第8回生活保護問題議員研修会
  "貧困の連鎖"を断ち切るために
  富山で生活保護を考える。



  行政だからこそ、 
    出来ることがあります。
      連鎖を止める第一歩。


例年、ご好評いただいている地方議員の皆さま方を対象とする生活保護制度に関する研修会を今年も開催いたします。
近年、史上最大の生活保護基準の引き下げや法「改正」が相次ぐ一方、生活困窮者自立支援法や子どもの貧困対策基本法などの新たな法制度も実施され始めています。
各分野の専門家を講師として迎え、地方行政に何ができるのかを考えます。是非、多数ご参加いただけますよう、ご案内申し上げます。

第8回生活保護問題議員研修会

★リーフレット(PDF/2.2MB)をダウンロード
★申込み書(PDF)のみダウンロード

本研修会については、定員をオーバーしましたので、申込みを締め切りました。
大変申し訳ありません。



【日時】8月26日(金)~8月27日(土)

【場所】富山県民共生センター・サンフォルテ(両日) アクセス

【対象者】地方議会議員

【参加費】1万5000円
 ※1日目交流会(自由参加)1000円
 ※2日目お弁当 900円

【参加申し込み】
 ①申込書をFAX、②メールを送信、の方法によりお申し込み下さい。
 ※ホテルは、各自でご準備ください。
 ※会場の富山共生センター・サンフォルテでは申し込みを受け付けておりませんのでご注意ください。
→【申込先】マックチャレンジサポート議員研修会担当
 電話070-5567-4771 FAX 03-6912-4854
  koufuken@gmail.com
 営業時間:平日9:00~17:00(土日祝休)
参加申込みは締め切りました。

【主催】生活保護問題対策全国会議
    全国公的扶助研究会



 プログラム・1日目(11:30 受付開始)  
 11:55 ドキュメンタリー映画「隣る人」刀川和也監督(自由参加)
 13:30 開会挨拶・基調報告
     「生活保護『改革』と生存権の保障 〜生活保護をめぐる最近の動きについて〜」
       吉永 純さん(全国公的扶助研究会会長・花園大学教授)
 13:50 講演1
    「いまなぜ『下流老人』なのか 〜広がる高齢者の貧困と対策の必要性」
       藤田孝典さん
       (NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学客員准教授)
 15:40 講演2「自治体に求められる子どもの貧困対策」
       中塚久美子さん(朝日新聞生活文化部専門記者)
 17:10 特別報告「生活扶助基準引き下げ訴訟は今…」
       西山貞義さん
       (弁護士・生活保護基準引き下げ違憲訴訟富山弁護団事務局長)
 18:00 交流会(自由参加)

  プログラム・2日目(9:00 受付) 
  9:30 分科会
   第1分科会 生活保護なんでもQ&A
   第2分科会 違法運用を起こさない職員体制とは
   第3分科会 生活困窮者自立支援法は機能しているか
   第4分科会 子どもの学びを自治体でどう支えるか
   第5分科会 自治体で考える住宅セーフティネット
   第6分科会 低所得者への医療保障(国保、無料定額診療事業、医療扶助)を考える
 13:00 講演3
  「反貧困の財政と地方自治~『救済』から『連帯』へ」
       高端正幸さん(埼玉大学准教授)
 14:30 まとめ「行政だからできること」
       尾藤廣喜さん(弁護士・生活保護問題対策全国会議代表幹事)
 

 各プログラムの内容ご紹介 
【1日目】
ドキュメンタリー映画「隣る人」(監督:刀川和也)(自由参加)  
地方のとある児童養護施設。ここでは様々な事情で親と一緒に暮らせない子どもたちが 「親代わり」の保育士と生活を共にしている。壊れた絆を取り戻そうと懸命に生きる人々の、平凡だけど大切な日々の暮らしは今日も続く。
→詳しくはこちらをご覧下さい

基調報告「生活保護『改革』と生存権の保障 〜生活保護をめぐる最近の動きについて」
講師:吉永純さん
全国公的扶助研究会会長・花園大学教授。福祉事務所20年、生活保護ケースワーカー12年の経験を生かして、貧困問題、生活保護、福祉事務所の在り方を研究。著書は『生活保護「改革」と生存権の保障』(2015年)明石書店など。

講演1 「いまなぜ『下流老人』なのか 〜広がる高齢者の貧困と対策の必要性〜」
全国で高齢者の貧困が見えるようになっています。老老介護、一家心中事件、孤立死、高齢者世帯の生活保護増加、低年金…。今後ますます高齢化が進む地域社会において、まずは現状を把握し、政治や政策的な課題に迫ります。
講師:藤田 孝典さん
NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学客員准教授.1982年生まれ。社会福祉士。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する活動と提言を行う。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。著書に『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版 2015)『ひとりも殺させない』(堀之内出版 2013)など。

講演1「自治体に求められる子どもの貧困対策」
6人に1人の子どもが貧困状態にある我が国。2013年、子どもの貧困対策法が成立し、自治体は具体的な対策の担い手としての役割が期待されています。自治体はどのような取り組みを進めていけばいいのか、事例を参考に学びながら、地方議員に何ができるのかをお話いただきます。
講師:中塚 久美子さん
朝日新聞生活文化部専門記者(子ども、貧困)。家庭の貧困や学びの格差による高校中退や定時制志願者急増など、子どもの貧困関連報道で2010年、貧困ジャーナリズム賞受賞。著書に「貧困のなかでおとなになる」(かもがわ出版)。

特別報告「生活扶助基準引き下げ問題は今…」
全国26都道府県で850名を超える原告が違憲訴訟を提起して立ち上がっています。何が問題か弁護団の弁護士が報告するとともに、当事者の生活実態と訴訟にかける思いについて原告が語ります。
講師:西山 貞義さん
生活保護基準引き下げ違憲訴訟富山弁護団事務局長。2007年検事任官。2010年検事退官,弁護士登録。ホームレス等生活困窮者支援に取り組んでいる。富山県弁護士会貧困問題対策委員会委員長等。

