資料作成:NPO法人POSSE
1.事案について
大阪府茨木市の実家に住んでいた20代男性は生活苦で住居を追い出され、京都市下京区で生活保護の申請に行った。住居がない場合は現在地で申請できることに制度上なっているにもかかわらず、実家の住所と申請場所が違うことを理由に茨木市で生活保護の申請をするように言われ追い返された。実際には追い出されて所持金も少なく実家に帰れない状況であった。これは違法な水際作戦である。
2.事案の概要
(1)当事者
・20代男性
・無職(精神疾患で就労不可)
・所持金1000円程度
(2)経過
2013年7月 期間満了で派遣の仕事を退職。
10月11日午前 実家を追い出される。
同日午後、京都市下京区で申請、実家の住所が申請場所と違うということで追い返される。
→その後、POSSE二人が申請に同行すると申請可能となる。
→申請の決定が出るまでゲストハウス(一時滞在施設)で申請の決定が下りるのを待つことに決まる。
11月上旬 保護支給が決定
11月下旬 アパートに入居
(3)問題点 ※資料
・実家の場所と申請場所が違うということで追い返されたという水際作戦
→水際作戦は申請権の侵害である
→住居がない場合は、法19条1項二に当てはまり、現在地で申請できる
→仮に居住地が明らかだという場合でも本人は急迫した状況であったのだから法19条2項で保護するべきである
・所持金がいくらか、働けるのかなども一切聞いていない。
2013年10月11日 録音テープ やり取り全て
相談者/生活保護の申請したいんですけど。
/住所はどちらの方ですか。
相談者/住所は茨木市なんですけど、ちょっと追い出されて、出てきて、こっちで受けたいんですけど。
/ちょっと今、住むところがないという状態ですか。こちらの窓口で相談してください。
(隣の窓口へ)
相談者/すみません。ちょっといいですか。生活保護の申請をしたいんですけど、ちょっと家を追い出されて、住所は茨木市なんですけど、大阪の。こちらで受けたいなと思って来たんですけど。
/茨木のほうに住んではるんですよね。であれば茨木で相談なさったらいいと思うんですけど。
相談者/でも追い出されてもう戻れないんです。
/でも住所上は茨木にあるじゃないですか。茨木の福祉事務所の方で相談されるのが普通なんですけれど。
相談者/もう家がないんですよ。こちらで受けたいんですよ。
/ちょっとお名前書いてもらっていいですか。こちら番号札持っておかけになってお待ちください。
/6番の番号札でお待ちの方。一番奥の第4面接室に入って。こちらへどうぞ。
(面接室へ)
相談者/はい。これ荷物おいて大丈夫ですか。
/はい。お名前が○○○さん。生年月日は。
相談者/昭和○○年の○月○○日。
/今朝まで茨木にいたの?
相談者/はい。
/茨木というのはもちろん大阪の茨木やな?
相談者/はい、そうです。
/ここには○○さん来たことはあるのか。
相談者/ないです。
/初めてか。
相談者/京都市には何回か来たことありますけど。
/来たことないのか。なんでここに。誰かに聞いたんか。
相談者/京都市の区役所がここしかなかったんで、とりあえずここに。
/ここしかないことはないよ。区役所は14もあるやん。
相談者/でここに来たんです。
/とりあえず、ここの区役所しかしらんかったということか。で、役所に相談に行ったらなんとかなるかと思って相談に来たと。どういう生活していたの。
相談者/僕は実家に住んでたんですけど。
/実家はどこなの。
相談者/実家は大阪の茨木市なんですけど。
/ああ、茨木なんか、実家。
相談者/で、ちょっと両親の仕事がなくなってしまって、両親が家を売るということになっていて。今、売りの段階に入っていて、僕は売られた後は連れて行ってくれなくて、出て行けということになって、出てきて。それでとりあえずこちらに来たんですけど。
/今朝までそこの実家におったわけか。それは茨木で相談してもらわな。まだ出るとか出ないとかいう話とは違うじゃない。
相談者/追い出されもう戻れない。
/戻れないことあらへん。それは茨木で相談して。もちろん住んでいるところがあって、京都でホームレスしていたとか、何日したらええという話とちゃうで。そういうような話やな。
相談者/もう戻れるところがないんですよ。
/ここに戻れるじゃん。言うても。
相談者/もう実家には戻れない。
/それはそういう話ちゃう。それは、まずは戻って。それが実際問題なくなったわけじゃないから。出ろというのは言われているのは言われてるのかもしれないけど。前もそんな似たような話があったな、あんたの話じゃないけど。似たような話があったけれども。それはそっちで相談して。
相談者/こちらでは申請できないということですか。
/住所があるなら、ここで申請という話にはならん。茨木市でしてください。
相談者/じゃあもう一回ちょっと
/帰ってまずは相談してください。そこでどういうふうになるかは分からんけど。そういう意味合いでは、ここに住所があるなら別やけどな、住居が。
相談者/じゃあ茨木市に行ってしろということですか?
