現在、国会に上程されており近々審議予定の生活保護「改正」法案(正確には「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案要綱」)等には、単なる払い過ぎの保護費の返還債権を税金同様に破産しても免責されなくしたり、生活保護利用者だけジェネリック医薬品の使用を強制したり、薬局の一元化を求めるなど大きな問題があります。
問題点を詳しくまとめた意見書を厚生労働省に提出しましたので、ぜひご一読ください。
第1 意見の趣旨
1 現在,国会に上程され審議予定の生活保護「改正」法案(正確には「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案要綱」のうち「生活保護法の一部改正」部分)における次の各条文案は削除すべきである。
(1) 生活保護法63条に基づく「払いすぎた保護費の返還債権」について非免責債権化するとともに保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護「改正」法案77条の2及び78条の2
(2) 生活保護利用者については「原則として後発医薬品によりその給付を行う」とする生活保護「改正」法案34条3項
2 厚生労働省が2018年度に全国的に推進するとしている「被保護者が処方箋を持参する薬局をできる限り一か所にする事業(薬局一元化事業)」は実施するべきではない。
第2 意見の理由
1 63条債権を非免責債権化すること等の問題
(1) 63条債権と78条債権の異同

生活保護法63条(以下,「生活保護法」の表記は省略する)と78条のいずれを適用すべきかの区別の基準について生活保護手帳別冊問答集問13‐1は,(法78条によることが妥当な場合)として次の4つを列挙している。
(a) 届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらずそれに応じなかったとき。
(b) 届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき。
(c) 実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず,又は虚偽の説明を行ったようなとき。
(d) 課税調査等により,当該被保護者が提出した収入申告書又は資産申告書が虚偽であることが判明したとき。
要するに、78条は故意に生活保護費を不正受給した場合の規定であって78条に基づく徴収債権(以下,「78条債権」という。)は不法行為に基づく損害賠償請求権の性質をもつ。その一方,63条は単に保護費を受け取りすぎた場合の規定であって,63条に基づく返還債権(以下,「63条債権」という。)は不当利得返還請求権の性質をもつものであって(東京地裁平成22年10月27日判決),その性質が全く異なる。
そのため,78条債権については,実務上一部返還免除は認められておらず全額返還となるが,63条債権については,家財道具や介護用品の購入等その世帯の自立更生に資する使途に充てられるのであれば柔軟に返還免除が認められ(生活保護手帳別冊問答集問13-5),全額免除もあり得る。
(2)破産による免責制度の趣旨と2013年の生活保護法「改正」内容
破産法1条は,「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること」を同法の目的として規定している。すなわち,破産による免責制度とは,債権者による追及から解放することによって,債務者の経済的再生を図り,人間の尊厳を確保するためのものであるから,不誠実な行為を行っていない破産者については,その再生のために積極的に免責を付与すべきものとされている。債務負担の原因や動機を問わず,自己の支払能力を超えた債務を負担する者を債務負担から解放し,その経済的再生を図ることは,当該債務者やその家族の利益だけではなく,社会公共の利益からみても正当なものだからである(伊藤眞「破産法・民事再生法〔第3版〕」704頁)。
とすれば,免責の効果が及ばない非免責債権を新たに創設することには慎重さが求められ,その合理性や必要性が厳格に問われなければならない。
そのような中,2013年の生活保護「改正」の際,78条の2が新設され,78条債権について「国税徴収の例により徴収することができる」とされた。破産法253条1項1号は「租税等の請求権」を非免責債権として定めているため,これによって78条債権は,破産手続において免責許可決定を受けても免責されず引き続き支払わなければならなくなった。また,同時に78条の2が新設され,不正受給の徴収金について被保護者が申し出た場合に保護金品からの天引き徴収が可能とされた。
租税債権が破産法253条1項1号によって非免責債権とされている理由が国庫の収入確保という徴税政策上の要求に基づくことからすると,78条債権を租税債権と同視することには疑問の余地がある。しかし,78条債権は,債務者に落ち度や非難可能性がある点において,非免責債権である「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」(同条項2号)に類似していることから非免責債権化することに全く合理性がないとはいえなかった。
(3)今回の「改正」法案の内容
ア 違法回収の合法化による生存権侵害
ところが,今回の「改正」法案77条の2は,63条債権についても,78条債権と同様に「国税徴収の例により徴収することができる。」と規定した。これによって,63条債権も破産手続において免責許可決定を受けても引き続き支払わなければならない非免責債権とされることになる。