【2日目】
分科会
●第1分科会 生活保護なんでもQ&A
生活保護相談でよく問題になる論点について、「歩く生活保護手帳」と呼ばれ、あるべき実務運用を知り尽くした鉄壁のコンビが解説します。議員の皆さんの悩みや質問にも即座に回答。当議員研修会、恒例の分科会です。
講師:觜本 郁さん
神戸公務員ボランティア。阪神淡路大震災の支援活動の中で生まれた「神戸の冬を支える会」(ホームレス支動)や「NGO神戸外国人救援ネット」(外国人支援)の活動にたずさわる。元神戸市職員。

講師:林 直久さん
自治体職員。ケースワーカーをはじめ、生活保護の仕事に20年近く携わり、生活保護の実務運用を隅々まで知り尽くす。共著に「誰も書かなかった生活保護法」、「これが生活保護だ」などがある。

講師:森 弘典さん
弁護士。1999年弁護士登録。司法修習中に、野宿労働者の生活保護適用・稼働能力活用が問題となった林訴訟に関わる。2002年、愛知県弁護士会の人権擁護委員会に生活保護問題チーム(後に部会)を立ち上げ、2003年以降、炊き出しの場で行う野宿者総合法律相談を企画し実施する。日弁連・貧困問題対策本部委員。

●第2分科会 違法運用を起こさない職員体制とは
生活保護現場は、経験年数3年未満のケースワーカーが約63%を占めています。「標準数」をはるかに超える世帯を担当したり、非正規雇用のケースワーカーも増えています。また、指導監督する査察指導員も生活保護業務未経験者が配置されています。本分科会では、絶えない違法運用の背景にある職員体制を改善するにはどうすれば良いかを考えます。
講師:松崎 喜良さんさん
神戸女子大学教授。大阪市役所で31年間、生活保護ケースワーカーに従事。大学での仕事をする傍ら、生活保護問題対策全国会議、全国公的扶助研究会などにも参加。大阪市生活保護行政問題全国調査団では、大阪市の職員体制問題を担当した。
講師:衛藤 晃さん
神戸市兵庫区役所保護課、全国公的扶助研究会事務局次長。人と接する仕事がしたくて大学では公的扶助を専攻。生活保護ケースワーカー19年目。これまでの経験と実践を通して、福祉事務所のケースワーカーのあり方、実施体制のあり方について、様々な形で研究中。

●第3分科会 生活困窮者自立支援制度は機能しているか
生活困窮者自立支援法は、2015年4月から、福祉事務所を設置する全ての自治体に「自立相談支援事業」の実施を義務づけました。制度開始から1年を過ぎ、本当に生活困窮者のための制度として機能しているのでしょうか。現状と問題点、有効な活用方法、そして改善への展望を探ります。
講師:谷口 伊三美さん
生活保護ケースワーカー養成講座代表。27年にわたり、大阪市東淀川区で生活保護の現業に携わる。2014年度からは生活困窮者自立支援法の関連事業も担当。後進育成ため、自主的研修会である生活保護ケースワーカー養成講座を運営。
講師:仲野 浩司郎さん
羽曳野市自立相談支援窓口、主任相談支援員。大学卒業後、民間の医療機関で医療ソーシャルワーカーとして勤務。平成21年に羽曳野市に入職し生活保護CWを経て、現在は生活困窮者自立支援制度を担当。主任相談支援員として困窮者の支援を行っている。
講師:小久保 哲郎さん
弁護士、生活保護問題対策全国会議事務局長。1995年大阪弁護士会登録。野宿からの居宅保護を求めた佐藤訴訟など、野宿生活者や生活保護利用者の法律相談や裁判に取り組んできた。編著に「すぐそこにある貧困」(法律文化社)、「Q&A生活保護利用者の法律相談」(新日本法規)など。

●第4分科会 子どもの学びを自治体でどう支えるか
生活保護法で義務教育や高校生にどのような扶助をしているのか、大学等への進学についての扱いについて説明します。そのうえで、貧困の連鎖を避けるためには、現在の制度や運用のどこに課題があり、それを補うために、自治体でできることは何かについて考えます。
講師:田川 英信さん
東京都世田谷区玉川福祉事務所。東京都世田谷区で、生活保護ケースワーカー、保護係長を15年間経験し、定年退職。現在、再任用で再び生活保護職場に戻り、現場での問題意識を発信し続けている。全国公的扶助研究会運営委員・生活保護問題対策全国会議幹事
講師:中塚 久美子さん
朝日新聞生活文化部専門記者(子ども、貧困)。家庭の貧困や学びの格差による高校中退や定時制志願者急増など、子どもの貧困関連報道で2010年、貧困ジャーナリズム賞受賞。著書に「貧困のなかでおとなになる」(かもがわ出版)。

●第5分科会 自治体で考える住宅セーフティネット
昨年の研修会の講演で初めて住宅問題を取り上げたところ好評を頂いたので、分科会で取り上げてさらに深めることにしました。先進地域の取り組みをご紹介しながら、自治体でできる住宅政策を考えます。
講師:稲葉 剛さん
住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。1994年より、東京で路上生活者を中心とした生活困窮者の相談支援に取り組む。2014年に一般社団法人つくろい東京ファンドを立ち上げ、空き家を活用した居住支援をおこなっている。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授。
講師:露木 尚文さん
(株)都市・住宅問題研究所代表取締役。都市計画コンサルタント。一級建築士、技術士(都市及び地方計画)。2012年より豊島区居住支援協議会の事務局メンバーとして、空き家を活用した居住支援の仕組みづくりに取り組んでいる。日本住宅会議理事。

