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 3月5日(木)13時から、当会は大阪市に対してプリペイドカードによる生活保護費支給のモデル事業撤回を求める要望の申し入れを行いました。
 支援者、生活保護利用当事者、依存症専門の精神保健福祉士、元ケースワーカー、弁護士が、それぞれの立場から発言し、この事業の問題を多層的に浮き彫りにできました。多くのマスコミの取材があり、記者も皆さん真剣に聞きいってくれてました。
 以下のとおり、申し入れについてご報告します。

※要望書の内容については、こちらをご覧ください。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-231.html

要望書を手渡す尾藤弁護士
大阪市の担当者に要望書を手渡す尾藤代表

要望書の説明をする小久保弁護士
概要を説明する小久保事務局長

取材するマスコミ



■ 申し入れ参加者からの発言および大阪市とのやりとり

大口耕吉郎さん(全大阪生活と健康を守る会)
 1月26日に大阪市の生活保護課と協議に基づく話し合いをした。生活保護世帯含め80人が参加し、うち40分間でプリペイドカードについて協議。一斉に、保護利用者が反対の意見を述べた。その意見を紹介する。

●よく利用する安売り量販チェーン店ではカードを取り扱っていない。カードを使う店は割高で、カードを使っていない店で買い物ができず不安だ。
● 一日あたりの利用金額を設定されたら、安いときにまとめ買いをすることができない。
 年寄りはカードは使えない。馴染みの店で買い物をする。
● 足の悪いから、近所でしか買い物しない。 
● 市は、支出の適正化を理由にするが、生活保護世帯はお金の管理ができないとでも言うのか。

 CWが指導するというが、その人が支給された保護費の中で、きちんとお金を使っていれば、これはこうだあれはこうだと内容をとやかくいう必要はないという判決もある。市長はそれをわかっているのか。
 全市的に広げる予定というが、海外での報道で、大阪市全体がカード化したら、生活扶助費の1%として年間10億円くらいを企業が儲ける試算がされている。企業のためにやっているとしか思えない。撤回を求めたい。

小野史絵さん(大阪精神保健福祉士協会会員)
 精神科のソーシャルワーカーをしている。日常業務として、ギャンブル、アルコール依存症の支援。要望書でも「依存症の対策にならない」としているが、依存において金銭管理が有効に働くこともあるが、前提として本人の自発的な意思と専門家による慎重なアセスメントが必要。本人の自己決定を欠いては支援にならない。
 依存症からの回復には専門家の支援は欠かせないが、管理は支援になり得ない。それが支援になるというなら、それなりの科学的根拠が必要である。一律に管理することでアセスメントができるとは思えない。一律管理は本人の自主性や主体性を奪い、支援者が責任の肩代わりをすることになる。そういう観点からも、プリカ支給には反対。

越前和夫さん(釜ヶ崎医療連絡会議、生活保護利用当事者)
 東成で生活保護を利用して14年。釜ヶ崎で相談を受けている。
 西成の現状だが、コンビニで物を買うと儲かるのは企業。相談を受ける中で、保護費をもらったらまず米を10㎏買うように助言している。保護費を落としても、米があれば何とか食べていける。しかし、コンビニでは、そういう米10㎏も扱っていない。自分も西成で昼食100円のおかずですませるが、一食200~300円でご飯にする人多い。安売りスーパーで買うよりずっと安い。コンビニで買うと一食500円になる。
 その残りのお金でお酒を飲む人もいるかも知れない。飲むなとは言えない。けじめだけつけておいて、家賃をちゃんと払えばずっと住めると助言している。プリカになると、そういう風に200円や300円でご飯が食べられなくなる。そういう人が西成にたくさんいる。