しかし,先にも述べたとおり,63条債権は不当利得返還請求権の性質をもつものであって,78条債権とはまったく性質が異なる。債務者に落ち度がない場合であるのに非免責債権化することは,「不誠実な行為を行っていない破産者については,その再生のために積極的に免責を付与する」という免責制度の趣旨に真っ向から反する。このように免責制度の根幹にかかわる変更を破産法の専門家の意見を聞くことなく生活保護法の改正によって行うことも大きな問題である。
これまで63条債権は一般債権であったから,自己破産前に福祉事務所にこれを返済することは偏頗弁済として許されず,破産管財人が否認権を行使すれば自治体側が敗訴していた(東京地裁平成22年10月27日判決,千葉地裁平成25年11月27日判決等)。今般の法改正は,これまで違法であった地方自治体による回収行為を合法化し,「最低限度の生活」をようやく営んでいる生活保護利用者から「自己の支払能力を超えた債務負担から解放され,その経済的再生を図る道」を奪うものであって,憲法25条が保障する生存権を侵害するものと言わざるを得ない。
イ 税を財源とする他の債権にも波及するおそれ
生活保護費の財源が税金だから税金と同じに扱うことが正当化されるのであれば,その他の公債権や奨学金等の税金を財源とする他の債権にも同様の扱いが波及し,生活困窮者全般の経済的再生の道が閉ざされるおそれもある。
現在,わが国では「奨学金破産」が社会問題化しているが,アメリカの連邦学生ローンは自己破産した後も免責とならないこともあり,大学の学費免除を軍に入る若者が少なくないことが「経済的徴兵制」であると指摘されている。日本でも,文科省の有識者会議「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」メンバーの前原金一・経済同友会専務理事が,卒業後に就職できず奨学金の返還に苦しむ人たちについて「防衛省でインターンシップ(就業体験)をさせたらどうか」と発言をしたとの報道もあり(2014年9月3日付東京新聞),奨学金の非免責債権化と相まってわが国でも「経済的徴兵制」が現実化することも杞憂とはいえない。
ウ 保護費からの天引き徴収による生存権侵害
しかも,「改正」法案78条の2は,63条債権についても,不正受給に関する徴収債権と同様に被保護者からの申出による保護費からの天引き徴収を可能としている。
この点については,平成28年8月5日の第42回地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会で同種の提案がなされたのに対して,厚生労働省は,次のとおり,極めて正当に慎重な意見を述べていた。
「本人の申出があっても,実際の窓口で『申し出てください』と言われるような場合もあることから慎重に考えなければならない。だからこそ,前回の生活保護法改正の中ではあくまでも不正受給の場合に限って本人の申し出要件をつけて相殺をしているところであり,申し出があれば問題ないということには必ずしもならないと考えている。」
「生活保護は,受給者が福祉事務所によって生活保護の支給を受けるという関係性にあり,そういう意味では片方が生活の扶助を決定する権限を持っている。一方で,生活保護受給者はそれによって生活が成り立つという関係にあり,申し出というのが形式上公平なものであっても,実質的に公平性が担保できるのかということについては十分考慮しなければならない。」
「被保護者にとっては,今回の提案は,保護費から返還金が天引きされる形になるため,最低生活の水準の給付の中から天引きされるということが,被保護者の不正受給でもないものについてもできるとすることは,被保護者の生存権との関係も含めて,慎重に議論する必要があると考えている。」
それが,今回,何の根拠もなく,あっさりと慎重意見を覆したのは,不可解というほかない。
エ 違法な過回収が頻発する懸念
さらに問題なのは,今般の法「改正」によって,本来回収することが許されない63条債権についてまで徹底回収される事態の頻発が懸念されることである。
すなわち,先に述べたとり,本来,63条債権は,全額返還を原則とする不正受給徴収債権とは異なり,家財道具や介護用品の購入等その世帯の自立更生に資する使途に充てられるのであれば柔軟に返還免除が認められ得る(一般に「自立更生控除」という。生活保護手帳別冊問答集問13-5)。しかし,実務の現状としては,福祉事務所がこうした検討をすることなく安易に全額返還決定する例が極めて多く,かかる返還決定を違法と断ずる裁判例も多数存在する(大阪高裁平成25年11月13日判決,福岡地裁平成26年2月28日判決,福岡地裁平成26年3月11日判決,東京地裁平成29年2月1日判決)。しかも,上記のような自立更生控除が認められ得ることについて,福祉事務所職員が生活保護利用者に対して説明することはほとんどないため,上記裁判例のように違法な63条返還決定が問題視されて是正されるのは氷山の一角であると考えられる。
生活保護利用者に対し自立更生控除の仕組みについての周知説明を徹底するという運用改善がなされないままに今回の法「改正」が実現すれば,違法な63条決定が是正されることなく,保護費からの天引き徴収等によって過大に回収される事態が頻発することが懸念されるのである。かかる事態は,本来返す必要のない保護費の返還を強いられるとともに,保護費からの天引き徴収によって健康で文化的な最低限度の生活を下回る生活を余儀なくされるという二重の意味で生活保護利用者の権利を侵害するものである。
