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2014年3月5日
 
「改正」生活保護法に関する国会答弁はペテンだったのか?
生活保護法改正に関する省令案の抜本修正を求めるパブリックコメント


生活保護問題対策全国会議


第1 はじめに(意見要旨)
 厚生労働省は、「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)」を発表し、パブリックコメントを募っている。しかし、そこで記載されている内容は、国会での答弁内容や参議院厚生労働委員会附帯決議の内容を骨抜きにするものである。この省令案がまかり通れば、「申請手続を厳格化するものではない」「扶養義務者に対する圧力を強化するものではない」という国会答弁は、ペテンであったということになる。
 いずれも極めて基本的な法技術的な操作であって法律家の目からすれば、その欺瞞や不正義は明らかである。しかし、一般市民からすれば分かりにくいであろう。分かりにくいことを良いことに国会答弁を反故にする姑息な操作が行われている点で極めて背信的である。
 私たちは、このような省令案の内容は到底容認できない。厳重に抗議の意思を表明するとともに、国会答弁や附帯決議の内容を真摯に反映させた省令案に修正するよう強く要求する。

 なお、私たちは、多くの市民や団体が、この不当な省令案の修正を求めるパブリックコメントを厚生労働省に提出するよう呼びかける。

(リンク)
本パブリックコメントに関する厚労省HP(意見募集締切日は3月28日)
省令案概要(PDF)


第2 申請手続について
1 改正24条1項本文関係
(1)省令案の内容

「保護の開始の申請等は申請書を・・・保護の実施機関に提出して行うものとする。」
(2)問題点
 改正24条1項本文は当初、「保護の開始の申請は、・・・申請書を保護の実施機関に提出してしなければならないという表現であり、「申請=申請書の提出」としか読めないため厳しく批判され、保護を申請するものは、・・・申請書を保護の実施機関に提出しなければならないと「申請≠申請書の提出」であることが明確となる表現に修正された。この点について、平成25年5月31日付け衆議院厚生労働委員会において、提案者の柚木議員は、「口頭による保護の申請も申請意思が明確である場合には認めているところで、修正案の趣旨はその取扱いが変わるものではないことを条文上も明確化するもの」と説明している。
 また、平成25年11月12日付け参議院厚生労働委員会附帯決議も「申請行為は非要式行為であり、・・・口頭で申請することも認められるというこれまでの取扱い・・・に今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」としていた。
 にもかかわらず、上記省令案は、修正前の本文とほぼ同じ表現を採用することで、「申請=申請書の提出」というメッセージを発する内容となっている。批判を浴びて法文を修正したのに、省令案の方では、こっそりと修正前の当初の表現に戻しており、極めて姑息かつ背信的である。
(3)修正案
「保護の申請は非要式行為であり、申請意思が確定的に表示された場合には、口頭による申請も認められる」という上記附帯決議と裁判例(福岡地裁小倉支部平成23年3月29日判決(賃金と社会保障1547号42頁))の到達点を明記し、仮に原案と同趣旨の表現を残すのであれば、「保護を申請するものは、・・・申請書を保護の実施機関に提出しなければならないという修正後の文言を採用すべきである。