●第6分科会 低所得者への医療保障(国保、無料低額診療事業、医療扶助)を考える
市町村国保会計の徹底分析による国保料引き下げの展望、2018年度からの都道府県単位化による影響、国保からの排除層の受け皿となっている無料低額診療事業・生活保護の医療扶助の課題について、最新情報をもとに考えます。寺内順子著「基礎から学ぶ国保」(2015年日本機関紙出版センター)をお持ちの方はご持参ください。
講師:寺内順子さん
大阪社会保障推進協議会事務局長。佛教大学社会学部卒業後豊中市の障害児・者施設に勤務。1991年大阪社会保障推進協議会入局。所謂「無保険のこども」解消のきっかけとなった調査を2008年6月に実施し、発信した。著書(共著含む)に「国保広域化でいのちは守れるのか?」(かもがわ出版)等。
講師:吉永 純さん
全国公的扶助研究会会長・花園大学教授。福祉事務所20年、生活保護ケースワーカー12年の経験を生かして、貧困問題、生活保護、福祉事務所の在り方を研究。著書は『生活保護「改革」と生存権の保障』(2015年)明石書店など。

講演3 「反貧困の財政と地方自治〜「救済」から「連帯」へ」
多くの社会保障分野で「財源不足」を理由に削減が相次いでいます。人間の暮らしを支えるという「国の財政」の本来的使命を果たすためには、どのような税と社会保障の制度が必要なのか、地方政治に出来ることは何か。気鋭の経済学者の提言です。
講師:高端 正幸さん
埼玉大学准教授。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。聖学院大学、新潟県立大学等をへて、2015年より現職。博士(経済学)。東京都税制調査会委員、新潟県税制調査会委員等を務める。著書に『復興と日本財政の針路』(岩波書店)、『地域切り捨て-生きていけない現実』(岩波書店、金子勝氏との共編著)等。

まとめ 「行政だからできること」
講師:尾藤 廣喜さん
弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事。70年、厚生省入省。75年、京都弁護士会に弁護士登録後、数々の生活保護裁判を勝利に導いてきた。著書に「生存権」「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(共著)など。


<これまでの参加者の声>

●初めて参加しましたが、たいへん勉強になりました。頭の中でバラバラになっていた社会保障、 生活保障をキーワードにつながった気がします。
●毎回、目からウロコの学習をさせていただいています。生活困窮者支援の声を政策に活かす為頑 張ります。ケースワーカーの待遇改善もワーキングプア対策として重視しています。
●このような全面的な議員研修会が、毎年、7回にわたって開催されていることは素晴らしいことです。 今後も出来る限り参加したいと思います。




福祉事務所から「一年に1回資産申告をしてもらうことになった」と資産申告書や通帳の提示を求められたりすることが、増えています。

これについて、各地でトラブルが発生しています。
どう対応すべきか、以下のQ&Aにまとめましたので、これを拡散して下さい。
「あきらめないで闘うすべはある。」を合い言葉に、対抗していきましょう!

当会では、この内容をパンフレットにまとめ、配布しております(各福祉事務所にも送付手続中です)。

ぜひ、団体内や生活保護利用者への周知、相談活動などにお役立て下さい。
団体だけでなく、個人からの申込みも可能です。各地での運動にご活用下さい。

申込みの方法
(1)ネットから申し込む  
  申込みフォーム→http://my.formman.com/form/pc/4yGeACW4HMu3isGg/
(2)FAXで申し込む
  ①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を明記の上、072-970-2233までFAXをお送り下さい。
(3)メールで申しこむ
  メール(seihokaigi@hotmail.co.jp)にて①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を、お送り下さい。

なお、恐縮ですが、印刷協力金として費用のご負担(1口50部:1500円)をお願いしております。
なるべく多く印刷して、拡散させたいと思いますので、ご協力の程、よろしくお願いします!
 

 ※口数10口以上の場合は、費用のご相談に応じます。
 ※送料のご負担をお願いします。
 ※生活保護利用者のみの団体の方は、協力金は不要です。


パンフレットのPDFファイル(DLフリー) 
普通に資料にしたい(A4に2頁) click!
スマホに保存していつでも見られるようにしたい(A5 1頁ずつ) click!
両面印刷してパンフにしたい(割り付け済) click!

資産申告書Q&Aパンフ










いったい、どうなってるの?
資産申告書問題Q&A
あきらめないで!闘うすべはある。


【「資産申告書問題」とは?】
Q1 ケースワーカーから「これからは年1回、資産申告書を提出してもらうよう取扱いが変わった」と聞きましたが、本当ですか。

A 本当です。
厚生労働省が平成27年3月31日に新たな通知を出しました。


厚生労働省社会・援護局保護課長は,平成27年3月31日,実施要領の取扱いを変更する通知(社援保発0331第1号。以下,「本件通知」といいます。)を出しました。そこでは,「被保護者の現金,預金,動産,不動産等の資産に関する申告の時期及び回数については,少なくとも12箇月ごとに行わせること」とされ,これまでは保護申請時のみに要求していた資産申告について,今後は最低年1回資産申告を求めることとされています。

これを踏まえ,各地で,生活保護利用中の者に対し,資産申告書の提出や通帳の提示等を求める運用が始まっていますが,単に任意の協力を求めるにとどまらず,事実上これを強制する扱いが横行しているため,生活保護利用者の中に不安と動揺が広まっています。

【年1回の資産申告書提出は法的な義務?】
Q2 年1回資産申告書を提出することは法律上の義務で必ず従わなければならないのでしょうか?


