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 福島市は、奨学金収入認定除外事件の敗訴判決確定後も現地弁護団・支援の会との話し合い自体を拒否しているということです。その後、不正受給徴収金を本人の同意ないまま保護費から天引き徴収している問題なども生じていることから、当会は、本日福島市に対して、以下の公開質問状を送付しました。
 当会は、いただいた回答の分析結果もふまえて、同市と意見交換をしていきたいと考えています。






                           
2018年8月8日


生活保護行政に関する公開質問状



福島市長 木幡 浩 殿

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜

(連絡先)530‐0047  大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
弁護士 小久保 哲郎


 当会は,弁護士,司法書士,研究者,ケースワーカー,生活保護利用当事者,その支援者等で構成され,生活保護制度の違法な運用を是正するとともに同制度の改悪を許さず,生活保護法をはじめとする社会保障制度の充実を図ることを目的として活動している市民団体です。
 今般,福島市で発生した奨学金収入認定事件について以下のとおり,意見を申し述べるとともに,質問および資料提供の要請をいたします。御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが,2018年9月10日(月)までに上記の連絡先宛にご回答いただきますようよろしくお願い致します。
 また,いただいた回答をふまえて意見交換の場をお持ちしたいので,2018年10月12日(金)午後に貴市市役所において懇談の場を設定していただきますようお願いいたします。
 なお,本公開質問状及び貴市のご回答ご対応内容はすべて公開いたしますので,予めご承知おき願います。
 
第1 貴市の生活保護行政に関する疑問点
1 奨学金収入認定事件について
 2014年4月に,生活保護世帯の高校生が支給を受けた給付型奨学金について,収入認定除外についての調査検討を行わず,一方的に収入認定を行い,生活保護費を減額した事件(以下,「本事件」といいます)が発生し,審査請求・再審査請求が行われるとともに,福島地方裁判所に対して国家賠償請求の訴訟が提起されました。再審査請求において,当該生活保護減額処分は取り消され,裁判所は,2018年1月16日に当該処分は違法であると認定し,当事者親子に10万円の慰謝料を認める判決が言い渡され,確定しました。
 しかし,貴市は,市長が「裁判の結果を重く受け止めております。」等とマスコミに公表するにとどまり,謝罪の記者会見もなく,当該事件が起きた原因究明,再発防止策の検証結果の公表も行わないばかりか,支援団体との懇談も拒否し続けていると伺っています。本事件の支援団体evergreen project及び弁護団は,判決を得た後も,貴殿に対する申入れ,スタンディング,署名活動(奨学金については自立更生計画書の提出を要しないで収入認定除外すること,本事件につい市民との対話の場を設定すること又は検証委員会を設立して検証結果を公表すること要請する内容)等の活動を行ってきたということですが,貴殿は「意見として承ります」「話し合いの場につきましては,こうした個別具体の対応には馴染まないものと考えていることから,相談をとおして市民一人一人に寄り添った対応を行って参りたいと考えております。」等と回答し,対話を拒否しており,当該事件は完全解決に至っていない状況とお聞きしています。
 支援団体と直ちに同一の見解に立つことが困難であるとしても,対話の場を持つこと自体を拒否することは行政機関として信じがたい対応と言わざるを得ません。

 2 その他の問題点について
 貴市の生活保護行政についての問題はこの事件に限られず,最近では生活保護法78条返還決定を受けた生活保護利用者が,個別に天引きに同意した覚えもないのに,保護費から天引き徴収されたケースが複数件報告され,63条返還決定についても同様のケースがあることが報告されているといいます。
 また,貴市HPの「生活保護制度について」に生活保護制度に関する実質的な説明が全くなく,生活保護の相談又は申請者に配布されている「生活保護のあらまし」にも,以下に指摘するとおり,誤解を招きかねない記載が多々見受けられます。

