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2016(平成28)年5月18日


Q&A 震災と生活保護

【2016年 熊本地震版】


作成:生活保護問題対策全国会議


 生活に困ったとき、被災の現場で生活保護制度が活用されることを願って、震災と生活保護をめぐる主な論点について、改めて整理しました。
 このQ&Aは、引用・配布など、どうぞご自由にご活用ください。  
(2016年5月18日)

Q1(厚生労働省の主な通知)
 震災時の生活保護の取扱いについて、国は、どのような通知を出していますか?

A 国は、熊本地震においても東日本大震災時の取扱いに準じるとしています。

 厚生労働省は、東日本大震災のとき、生活保護の取扱いについて、次の3つの通知を出しています。
 ① 平成23年3月17日付け社会・援護局保護課長通知「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取扱いについて」(以下、「通知①」といいます)
 ② 平成23年3月29日付け社会・援護局保護課長通知「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取扱いについて(その2)」(以下、「通知②」といいます)
 ③ 平成23年5月2日付け社会・援護局保護課長通知「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」(以下、「通知③」といいます)

 そして、今般の熊本地震を受けて、厚生労働省は、平成28年4月27日付け社会・援護局保護課保護係長事務連絡「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」を出し、東日本大震災の際の上記3つの保護課長通知に「準じて取り扱う」としています。

厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000123912.html
上記通知類PDF
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000123911.pdf



Q2(避難所等の避難先での生活保護受給)
 私は、今、避難所で生活しています。生活保護の申請に行ったら、炊き出し、配給等によって最低生活が確保されているし、居住地(被災地)と離れているからダメと言われました。避難所で生活保護は受けられないのでしょうか。

A そんなことはありません。避難所でも生活保護は受けられます。
 通知①は、「今般の地震により本来の居住地を一時的に離れて遠方に避難している場合、本来の居住地に帰来できない等被災者の特別な事情に配慮し、避難先の保護の実施機関が実施責任を負い現在地保護を行うものとすること。」とし、さらに「被災者の状況を十分配慮し、生活保護の申請意思が確認された場合においては、申請権の侵害がないよう留意の上、迅速に対応すること。」と注意が呼び掛けられています。
 通知②も、避難所で生活保護が受けられることを当然の前提としています。
 つまり、居住地を離れた避難所で避難している場合、避難所を管轄する役所で生活保護を受けることができます。



Q3(被災地に残した資料や資産)
 被災地から着のみ着のまま避難してきました。通帳など資産を証明する書類が手元に何もありませんし、地元に残した自動車や自宅がどうなっているかも分かりませんが、生活保護を受けることができますか。

A 資産を証明する書類がなくても生活保護を受けることができます。
 通知②も、「避難所において保護費を支給する場合、必要な保護費を遺漏なく支給すること。被災状況によっては、生活実態の把握が十分できない場合も考えられるが、被災者の特別な事情に配慮し、不足が生じることのないよう配慮すること」として、手持ち資料等が不十分で生活実態や財産状況が不明確であっても、まずは保護を適用すべきことを明確にしています。
 また、通知①は、「被災者が本来の居住地に資産を残さざるを得ない場合等については、被災者の特別な事情に配慮し、『生活保護法による保護の実施要領について』(略)第3の3に掲げる『処分することができないか、または著しく困難なもの』として取り扱うこととすること。」としており、被災地に処分困難な資産があっても生活保護は適用し得ることを明確にしています。
 ただし、被災地に残した自動車、不動産その他の資産について、後日、処分可能となって資産が現実化した場合には、生活保護法63条によって、それまで受給した保護費の費用返還義務を負う可能性がありますので、その点注意が必要です。