/そういうことです。
相談者/分かりました。
/はい。
生活保護の申請権・支給決定時期に関する規定(抜粋、傍線部は転載者)back
(1)生活保護法 第19条 (実施機関)
都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。
一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者
二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの
2 居住地が明らかである要保護者であつても、その者が急迫した状況にあるときは、その急迫した事由が止むまでは、その者に対する保護は、前項の規定にかかわらず、その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町村長が行うものとする。
(2)生活保護法 第25 条(職権による保護の開始及び変更)
保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない。
2 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、すみやかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。前条第2項の規定は、この場合に準用する。
3 町村長は、要保護者が特に急迫した事由により放置することができない状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて第19 条第6項に規定する保護を行わなければならない。
(3)平成25年度 生活保護法による保護の実施要領について
第9 保護の開始申請等
次官通達 第9
生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むこと。
局長通達 第9
1 保護の相談における開始申請の取り扱い
生活保護の相談があった場合には、相談者の状況を把握したうえで、他法他施策の活用等についての助言を適切に行うとともに生活保護制度の仕組みについて十分な説明を行い、保護申請の意思を確認すること。また、保護申請の意思が確認された者に対しては、速やかに保護申請書を交付するとともに申請手続きについての助言を行うこと。
問(第9の1) 生活保護の面接相談においては、保護の申請意思はいかなる場合にも確認しなくてはならないか。
答 相談者の保護の申請意思は、例えば、多額の預貯金を保有していることが確認されるなど生活保護に該当しないことが明らかな場合や、相談者が要保護者の知人であるなど保護の申請権を有していない場合等を除き確認すべきものである。なお、保護に該当しないことが明らかな場合であっても、申請権を有する者から申請の意思が表明された場合には申請書を交付すること。
1.事案について
大阪府茨木市の実家に住んでいた20代男性は生活苦で住居を追い出され、京都市下京区で生活保護の申請に行った。住居がない場合は現在地で申請できることに制度上なっているにもかかわらず、実家の住所と申請場所が違うことを理由に茨木市で生活保護の申請をするように言われ追い返された。実際には追い出されて所持金も少なく実家に帰れない状況であった。これは違法な水際作戦である。
2.事案の概要
(1)当事者
・20代男性
・無職(精神疾患で就労不可)
・所持金1000円程度
(2)経過
2013年7月 期間満了で派遣の仕事を退職。
10月11日午前 実家を追い出される。
同日午後、京都市下京区で申請、実家の住所が申請場所と違うということで追い返される。
→その後、POSSE二人が申請に同行すると申請可能となる。
→申請の決定が出るまでゲストハウス(一時滞在施設)で申請の決定が下りるのを待つことに決まる。
11月上旬 保護支給が決定
11月下旬 アパートに入居
(3)問題点 ※資料
・実家の場所と申請場所が違うということで追い返されたという水際作戦
→水際作戦は申請権の侵害である
→住居がない場合は、法19条1項二に当てはまり、現在地で申請できる
→仮に居住地が明らかだという場合でも本人は急迫した状況であったのだから法19条2項で保護するべきである
・所持金がいくらか、働けるのかなども一切聞いていない。
2013年10月11日 録音テープ やり取り全て
相談者/生活保護の申請したいんですけど。
/住所はどちらの方ですか。
相談者/住所は茨木市なんですけど、ちょっと追い出されて、出てきて、こっちで受けたいんですけど。
/ちょっと今、住むところがないという状態ですか。こちらの窓口で相談してください。
(隣の窓口へ)
相談者/すみません。ちょっといいですか。生活保護の申請をしたいんですけど、ちょっと家を追い出されて、住所は茨木市なんですけど、大阪の。こちらで受けたいなと思って来たんですけど。
/茨木のほうに住んではるんですよね。であれば茨木で相談なさったらいいと思うんですけど。
相談者/でも追い出されてもう戻れないんです。
/でも住所上は茨木にあるじゃないですか。茨木の福祉事務所の方で相談されるのが普通なんですけれど。
相談者/もう家がないんですよ。こちらで受けたいんですよ。
/ちょっとお名前書いてもらっていいですか。こちら番号札持っておかけになってお待ちください。
/6番の番号札でお待ちの方。一番奥の第4面接室に入って。こちらへどうぞ。
(面接室へ)
相談者/はい。これ荷物おいて大丈夫ですか。
/はい。お名前が○○○さん。生年月日は。
相談者/昭和○○年の○月○○日。
/今朝まで茨木にいたの?
