2014年7月1日から、「改正」生活保護法が施行されます。申請厳格化や扶養義務の問題が取り上げられてきましたが、国会答弁や省令で「これまでの取扱いと変わらない」とされているものも少なくありません。一体、何が変わって、何が変わっていないのか、「改正」法の簡単なQ&Aをまとめました。
 パンフレットやチラシも作成していますので、支援や生活保護利用の現場、学習会などでお役立て下さい。

★現在、パンフレットの印刷のとりまとめをしております。ある程度の部数を印刷する予定がありましたら、ぜひこちらをご覧下さい。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-215.html


パンフレット(A4見開き8頁)
生活保護「改正」法Q&Aパンフレット

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チラシ(A4)
生活保護「改正」法Q&Aチラシ
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 生活保護の審査が厳しくなるって本当?
 →いいえ、そんなことはありません。

 「7月から生活保護法が変わると、審査が厳しくなって、生活保護が今までより受けにくくなる」というのは本当ですか。

A いいえ。生活保護の審査基準=受給要件(どういう状態の人が生活保護を利用できるか)は、今回の法改正でも変わっていません。今までは利用できた人が7月からは利用できなくなるということはありません。
※生活保護の基本的な仕組みについては生活保護に関するQ&Aをお読みください。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-3.html


 役所の申請用紙でないと認められらなくなるの?
 →自分で作った申請書も今までどおり有効です。

 「7月から生活保護法が変わり、生活保護の申請をするには、役所にある用紙に記入しなければならず、支援者が用意した独自の申請書では申請として認められなくなる」と聞きましたが本当ですか。

A いいえ。今回の法改正では、「保護の開始を申請する者は…申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。」とされましたが、これは役所の指定の用紙による申請を義務付けたものではありません。厚労省が作成した「生活保護手帳別冊問答集」の問9-1の「生活保護の開始申請は、必ず定められた方法により行わなくてはならないというような要式行為ではなく、非要式行為であると解すべきであるとされている。」との記述も変更されていません。これまでどおり、福祉事務所の用紙ではない、支援者や弁護士が作成した申請書を提出しても「申請」として有効です。


 口頭の生活保護申請は認められらなくなるの?
 →口頭での申請も、これまでどおり有効です。

 「法律が変わって、口頭による申請は認められないことになった」と聞きましたが本当ですか。口頭で申請しても追い返されてしまったために申請書の提出が遅れた場合、生活保護はいつから開始されるのでしょうか。

A いいえ。これまで通り、口頭での申請も有効であり、口頭での申請があった時から生活保護の開始は認められます。国会審理の過程で、改正24条1項本文は「保護の開始を申請する者は…申請書を保護の実施機関に提出しなければならない。」とし、「特別の事情があるときは、この限りではない。」という同項但し書きが付されて、「申請=申請書」の提出ではないことを明確にする条文修正がされました。政府・厚労省は国会においても口頭申請の取り扱いは従来と変わらないと繰り返し述べ、厚労省の通知でも、「口頭による保護の開始等の申請も含め、現行の運用の取扱いをこの改正により変更するものではなく、また、保護の開始の申請等の意思が示された者に対しては、その申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきであることは改正後も何ら変わるものではない」(平成26年4月18日社援発0418第359号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法の一部を改正する法律等の施行について」)とされています。生活保護法施行規則1条2項でも、役所の申請援助義務が明記されました。
 申請の意思表示をした人を追い返す職員の対応は「水際作戦」と呼ばれる違法行為であって許されません。もし保護開始日が申請書提出日とされてしまったら、保護開始決定通知を受け取った日から60日以内に、「申請書提出日を開始日とする保護開始決定」の取消しを求める審査請求を都道府県知事に対して行うことができます(行政不服審査法5条2項、生活保護法64条)。