2 改正24条1項但し書き関係
(1)省令案の内容

「ただし、身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合その他保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合は、この限りではないこととする。」
(2)問題点
 1の記載とあいまって、口頭申請が認められる場合が身体障害等の場合に限定されるように読める内容となっている。本来、口頭申請は申請意思が確定的に表示されれば認められるものであるのに、省令案は、申請書を物理的に書けるかどうかの問題にすり替えているのである。
 国会審議において「現行の運用を変えない」と繰り返し答弁された運用根拠である生活保護手帳別冊問答集問9-1(「口頭による保護申請について」)では、「口頭による保護申請については、申請を口頭で行うことを特に明示して行うなど、申請意思が客観的に明確でなければ、申請行為と認めることは困難である。実施機関としては、そのような申し出があった場合には、・・・申請者の状況から書面での提出が困難な場合等には、実施機関側で必要事項を聞き取り、書面に記載したうえで、その内容を本人に説明し署名捺印を求めるなど、申請行為があったことを明らかにするための対応を行う必要がある。」と記載されているだけで、口頭申請に対する実施機関側の対応義務が生じる場合を身体障害の場合などに限定してはいない。省令案は、現行の運用基準を後退させる内容となっている。
 さらに、改正24条1項但し書きは、単に「当該申請書を作成することができない特別な事情があるときは」という表現であるのに、省令案は、保護の実施機関が当該申請書を作成することができない特別の事情があると認める場合はとして、特別の事情の有無の判断権を実施機関に委ねる表現にしている。
(3)修正案
 削除すべきである。
 あるいは、少なくとも身体上の障害があるために当該申請書に必要な事項を記載できない場合という例示と保護の実施機関が・・・認める場合はとの表現は削除し、現行問答の表現を参考に、「申請者の状況から書面での提出が困難な場合等申請書を作成することができない特別の事情がある場合は」とすべきである。

3 改正24条2項関係
(1)省令案
 一切触れられていない。
(2)問題点
 平成25年5月20日付全国係長会議資料では、「(要否判定に必要となる)書面等の提出は申請から保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いには今後も変更はない。」と記載され,同年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員の質問に対して村木厚子社会・援護局長(当時)も同旨の答弁を行い,前記附帯決議も「要否判定に必要な資料の提出は可能な範囲で保護決定までの間に行うというこれまでの取扱いに今後とも変更がないことについて、省令、通達等に明記の上、周知する」と繰り返し、確認されてきた。
 また、但し書きについては、上記中根議員の質問に対して提案者の柚木議員が「隠匿などの意図もなく書類を紛失したり、あるいは必要書類を本人が所持していない場合なども、書類を添付できない特別な事情に当たるものと理解をしております。」と答弁していた。
 特に附帯決議では省令等に明記することが確認されているのに、一切触れられていないのは背信的である。
(3)修正案
「当該書類の提出は、可能な範囲で保護決定までの間に行えばよいものであること」及び「当該書類の紛失や不所持も24条2項但し書きにいう『書類を添付できない特別な事情』に該当するものであること」を明記すべきである。

第3 扶養義務者に対する通知(24条8項)と扶養義務者に対する報告の求め(28条)について
(1)省令案の内容 
 通知については「当該通知を行うことが適当でない場合」として、報告の求めについては「次のいずれの場合にも該当していない旨を確認するものとする」として、以下の①②③を掲げ、原則として通知を行い、報告を求めるが、①②③に該当する場合のみ例外的に通知や報告要求を行わないとしている。
 ①  保護の実施機関が、当該扶養義務者に対して法第77条第1項の規定による費用の徴収を行う蓋然性が高くないと認めた場合
 ② 保護を開始する者が配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律第1条第1項に規定する配偶者からの暴力を受けているものであると認めた場合
 ③  ①及び②のほか、保護の実施機関が、当該通知を行うことにより保護を開始する者の自立に重大な支障を及ぼすおそれがあると認めた場合
(2)問題点
 これらの規定の適用場面については、前記「生活保護関係全国係長会議資料」において、「福祉事務所が家庭裁判所を活用した費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる極めて限定的な場合に限ることにし、その旨厚生労働省令で明記する予定である。」と記載され、25年5月31日衆議院厚生労働委員会にて村木局長(当時)も同趣旨の答弁をしていた。
 つまり、原則として通知や報告要求は行わず、これらを行うのは「家裁を活用した費用徴収を行う蓋然性が高いと判断される」極めて例外的な場合に限るものとしていた。
 しかし、省令案は、原則と例外を完全に逆転させ、原則的に通知や報告要求を行うが、通知等を行わない例外的場合として①②③を規定する方法をとっている。つまり、実施機関が①②③の場合であると積極的に認定した場合以外においては通知を行い、報告要求も行うことになる。家裁を使った費用徴収を行うか行わないか判断しかねる場合、国会答弁では、通知や報告要求をしないはずであったが、省令案を前提とすれば通知や報告要求を行うべきこととなる。
  これでは、「極めて限定的な場合に限る」という説明や答弁が全くの虚偽であったということになり到底容認できない。
(3)修正案
 係長会議での説明や国会答弁どおり、通知や報告要求を行うのは、「福祉事務所が家庭裁判所を活用した費用徴収を行うこととなる蓋然性が高いと判断するなど、明らかに扶養が可能と思われるにもかかわらず扶養を履行していないと認められる極めて限定的な場合に限る」と修正すべきである。このように表記すれば、省令案の②や③の場合を挙げる必要はなくなるが、言うまでもない念のための規定として②や③も注記してもよい。

