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 生活保護基準部会では、本年5月から、2018(平成30)年度の基準見直しに向けての検証が再開されています。私たちは、75団体もの方々の賛同を得て、本日、厚生労働省に「今般の生活保護基準の検証にあたっての要望書」を提出しました。
 賛同をいただいた団体の方々、本当にありがとうございました(なお、個人でご賛同いただいた方については、今回は掲載を見合わせておりますので、ご容赦いただけますよう、お願い致します。)。

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2016年10月26日

厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿


今般の生活保護基準の検証にあたっての要望書


生活保護問題対策全国会議

ほか75団体(別紙)


 去る本年5月27日,2018(平成30)年度に予定される5年に1度の生活保護基準の見直しに向けた生活保護基準部会が再開されました。

基準部会による検証の無視・軽視
 前回の見直しについての基準部会報告書は2013年1月にまとめられましたが,貴省は,同報告書の検証結果をふまえた数値について,基準部会に何ら諮ることなく独断で,減額となる世帯だけでなく増額となる世帯についても2分の1としました(資料1・北海道新聞2016年6月18日朝刊,資料2・保護課作成「取扱厳重注意」文書)。さらに,貴省は,基準部会では全く検討されなかった「物価」下落を考慮し,しかも,「生活扶助相当CPI」なる通常のCPIとは全く異なる偽装数値を用いて,最大10%・平均6.5%という保護世帯の96%に対する生活扶助基準の引き下げを強行しました(資料3・中日新聞2013年4月10日朝刊)。

集団違憲訴訟における国の不誠実な態度
 これに対しては,約2万人が審査請求を提起し,さらに現在,全国27都道府県において900名を超える原告が違憲裁判を提起して争っています(資料4・朝日新聞2015年11月3日朝刊)。しかし,訴訟の場においても被告国は,引き下げの具体的な過程やデータを明らかにすることなく,時に必ずしも基準部会の意見を踏まえる必要はないという一方,時に基準部会の了解を得たという,不誠実な態度に終始しています。

今般の検証によるさらなる生活保護基準引下げの懸念
 今般,貴省が基準部会において示した「平成29年検証における検討課題(案)」には,「有子世帯の扶助・加算の検証」,「級地区分の在り方の検討」等があげられていますが,前回検証後の経過を踏まえると,貴省は,民主党政権下で復活された母子加算の再度の廃止等子どものいる世帯の扶助基準の引き下げや,1級地等都市部の扶助基準の引き下げを既定路線とし,基準部会の検証を,その免罪符として都合よく利用しようとしているのではないかと強く懸念されます。
 ナショナル・ミニマムである生活保護基準が安易に引き下げられれば,最低賃金,住民税非課税,国民健康保険,介護保険,保育料,就学援助等のさまざまな基準にその影響が及び,市民生活全般に重大な被害を与えることは必至です。
 
 そこで,私たちは,貴省に対し,以下の諸点を十分に考慮したうえで,基準部会の事務局運営をするよう強く要望いたします。

1 生活扶助基準引き下げの経過の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げに際し,基準部会に諮ることなく独断で,同部会の検証結果を踏まえた数値を2分の1とした点,及び,生活扶助基準相当CPIという独自の統計数値の捏造の上に成り立つ大幅な物価下落を考慮した点について,基準部会の議題として取り上げて検証すること。

2 各種生活保護基準引き下げの影響の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げ,2015年7月からの住宅扶助基準の引き下げ,同年10月からの冬季加算の引き下げについて,以下の影響を検証すること
(1) 生活保護世帯にどのような影響を及ぼしたか,世帯類型ごとの影響額,保護廃止世帯数,減額によって支出を抑制した経費などを検証すること。
(2) 生活保護基準と連動している他の制度(地方税,最低賃金,就学援助等の低所得者対策等)への影響の有無及び内容を検証すること

3 検証方法について
生活扶助基準を検証するにあたっては,問題が多い第1十分位(下位10%)との比較という手法は止め,何が健康で文化的な生活なのかを具体的に検討する手法を開発し,その新たな手法によって今回の検証を行うこと。

4 有子世帯への扶助・加算
一般低所得世帯の子どもとの均衡から安易に基準を引き下げることはあってはならず,子どもの貧困対策の推進に関する法律が求める,貧困の連鎖・貧困の固定化を防ぐ観点から,子どもの最低生活費がどうあるべきかを検証すること。

5 基準部会の審議内容及び検証結果の最大限の尊重
 2013年8月からの生活扶助基準引き下げや2015年7月からの住宅扶助基準引き下げの際のように,基準部会による検証を事実上無視するようなことはあってはならず,生活保護基準の改定にあたっては,基準部会の審議内容及び検証結果を最大限尊重すること。

以 上


[賛同団体]
公益社団法人日本社会福祉士会,認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい,特定非営利活動法人ほっとポット,全国生活と健康を守る会連合会,生存権裁判を支援する全国連絡会,沖縄県子ども総合研究所,有限会社おとくに福祉研究所,兵庫県精神障害者連絡会,個人社会福祉士事務所フリーダム,特定非営利活動法人自立生活センターたいとう,救護施設高槻温心寮,青年法律家協会弁護士学者合同部会,生存権がみえる会,住まいの貧困に取り組むネットワーク,ゆにおん同愛会,生活保護基準引き下げ違憲訴訟を支える大阪の会,きょうされん大阪支部,港合同南労会支部,怒っているぞ!障害者切りすて!ネットワーク関西,にいがた青年ユニオン,関西合同労働組合,生活保護引下違憲訴訟岡山弁護団,生存権アクションぎふ,生活保護基準引下げ違憲訴訟富山弁護団,近畿生活保護支援法律家ネットワーク,特定非営利活動法人大津夜まわりの会,秋田県生活と健康を守る会連合会,全京都生活と健康を守る会連合会,沖縄県社会保障推進協議会,自由法曹団,「骨格提言」の完全実現を求める大フォーラム実行委員会,特定非営利活動法人ガチャバンともに生きる会,生存権裁判を支える愛媛の会,ささしまサポートセンター,生活保護改悪に反対する人々の会,怒っているぞ!障害者切りすて!全国ネットワーク(怒りネット),特定非営利活動法人ジョイフルさつき,なかまユニオンなかま大阪分会,反貧困ネットワークとやま,沖縄憲法25条を守るネットワーク(沖縄25条の会),中弘南黒社会保障推進協議会,青森民主医療機関労働組合,青森県医療労働組合連合会,中弘南黒地区労働組合総連合,自立障害者グループペンギン,NPO法人ペンギン,全国「精神病」者集団,京都山科生活と健康を守る会,生活保護支援九州・沖縄ネットワーク,生活保護支援ネットワーク静岡,NPO法人くまもと支援の会,NPO法人神戸の冬を支える会,生活保障支援ボランティアの会,反貧困ネットワーク大阪,八尾生活と健康を守る会,平野生活と健康を守る会,住之江生活と健康を守る会,吹田生活と健康を守る会,枚方交野生活と健康を守る会,門真・守口生活と健康を守る会,富田林生活と健康を守る会,松原生活と健康を守る会,住吉生活と健康を守る会,東住吉生活と健康を守る会,岸和田生活と健康を守る会,此花生活と健康を守る会,浪速生活と健康を守る会,摂津生活と健康を守る会,愛媛・人間らしく生きたい裁判弁護団,安心できる介護を!懇談会,全国金属機械労働組合港合同,全国金属機械労働組合港合同田中機械支部,全国金属機械労働組合港合同大熊鉄工支部,地域でつくる子どもの居場所・はぐくみ,フードバンク滋賀(以上75団体)



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