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2016(平成28)年4月25日


大阪市の生活保護費プリカ支給断念をふまえ
吉村市長発言の危険性を指摘する声明
 
  

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


1 はじめに
 大阪市は,本年4月14日,昨年4月からモデル事業として実施していたプリペイドカード(以下,「プリカ」という。)による生活保護費の支給(以下,「本事業」という。)を今年3月末をもって終え,本格実施を断念することを明らかにした。当会は,他の160団体とともに,昨年3月5日,大阪市に対し,「プリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望書」を提出し,本事業の実施に強く反対していたところであり ,今般の大阪市の事業断念そのものについては,当然のこととはいえ歓迎する。しかし,各種報道によれば,同市の吉村洋文市長は,会見で,「本当は原則カード支給にしたいが,法律上強制はできない。国の制度を変えないと普及は難しい。利用者アンケートの結果を検証して国に制度変更を要望したい。」などと述べたという。この吉村市長の発言は,本事業の違法性や問題点を全く理解しない発言であって到底容認できない。

2 本事業の問題点1~生存権(憲法25条)・プライバシー権(憲法13条)侵害等
 生活保護法31条が金銭給付を原則とした趣旨は,生活保護費の使途は自由であることを確認した福岡高等裁判所平成10年10月19日判決(最高裁第三小法廷平成16年3月16日判決によって確定)が判示したとおり,生活保護制度の目的が,憲法25条の生存権保障を具体化し,人間の尊厳にふさわしい生活を保障することにあり,そのような生活の根本は,自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるからである。
 しかし,プリカが使える店は非常に限られていて選択の範囲が著しく狭められるだけでなく,化学物質過敏症等のアレルギーや糖尿病等の疾病をもつため特定の店舗等を通じてしか安全な食材等を入手できない人にとっては生命や健康さえ危険にさらされる。また,生活保護の実施機関が,プリカの利用履歴を把握し,生活保護利用者の生活全般を管理支配することは,生活保護利用者のプライバシー権・自己決定権(憲法13条)の著しい侵害である。
 なお,「保護費をパチンコ等に費消する人の支援」が本事業導入の理由の一つに挙げられていたが,ギャンブルやアルコール依存症の問題は,きめ細やかで根気強い専門的な治療や支援なくして解消できるものではなく,プリカで強制管理すれば解決するというような問題ではない。

3 本事業の問題点2~大手カード会社による国家的規模の貧困ビジネスの始まり
 そもそも大阪市は,2013年9月の時点では,本事業に消極的な姿勢を明確にしていたにもかかわらず ,橋下徹前市長が,三井住友カードと富士通総研の提案を採用して,「日本初」の本事業が開始された経緯がある。提案企業は,児童手当や災害手当等の各種給付年間100億ドル以上がプリカ支給されている米国を模範に,大阪市を皮切りに全国の自治体への展開を進め,公的給付全般についての利用拡大を目指す野心を露わにしている 。生活保護でプリカ支給が原則とされれば,同様に税金が財源(の一部)となっている,老齢年金,障害年金,児童手当,児童扶養手当等の公的給付も,プリカ支給されるようになることは決して杞憂ではない。大手カード会社が,福祉給付を利潤の源として食い物にする国家的規模の貧困ビジネスの始まりである。

4 吉村市長発言の危険性
 仮に,吉村市長が,生活保護法31条の金銭給付原則を改正すれば本事業が許されることになると考えているとすれば大きな間違いであり,それは,生存権(憲法25条)やプライバシー権(憲法13条)の根幹を否定する極めて危険な発想であると言わなければならない。また,福祉給付を利潤の源として大手カード会社に売り渡す,自治体の首長としてあるまじき姿勢であると言わなければならない。
 当会は,吉村市長が国に対する軽率な提言や要望を行うことのないよう予め強く要望するとともに,大阪市が,かかる軽挙に出ることのないよう,他の心ある諸団体と連携しつつ,その動静を注視していく決意を表明するものである。
 


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