A 具体的必要性がないのに,年1回資産申告書の提出をしなければならない法律上の義務はありません。あくまで任意の協力を求めるものであり,提出を強制することは許されません。

生活保護法61条は,生活保護利用者の生計の状況に変動があった場合に届け出義務を課していますが,こうした変動がないにもかかわらず機械的定期的に届け出義務を課してはいません。
また,同法28条1項は,保護の決定若しくは実施のために具体的な必要性がある場合に福祉事務所の調査権限を認めていますが,一般的抽象的な調査権限を認めてはいません。
 したがって,本件通知が生活保護利用者の任意の協力を求めるものではなく義務を課すものであるとすれば,生活保護法61条と同法28条1項の趣旨に反し違法であると解されます。

 厚生労働省は,本件通知について,「平成26年7月に施行された改正法の第60条において,生活保護受給者の適切な家計管理を促す観点から,生活保護受給者が主体的に生計の状況を適切に把握する責務を法律上に具体的に規定し,福祉事務所が必要に応じて円滑に支援することを可能としたことを踏まえ,生活保護受給者から少なくとも年に1回の資産申告を求め,福祉事務所が預貯金等の資産の状況を適切に把握することについて,実施要領等の改正を行う」ものと説明しています(平成27年3月全国生活保護主管課長会議資料3(2)イ(イ)43頁)。
しかし,同条の改正案の審議にあたり,桝屋厚生労働副大臣(当時)は,

「あくまでも受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であって,この責務を果たさないことをもって保護の停廃止を行うというようなことは考えておりませんし,あってはならないと思っております。議員御懸念のようなことがないよう,こうした法改正の趣旨について,周知徹底を図ってまいりたいと思います。」

と明確に答弁しています(平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員に対する答弁)。これを踏まえ,厚生労働省も,
「健康管理や金銭管理は,あくまで受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であるため,本規定に定める生活上の義務を果たさないことだけをもって,保護の停廃止を行うことは想定していないことに十分ご留意いただくようお願いする。」

 と実施機関に対し特段の留意を求めていたのです(平成26年3月3日全国生活保護主管課長会議資料33ページ,3(4))。
したがって,改正法60条も,本件課長通知が求める資産申告を生活保護利用者に義務付ける根拠にはなり得ません。

●生活保護法61条「被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき(略)は,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない」

●生活保護法28条1項「保護の実施機関は,保護の決定若しくは実施(略)のため必要があると認めるときは,要保護者の資産および収入の状況(略),当該要保護者に対して,報告を求め(略)ることができる」


【協力しないと保護打ち切りに?】
Q3 
ケースワーカーから資産申告書と通帳の写しの提出を求められ、「提出しなければ指導指示違反で保護を打ち切ることもありえる」と言われました。従わないと保護が打ち切られるのでしょうか?


A 指導指示違反による保護の停廃止(打ち切り)は許されません。

 生活保護法62条3項による保護の停廃止の前提となる同法27条に基づく指導指示は,「被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない」とされています(同条2項)。Q2で述べたとおり,具体的必要性が認められないのに機械的に年1回の資産申告を求める本件通知に基づく指導指示は,生活保護法61条や28条1項の趣旨に反し「必要の最少限度」のものとは言えません。生活保護利用者の自発的努力を求めるに過ぎない改正法60条も指導指示の根拠とはなりません。
 協力を得られない生活保護利用者について,どうしても調査が必要と考えるのであれば,生活保護法29条に基づいて金融機関等に対する調査ができますから,利用者からの資産申告書等の提出に固執する必要もありません。

また,「指示違反の程度」と「課される制裁の重さ」はつり合っている必要があり,軽微な指示違反に対して保護の停廃止という重大な制裁を課すことは許されないとされています(比例原則)。仮に,指導指示が有効だとしても,具体的必要性が認められないのに単に資産申告書等を提出しないという軽微な指示違反を理由に保護の停廃止という重大な不利益処分を課すことは比例原則に反し許されません。
生活保護法29条に基づく金融機関等に対する調査の結果,未申告の収入(不正受給)が発覚したとすれば,当該不正受給に対して適切に対応すればよいことです。


【保護費が貯まると打ち切られる?~累積金問題】
Q4 ケースワーカーから通帳の写しを見せるように言われましたが,私の通帳には,保護費を節約して貯めた約150万円の預金が入っています。これが福祉事務所にわかると生活保護は打ち切られてしまうのでしょうか?


A 保護の目的趣旨に反しない預貯金は保有できます。150万円程度であれば、違法不当な目的で貯金していた場合以外は保有が認められるべきです。

1 保護の目的・趣旨に反しない預貯金は保有できる
 現行生活保護制度上,資産の保有は認めるが購入費用までは支給されない耐久消費財などについては,保護費のやり繰りをした累積預貯金で購入することが当然の前提とされています。したがって,累積金があることがわかっても,このような経費のための費用として保有を容認することが基本的な姿勢とされなければならなりません。
このような観点から,最高裁判決を含めた裁判例(※1,※2)や厚生労働省通達(※3)も,保護費を原資とした預貯金は,預貯金の目的が生活保護費支給の目的や趣旨に反するものでない限り,収入認定せず保有を認めるべきとしています。
 したがって,預貯金の使用目的として,①耐久消費財(テレビ,冷蔵庫,洗濯機等の家電製品,布団,食卓,タンス等の家財道具)などの買い換え費用,②子どもの教育費(進学,就学費用で高校等就学費等の保護費で賄えない費用や大学入学にかかる費用),③家族の葬式代(葬儀費用で葬祭扶助では不足する額や墓石等),④その他当該世帯に必要な費用(不意の入院に必要な雑費等)など,それぞれだいたい幾らくらいかの金額も含めて説明できれば,何ら問題なく,そのまま保有し続けることができます。