 3 まとめ
 こうした事実経過からすると,奨学金収入認定事件が発生した背景には,貴市の生活保護行政が抱える組織的構造的な問題があるのではないかとの疑念が生じます。そして,その組織的構造的な問題が是正されないままでは,今後も同種の事件が発生し,貴市の生活保護利用者をはじめとする生活困窮者の権利侵害が生じるおそれがあります。
そこで,当会は,貴市に対し,奨学金収入認定事件についてなぜ収入認定除外について事前の調査検討を全くすることなく奨学金を収入認定することに至ったのか,この事件以外に保護行政の歪みはないのか等について,調査を実施したいと考えております。
 当会は,今回の事件の背景に何があるのか,貴市における生活保護利用者の憲法上の権利を実現するために何が必要か,を貴市とともに考えたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。

第2 質問事項
1 貴市の市民団体等との対話の姿勢について
(1)貴殿は,2つの市政運営方針の1つめに「開かれた市政」を掲げ,「市民の皆さまへの情報開示と対話によるコミュニケーションを大事にして,その思いを政策に反映させてまいります。」としていますが,市民団体等からの対話の要請があった場合,どのような手順や姿勢で臨むこととしていますか。協議の要綱の有無及び内容を明らかにしてください。

(2)奨学金収入認定事件の支援団体及び弁護団が再三協議の場を求めたにもかかわらず,協議の場を持つこと自体を拒否された理由は何ですか。
 支援団体側が貴市の生活保護行政のあり方にかかわる問題であると考えても,貴市がそう考えなければ,協議の場を持たないことも正当化されるものとお考えでしょうか。

2 奨学金収入認定事件について
(1)なぜ収入認定除外について事前の調査検討を全くすることなく奨学金を収入認定することに至ったのか,その具体的な経過を明らかにしてください。

(2)再審査請求における取消裁決,福島地方裁判所における国家賠償認容判決を受けて,奨学金等の収入認定に関して具体的に実務運用を改めた点があればご教示ください。実務運用に変更がないとすれば,その理由をご教示ください。

(3)上記再審査請求における取消裁決の前後で,貴市において給付型奨学金を受けた子どものいる世帯は,それぞれ何世帯ありましたか(わかる範囲でお答えください)。それぞれの世帯について,本来行うべき収入認定除外の対応(又は謝罪その他の事後的是正)はどのように行いましたか。

(4)大阪府堺市が行っているように,学齢期の子どもがいる全ての生活保護世帯に対して,奨学金やアルバイト等の収入認定除などについて積極的に周知徹底すべきと考えますが,そのような取り組みを行う予定はありますか。予定がないとすれば,その理由をご教示ください。
[参照]生活保護世帯の中高生向け未来応援BOOK「ココから!」(堺市HP)

(5)今後,給付型奨学金を受けた世帯から収入申告があった場合に,自立更生計画書の提出を求める予定ですか。

(6)自立更生計画書の提出を求める場合,その記載方法等について誰が具体的にどのような説明を行うことになりますか。

(7)自立更生計画書の提出を求める場合,その裏付け資料としてどのような資料をどの程度求める予定ですか。

(8)当事者からの申告又は自立更生計画書提出から,どれくらいの期間で収入認定除外するか否かの回答を行うことになりますか。また,回答は口頭,書面その他どのような方法で行いますか。

3 貴市の「生活保護制度のあらまし」について
 貴市の「生活保護制度のあらまし」には,下記のとおり,誤解を招きかねない記載が多々あります。「保護のしおり」を全面改定した神奈川県小田原市のように,誤解を招かない記載に改める必要があると考えますが,その予定はありますか。仮に,その予定がないとすれば,その理由を下記の記載内容の各項目ごとに明らかにしてください。
[参照]神奈川県小田原市「保護のしおり」(同市HP「生活保護について」。改定前のしおりは,生活保護行政のあり方検討会のページに掲載されています)

(1)生活保護制度について,憲法25条に基づく権利であるとの明示がありません(生活保護のあらまし1頁)。

(2)「一日も早く自分の力で生活できるよう援助する制度です」の「一日も早く」との記載(同1頁)は,経済的自立だけを考慮した記載であり,自立には,生活保護を利用しながらの「社会生活自立」「日常生活自立」もあることを明記すべきです。