Q4(避難所で受け取れる生活保護費)
 避難所で生活保護を受ける場合、生活保護費はいくら受け取れますか。炊き出し等の実費分を差し引かれたりするのでしょうか。

A 炊き出し等の実費分を生活保護費から差し引かれることはありません。
 避難所等において災害救助法による「炊き出しその他による食品等の給与」等を受けていたとしても、これは緊急時の給与という性格で、被災による新たな需要のごく一部を補うものに過ぎないこと、実額の算出が事実上不可能であることなどから、収入認定すべきではありません。
 通知②が、「体育館・公民館等の避難所における最低生活費の算定に当たり、生活扶助は居宅基準を計上すること。ただし、避難所の代わりに旅館・ホテル等を借り上げた場合については、具体的な事例に即し、個別に判断すること」としているのは、上記と同一の見解に立ち、少なくとも,「体育館・公民館等の避難所」については、炊き出し等の食品等の給与を受けていても収入認定することなく居宅基準の生活扶助費を支給すべきとしているものです。
 なお、阪神淡路大震災の際にも避難所で供与された食品等についての収入認定は行われませんでした。



Q5(義援金その他の給付金と生活保護)
 震災後、生活保護を受給していますが、このたび、義援金を受け取りました。義援金は収入認定されて、その分保護費は減らされてしまうのでしょうか。
 日本財団や熊本市等の見舞金や、災害救助法等に基づく給付金の場合はどうでしょうか。

A 「自立更生計画書」を出すことで、生活用品、家具、家電等の生活基盤の回復に直接必要なものはもちろん、生業、教育、住家(建築・補修)、介護等当該世帯の自立更生に必要な費用は幅広く収入認定除外されます。

 本来、生活保護を受給している者が受領した義援金については、次官通知第8-3(3)アの「臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭」として、自立更生計画書の提出を要せず収入認定の対象にならないものと解すべきです。
 通知③は、次官通知第8-3(3)オの「臨時的に受ける補償金、保険金または見舞金」に該当し、「自立更生計画書」を提出することによって、「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」については収入認定しないという立場ですが、以下のとおり、かなり柔軟な取扱いを指示しています。

1)第1次義援金等について
 まず、第1次義援金のように緊急的に支給される義援金等については、費目・金額を積み上げずに包括的に自立更生計画に計上すればよく、使途の確認も必要ないとしています。つまり、第1次義援金については、自立更生計画書を出しさえすれば、生活再建に関わる支出なら事実上自由に使うことができます。

2)その他の義援金等について
 その他の義援金等についても、自立更生計画書に、生活用品・家具、家電等の生活基盤の回復に直接必要なものはもちろん、生業、教育、住家(建築・補修)、介護等の当該世帯の自立更生に必要な費目と金額を明記すれば、収入認定除外されます。同通知は、「被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取扱いとならないよう留意するとともに、(略)被災者の事務負担の軽減に努めること。」として、自立更生計画の内容や疎明の程度については柔軟かつ弾力的に対応することを求めています。
通知③に「自立更生計画書」の様式が示されていますので活用してください。

3)経費が計画を下回り余りが生じた場合について
 通知③は、実際の経費が計画を下回り残余が生じた場合についても、「計上額と購入額との差額分の範囲内で、別途、自立更生のために充てられる費用として認定して差し支えな」く、このような場合、差額分の使途を事前に報告するなどすれば、「自立更生計画を再度策定する必要はない」としています。
 つまり、事前に報告さえすれば、再度自立更生計画をつくらなくても、余った差額分を自立更生のために使うことが認められるのです。

4)その他の見舞金や災害救助法の給付金について
 熊本地震では、日本財団が「全壊」「大規模半壊」の世帯に20万円、熊本市が「全壊」の世帯に5万円、「半壊」の世帯に3万円の見舞金を支給するとしています。これらの金銭については、金額の規模と見舞金という性格から、上記1)の第1次義援金と同様に包括的記載で良いものと取り扱われるべきです。
 被災者生活再建支援法による支援金、災害弔慰金法による弔慰金等については、金額の規模が比較的大きいので、上記2)と同様に取り扱われることになると思われます。
 また、災害を受けたことにより臨時的に必要となる経費として社会福祉協議会から生活福祉資金を借りた場合や、災害弔慰金法に基づいて災害援護資金を借りた場合には、それらが自立更生に充てられるのであれば、貸付金は収入認定せず、また、その償還金は生活保護の収入認定にあたって収入から控除される取扱いになっています〔保護課長通知第8-11〕。つまり、その両方が認められれば、事実上給付を受けたのと同じ効果を持つこととなります。



