14年の提訴後,原告の主張を認めて1年分の遡及支給を認めたことがある。

5 「不正受給対策」に名を借りた管理・支配体制の強化問題
(1)警察官OB配置による福祉事務所の性格の変質
ア 大阪市の現状

 現在,大阪市では,全27区に不正受給調査専任チームが結成され,適正化担当係長1名,大阪市OB職員1名,警察官OB1名の3人で構成されている。不正受給調査専任チームは,刑事告訴・告発等の法的手段を視野に入れた重点的調査を実施している。他に各区に安全管理担当の警察官OBが雇用され,大阪市全体で54名の警察官OBが配置されて年間1億3600万円の人件費が計上されている。
 しかし,悪質な不正受給事案はそう多くある訳でない。そのため,警察官OBは,日常的には福祉事務所内での立ち番や巡回をして来訪者を監視したり,ケースワーカーの面接や家庭訪問の業務に同席・同行している。また,不正受給とは何の関係もない生活保護利用者の日常生活上の行動を尾行や張り込みの手法で監視している。
イ 違法性・不当性
 社会福祉法15条6項は,福祉事務所において「現業を行う所員」については,「社会福祉主事でなければならない。」と規定し,また,同法19条は,社会福祉主事の資格につき,「人格が高潔で,思慮が円熟し,社会福祉の増進に熱意があり」かつ,社会福祉に関する科目を修めて大学を卒業した者等の要件を規定している。
 他方,警察法第2条第1項は,「警察は,…犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕…その他公共の安全と秩序の維持に当たる事をもってその責務とする。」と規定し,警察行政と社会福祉行政とは,その目的,性格を全く異にしている。
したがって,社会福祉主事の資格を有しない警察官OBが,ケースワーカーの面接や家庭訪問に同席・同行して現業業務につくことは,生活保護法21条,社会福祉法15条に違反し,違法である。
 また,不正受給とは何の関係もない日常生活上の行動を尾行や張り込みの手法で監視することは,目的と手段との間の相当性を欠き,プライバシー権(憲法13条)を侵害するものと言わざるを得ない。
 本来,ケースワーク業務は「信頼」を基礎とする対人援助であるが,若く経験の乏しいケースワーカーが,警察官OBと日常的に交流することによって,疑ってかかる姿勢や威圧的な態度を身につけ,福祉事務所の性格そのものを変質させつつある。なお,平成21年度から同25年度にかけて,大阪市における法27条に基づく指導指示書の発行枚数は,470枚から4354枚(うち就労指導にかかるものは38枚から937枚)へ,指導指示違反による廃止件数は,90件から504件(うち就労指導にかかるものは38件から159件)へと劇的に増加しており,ここにも福祉事務所が生活保護利用者の生活全般への支配・管理を強めている様子が見て取れる。
ウ 問題事例の発生
① 大正区・50代男性
 息子の乗用車を借りて通院などしていたところを見つかり「警告」を受けた後,産気づいた妹を病院に連れて行くところを駐車場前で張り込みをしていた警察官OBに再度見つかり,指導指示違反を理由として保護を廃止された。
② 某区
 信頼関係を結ぶのが難しい当事者のところに警察官OBと一緒に家庭訪問したところ,部屋中を探索的に見たり,威圧的な態度をとるため,却って関係が悪化し揉めた。
(2)不正受給(法78条)のずさんな認定
ア 大阪市の現状

 近年の大阪市各区の生活保護法施行事務監査資料によれば,徴収金額が数百円,数千円と極めて低額であるにもかかわらず法78条(不正受給)返還決定が出されている事例が多数見受けられた。また,当調査団が住吉,東成,都島,鶴見,平野,淀川,住之江,住吉の8区の監査資料を分析したところ,返還額3万円未満のものが23.5%あり,10万円以下は実に87.3%を占めた。これらの中には,課税調査によって稼働収入についての本人申告額との間の僅かな齟齬が発覚した場合や,金融機関調査によって本人も忘れていた休眠口座が発見された場合など,本来,不正受給と扱うべきではない事案が多数含まれていることが推測される。
 また,平成25年度西成区に対する指導監査講評に,「高校生のアルバイト収入についても,未申告のアルバイト収入が判明した場合については,法第63条ではなく,法78条を適用するように徹底をお願いします。」とあるように,個別の「不正の意図」を認定しないまま法78条を適用するという誤った運用が少なからず見受けられる。
イ 問題点
 本来,法78条返還決定に際しては,「不正の意図」を認定する必要があり,「不正の意図」が認定できない場合には,法63条を適用しなければならない。
 法78条返還決定がされると,今般の生活保護法「改正」によって,1.4倍の加算徴収が可能となること(法78条1項~3項),非免責債権とされること(法78条4項),保護金品からの徴収(天引き)が可能であること(法78条の2),重くなった罰則が適用され得ること(法85条)など,法63条返還と法的効果が大きく異なり,保護受給者は厳しい不利益を被ることとなるので,従来以上に慎重な認定がなされる必要がある。
また,法78条返還決定の件数及び徴収額が過大に計上されると,誤った統計により不正受給件数が増えたと判断され,生活保護利用者に対する無用の偏見を生み,制度改悪にもつながるのであって,かかる統計の悪影響も無視できない。
ウ 問題事例の発生
① 鶴見区・母子世帯
  高校生の長男のアルバイト収入につき,法78条返還決定がされたが,子どもがアルバイトをした場合の取扱についての説明が全くなく,母親はこのアルバイト代について収入申告が必要であるとは認識がなかった。母親が審査請求をすると,「不正受給の意図があったということを立証できない」として法78条に基づく処分は撤回され,法63条に基づく返還処理がなされた。
② 大正区・母子家庭
高校生の娘がアルバイトしていることを母親は知らなかったが,課税調査で2年前のアルバイトが発覚し,「警告1回」とされた。以後,娘は収入申告していたが,翌年の課税調査で警告前1年分の収入が発覚したとして生活保護を廃止された。同区では,2度目の不正受給発覚の場合は保護を廃止する旨の独自のフローチャートを作成しており,これが形式的に適用されたものと思われる。
③ 平成23年度淀川区の監査資料
  単身高齢者世帯・徴収決定額270円,単身傷病者世帯・徴収決定額2000円,単身高齢者世帯・徴収決定額2750円等,少額の徴収額の事例が多数ある。このような少額事例は,各年度,各区でも多々見受けられる。
(3)監視カメラの設置等による威嚇
ア 大阪市の現状