(3)「7 生業扶助」(同1頁)について,高校生の就学費用が明示されていません。

(4)「生活保護は,次のように活用できる能力や資産などをすべて活用したあとに,はじめて適用されるものです。」との記載(同2頁~3頁)は,これが保護適用の前提要件であるとの誤解を招きます。

(5)田畑,山林及び原野などについては「現在活用していない資産は,処分して生活して生活費にあててください。」という記載(同3頁)には,居住用不動産が原則保有可能であるとの記載がなく不親切です。

(6)その他生活必需品以外のものについて,「生命保険,自動車…は処分して生活費にあててください。」(同3頁)とありますが,一定の生命保険や学資保険については保有可能ですので,誤った記載です。自動車についても,通勤や通院のための保有が認められる場合があることを明記する必要があります。

(7)「扶養義務者からの援助」(同4頁)については,「よく相談してできる限りの援助をお願いしてください。」と本人が直接扶養の依頼をする必要があるとの記載となっており,誤っています。

(8)「生活保護を受けた場合には」との記載(同4頁)の中に,一時扶助,特に医療移送費が支給できることの記載がありません。相談の前提として,説明されるべき事項です。また,高校生の就労収入について,未成年控除や収入認定除外される場合の記載がありません。

(9)「生活の相談ごとは近くの民生委員や福祉事務所へ」(同6頁)の福祉事務所についての説明の中に,守秘義務があることが明示されていません。

4 徴収金の保護費からの天引きについて
(1)生活保護法78条返還決定を受けた保護利用者について,貴市が生活保護法78条の2が定める要件(本人の申出及び生計を維持できると認める場合)に反して,2018年4月から6月にかけて月3万円を天引きしたことについて,同保護利用者に対してどのような影響を与えたと考えていますか。また、そのような運用が違法であるとの認識はありますか。

(2)上記以外に貴市が生活保護法78条返還決定をした保護利用者に対して,個別の天引き同意のないまま生活保護費からの天引き徴収を行ったことはありますか。ある場合には,過去3年間の各件数をご回答ください。また、どのような条件を満たした場合に天引きを行いましたか。

(3)生活保護法63条返還決定をした保護利用者に対して,生活保護費からの天引き徴収を行ったことはありますか。ある場合には,過去3年間の各件数をご回答ください。また、どのような条件を満たした場合に天引きを行いましたか。

5 生活保護行政全般について
貴市における直近3年間の以下のデータ及び資料をご提供ください。
(1) 生活保護行政全般
① 保護費総額
② 被保護世帯数
③ 被保護人員数
④ 保護率(③÷市人口)
⑤ 高齢,障害・傷病,母子,その他世帯の各割合
⑥ 相談件数
⑦ 申請件数
⑧ 申請率(⑦÷⑥)
⑨ 開始件数
⑩ 開始率(⑨÷⑥)
⑪ 申請から14日以内に決定した件数,30日以内に決定した件数,それ以上要した件数
⑫ 文書による指導指示件数,それに基づく停廃止処分の件数
⑬ 指導理由の内訳(例:自動車の処分)及び内訳別件数
⑭ 廃止件数
⑮ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
特に,「辞退」については,辞退理由及び世帯類型別の内訳及び内訳別件数。また,「市外転居」については,その転出先自治体の内訳及び内訳別件数。

(2)職員体制について
 ① 生活保護査察指導員,同ケースワーカーの各人数
 ② ①のうち社会福祉主事の任用資格取得者の人数,社会福祉士,精神
保健福祉士,臨床心理士の各資格取得者の人数
 ③ ①の年齢別,在職年数別人数の内訳,平均在職年数,平均年齢
 ④ ケースワーカー一人あたりの持ちケース数
 ⑤ 貴市職員全体の男女比率と貴市の生活保護担当部署職員の男女比率
 ⑥ 生活保護担当部署職員に対して実施した研修の具体的な内容

(3)生活保護行政の運営に関する書面
① 生活保護実務運用のための年度別生活保護運営方針または計画書面
② 県の監査における指摘事項書面及び県に対する回答書面
③ 各種自立支援プログラムの実施要領等書面

以 上





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