Q6(被災者の自動車保有と生活保護)
 生活保護の申請に行きましたが、自動車は処分するように言われました。被災地の交通の便が悪く、今後の生活基盤の再建のためにも自動車は手放したくないのですが認められないのでしょうか。

A 行方不明の家族を捜す等の特別事情があれば自動車を処分せずに生活保護を受ける余地があります。

 生活保護受給者の自動車保有については、運用上厳しく制限されて来ましたが、2011年4月19日の参議院厚生労働委員会における川田龍平議員の質問に対して、清水美智夫厚生労働省社会・援護局長(当時)は、通知①に言及しながら、「行方不明のご家族をお捜しになるためであるとか、そういった特別な事情がある場合の自動車といったものはこの通知に該当しますので、処分されなくとも生活保護の適用というものが十分考えられると思ってございます。」と答弁しました。
 なお、生活保護受給者の自動車保有を厳しく制限する従来の通知の問題点については、日本弁護士連合会の2010年5月6日付「生活保護における生活用品としての自動車保有に関する意見書」(日弁連HPhttp://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2010/100506.html)をご参照ください。
 


Q7(避難先との世帯認定)
 震災後、実家に避難して生活しているのですが、両親も年金暮らしで余裕がないため出ていきたいと思っています。生活保護申請に行くと、両親と同一世帯なので全体として保護の要否を判定すると言われました。私だけ生活保護を受けて出ていく方法はないのでしょうか。

A 避難が一時的であれば、避難者だけが生活保護を受けて転居先の敷金等の支給を受けることができます。

 この点、平成21年12月25日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「失業等により生活に困窮する方々への支援の留意事項について」は、「失業等により住居を失い、一時的に知人宅に身を寄せている方々から保護の申請がなされた場合には、一時的に同居していることをもって、知人と申請者を同一世帯として機械的に認定することは適当ではないので、申請者の生活状況等を聴取したうえ、適切な世帯認定を行うこと」としています。ここで書かれていることは、震災で住居を失った方にも当然にあてはまりますし、知人宅のみならず、生活保持義務関係(夫婦や親と未成熟子の関係)にない親族、きょうだい、親子宅であっても、一時的な避難先として居住している場合には、形式的に同一世帯と見ることなく、適切な世帯認定を行うべきです。
 そして、被災者の単身世帯として生活保護が開始された場合には、局長通知第7の4(1)カの「転居に際し、敷金等を必要とする場合」の解釈に関する課長通知第7の30の答12「住宅が確保できないため、親戚、知人宅等に一時的に寄宿していたものが転居する場合」に該当するものとして、転居先の敷金や引っ越し代等の支給を認めるよう申請するとよいでしょう。



Q8(避難先からの住宅の確保)
 避難所や仮設住宅から一般の民間賃貸住宅に転居する場合、新住居の敷金その他の転居費用を生活保護から支給してもらうことはできますか。

A 避難所や仮設住宅で生活保護の適用を受けると新住居の敷金等の転居費用を支給してもらえます。

 前出の課長通知第7の30の答6「宿所提供施設、無料低額宿泊所等を一時的な起居の場として利用している場合」または同8「火災等の災害により現住居が消滅し、又は居住に耐えない状態になったと認められる場合」に該当するものとして、敷金、保証金や引っ越し代等を支給してもらうことができます。



Q9(家具什器費、布団代、被服費)
 地震で住宅が全壊し、家財道具、布団、服等がほとんど使えなくなってしまいました。これらの費用を生活保護から支給してもらうことができますか。

A 家財道具、布団、衣服等の費用を保護費で支給してもらうことができます。

 局長通知第7の2では、「災害にあい、災害救助法が発動されない場合において、当該地方公共団体等の救護」もない場合には、炊事用具、食器等の家具什器費として27,800円(特別基準44,400円)の支給が認められます。しかし、2000年までは、「限度額を超えて費用を必要とする特別の事情があると認められ、都道府県知事が承認した場合」は7万円とされており、阪神淡路大震災の際には家具什器費として7万円まで認められていました。現在は特別基準設定の権限は厚生労働大臣にしかないことになっていますので、今回も同様の対応が強く求められます。
また、同様に「布団類」に18,800円、「平常着」や「学童服」に13,600円、おむつ代に20,100円なども支給が認められます。


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