当会は、生活保護の住宅扶助基準ならびに冬季加算の引き下げに際して、厚生労働省に対して、平成27年6月18日、以下のとおりの要望書を提出しました。

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2015(平成27)年6月18日


住宅扶助・冬季加算削減の例外措置の
周知徹底と柔軟適用を求める要請書


厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨
1 住宅扶助基準については,住まいは人権であり,住生活の基盤であることから,できる限り生活保護利用者の住環境に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年4月14日付社会・援護局長通知が定める,①1人基準の1.3倍から1.8倍の特別基準を設定できる場合(同2項),②引き続き旧基準を適用できる3つの場合(同3(1)(ア)(イ)(ウ))を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記①②の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される住宅扶助費の減額を回避すべきこと。
(3)生活保護法27条に基づく転居指導を行い得るのは,①限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており,②明らかに最低生活の維持に支障が生じている場合に限られること。
(4)当事者が望まない地域や,居住環境の劣悪な物件など,意に反した転居の勧奨は厳に慎むべきこと。

2 冬季加算については,寒冷地の命綱であることから,できる限り生活保護利用者の健康状態等に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年5月14日付保護課長通知が定める1.3倍基準を設定できる場合を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される冬季加算の減額を回避すべきこと。


第2 要望の理由
1 住宅扶助基準・冬季加算削減による影響の重大性

 貴省は,住宅扶助基準については2015(平成27)年7月から,冬季加算については同年11月から(一部地域では10月から),いずれも殆どの地域で引き下げることを決めている(削減額は前者で年間190億円,後者で年間30億円規模)。
 住宅扶助基準の引き下げは,貴省の答弁によると44万世帯の生活の基盤を揺るがし,多くの生活保護利用世帯が住宅難民化するおそれがある。また,寒冷地の命綱である冬季加算の引き下げは,寒冷地に住む高齢者や障がい・傷病者等の健康に著しい悪影響を及ぼすおそれがある。
 いずれも,2013(平成25)年8月から3段階に渡って実施された史上最大の生活扶助基準の引き下げに加えて実施され,生活の基盤に大きな影響を与えることが必至であることから,生活保護利用者は大きな不安にさらされている。
 そもそも,これらの基準引き下げは,社会保障審議会生活保護基準部会が,2015(平成27)年1月9日,取りまとめた報告書の趣旨に反している点において違法であって許されない(2015年3月26日付け日弁連「生活保護の住宅扶助基準,冬季加算の引き下げの撤回を求める会長声明」参照)。しかし,本要望書は,事態の深刻さに鑑み,当事者への影響を最小限に止めるための緊急の要望を行うものである。

2 厚生労働省による例外措置等の発表
 貴省は,平成27年4月14日付社会・援護局長通知(社援発0414第9号)及び平成27年5月13日付保護課長通知(社援保発0513第1号)において,冬季加算については,平成27年5月14日付社会・援護局長通知(社援発0514第1号)において,それぞれ経過措置・例外措置や留意事項を定め,各自治体・実施機関に対して通知した。
 これらの措置は必ずしも十分とは言い難いが,それでも,これが現場のケースワーカーと生活保護利用当事者に十分に周知され,柔軟に適用されれば,相当多くの当事者が削減から免れて救われる可能性がある。

3 例外措置の周知不足による現場の混乱
 既に全国各地の福祉事務所が,生活保護利用当事者に対して,住宅扶助基準の引き下げについて連絡を始めているが,各地で混乱が起きている。
 すなわち,生活保護利用当事者に送付されている「お知らせ文書」は,例外措置について全く記載がされていないか,その記載が極めて抽象的で不十分なものがほとんどである。中には,明らかに貴省の通知の内容を逸脱し,誤った情報を記載したものまである。
 また,現場のケースワーカー自身が,例外措置の内容を知らず,形式的・杓子定規に引き下げを強要しようとし,生活保護利用者に無用の不安を抱かせたり,軋轢を生じさせたりする例も見られる。

4 住まいは人権,冬季加算は寒冷地の命綱
 そこで,住宅扶助基準については,住まいは人権であり,生活の基盤であるという観点から,冬季加算については,それが寒冷地の命綱であるという観点から,各地の福祉事務所及び生活保護利用当事者に対して,貴省通知の定める例外措置を具体的に周知徹底すること,そして,それを柔軟に適用して,できる限り多くの生活保護利用者の生活基盤に変化が生じないよう最大限の努力を払うことを求めて,本要望を行うものである。

以  上



住宅扶助・冬季加算削減にかかる各地の問題事例
※自治体からの通知例(PDF)


