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精神保健福祉士養成課程から「生活保護制度」の科目を廃止する省令案に反対するパブリックコメント


 社会福祉士と精神保健福祉士の養成課程において共通科目とされていた「低所得者に対する支援と生活保護制度」を廃止する省令(案)に対するパブリックコメントが年末年始をはさんだ2019年12月20日から2020年1月18日まで募集されていました。
 社会福祉士については,専門科目としての「貧困に対する支援」が創設されますが,精神保健福祉士については,「貧困」や「生活保護」を体系的に扱う独立した科目はなくなろうとしています。
 当会議は,特に精神保健福祉士養成課程の変更が問題であると考え,以下のパブリックコメントを提出しました。

【意見の趣旨】
 精神保健福祉士養成課程から「低所得者に対する支援と生活保護制度」の科目を廃止することに反対する。生活保護制度の沿革・理念・実践的対応策等を体系的に習得し得る,独立した科目を継続または創設すべきである。

【意見の理由】
1 精神保健福祉士の支援対象者には生活困窮者が多い
 精神保健福祉士が支援の対象とする精神障がいのある人は,働くことに制約を受けるため生活に困窮している場合が非常に多い。
 その証左に例えば,生活保護入院患者総数11.4万人中,精神関係は4.8万人(42.5%)を占め(平成28年度被保護者調査),ホームレス状態の人のうち中軽度の知的障がい,アルコール依存症,うつ病等何らかの精神疾患の疑いのある人が41%を占めるとの調査もある(NPOてのはし2009年路上生活者調査)。

2 精神保健福祉士が職責を果たすためには生活保護に関する専門知識の習得が不可欠
 生活に困窮する精神障がいのある人は,仮に障害年金を受給できたとしても,それだけでは地域での居宅生活を維持することができない。
 残念ながら,今の日本では,生活保護制度に関する教育や周知は不十分で,誤解や偏見も根強くある。生活保護ケースワーカーの人員体制や専門性も脆弱で,未だに窓口での違法な「水際作戦」や,保護利用後も違法な指導指示等が後を絶たないのが現状である。
 こうした状況下で精神保健福祉士がその本来の職責を果たすためには,生活保護制度を必要とする人を確実に制度につなぐとともに,保護利用後も不当な扱いを受けることのないよう適切に支援することができるよう,生活保護制度に関する専門的知識を深く習得することが必要不可欠である。不当な福祉事務所の対応を前にして,単に支援対象者に「寄り添う」うだけでなく,侵害されたその権利の実現・回復のため共に闘う術を身につけなければ,ソーシャルワーカーとしての職責を果たしたことにはならないからである。

3 「細切れ」ではなく専門性のある教員による体系的教育が必要
 厚生労働省資料(「精神保健福祉士養成課程における教育内容等の見直し」)等によれば,「低所得者に対する支援と生活保護制度」(30時間)は,新科目である①社会保障論,②精神保健福祉士制度論,③ソーシャルワーク演習に「再構築」されるという。
 しかしながら,精神保健福祉士が2で述べた期待される専門性を身に着けるためには,生活保護制度について専門性のある教員が,制度の沿革,理念,諸原則をふまえ,実務上問題となり得る諸論点について,法律,通達,裁判例,裁決例を駆使した実践的対応法を体系的に教育する必要がある。3つの科目に「細切れ」に分解したのでは,教員の専門性の点でも体系的教育の点でも,こうした要請を満たすことは期待できない。
 また,大雑把な目安ではあるが,総時間を項目数で機械的に割っていくと,「低所得者に対する支援と生活保護制度」関連の項目は,上記①②科目の合計でわずか8.7時間にとどまる(下記※参照)。これに③の演習が加わるが,教員の裁量が広い演習においてどれほど貧困支援に時間が費やされるかは教員次第となるおそれが強い。
 したがって,現行30時間が大幅に減少し,教育時間の面でも希薄化することは避けられない。
※再編後の講義時間の概算
① 「社会保障論」(60時間)→うち生活保護関係は,60÷7÷7=1.2時間
【大項目(教育に含むべき事項)】⑥社会保障制度の体系(7項目中の1つ)
【中項目(想定される教育の例)】5生活保護制度の概要(7項目中の1つ)
② 「精神保健福祉制度論」(30時間)→うち低所得等支援は30÷4=7.5時間
【大項目(同上】④精神障害者の経済的支援に関する制度(4項目中の1つ)
【中項目(同上)】(4項目中の4つ〔全部〕)
1 生活保護制度と精神保健福祉士の役割
2 生活困窮者自立支援制度と精神保健福祉士の役割
3 低所得者対策と精神保健福祉士の役割
4 精神障害者の経済的支援制度に関する課題

4 まとめ
 当会議内の議論では,現状においても,社会福祉士と精神保健福祉士養成課程における生活保護制度に関する教育内容や専門知識の習得は必ずしも十分ではなく,実務に就いた後も,生活保護制度活用の必要性を理解するソーシャルワーカーは少数派であるとの哀しい指摘もあった。そのような中で生活保護制度に関して体系的に学ぶ独立した科目を廃止することは,この哀しい状況をより悪化させるであろう。
 「自助」「互助」が強調される「地域共生社会」が推進される中,目の前にいる生活に困窮する人が,本来生活保護を利用することができるのに,それに気づかずに手をこまねくだけのソーシャルワーカーがより一層増えるかもしれない。それは,支援対象者の「ウェルビーイング」はおろか,健康や生存そのものを害することにつながる。
 当会議は,精神保健福祉士が「真のソーシャルワーカー」として,その職責を十分に果たし得る資格であり続けることを強く期待する立場から,本意見を述べるものである。

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