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基準引き下げに対して6000件を超える審査請求が提起されたことをふまえ、厚生労働省に要望書を提出しました。




2019年1月15日

厚生労働大臣 根本 匠 殿


いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護基準引き下げにNO!全国争訟ネット
             生活保護問題対策全国会議


生活保護基準引き下げの撤回等を求める要望書



第1 要望の趣旨

1 根拠のない一連の生活保護基準の引き下げを直ちに撤回するとともに,インフレを考慮して,むしろ引き上げてください。
2 生活保護基準部会が設置を強く求めた新たな検証手法の検討・開発を継続的に行う体制を可及的速やかに整備してください。
3 猛暑に備えて夏季加算を創設してください。



第2 要望の理由
1 度重なる生活保護基準引き下げとこれに対する集団審査請求

 国は,生活保護基準を3年かけて平均1.5%,最大5%引き下げ,年間160億円(国費のみ)削減する方針を決め,2018年10月から引き下げを開始しました。
2013年からの史上最大(平均6.5%,最大10%)の生活扶助基準の引き下げに対し,全国29都道府県で1000名を超える原告が違憲訴訟を闘っているさなかのさらなる引き下げに対して,生活保護利用当事者からは,「これ以上何を切り詰めればよいのか」,「いつまで引き下げが続くのか」,「国から死ねと言われている気がする」といった悲痛な声が寄せられています。
そして,この度の生活保護基準引き下げに対しては,現時点で私たちが把握する限りで6000件を超える審査請求(不服申立て)が提起されています。

2 今般の生活保護基準引き下げに根拠がないこと

(1)下位10%の最貧困層との比較は際限ない引き下げを招く

今般の生活保護基準引き下げは,第1・十分位(下位10%)の一般低所得世帯の消費実態に生活保護基準を合わせる形で行われました。しかし,生活保護の「捕捉率」(生活保護の利用要件を満たす人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割程度といわれ,非常に低いわが国では,第1・十分位層の中には,生活保護基準以下の生活をしている人々が多く含まれています。
 こうした最貧困層の生活水準と比較すれば際限ない生活保護基準の引き下げを招くことが必定です。国には,生活保護基準の引き下げではなく,生活保護基準以下の生活を強いられている最貧困層の生活水準の底上げこそが求められているはずです。



(2)生活保護基準部会も引き下げを是とはしていない

生活保護基準の見直しのための検証作業を行った社会保障審議会・生活保護基準部会も,第1・十分位層の消費水準に生活保護基準を合わせることを是とはしていません。
 すなわち,同部会の報告書には,「今回は,夫婦子1人世帯について,生活扶助基準額と年収階級第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであり,そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでには至らなかった。」(24頁),「今回の検証においては,…夫婦子1人世帯では,展開により機械的に得られる基準額が年収階級第3・五分位の生活扶助相当支出額の6割を超える見込みである一方,高齢世帯では,この割合が5割台となる見込みであ」る(27頁)と記載されています。
 現行の生活扶助基準の改定方式は,一般国民の消費実態の6割以上の水準で生活扶助基準との均衡を図る「水準均衡方式」です。上記の基準部会報告書の指摘は,一般国民と措定される第3・五分位の消費水準と比較した生活扶助基準と第1・十分位の消費水準が,夫婦子1人世帯については,いずれも6割を超えて均衡している(つまり,現行の保護基準が妥当である)一方で,高齢単身世帯については,いずれも5割程度にとどまっている(つまり,現行の保護基準が低すぎるし,保護基準を第1・十分位に合わせることも適当ではない)ということを意味しています。
 そして,むしろ,基準部会報告書は,「単に消費水準との均衡を図ることが最低生活保障水準を満たすものと言えるのか,水準均衡方式のあり方が問われる本質的な課題である」(24頁),「一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準をとらえていると,比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」(27頁)とまで述べて,第1十分位との安易な比較に警鐘を鳴らしているのです。



(3)デフレは考慮するがインフレは考慮しないご都合主義

2013年からの生活保護基準引き下げに際して,国は,「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」という学説上も実務上も前例のない特異な指数を用い,2008年から2011年にかけて4.78%の物価下落があったとし,同率の生活保護基準の引き下げの根拠としました。
 ところが,第34回基準部会資料4(11頁)に記載された試算によると,2011年から2016年にかけての「生活扶助相当CPI」は,5.2%上昇しています。2014年に消費増税対応で生活保護基準が2.9%増額されたことを考慮しても,2013年の時と一貫した考え方をとれば,生活保護基準を2.3%は引上げなければならないはずです。しかし,国は,今回は一切物価を考慮しませんでした。これは,首尾一貫性を全く欠く,「引き下げありき」のご都合主義というほかありません。
 現在,「毎月勤労統計」の不適切調査が問題となっていますが,「生活扶助相当CPI」問題は,それ以上に悪質な「統計の偽造・悪用」ともいうべき問題です。



3 新たな検証手法を開発するための継続的な体制整備の必要性

 生活保護基準部会は,その報告書において,「最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か,本質的な議論を行った上で,単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず,理論的根拠に基づいた複雑ではない検証手法を開発することが求められる」(28頁),「いずれにしても,新たな検証方法の開発に,早急かつ不断に取り組むために,データの収集・分析や新たな検証手法の検討を継続的に行う体制を厚生労働省として整備する必要があり,そのために,年次計画を立てて計画的かつ不断に検討を進めていくことを強く求めたい。」(29頁)と指摘しています。
 つまり,同部会は,2(2)で述べたとおり,低所得世帯との均衡のみでは絶対的な水準を割り込む危険があることから,新たな検証手法を開発するための継続的な体制を整備すべきことを繰り返し強く求めているのです。
 国が,こうした専門部会の強い要請を無視するとすれば,それは,専門家の部会を生活保護基準引き下げのために都合よく利用するだけという国の姿勢を露呈するものと言わざるを得ません。



4 夏季加算の創設を

 2018年7月26日付け「厚労省通知の改善・周知と夏季加算創設等を求める緊急要望書」でも述べたとおり,この間のあいつぐ生活保護基準の引き下げのため,生活保護利用者の多くは,エアコン等の家電製品の買替費用を貯蓄する余裕を失い,仮にエアコンが自宅にあったとしても,電気代を節約するためにほとんど使わないようにしています。
 毎年過酷さを増す猛暑の夏はすぐにやってきます。悲劇が起きる前に,国は,一連の生活保護基準引き下げを撤回して元に戻し,夏季加算を創設すべきです。



以 上





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