平成29年12月15日付社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書(39頁)も,「福祉事務所の算定誤りに係る返還金を,保護費との調整対象とすることについては,慎重に検討すべきである。」としているが,条文案上,かかる場合の別異取扱いは何ら明記されていない。
エ 違法な滞納処分発生のおそれ
「国税徴収の例による」ということは,「改正」後は滞納処分として司法手続によらずに直接被保護者の資産の差押えができるようになったようにも思われる(国税徴収法47条以下)。
しかし,広島高裁松江支部平成25年11月27日判決は,当日に児童手当が振り込まれることを認識しながら,その大部分が児童手当によって形成された預金債権を差し押さえることは実質的に差し押え禁止債権である児童手当受給権を差し押えたのと変わりがなく違法としている。それに加え,生活保護法58条は保護受給権のみならず「既に給与を受けた保護金品」の差押えも禁止していることからすれば,保護費が振り込まれる口座の預金債権の差押えは法「改正」前後を問わず違法であって許されないと解される。
また,国税徴収法153条1項が定める「滞納処分の執行を停止することができる」場合の一つである「滞納処分の執行等をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」(同条項2号)について,国税徴収基本通達(「第153条関係 滞納処分の停止の要件等」)は,「滞納者(略)の財産につき滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収(略)をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(略)になるおそれのある場合をいう。」と定めている。とすれば,「改正」法案がそもそも生活保護を利用し,または利用していた者に対して「国税徴収の例による」徴収を許容するものであることに照らせば,同法案は国税徴収法153条1項の趣旨に抵触するおそれが大といわなければならない。
すなわち,「改正」法案77条2が国税徴収法153条との関係において許容されるのは、63条債権の対象とされた者が十分な資産を得たことによって既に生活保護が廃止され,かつ「国税徴収の例による」徴収を行ったとしても同人が再び「生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態・・・になるおそれのある場合」には該当しないことが明白な,極めて限定的な場合に限られるものと解される。
したがって,現に生活保護を利用している者については,保有を認められた居住用不動産や通院・通勤のための自動車に対する差押えも許されず,保護を廃止された者についても,これは原則として同様であると考えられる。
しかし,これらの点に関する扱いがどのようになるのかについては一切議論や検討がなされていない。上記のような生活保護利用者の資産に対する滞納処分は許されないことが明確にされないまま,法「改正」が実施されれば,63条債権を回収するために生活保護利用者の預金口座,居住用不動産,通院用に保有を認められた自動車等の資産を違法に差押える事態が発生しかねない。
(4)小括
以上のとおり,63条債権を非免責債権化し,保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護法改正案77条の2及び78条の2は,破産免責制度の根幹に反するとともに生活保護利用者の権利を侵害するものであるから削除されるべきである。
2 後発(ジェネリック)医薬品による給付を原則とすることの問題
(1)生活保護利用者に対する後発医薬品処方を「強制」化する経緯
平成20年4月1日付厚生労働省保護課長通知は,「福祉事務所が被保護者に対して後発医薬品を選択するよう求める」のを「基本原則」としたが,生活保護利用者に対する不当な差別であるとの強い批判を浴び,わずか1カ月後の同年4月30日に撤回された。
平成25年5月16日付同省保護課長通知「生活保護の医療扶助における後発医薬品の取扱いについて」は,処方医が銘柄名処方を行っている場合でも薬局の判断で後発品の処方を原則とした。
平成25年12月13日(平成26年1月1日施行),前回の生活保護法「改正」にあたり,
「前項に規定する医療の給付のうち,医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(略)を使用することができると認めたものについては,被保護者に対し,可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする。」
という法34条3項が新設された。
そして,今回の「改正」法案34条3項は,
「前項に規定する医療の給付のうち,医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(略)を使用することができると認めたものについては,原則として,後発医薬品によりその給付を行うものとする。」
として,努力義務を原則規定に改めた。
このように,生活保護利用者に対して後発医薬品の利用を強制する契機が一貫して強められてきた。その結果,後発医薬品の使用割合は,次のとおり,医療全体に比して生活保護利用者の方が明らかに高くなってきている。

(2)後発医薬品とは