① 枚方市・単身女性(74歳)  6/15 相談あり
 家賃(公団)49,000円(現行限度額42,000円・差額の7,000円は本人負担)
 6月初めころ、電話で「来月から家賃が42,000円から38,000に下がります。Aさんが38,000円の所に転居するか、今休んでいる(Aさんはヘルパーをしていたが事故などで体調を壊し休んでいる)仕事を再開すれば12月までは家賃を42,000円支給できます。それ以降は38000円になります。転居費用は19万円出ます」と言われた。
 Aさんは「ここは動けない、娘が近くに住んでいるので困ったときに助けてもらえる。なんとかここに居させてほしい」と訴えたが聞いてもらえず、「また説明に行きます」といわれた。不安で気が変になりそう。

② 枚方市・単身女性(80歳代)家賃44,000円(2,000円は自己負担) 5/30相談あり
 5月中頃、担当者から「家賃が下がりますので転居してください。」と電話があった。「40年間ここに住み続けているので転居したくない」と言ったが、「返事は6月12日までにお願いします」と言われた。

③ 枚方市・女性(42歳)精神障害2級・長男(22歳)発達障害 家賃55,000円(新基準46,000円)
  「家賃の基準が下がるので新基準内の所に転居が必要」と言われた。女性は今の家を見つけるまで何回も転居を繰り返し、やっと落ち着けるところが見つかった。精神状態の浮き沈みも激しく、環境に慣れるのも大変なのに転居を言われて強いショックを受けた。
 「役所から転居を言われて・・・。どんな死に方が良いかネットで調べたが」と主治医に相談。驚いた主治医が診断書を書いてくれた。
 女性の近所に住んでいる父親(視覚障害1級)も、生活保護を利用している。その父親も家賃(39,000円)が新基準を1,000円オーバーしているので転居を言われた。「そんなことおかしい」と抗議すると担当者は前言を取り消した。

※注 あまりにひどい対応が多いので、枚方・交野生活と健康を守る会が、文書で緊急申し入れをしたところ(6/3)、枚方市は、これまで通知の内容が理解できていなくて先に「転居」ありきだったことを認めた(6/15)。最近、大阪府から「経過措置」を最大限活用し、被保護者の住環境に変化を与えないよう配慮が必要、形式的な対応や強硬な転居指導をしないようとの「通知」らしきもの?が出されたことを受け、今後は裁量を活かした対応をするよう職員に伝えたということだった。
ある担当者は「これまではきつく対応していたが、これからは対象者に対して安心してもらえるような対応が出来る」と、数日前に聞いた声に比べてこれが同じ人物かと思えるほど、明るい声になっていた。多くの自治体が同様に通知の解釈を間違っているかもしれない。


④ 大阪府下自治体・女性(50歳くらい・精神障害者)
 契約更新は来年の4月。家賃額は住宅扶助上限額。自宅から徒歩5分の障がい者作業所に通所(就労)。支援者から「例外措置ア、イ、ウに全て該当すると思うので、心配ならケースワーカーに話してみるように」と助言されて話してみたところ、「そんなケースを認めたらみんな認めなくてはならなくなるから駄目だ」と言われた。支援者が電話したところ、「無理に引っ越せとは言っていない。家賃を下げるように家主と交渉するように言っている。家賃が下がらず、引っ越さない場合3万9千円との差額は本人負担になる。」という返事だった。「厚労省の通達は知っているか」聞いたところ、「知っているが、所の方針として差額を本人負担してもらうことになっている」と言った。支援者が強く抗議して、上司と再検討のうえ回答をもらうことになった。

⑤ 大阪市平野区
 自己都合で転居費用を自分で用立てて6月中に42000円(現行基準内)のところに引越しをする人が、ケースワーカーから「40000円以下のところを探せ。42000円のところに転居したら、転居後、さらに転居指導する」と言われた。

⑥ 大阪府下自治体・男性(車いす利用の身体障害者)
 「家主に値下げを交渉するか、府営住宅に申し込むように」と言われる。相談した弁護士から例外措置があることを聞き、ケースワーカーに「例外措置はないのか」と尋ねたところ、「そんなものはない。知らない」と言われた。

⑦ 大船渡市・女性(化学物質過敏症、障害年金受給)
 冬季加算が今年度から月額14,230円から8,860円に減額。重度の化学物質過敏症のため外出時には酸素ボンベの携帯が不可欠であり、在宅時間が極めて長い。1.3倍基準が適用されないか福祉事務所長に問うたが、「それが適用されるのは寝たきりの人だけ」というニュアンスで答えられた。




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