那覇市生活保護事件弁護団声明


1 那覇市は、60歳代の単身世帯の女性(原告)に対して行った2011年(平成23年)3月30日付けの生活保護停止処分を本年9月30日、自ら取り消した。原告は、2011年(平成23)年5月26日、同処分を取り消すことを求める訴えを那覇地方裁判所に提起していたところであるが、2年余りの審理を経て、ようやく、那覇市は、同処分が誤りであったことを自ら認めたことになる。
 既に、本件生活保護停止処分については、那覇地方裁判所が2011(平成23年)6月21日、執行停止の決定を下している。それにもかかわらず、那覇市は、本件生活保護停止処分の誤りを一向に認めようとしなかった。那覇地方裁判所における2年余りの審理を経て、裁判所から本件生活保護停止処分が生活保護法に違反するものであるとの心証を開示された結果、ようやく、自らの誤りを認めたものである。

2 本件における最大の争点は、那覇市が原告に対してなした「週5日以上、1日4時間以上の就労に就くこと」という就労指導指示の違法性であった。
 この点、厚生労働省は、期限を定めて就労の実現を指示するものであり、被保護者本人の努力のみによっては実現可能性が不確実である無効な指示であって、有期保護と言わざるをえない極めて不適切な取扱いであると指摘している。また、那覇地方裁判所も、和解期日において、原告に対する上記就労指導指示を前提としてなされた本件生活保護停止処分は、原告の努力ではどうにもならない内容の指導指示に従わないことを理由とする停止処分であって、被保護者に対する指導指示は必要最小限度のものでなければならないとした生活保護法第27条に反するという心証を開示している。
 したがって、那覇市が原告に対してなした「週5日以上、1日4時間以上の就労に就くこと」という就労指導指示は違法であり、その指導指示を前提としてなされた本件生活保護停止処分が違法であることもまた明らかである。

3 ところが、那覇市がこのような違法な就労指導指示をした結果、違法な生活保護の停廃止をした可能性が高い事例は、原告に対するものだけではなかった。
 原告弁護団が那覇市に対して情報開示請求をした結果明らかになっただけでも、別紙のとおり、期限を定めて就労の実現を指導指示した事例が実に17件もあることが判明している。
 つまり、那覇市においては、被保護者本人の努力のみによっては実現可能性が不確実である無効な就労指導指示と、それを前提とした違法な生活保護の停廃止が横行していた可能性が極めて高いことになる。
 これは、那覇市の生活保護の運用に違法があったというにとどまらず、生活保護を停廃止することによって被保護者の生存を脅かし、憲法25条の生存権を著しく侵害するものであると言わざるをえない。
 そして、これは那覇市のみの問題にとどまるものではなく、全国の生活保護実務の運用にもひそむ重大な問題である。すなわち、稼働能力活用要件が、本来、生活保護を受けるべき者、特に、声を上げにくい弱い者を排除するために、本来の趣旨を外れて悪用されているという問題があるのである。

4 私たち弁護団は、2011(平成23)年8月17日、年金担保貸付を受けていた別の原告に対する那覇市の生活保護開始申請却下処分を取り消し、生活保護開始を命ずる那覇地方裁判所判決が下されたことを契機として声明を出しているところであるが、それに加えて、今回、以下の点を強く求めるものである。
私たち弁護団は、那覇市福祉事務所を初めとする全国の福祉事務所に対し、被保護者に寄り添った就労指導をすることこそが、真に自立を助長するという生活保護法の本来の趣旨に合致し、ひいては、社会保障費の不当な増大を食い止めることに繋がることを認識し、生活保護を受けるべき者、特に弱い者を保護から排除する方向で稼働能力活用要件を用いることを直ちにやめ、就労指導など稼働能力活用要件に関する運用を適法なものにすることを強く求める。

那覇市生活保護事件弁護団
2013(平成25)年10月16日



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