そして,下記裁判例(※1)は,保有目的が抽象的であっても保護の趣旨目的に反しなければ保有が容認されると述べており,最近,「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて預貯金を収入認定した事案(※4)や,累積金の使途が不明であることのみをもって収入認定を行った事案(※5)について処分の取り消しを命じる裁決も出ています。つまり,保有目的はある程度抽象的なものでもよく,保有目的が保護の趣旨目的に反することの立証責任は福祉事務所の側にあるということです。
したがって,累積預貯金が判明した段階で保有目的が不明確であったとしても,違法不当な目的(例えば覚せい剤購入等)であることが明らかでない限り,保有が認められるべきです。

※1 秋田地裁平成5年4月23日判決
 生活保護費で蓄えた約81万円の預貯金のうち約27万円を収入認定して保護費を減額する処分と,残額についてはその使途を弔慰の用途に限定する指導指示をしたケースについて,「収入認定を受けた収入と支給された保護費は,国が憲法,生活保護法に基づき,健康で文化的な最低限度の生活を維持するために被保護者に保有を許したものであって,こうしたものを源資とする預貯金は,被保護者が最低限度の生活を下回る生活をすることにより蓄えたものということになるから,本来,被保護者の現在の生活を,生活保護法により保障される最低限度の生活水準にまで回復させるためにこそ使用されるべきものである。したがって,このような預貯金は,収入認定してその分保護費を減額することに本来的になじまない性質のものといえる。更に,現実の生活の需要は時により差があり,ある時期において普段よりも多くの出費が予想されることは十分あり得ることであり,そのことは被保護世帯も同様であるから,保護費や収入認定を受けた収入のうち一部を預貯金の形で保有し将来の出費に備えるということもある程度是認せざるを得ないことである。」とし,「生活保護費のみ,あるいは,収入認定された収入と生活保護費のみが源資となった預貯金については,預貯金の目的が,健康で文化的な最低限度の生活の保障,自立更生という生活保護費の支給の目的ないし趣旨に反するようなものでないと認められ,かつ,国民一般の感情からして保有させることに違和感を覚える程度の高額な預貯金でない限りは,これを,収入認定せず,被保護者に保有させることが相当で,このような預貯金は法4条,8条でいう活用すべき資産,金銭等には該当しないというべきである。なお,被告は,具体的な耐久消費財の購入等預貯金の目的が相当具体的で,かつ,それが生活保護法の趣旨に反しない預貯金である場合以外は保有は許されず,将来の不時の出費に備えるという程度では足りないと主張するが,生活保護費と収入認定を受けた収入で形成された預貯金については,前記のような源資の性格からして目的がそこまで具体的でなくとも,生活保護法の目的ないし趣旨に反しないものであれば,これを保有させるべきである。」と判示している。

※2 最高裁平成16年3月16日判決(いわゆる中嶋学資保険訴訟)
「生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(略)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。」として,上記秋田地裁の判断を追認した。

※3 実施要領問答第3の18
「(預貯金の)使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については,活用すべき資産にはあたらない」。

※4 平成27年2月10日石川県知事裁決
 保護費の累積金による預貯金約150万円について「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて収入認定し保護廃止した事案について,事後的に「生涯独り身であることから,将来の入院費用や介護施設入所のための保証金,階段の上り下りが困難になった時の転居費用等のためのものである」との説明がなされていることから,「累積預貯金の使途目的について新たに説明を行っていることについては(略),前審査請求に係る裁決後に判明した事実により,処分内容を検討することは可能であると認められ」,処分庁は,「新たな証言である前記の事実を踏まえ,あらためて累積預貯金の使用目的を聴取した上で処分を決定すべきであった」として保護廃止処分を取り消した。この裁決を受け,処分庁は改めて調査した結果「将来への積み立てという目的があり,生活保護費を充てることが制度に反しているとはいえない」として廃止決定を取り消した。この裁決を受け,処分庁は累積金認定による保護廃止期間の保護費130万6,989円を支給した。

※5 平成27年12月7日高知県知事裁決
 転入移管前に消費した保護費の累積金の使途を確認し,使途不明金約6万円について使用目的が生活保護の趣旨目的に反するものとして収入認定した事案について,「使途不明であることのみを以て,生活保護の趣旨目的に反するとして(略)収入認定を行っている」のは,「生活保護の趣旨目的に反するとする合理的な根拠が示されていないことから,原処分には法第56条に規定する正当な理由があるとは認められない。」として,原処分を取り消した。


2 福祉事務所に求められるケースワーク
東京都運用事例集問8-34(※6)は,一定額を超える預貯金等の保有が判明した場合には,まずは預貯金の目的等を確認し,「保有を容認できない資産性のあるものの購入(略)や一般低所得者との均衡を失するような消費(略)に充てる目的であれば,法の趣旨を説明し目的を変更するよう指導助言すること」とし,「特に目的等がなく単に累積したものである場合」でも,「直ちにこれを収入認定することは適当でなく,まず,最低限度の生活に欠ける部分を補い,生活基盤を回復させるために使うよう指導助言する。必要に応じては,自立更生計画書等の作成を通じて累積金の費消目的を定めながら,より安定した自立の助長を促すことが望ましい」として,事案に応じた適切なケースワークを求めています。
 したがって,ケースワーカーとしては,資産申告書等の提出を求めるに先立ち,①保護費の累積金は預貯金の目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定されないこと,②当該目的はある程度抽象的なものでも良いことを説明し,③累積金が発見され使用目的がない場合でも直ちに収入認定するのではなく,生活基盤の回復に向けて家電製品の買い換えや生活必需品の購入などを助言指導することが求められます。

※6 東京都運用事例集問8-34
 生活基盤の回復に向けた指導助言が必要な理由として,「保護費を繰越しして一定額を超える預貯金を保有するに至った経緯には,単に節約を図っただけでなく,食事や衣料品等の生活必需品を極度に切りつめた生活をしてきた結果当該被保護世帯はどこかに最低限度の生活に欠けるところが生じている可能性が推測される。」と説明している。