 現在,大阪市では,浪速区,西成区等の各福祉事務所の相談ブース内で,監視カメラが設置されている。浪速区等では,相談ブース内に,録音禁止の張り紙が貼られている。
 また,淀川区では,生活保護を利用するすべての世帯に対して,「適正な保護費の受給に協力してください!」「淀川区においては,過去1年間で生活保護の不正受給で4名の逮捕者がでています」などと記載された威嚇的な内容のチラシが配布された。
イ 違法性・不当性
 相談ブース内の様子を監視カメラで撮影することは,プライバシー権,肖像権の侵害となる。監視カメラの設置は,保護申請者にとって,生活保護の申請に対する無言の圧力となり,録音禁止等の張り紙等と相まって,相談ブース内が威圧的な雰囲気となり,安心して申請や相談ができない状況となっていると言わざるを得ない。かかる状況は,保護申請者の申請に対する抑止にもなりかねない。
 本調査団の調査結果にもあるとおり,いわゆる水際作成により,違法に申請権が侵害されるケースが後を絶たない。しかし,事後的にそれを確認し,是正しようとしても,職員側は事実を否認するのが通常であることから,違法行為の証拠化のためにやりとりを録音しておく必要性は高い。さらに,生活保護申請支援を行う弁護士に対し,「侮蔑的な発言を行った」として言いがかりをつける事例もあり,申請者・支援者の自衛の意味でも録音は不可欠なものと言わざるを得ない。そもそも,保護申請者及び申請同行者が,対面して話している担当職員とのやりとりを録音することは,法的に全く問題のないことであり,これを禁止する法的根拠はない。
 また,淀川区のように、すべての生活保護利用世帯を不正受給予備軍のようにみなす威嚇的な内容のチラシを配布することは、いたずらに保護利用者を萎縮させることにつながり、市民の生存権を保障する生活保護制度の精神にもとるものである。