申請時に、資料を提出しないといけなくなったの?
 →預金通帳などの書類は、今までどおり、申請後に提出することで、かまいません。

 法改正によって、7月からは申請書だけでなく、申請時に預金通帳などの書類をすべて揃えないと申請を受け付けてもらえなくなるというのは本当ですか。

A いいえ。生活保護「改正」法24条2項では、「申請書には…厚生労働省令で定める書類を添付しなければならない」とされましたが、省令(生活保護法施行規則)では、結局、「省令で定める書類として規定するものがないため、改正法第24条2項に関する規定については、省令に規定しない」(平成26年4月18日厚生労働省社会・援護局保護課「生活保護法施行規則の一部を改正する省令(案)に対して寄せられた御意見について」)とされました。預金通帳などの書類は、今までどおり、申請した後、保護開始決定までの間に可能な範囲で提出すればよいものです。迅速な保護の決定のためには早く提出するに越したことはありませんが、申請と同時に用意する必要はありません。


扶養義務が強化されたの?
 →民法で定められた扶養義務自体は、何も変わっていません。

 生活保護法が変わって、7月からは生活保護を受けている人に対する扶養義務が強化され、三親等の親族は生活保護を受けている人を必ず援助することが求められるというのは本当ですか。

A いいえ。そもそも、親族間の扶養義務について規定しているのは生活保護法ではなく民法で、民法の扶養義務の規定は何も変わっていません。ですから、「今回の生活保護法改正で生活保護申請者や受給者に対する扶養義務が強化された」という表現は誤りです。扶養可能な扶養義務者がいないことは保護の受給要件ではなく、現実に扶養援助が行われた際にその金額が収入認定されて保護費が減額されるに過ぎない(生活保護法4条1項および2項)という位置づけも変わっていません。
 したがって、これまで民法上の扶養義務を負っていなかった人が新たに生活保護受給者を扶養する義務が生じることもないし、これまで以上の扶養援助が法律上求められることもありません。保護申請者・受給者の立場からいえば、「まず扶養義務者に援助を求めなければ保護は受けられない」とする運用が違法であることは今後とも変わりません。

※生活保護と扶養義務の関係については、2012年5月30日に発表した声明「扶養義務と生活保護制度の関係の正しい理解と冷静な議論のために」をお読みください。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-36.html


生活保護を申請したら、親戚中に連絡がいくようになるの?
 →扶養照会については何も変わっていません。
 
※新設された扶養義務者への通知や報告の要求は、「極めて限定的な場合」にのみ行うものとされています。

 申請に行ったら、「7月から、三親等以内の親族(両親、祖父母、兄弟姉妹、子、孫、おじ・おば、甥・姪など)全員に、あなたに仕送りできないか連絡することになった」と言われました。私は過去に兄に虐待され、疎遠な甥・姪などにも連絡して欲しくないのですが、仕方ないのでしょうか。

A いいえ。今回の法改正で、三親等の親族に全て連絡(扶養照会)が義務付けられたということはありません。これまで行われてきた、扶養照会(扶養が期待できそうな扶養義務者に、扶養の可否を文書で尋ねる方式の扶養能力の調査)については、何も変わっていません。
 また、虐待やDVの被害を受けた事例では、これまで同様親兄弟や子であっても扶養照会は許されません。また、三親等のおじおば・甥姪は家裁の審判があってはじめて扶養義務を負う相対的扶養義務者(民法877条2項)であり、特別な事情がある場合以外は、扶養義務者となりません。
 今回の法改正で新設された、申請後の扶養義務者への通知(24条8項)と報告の要求(28条2項)の対象となるのは「極めて限定的な場合」に限られるものとされ、厚労省は「扶養能力の調査の結果、①定期的に会っているなど交際状況が良好であること、②扶養義務者の勤務先等から当該要保護者にかかる扶養手当や税法上の扶養控除を受けていること、③高額な収入を得ているなど、資力があることが明らかであること等を総合的に勘案し、扶養義務の履行を家庭裁判所へ調停又は審判の申立てを行う蓋然性が高いと認められる」者が扶養義務を履行していない者との目安を示しています(実施要領課長通知に問答第5の5を新設)。特に、要保護者に対し生活保持義務を負っている扶養義務者(配偶者と、未成熟子の親)以外の場合(生活扶助義務)は、扶養義務者が「同居家族も含めてその者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で余裕があれば援助すればよい」という弱い義務しか負っていないので、上記の要件を満たすことはほとんどないものと考えられます。