3 最大幾らまで保有が許されるか
 金額が幾らまで保有が許されるかについては,世帯の状況によって異なるので一律に基準を示すことは困難ですが,秋田地裁平成5年4月23日判決(※1)では約81万円、平成27年2月10日石川県知事裁決(※4)では約150万円の累積預貯金が認められています。
東京都運用事例集問8-34は,「目安としては,累積金のすべてが目的のない状態であった場合,保護の停廃止の期間の考え方を用いれば,当該世帯の基準生活費の概ね6月分相当の額に達した場合と考えられる」としています。
つまり,家電製品,家財道具等の買い換え費用や教育費,葬式代などその世帯の状況に応じた使途と金額を積み上げた上で,さらに当該世帯の基準生活費の概ね6か月分相当の額(例えば大阪市の単身世帯であれば70万円程度)を加えた額に達して初めて収入認定し保護を打ち切ることが許されるということになります。したがって,単身世帯であっても200万円程度であればそのまま保有を認められるべきことが多いと思われます。


意 見 書


2016年3月9日

別府市長 殿
大分県知事 殿
厚生労働大臣 殿

生活保護支援九州・沖縄ネットワーク
(共同代表)弁護士 永 尾 廣 久
弁護士 椛 島 敏 雅

生活保護問題対策全国会議
(代表幹事)弁護士 尾 藤 廣 喜


第1 意見の趣旨 
1 別府市福祉事務所が,遊技場を訪れていた生活保護利用者25名に対して指導指示を行い,2015年10月5日~30日のうちの5日間に2回以上にわたって遊技場を訪れていた9人に対して行った,生活保護を1~2ヶ月停止する処分(以下「本件処分」という。)は違法である。
2 別府市に対しては,今後,生活保護利用者に対し,遊技場に行かないよう求める指導指示を行わないこと,及び,過去に行った同様の処分も含めて,遊技場への立ち入りを行わないよう求める指導指示への違反を理由とする保護停止処分を速やかに取り消すことを求める。
3 大分県及び厚生労働省に対しては,別府市に対し,上記2の趣旨の指導を行うことを求める。

第2 意見の理由
 1 問題となる事実

新聞報道及び別府市議会インターネット中継によれば,別府市では,生活保護開始時に遊技場に行くのは慎むとする誓約書を生活保護利用者から徴取しており,2015年10月5日ないし30日の間の5日間,市内13のパチンコ店と市営別府競輪場を巡回し,生活保護利用者25人を見つけて市役所に一人ずつ呼び出し,行かないように文書で指導指示した上,調査した5日間で再び見つけた生活保護利用者9人については,支給額の大半を1ヶ月間ないし2ヶ月間停止したとのことである。
また,同市はパチンコ店や競輪場における調査を数十年前から行っており,平成28年3月までに本年度2度目の調査を行うとされている。
上記誓約書提出や調査の根拠について,別府市は,生活保護法(以下「法」という。)60条が「被保護者は,常に,能力に応じて勤労に励み,自ら,健康の保持及び増進に努め,収入,支出その他生計の状況を適切に把握するとともに支出の節約を図り,その他生活の維持及び向上に努めなければならない。」と定めていることを挙げているとのことである。

2 指導指示が違法であること
(1)指導指示の要件を欠くこと

 法27条1項は,「保護の実施機関は,被保護者に対して,生活の維持,向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。」と規定しているが,同条2項は,「前項の指導又は指示は,被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない。」としており,同条3項は,「第一項の規定は,被保護者の意に反して,指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。」と規定している。
 これは,生活保護が,憲法に由来する権利として行われている以上,生活保護利用者の生活に対する干渉は極力抑えなければならないとする理念に基づくものと解される。
 同条の規定に照らせば,指導指示は,①保護の目的達成に必要なものであること,②生活保護利用者の自由を尊重した必要最小限度のものであること,③生活保護利用者の意に反して強制するものでないことが必要であり,これらの要件を欠く場合には違法となる。
 このように,法が,実施機関の裁量に対して多方面からの制約を課している趣旨について,生活保護法の立法担当者(厚生省保護課長)であった小山進次郎は,次のように述べて,安易な指導指示の濫用を強く戒めている。
 「従来,ともすると生活保護を恩恵的,慈恵的とする風潮が社会の各層においてみられたのであって,そのため保護の実施機関側も被保護者の人格を軽視して必要以上の指導,指示を行い,これがために被保護者の全生活分野において好ましからざる影響を与え,被保護者も亦卑屈感に流れ唯々諾々としてこれに盲従するという極めて好ましくない傾向に陥ることがないではなかったが,この点特に注意し,指導,指示が濫用されぬようにする必要があるのである。換言すれば,生存権の保障は,個人の人格権の侵害を許容するものでは決してないのである(「生活保護法の解釈と運用」414頁)」
「(解釈及び運用の如何によって全能的な指示権の行使とならないよう)その行使の目的と共に,内容及び限界を明確に法律において規定し濫用の起こる余地をなからしめたのである。(同前)」

 これを,パチンコ店や競輪場等(以下「遊技場」という。)に行かないことを求める指導指示(以下「本件指導指示」という。)について検討する。
 まず前提として,生活保護費の使途は生活保護利用者の自由に任されている。すなわち,福岡高裁平成10年10月19日判決(中嶋訴訟)は,
「生活保護制度は,被保護者に人間の尊厳にふさわしい生活を保障することを目的としているものであるところ,人間の尊厳にふさわしい生活の根本は,人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるのであるから,被保護者は,(略)支給された保護費についても,最低限度の生活保障及び自立の助長といった生活保護法の目的から逸脱しない限り,これを自由に使用することができるものというべきである。」
と判示している(保護費使途自由の原則)。そして,パチンコ店などの遊技場へ出入りする行為は,それが生活保護費の範囲内で,ささやかな楽しみ(娯楽)として行われる限りは,何ら法の目的に反するものではない。したがって,遊技場への立入りを禁じる指導指示は①保護の目的達成に必要であるとは当然にはいえない。
また,本件で別府市が立ち入り調査を行ったパチンコ店は違法賭博場で  はなく,一般市民が適法に自由に遊技を行うことができる店舗であるはずである。市営別府競輪場に至っては,別府市自身が運営している公営ギャンブルである。このような遊技場への立入りは,市民としての日常的な行動であって,生活保護利用者だというだけでこのような市民としての自由を制限することは不合理な差別である。本件指導指示は,②生活保護利用者の自由を尊重した必要最少限度のものとは到底いえないし,③生活保護利用者の意に反して強制する指導指示となっている可能性が高い。