6 実施体制上の問題
(1) 脆弱な実施体制に対して繰り返される厚労省の指摘

 例年の厚生労働省による生活保護法施行事務監査において,管内実施機関に対する指導の徹底,的確な訪問活動,実施体制の整備等の是正又は改善の措置を講ずること等について,繰り返し指摘を受けている。法定受託事務として生活保護法を実施している大阪市は,生活保護法第23条,地方自治法第245条の4にもとづいて是正又は改善の措置を講ずることが求められており,是正又は改善措置を講じたとの報告を行っている。しかし,是正又は改善の効果は見られず,毎年同様の指摘を受け続けているばかりか,現状はむしろ悪化しているといわざるをえない。
 実際,当調査団が調査対象とした7区すべてにおいて,大阪市本庁監査における文書指摘率は年々悪化の一途をたどっている。平成20年度から25年度にかけて最も指摘率の高い淀川区では44.0%から74.6%に,最も指摘率の低い生野区でも22.9%から41.5%に悪化している。いずれの区においても,「訪問調査活動の活発化を図り,生活実態の把握に努めること」との指摘が繰り返されており,「年に1回のみの訪問や家庭内面接がなされていないものが多数を占めた」(平成24年度大阪市監査実施方針),「現業経験の浅いケースワーカー及び査察指導員が多いことから保護の実施上基本的な事項について問題が見られ」た(平成25年度大阪市監査実施方針)等の指摘も少なくない。
実施要領の「生活保護実施の態度」は,「実態を把握し,事実に基づいて必要な保護を行うこと」,「彼保護者の立場を理解し,そのよき相談相手となること」を求めている。就労支援や様々な生活問題に対する自立支援も,さらには不正受給の未然防止も,日常的な訪問調査活動抜きで,できるはずがない。日常的な訪問調査は,あらゆるケースワーク活動の基盤となるものである。
 こうした大阪市の実施体制上の問題点は,以下述べるとおり,①400人規模の恒常的な人員不足,②ケースワーカーの専門性の欠如,③任期付き雇用など身分の不安定という構造的問題に起因しており,これまで検討してきた大阪市の生活保護行政が抱える諸問題の根底をなしている。
(2) 400人規模の恒常的な人員不足
 ケースワーカー(現業員)の配置数は社会福祉法第16条に定める標準数(都市部で80対1)に基づくものでなければならない。しかし,平成25年度生活保護法施行事務監査において,現業員は全ての実施機関において,査察指導員は11の実施機関において,いずれも標準数を充足していないことが指摘された。現業員の不足数は,西成区の145人をはじめとして全市で481人にのぼり,現業員の不足数は全国一となっている。大阪市は,平成22年度から23年度にかけて115人の増員を図ったが,なお恒常的に400人以上の不足数が生じて充足率は7割前後にとどまっており,不足数は増加傾向にある。
 その対応策として,大阪市は,平成16年よりケースワーカーを「一般担当」と「高齢担当」にわけ,平成23年4月時点では,一般担当(737名)は60対1,高齢担当(173名)は380対1とする独自の配置基準を採用している。高齢ケースには安否確認を担当する高齢嘱託(226名)を288対1で置き,ケースワーカーは事務処理に専心することとなっているが,若手がケースワークの経験を積めず,担当する生活保護利用者からは相談しても対応してくれないという苦情が絶えない。
 そのため,淀川区は,「CWの配置基準を早急に厚労省基準に戻していただきたい。CWの精神的・体力的負担増による病気欠席が多いのも大阪市独自の配置基準が起因しているものと判断する」(同区の平成23年度監査結果)として,大阪市の方針を厳しく批判し,市の方針に反して一般担当と高齢担当の仕分けをしていない。しかし,その淀川区も,平成24年度厚生労働省監査において,訪問調査に問題のある事例が62ケース中で56件指摘され,その他の諸事項も含めると指摘率100%という惨憺たる結果である。
結局,400人を越える恒常的な人員不足という構造を是正しない限り問題状況は改善されないことは明らかである。
(3) 全国平均を下回る資格取得率(専門性の欠如)
 社会福祉法第15条第6項において,現業員及び査察指導員は,社会福祉主事でなければならないと規定されている。
全国的な社会福祉主事の資格取得率は,査察指導員においては74.6%,現業員においては74.2%となっているが(「平成21年福祉事務所現況調査による),大阪市における現業員の資格取得率は,近年の監査資料によると,高い実施機関で61.4%(淀川区・平成24年度),低い実施機関は28.9%(住吉区・平成21年度)であり,8区平均では51.6%にとどまり,全国平均と比べても著しい低さであった。平成25年度生活保護法施行事務監査においても,「社会福祉主事資格を有しない査察指導員及び現業員が全ての実施機関で認められた」とし,資格取得に努めるよう是正又は改善の措置を講ずるよう指摘されている。社会福祉士,精神保健福祉士等の国家資格に至っては,当調査団の資料請求に対してデータの開示さえない。
 また,現業員や査察指導員は,生活保護法のみならず他法他施策を熟知し,支援技術や知識などについては経験を通して蓄積しなければならないが,大阪市においては,経験年数3年未満の経験の浅い職員が8区平均で61.9%を占めている(東成区と鶴見区では80%を超えている)。
 大阪市において,現業員による様々な人権侵害事例が発生しているのは,無資格者が多く,かつ職員の経験年数が浅いことと無関係ではない。法が求めるように速やかに有資格者比率を高め,福祉専門職として長年勤務して経験を蓄積できる人事政策に転換する必要がある。
(4) 任期付き雇用など身分の不安定
 大阪市においては,正規職員の配置を怠り,任期つきや嘱託職員を低賃金で一時的に雇用して,その場をしのぐことが長年続いている。特に任期(3年)付きケースワーカーを平成22年度に212名大量採用し,全ケースワーカーの4分の1近くを占めるに至っている。
 「地方公共団体の一般職の任期付き職員の採用に関する法律」では,本来,任期付職員の採用は,①一定期間内に終了することが見込まれる業務,②一定期間内に限り業務量の増加が見込まれる業務に限られているが,先に述べたとおり400人規模の恒常的人員不足がある大阪市においてこうした要件が満たされていないことは明らかである。また,3年の任期では,せっかく仕事を覚えたころに退職を余儀なくされる点において,本来専門性を有すべきケースワーカーの職責に反する。さらに,任期付きケースワーカーは正規職員と全く同じ業務に従事するにもかかわらず,その月給は約15万円から増えたとはいえ約17万円にとどまっており待遇の格差は著しく大きい。
 そのため優秀な職員ほど任期の満了を待たずに他のより待遇のよい職を見つけて中途退職する事例も少なくなく,業務に支障をきたす事態が生じている。特に,任期付きケースワーカーについては速やかに正規職員化し,非正規職員についは雇用の安定化と賃金などの労働条件の改善を早急に図るべきである。

以上
                      


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