相談者/はい。
/茨木というのはもちろん大阪の茨木やな?
相談者/はい、そうです。
/ここには○○さん来たことはあるのか。
相談者/ないです。
/初めてか。
相談者/京都市には何回か来たことありますけど。
/来たことないのか。なんでここに。誰かに聞いたんか。
相談者/京都市の区役所がここしかなかったんで、とりあえずここに。
/ここしかないことはないよ。区役所は14もあるやん。
相談者/でここに来たんです。
/とりあえず、ここの区役所しかしらんかったということか。で、役所に相談に行ったらなんとかなるかと思って相談に来たと。どういう生活していたの。
相談者/僕は実家に住んでたんですけど。
/実家はどこなの。
相談者/実家は大阪の茨木市なんですけど。
/ああ、茨木なんか、実家。
相談者/で、ちょっと両親の仕事がなくなってしまって、両親が家を売るということになっていて。今、売りの段階に入っていて、僕は売られた後は連れて行ってくれなくて、出て行けということになって、出てきて。それでとりあえずこちらに来たんですけど。
/今朝までそこの実家におったわけか。それは茨木で相談してもらわな。まだ出るとか出ないとかいう話とは違うじゃない。
相談者/追い出されもう戻れない。
/戻れないことあらへん。それは茨木で相談して。もちろん住んでいるところがあって、京都でホームレスしていたとか、何日したらええという話とちゃうで。そういうような話やな。
相談者/もう戻れるところがないんですよ。
/ここに戻れるじゃん。言うても。
相談者/もう実家には戻れない。
/それはそういう話ちゃう。それは、まずは戻って。それが実際問題なくなったわけじゃないから。出ろというのは言われているのは言われてるのかもしれないけど。前もそんな似たような話があったな、あんたの話じゃないけど。似たような話があったけれども。それはそっちで相談して。
相談者/こちらでは申請できないということですか。
/住所があるなら、ここで申請という話にはならん。茨木市でしてください。
相談者/じゃあもう一回ちょっと
/帰ってまずは相談してください。そこでどういうふうになるかは分からんけど。そういう意味合いでは、ここに住所があるなら別やけどな、住居が。
相談者/じゃあ茨木市に行ってしろということですか?
/そういうことです。
相談者/分かりました。
/はい。
生活保護の申請権・支給決定時期に関する規定(抜粋、傍線部は転載者)back
(1)生活保護法 第19条 (実施機関)
都道府県知事、市長及び社会福祉法(昭和26年法律第45号)に規定する福祉に関する事務所(以下「福祉事務所」という。)を管理する町村長は、次に掲げる者に対して、この法律の定めるところにより、保護を決定し、かつ、実施しなければならない。
一 その管理に属する福祉事務所の所管区域内に居住地を有する要保護者
二 居住地がないか、又は明らかでない要保護者であつて、その管理に属する福祉事務所の所管区域内に現在地を有するもの
2 居住地が明らかである要保護者であつても、その者が急迫した状況にあるときは、その急迫した事由が止むまでは、その者に対する保護は、前項の規定にかかわらず、その者の現在地を所管する福祉事務所を管理する都道府県知事又は市町村長が行うものとする。
(2)生活保護法 第25 条(職権による保護の開始及び変更)
保護の実施機関は、要保護者が急迫した状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて保護の種類、程度及び方法を決定し、保護を開始しなければならない。
2 保護の実施機関は、常に、被保護者の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、すみやかに、職権をもつてその決定を行い、書面をもつて、これを被保護者に通知しなければならない。前条第2項の規定は、この場合に準用する。
3 町村長は、要保護者が特に急迫した事由により放置することができない状況にあるときは、すみやかに、職権をもつて第19 条第6項に規定する保護を行わなければならない。
(3)平成25年度 生活保護法による保護の実施要領について
第9 保護の開始申請等
次官通達 第9
生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むこと。
局長通達 第9
1 保護の相談における開始申請の取り扱い
生活保護の相談があった場合には、相談者の状況を把握したうえで、他法他施策の活用等についての助言を適切に行うとともに生活保護制度の仕組みについて十分な説明を行い、保護申請の意思を確認すること。また、保護申請の意思が確認された者に対しては、速やかに保護申請書を交付するとともに申請手続きについての助言を行うこと。
問(第9の1) 生活保護の面接相談においては、保護の申請意思はいかなる場合にも確認しなくてはならないか。
答 相談者の保護の申請意思は、例えば、多額の預貯金を保有していることが確認されるなど生活保護に該当しないことが明らかな場合や、相談者が要保護者の知人であるなど保護の申請権を有していない場合等を除き確認すべきものである。なお、保護に該当しないことが明らかな場合であっても、申請権を有する者から申請の意思が表明された場合には申請書を交付すること。