資料作成:NPO法人POSSE

1.本事案について
 50代男性が大田区大森福祉事務所で生活保護の申請を受け付けてもらえず、またその当時の面接記録票を情報公開制度によって開示しようとしたところ、一部非開示となった事案。

2.事案の概要
(1)本人
・50代男性。
・胃がんを患っており、就労困難で生活保護受給中。

(2)経緯
・約10年前から胃がんを患い、就労困難であるため母親の年金などで生活。
・2012年に母親と死別し、更に生活困窮に陥る。

(3)生活保護申請(資料参照)
2011年1月11日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2011年1月27日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2011年2月 1日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2011年2月 2日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2011年2月28日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2012年2月 7日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
2013年2月28日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の相談。
 →面接記録票には「手持金はゼロ。家に米が2K程残っている」「光熱水費は1月は支払ったが、滞納している」などと明らかな生活困窮に陥っている様子が記されているが、生活保護申請には至っていない。
2013年3月 8日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の申請。
2013年3月12日 大田区大森福祉事務所で扶養照会を止めてほしい旨を話す。
 →父親の財産分与で係争中のため対立関係にある兄に扶養照会が送られそうになった。
 →兄とは何十年も会っておらず、住宅が兄名義のため、何かあった場合に追い出される不安。

2013年3月19日 大田区大森福祉事務所に生活保護申請取下げ書を提出。同日保護廃止。
2013年5月 某日 大田区福祉オンブズマンに相談。
2013年7月 1日 大田区大森福祉事務所にて生活保護の申請。
2013年7月11日 生活保護受給決定。

(4)福祉事務所の対応に見られる問題点
・相談者は生活困窮に陥って福祉事務所を訪れているにもかかわらず、7回にわたって相談扱いになっているのは生活保護の申請権侵害にあたるのではないか。

・特に、2013年2月28日の面接記録票の記述によっても、明らかに相談者は生活困窮状態にあったことと考えられる。生活保護法25条においては、要保護者が急迫状況にある場合には職権によってすみやかに保護を開始(急迫保護)しなければならないとされている。この場合も急迫保護の対象になるのではないか。

・厚生労働省社会・援護局長通知第5の2(2)で「重点的扶養能力調査対象者に対して直接照会することが真に適当でないと認められる場合」には扶養義務者本人に対する直接照会は差し控えることとなっており、同省保護課長通知第5の2で「要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養できない者」はこれにあたるとしてよいとなっている。係争中の兄は「特別な事情があり明らかに扶養できない者」とならないか。


3.情報公開請求について
・2013年8月14日に本人に関わる面接記録票の開示請求を行った。
 →福祉事務所側の所見欄を中心に一部非開示となる。
 →所見欄非開示の根拠は大田区個人情報保護条例第18条の2第2項第2号(「個人の評価等に関するもので、開示することにより本人の利益を損ない、又は当該評価等に係る実施機関の適正な事務の執行に著しい支障を生じる恐れがあるものと認められるもの」)。

・大田区については、生活保護ケースワーク記録の非開示処分に対し全面開示を請求し、ほぼ全面的に認容された事案が存在する(東京地裁平成19年7月4日判決(平成18年(行ウ)第623号、確定))。
 この判例において、「そもそも生活保護ケースワーク記録は、保護決定の根拠と適用のプロセスを客観的に記録するものであり、同時に、被保護者の生活実態を継続的に把握し記録することによって、被保護者の置かれている状況に応じた保護の要否や程度、さらには、処遇方針や個別援護活動の適否などを検証するための資料として作成されるものであると認められるから、その記載内容は、原告の生活実態等に関する客観的具体的事実が中心となると考えられ、仮に、担当ケースワーカーが抱いた印象や評価を記載する場合でも、客観的具体的事実を前提として、担当者の専門的な知見に基づく印象や評価が記載されるものであると考えられるから、そのような印象や評価が的確な表現で記載されている部分が開示されたからといって、特別の事情がない限り、直ちに担当者と被保護者との間の信頼関係が損なわれるとは通常考えがたく、本件において、そのような特別な事情を窺わせる証拠は何ら存しない。」
 「印象や評価の中に、担当ケースワーカーの主観的・感覚的な印象や評価が記載されることもあるとしても、そもそも生活保護記録が上記のような趣旨で作成されるものである以上、何ら客観的具体的事実に基づかない主観的・感覚的な印象や評価の記載が、およそ適正な保護業務の遂行等のために必要であるのかどうかは多大な疑問があり、将来、そのような担当ケースワーカーの主観的・感覚的な印象や評価が十分に記載されなくなったとしても、そのことによって、生活保護ケースワーク記録が形骸化し、生活保護に係る事務に具体的な支障を生じさせるおそれがあるとは考え難い。」と認定されていることから、当該箇所は開示されるべきであると考えられる。


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