保護費の返還は、天引きされるようになるの?
 →不正受給の徴収金(返還)について、本人の「申し出」があり、かつ、最低限度の生活が維持できる範囲で行うこととされました。

生活保護を利用していますが、働いていたのに収入申告をしていなかった時期がありました。不正受給だということで、これまで、徴収金を分割で支払ってきましたが、職員は「生活保護法が変わって7月からは月々の保護費から徴収金を天引きできるようになった」と、一方的に2万円を天引きすると告げられました。これは、仕方ないことなのでしょうか。

A いいえ。生活保護費は差押さえが禁止されていますので(法58条)、月々の保護費から徴収金を天引きすることは、本来、違法です(民法510条)。一旦は保護費の全額の支給を受けて、その後に分割で支払っていくことになります。
 しかし、今回の法改正では、不正受給(生活保護法78条)の徴収金については、一定の条件(①書面による「申し出」がある場合で、②本人の生活の維持に支障がないと福祉事務所が認める範囲)の下に、保護費からの天引きが認められるようになりました。この、本人の「生活維持に支障がない」金額とは、単身者で5,000円、複数世帯で1万円程度とされていますが、加算相当分や勤労控除額相当分を上乗せすることも認められています。
 また、あくまでも本人の「申し出」を前提としており、「申し出」のない天引きは違法です。なお、「申し出」は保護開始時などに予め書面で行うものとされていますが、後で、「申し出」取り消しの書面を提出することにより、取り消すことができます。

※なお、保護利用中の財産取得や過支給による法63条の返還金の場合は、例え本人の同意があったとしても保護費からの天引きは許されません。


ジェネリック医薬品の使用が強制されるようになるの?
 →医師の判断や利用者の納得が前提で、本人の意思に反して強制するものではありません。

 私は生活保護を受けています。病気で通院しているのですが、法改正で、ジェネリック医薬品の使用を強制されることになったと聞きましたが、本当でしょうか。私は過去にジェネリック医薬品を処方された時に病状が悪化したことがあり、できれば薬を変えたくありません。

A 法改正で、「医療の給付のうち、医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品…を使用することができると認めたものについては、被保護者に対し、可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする。」とされましたが、これは、医師や歯科医師の判断や生活保護利用者の納得を前提としてジェネリック医薬品の使用を促進しようとするものであって、ジェネリック医薬品の使用を強制するものではありません。
 患者が望む以上、先発医薬品が処方されるべきです。


★法改正を口実に役所から不当な対応をされたら?
 ① 法律家や支援者に相談しましょう! 
   
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 ② 情報をお寄せ下さい。
 参議院厚生労働委員会の附帯決議では、「五年後の見直しに際しては、・・・生活保護の捕捉率、餓死・孤立死などの問題事例等の動向を踏まえ、生活保護受給者、これを支援する団体、貧困問題に関し優れた見識を有する者等、関係者の意見を十分に聴取した上で、必要な改正を行うこと。」とされていますので、不当な対応があれば法的・社会的に問題にしていくことも重要です。
 法改正を口実とした不当な対応があれば、情報を当会にお寄せ下さい。
    ↓ 情報提供はこちらへ!
メール(seihokaigi@hotmail.co.jp)、またはFAX(06-6363-3320)にて、①地域、②年代、③性別、④役所の対応、⑤公開の可否、⑥連絡先(できれば)、⑦概要などを、お知らせ下さい。



この他に、「改正」法について、もっと詳しく知りたい方は

● 村田悠輔「『改正』生活保護法の検討―申請権と扶養の問題を中心に」(賃金と社会保障2014年7月上旬号(1613号))
画像をクリック!


● 大阪弁護士会貧困・生活再建問題対策本部『Q&A生活保護利用者をめぐる法律相談』(新日本法規、2014年)Q2、9、60、87
生活保護問題対策全国会議「法律家・支援者のための生活保護申請マニュアル2014年度版」をお読みください。

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