なお,別府市としては,生活保護利用者から保護開始時に遊技場に立ち入らないとの誓約書を徴取していることを根拠に,本件指導指示が生活保護利用者の意に反していないというのかもしれない。しかし,生活保護利用者は誓約書を提出しなければ保護を受けられないと誤解し,真意に反して保護を受けるためにやむを得ず誓約書を提出した可能性も大いにある。そもそも,一般市民は自由に出入りできる適法な遊技場に立ち入らないとの誓約書を徴取すること自体,生活保護利用者の私生活に対して過度の制約を課すものであって著しく不適切である。

(2)文書指導・指示の前提としてのケースワークを欠くこと
 確かに,保護費の全額に近い金員をパチンコ等に費消し,生活の維持ができなくなる生活保護利用者もいないではない。今回の指導指示の対象者にそのような者がいたかどうかは不明であるが,仮にいたとすれば,そのような者に対し,何らかの対策を講じることまで否定されるべきではない。しかし,そうだとしても,いきなり文書による指導指示をして停止を行った今回の処分は違法である。

 すなわち,法27条の趣旨について,小山は,
「(「自由を尊重」の趣旨は)当該被保護者の能力,社会的関係等の具体的事情からみて,その者が人間として存在する上において必要とする人格を確保するに足る自由を維持しつつ,指導,指示に服従し得るものでなければならない。(同前・415頁)」,「その具体的要領を詳細に記載した書面を交付して被保護者に十分に熟知,徹底せしめる必要がある。(同前・416頁)」,「指導,指示は単純にして形式的なものに止めることなく,社会福祉主事等をして被保護者の家庭訪問を励行せしめ,指導,指示の結果を常に具体的に把握してこれを検討し,更によりよき適切,妥当な指導,指示を行うことが必要である。(同前)」
と述べている。つまり,指導指示が形式的にならないよう,当該生活保護利用者の能力や置かれている状況に合わせて,口頭(面談)及び書面の双方によって十分に説明し,できる限り,生活保護利用者が納得して自発的に指導指示に従うよう,最大限の努力をすることを実施機関に求めているのである。

この点,保護の実施要領第9の2もまた,法27条の指導指示について,次のように定めている。
「(3)指導指示を行うにあたっては,必要に応じて,事前に調査,検診命令等を行い状況の把握に努めるとともに本人の能力,健康状態,世帯の事情,地域の慣行等に配慮し,指導指示が形式化することのないよう十分留意すること。」
「(4)法第27条による指導指示は,口頭により直接当該被保護者(略)に対して行うことを原則とするが,これによって目的を達せられなかったとき,または目的を達せられないと認められるとき,及びその他の事由で口頭によりがたいときは,文書による指導指示を行うこととする。」

生活保護は,「ケースワーク付きの金銭給付制度」と言われることがあるが,保護の実施要領をまとめた「生活保護手帳」の冒頭には,「生活保護実施の態度」と題し,福祉事務所職員の基本的な心得として,次のとおり記載されている。
「4 被保護者の立場を理解し,そのよき相談相手となるように努めること。
(略)被保護者の個々についてその性格や環境を把握理解し,それに応じた積極的な援助をたゆまず行うようつとめること。」
「6 被保護者の協力を得られるよう常に配意すること。
(略)法令に定める責務について被保護者が進んでこれを果すよう配意すること。」
法27条の指導指示に関する保護の実施要領の規定(第9の2(3)(4))は,先にも述べたとおり,できる限り生活保護利用者が納得して自発的に指導指示に従い得るように,生活保護利用者が置かれている具体的状況に合わせて,口頭で十分に説明することの重要性を具体化したものである。すなわち,法62条3項に基づく制裁に近づいていく文書による指導指示に先立ち,ケースワーク的な援助と配意をもって,まずは,口頭での指導指示を行うことを求めた。例外的に口頭による指導指示を省略し得る「目的を達せられないと認められるとき」とは,口頭による指導指示に効果がないことが明確である場合を意味すると解されるが,一度も口頭指導を行わずに,そのように断定できる場合は通常は想定し得ない。また,「その他の事由で口頭によりがたいとき」とは,生活保護利用者に聴覚障害があって耳が聞こえない場合や生活保護利用者が面談を拒否するなどして会うことができない場合などが想定される。

 以上のとおり,文書による指導指示の前に,口頭による十分な説明と指導(すなわちケースワーク)を行うことは,法27条の極めて重要な要請であると言える。
 ギャンブル依存症のために遊技場等に入り浸っている生活保護利用者がいたとすれば,そのような者に対して,単に文書で高圧的に遊技場への出入りを禁じても何らの実効性がない。依存症治療のための専門的な医療機関や自助グループにつなげるケースワーク的な口頭の指導こそ必要であることは依存症者への対人援助の常識である。したがって,かかる本人の自発的服従を促す口頭による指導,すなわちケースワークの努力を一切放棄して,文書指導と停止を行った本件処分が違法であることは明らかである。