後発医薬品とは,「物質特許」が切れた医薬品を他の製薬会社が製造又は供給するものという。薬効は先発医薬品と同じとされるが、開発に費用がかからない分安価である。
ただし、薬の特許には,物質本体の「物質特許」のほか,添加物に関する「製法特許」,剤形に関する「製造特許」があるため,主成分が同じでも添加物や剤形が変わると,見た目,味,溶け方が変わるため,薬効が異なると感じたり不安に感じる患者もいる。日本ジェネリック製薬協会のHP(「ジェネリック医薬品に不安・疑問のある方へ」)でも添加剤の違いでアレルギー反応を起こす可能性が指摘されている。
(3)生活保護利用者に対してだけ後発医薬品の使用を原則化することの問題点
世界医師会総会が1981年に採択した「患者の権利に関するリスボン宣言」は,「すべての人は,差別なしに適切な医療を受ける権利を有する」,「患者は,民間,公的部門を問わず,担当の医師,病院,あるいは保健サービス機関を自由に選択し,また変更する権利を有する」,「患者は、自分自身に関わる自由な決定を行うための自己決定の権利を有する」として,患者には「良質の医療を受ける権利」,「選択の自由の権利」,「自己決定の権利」があることを謳っている。そして,わが国も1979年に批准した国際人権規約(経済的,社会的,文化的権利に関する国際規約,以下「社会権規約」という。)12条が「到達可能な高水準の身体及び精神の健康を享受する権利」を保障していることからすれば,リスボン宣言が述べる上記諸権利は,わが国においても憲法13条及び25条の内実として保障されているものと解すべきである。
こうした考え方を背景とし,平成22年3月30日社援発0330第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知も,「生活保護法による医療扶助における指定医療機関の診療方針及び診療報酬については,国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例によ」るとして,生活保護の医療扶助の水準については一般市民が利用する国民健康保険と同水準を保障するものとしている。
しかるに,「医師が医学的知見に基づき(略)使用することができる」と認めさえすれば,患者本人の意思に反していても後発医薬品の使用を原則とすることは,生活保護利用者の「選択の自由の権利」及び「自己決定の権利」を侵害するものであって,憲法13条,25条及び社会権規約12条に違反する。
また,薬効が先発医薬品と同じで患者に不利益がなく医療費削減にも資するというのが理由であれば,国民市民全員に後発医薬品の使用を義務付けるのがスジである。にもかかわらず,生活保護利用者についてだけ後発医薬品の使用を原則化するのは,明らかに不合理な差別であって生活保護利用者の「差別なく医療を受ける権利」を侵害するものであり,法の下の平等を定める憲法14条,25条及び社会権規約12条に違反する。こうした取扱いは,生活保護利用者に対しても差別なく一般市民と同水準の医療を保障するという従来の考え方を大きく転換し,生活保護利用者に対する劣等処遇を容認することにつながるものであって到底許されない。
3 「薬局の一元化」について
厚生労働省は,2018年3月2日付生活保護関係係長会議において,「被保護者が複数の処方せんを一つの薬局に持参することにより,(略)薬剤師が重複処方等について医師に情報提供を行うことは,重複調剤の適正化や被保護者の健康管理に資するとともに,医療扶助の適正化効果も見込まれる。」として,平成29年度に実施したモデル事業を踏まえて,「被保護者が処方せんを持参する薬局をできる限り一か所に」する事業を全国で推進したいとしている(同会議資料「Ⅱ一般事項(文章編資料)」45頁)。
しかしながら,生活保護利用者の中には,精神科と皮膚科と内科といった複数の医療機関を受診している者も少なくない。当然のことながら,精神科クリニックの近くの薬局には精神科に関する薬が,皮膚科クリニックの近くの薬局には皮膚科に関する薬が中心に置かれており,すべての薬局においてすべての薬が万遍なく取り揃えられているわけではない。利用する薬局を一元化されれば,処方薬が置かれていない可能性もあるし,受診した医療機関とは異なる場所にある薬局までわざわざ移動しなければならない。通院交通費の支給制度はあっても薬局に行くための交通費を支給する制度はないことからすれば,通院や服薬自体を抑制する事態の発生が容易に想定され,これは生活保護利用の患者の生命や健康を害することにつながる。
厚生労働省は,「重複処方・重複調剤の適正化」と「医療扶助の適正化(医療扶助費の抑制)」を根拠として挙げる。しかし,「重複処方・重複調剤」はごく一部の病理現象であり,これが蔓延しているというデータは何ら存在しない。レセプト等の事後的チェックで個別に是正していくことが十分に可能であることからすれば,真の意図が「医療扶助の適正化(医療扶助費の抑制)」にあることが明らかである。
医療費抑制が目的であれば,国民市民一般について利用できる薬局を一か所に制限することがスジであるが,人権保障の観点からそのようなことは許されるはずがない。にもかかわらず,生活保護利用者についてのみ,このような事業を全国展開しようとすることは,生活保護利用者の「差別なしに適切な医療を受ける権利」,「選択の自由の権利」及び「自己決定の権利」を侵害することが明らかである。かかる事業は憲法13条,25条及び社会権規約12条に明確に違反するものであって断じて容認できない。
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