生田武志さん(野宿者ネットワーク)
 この事業が公表されたとき、しばらく理解できなかった。生活保護利用者は自分でお金を管理できない、という主張が特に理解できない。ほとんどの利用者は、自分で金銭管理して生活をしている。
 中には依存症の方がいるというのも事実だ。しかし、生活保護利用者は、仕事ができない状態であることが多く、労働の生き甲斐がなくなる。スティグマにより地域社会でも暮らしにくい。親族も血縁が切れている。といったように、社縁・血縁・地縁が切れている。
 その中でお酒に頼ったりパチンコが(悪い)友達になったりして、依存症になる人がいる。そこで、自分たちは生活保護利用者の集まりを開くなど、社会的な関係の構築をしている。個別の支援がないと解決しない。
 大阪市の生活保護行政で最も大きな問題は、ケースワーカー(以下「CW」と表記)が少なすぎること。圧倒的に足りていない。本来ケースワーカーは生活保護利用者とじっくり話しをして、地域や血縁との縁を結ぶのが大きな仕事。しかし、それができていない。自分たちは、CWを増やすことを要望してきたが、それは対処しないのに、このようなプリカ支給を導入している。

中山直和さん(元生活保護CW)
 生活保護行政の現場は、ともかく人手が足りない。厚労省からは基準より500人も足りないと年々指摘されている。CWの実態はめまぐるしく、精神的に追い詰められて病気になる人もたくさんいる。
 本来、生活支援が必要な人との関係は、家庭訪問や話をすることにより、その人の自発的な方向を引き出すことだが、実態はそうではなく、そのようなことができる条件を大阪市が崩している。それなのに、このような管理的なプリカを導入することは、まったく逆行している。
 高齢者、ギャンブル、過度の飲酒への支援が目的というが、誰も、それが目的につながるとは思っていない。そういう客観的合理的な説明も職場ではされていない。プリカ問題の取扱についてのCW向けの研修の話を聞いたが、VISAの社員が話をしておりCWがVISAの下請けをするような印象だったとのこと。なんのためのCWなのか。このような制度はするべきではない。
 報道で5件しか希望がないとのことだが、今後2000件の希望者を出すために、CWに強制圧力がかかるのではないかと、現場では心配している。

ここで、小久保弁護士が大阪市に質問。
小久保:応募状況は?CWに募集を強制するのか。
大阪市:強制はできない。やってはいけない。
小久保:2000世帯が目標?
大阪市:それに達しなくても目標達成でない、ということではない。随時募集はする。
小久保:3000円とのことだが。
(注:モデル事業参加者へ3000円の謝礼が予定されている件について)
大阪市:まだ決まっていない。アンケートをして協力してくれる方には相当の謝礼。具体的な内容は決まっていない。収入認定にはならない。
小久保:カード会社のお金で、(生活保護利用者の)プライバシーを買うのでは?
大阪市:本日は要望書を受け取るだけ。内容はまた後日…
小久保:せっかくなので内容についても。2013年9月4日の時点では、電子マネー支給すべきという市民の声に対して、利用できる店舗が少ないなどの課題があるので否定的、という見解だったが、ここはどういう形でクリアされたのか。
大阪市:当時はそういう電子マネー化しべきという声があって、課題があるということだったが、それはクリアされたということで今回導入することに。当時と今では規模が違う。
小久保:(プリカを使える)加盟店が増えたということか。何店舗から何店舗に増えたのか。
大阪市:(黙)小久保:今現在、加盟店が何店舗あるか把握していないのか。
大阪市:今日は協議や質問を受ける用意ができていない。今後、要望書にもとづき調整したい。

尾藤廣喜(弁護士、当会代表代表幹事)
 プリカ支給の問題点は要望書に記載されているとおりである。
 いろいろな問題点が指摘されている中で、本当に問題点を受け止めて、問題の所在について分析をして欲しい。特に当事者がどのような不利益を受けるのか、どんな問題が生じるのか真剣に受け止めなければならない
 我々は生活保護法31条に違反していると考えている。
 「今日は要望書を受け取るだけ」との対応をしているが、真剣に検討し、そして撤回して欲しい。

大口さん
 今日の要望書に対しては、書面回答を求める。


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