3 保護停止処分が違法であること
「被保護者の自由を侵害し,必要の最少限度を越えた指導,指示は,保護の実施機関の無権限に基く無効であり,取り消し得べき行為に止まるものではなく,被保護者はこれに従う必要はなく,又その違反の由をもって保護の変更,停止又は廃止の処分をすることはできない(前掲小山・416頁)」。法27条1項に基づく指導指示が違法である場合,その指導又は指示に従わなかったことを理由にされた保護の停止や廃止等の不利益処分は,当然に違法となる。
 上記2で述べたように,本件指導指示は法27条に反し違法であるから,9人の生活保護利用者に対してなされた本件指導指示違反に基づく保護停止処分も違法となる。
 また,実施機関が,法62条3項に基づく制裁権限を発動して,生活保護利用者に対し,保護の変更,停止又は廃止という不利益処分を課す際には,法の一般原則である比例原則が当然に適用され,その意味でも本件停止処分は違法であるから,この点についても念のため付言する。
 すなわち,比例原則には,①手段は目的に適合したものでなければならないという「目的適合性の原則」,②手段は目的達成に必要不可欠なものでなければならないという「必要性の原則」,③目的達成によって得る利益と犠牲(コスト)とを比較して,コストが利益を上回る場合には,目的達成(追求)自体を断念しなければならないという「均衡の原則」という3つの要請が含まれている(稲葉馨・人見剛・村上裕章・前田雅子「行政法・第2版」有斐閣・41頁)。すなわち,科される不利益処分は,指導指示違反の程度や悪質性に適合し,均衡している必要があり,軽微で悪質性を欠く違反に対して,停止や廃止等の重大な不利益処分を科すことは許されないのである。
 この点,実施機関が同法62条3項に基づいて制裁的に保護の変更,停止又は廃止をする場合に拠るべき手順について,実施要領問答第11の1は,次のように規定している。
「1 当該指導指示の内容が比較的軽微な場合は,その実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行うこと。
2 1によることが適当でない場合は保護を停止することとし,当該被保護者が指導指示に従ったとき,又は事情の変更により指導指示を必要とした事由がなくなったときは,停止を解除すること。
なお,保護を停止した後においても引き続き指導指示に従わないでいる場合には,さらに書面による指導指示を行うこととし,これによってもなお従わない場合は,法62条の規定により所定の手続を経たうえ,保護を廃止すること。」
以上のとおり,問答第11の1が,①当該指導指示の内容が比較的軽微な場合は,その実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行うこと,②これによることが適当でない場合(つまり,指導指示の内容が軽微とはいえない場合)は保護を停止することとし,保護を停止した後においても引き続き指導指示に従わないでいる場合には,さらに書面による指導指示を行うこととし,これによってもなお従わない場合は,法62条の規定により所定の手続を経たうえ,保護を廃止することとしており,指示内容の軽重,違反態様の悪質性等に応じて,不利益処分の程度を加重していく内容となっているのも,まさしく比例原則のあらわれである。
ここで留意しなければならないのは,指導指示の内容が比較的軽微な場合には,あくまでも①によって「実情に応じて適当と認められる限度で保護の変更を行う」べきとされている点である。生活保護の停止処分が,他に最低生活を維持する収入のない被処分者にとっては生命に危険を及ぼしかねない重大な不利益を被る処分であること,並びに,生活保護の停廃止は憲法及び生活保護法によって無差別平等に認められた生活保護受給権を剥奪する処分であることに鑑みれば,特に厳格に比例関係が要求されなければならず,停止処分を行うには,当該指導指示に従わなければ保護の要件を欠くことになる場合など(例えば,真に保有が容認されず客観的にも容易に売却可能な,高額な資産を売却しないなど),あえて重大な不利益処分を科してまでも是正しなければならない違法状態があることが必要であることはもちろんである。また,例え重大な違法があったとしても,保護停止処分によって被処分者の生命身体に危険が及ぶようなことになってはならないから,その場合には保護変更により対応すべきであって,いきなり停止処分をすることは許されない。
 したがって,当該指導指示が,それに従わなければ保護の要件を欠くことになるなど法の趣旨に照らして重要な指導指示であること,かつ,指導指示違反の態様も悪質であること,さらに,保護停止となっても直ちに被処分者の生命身体に危険が及ばないことが明らかであるという場合に初めて,保護停止処分が許容されると解される。
 しかるところ,本件指導指示は,それに従わなければ保護の要件を欠くことになるような重要な指導指示とはいえない。また,生活保護利用者の行為は,支給された保護費の範囲内で,一般市民が利用を許されている適法なパチンコ店でパチンコを楽しんだに過ぎず,パチンコに使う保護費を追加支給せよと要求したわけではなく,何ら虚偽の申告をしたり,不正の手段を用いたりしたわけでもないのであって,指導指示違反があったとしても,その程度は極めて軽微である。仮に,これを比較的軽微でなかったと解するとしても,生活保護利用者らは,保護の停止によって直ちに困窮状態に陥ることが容易に予想されるのであるから,本件停止処分は,相当性を欠き,法62条3項に反し,違法である(北九州市障害者自動車保有事件に関する福岡地方裁判所平成21年5月29日判決参照)。

4 仮に弁明の機会が与えられていないとすれば,その点でも違法であること
 新聞報道等からは,9人の生活保護利用者に対して保護停止処分を行うに際し,弁明の機会を与えたのか否かが判然としない。
仮に弁明の機会を与えていないのであれば,停止処分は手続的にも違法である。

5 結語  
 以上のとおり,本件指導指示は法27条の趣旨に反し違法であり,本件停止処分も違法な指導指示違反を根拠とするものであって,かつ保護の要件に関わらない軽微な指導指示違反を理由とするものであるから違法である。
そこで,意見の趣旨記載のとおり,別府市に対しては今後の同様の指導指示の中止と,過去分も含めての停止処分の速やかな取消し,大分県及び厚生労働省に対しては別府市がこれらの措置をとるよう指導することを強く求めるものである。

以上


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