第4 費用の支払の申し出等(徴収金の保護費天引)(改正78条の2)について
(1)省令案の内容
  「保護の実施機関は、当該申出に係る徴収金の額を決定するに当たっては、当該徴収金の徴収後においても被保護者が最低限度の生活を維持することができるよう配慮するものとする。」
(2)問題点
   改正78条の2第1項の法文は「実施機関が当該被保護者の生活の維持に支障がないと認めたときは」と「生活の維持に支障がない」ことが要件とされ、村木局長も,「保護費から差し引く金額につきましても,保護の実施機関が最低生活の保障に支障がないと個別具体的に判断をされた範囲内にとどめる」と説明(前掲中根議員質問に対する答弁)しているにかかわらず、省令案は実施機関が「配慮」しさえすれば良いように読める内容となっている。省令案は、むしろ「生活の維持に支障がない」と判断するための具体的な基準を規定すべきである。
(3)修正案
 徴収の上限額の認定が実施機関の恣意に流れないため,例えば保険料額に関する定め(別冊問答集問3‐24)に準じて、「医療扶助を除く最低生活費の1割程度以下を上限としつつ,当該被保護者の生活状況や希望を十分聴取して個別具体的に生活の維持に支障がない額を設定すること」等と定めるべきである。

以上


1 2013年5月31日衆議院厚生労働委員会議事録 back
○ 桝屋副大臣「(略)事情がある方には口頭申請を認めている現在の取り扱いを決して変えるものではない、これは大臣も御答弁を申し上げているわけであります。修正案についてお話がございました。この趣旨を明確にする観点から修正案をお出しになったんだろうと思っておりますが、(略)こうした取り扱いにつきましては今後省令や通知において明確にすることとし、引き続き、支援が必要な人に確実に保護を実施できるよう、関係者への周知にも努めてまいりたいと思ってございます。」
○ 中根(康)委員「ただし書きの「申請書を作成することができない特別の事情」とは、身体障害等で文字が書けず代筆を要する場合だけではなく、申請意思が表明されたのに申請書が交付されなかった場合なども含むと理解してもよろしいでしょうか。」
○ 柚木委員 「現状でも、(略)口頭による保護の申請も、申請意思が明確である場合には認めているところというのは重ねて申し上げた上で、修正案の趣旨は、その取り扱いが変わるものではないことを条文上も明確化するものでございます。御指摘のような、障害などで文字が書けない方が申請される場合も当然含まれていると考えております。また、申請意思が明確になされたにもかかわらず申請書が交付されないこと、これはあってはならないことだと認識をしております。したがいまして、万々が一そのようなことが起こり得た場合であっても、そのこと自体がまさに正されるべきことであると認識をしておりまして、厚生労働省としても同様の認識であるのではないかと承知しております。」



(参考)
「改正」生活保護法の施行にあたって制定される省令等の内容に関する要請書
 ・生活保護法改正法附帯決議 
 ・平成25年12月10日生活保護制度の見直しに関する説明会資料「運用の留意事項について」 
 ・平成25年5月20日生活保護関係全国係長会議資料
 ・平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会議事録


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