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当会は、2020年4月20日、厚生労働大臣に対して、以下のとおり、生活保護利用者に支給される一律給付金の収入認定除外を求める要望書を提出しました。





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2020年4月20日


生活保護利用者に支給される一律給付金の
収入認定除外を求める要望書

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿
生活保護問題対策全国会議


第1 要望の趣旨
 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、政府は、国籍・所得を問わず住民基本台帳に記載されている全ての人を対象として、1人10万円の一律給付(以下「一律給付金」という。)を行う方針と報道されている。
 本年4月18日・19日に実施された「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも相談会」にも、「一律給付金10万円がすべて収入認定されてしまい、自分たちだけ支援から疎外されるのではないか」という、生活保護利用者からの不安の声が殺到したことをふまえ、当会議は、次のとおり要望する。

1 定額給付金支給の際の取扱いに準じて、一律収入認定除外する処理基準を設定すべきである。

2 少なくとも、各種大規模災害の際の取扱いに準じて、包括的な自立更生計画計上による収入認定除外を認める扱いとすべきである。この場合、自立更生計画書の徴求を不要とする等の方法を示して、実施機関と生活保護利用者の事務負担の軽減を図るべきである。


第2 要望の理由
1 一律収入認定除外する取扱いとすべきである

(1) いわゆるリーマン・ショックを受けて2009年3月以降に支給された定額給付金について、国は、「景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行うことを目的」として給付されるものであることにかんがみ、収入として認定しない取扱いとし、地方自治法245条の9の規定による処理基準として通知した(平成21年3月9日付厚生労働省社会・援護局保護課長「定額給付金及び子育て応援特別手当の生活保護法上の取扱いについて」)。
 今般の一律給付金の制度設計の詳細は不明ではあるが、所得の高低や収入の減少を条件としない、全ての住民の生活不安に対処するための緊急経済対策という基本的な性格を有しているという点において、定額給付金と共通するものといえる。
 また、生活保護世帯の多くは感染リスクの高い高齢世帯(55%)や障害・傷病世帯(25%)等であって、マスク・消毒液等の防疫・衛生用品購入や免疫力維持のための食生活改善等の必要性は一般世帯よりも高い。かかる高い感染リスクを抱えて日々怯え続けている状態の精神的負荷は一般世帯よりも大きく、そのストレスを軽減させるための特別の配慮を要する。また、自宅にとどまらなければならないことによる水道光熱費の増加、子どものいる世帯については、学校の休校による食費や雑費の増加等によって、生活費の増加は低所得者、とりわけ生活保護利用世帯にとってより大きな負担となっている。さらに、生活保護利用世帯のうち16%は働いているところ、こうした世帯は、勤労収入額に比例して一定額を収入認定額から控除する基礎控除(勤労控除)により、最低生活費よりも多い手取り収入を得ているが、今般の新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなり、手取り収入が現に減少している世帯も少なくない。しかも、こうした状況が相当長期間に及ぶことが見込まれることからすれば、本来は、これらの特別な需要に対応するため、生活扶助基準の引き上げ、あるいは特別基準の設定がされるべきところである。今回の一律給付金は、これのごく一部を補うものにすぎない。
 にもかかわらず、生活保護利用者についてだけ一律給付金を収入認定して事実上受給の機会を奪うのは、収入が減っていない年金生活者や高額所得者等との均衡・公平を著しく欠く差別的取扱いであって、一律給付金の制度趣旨にも反することが明らかである。
 したがって、生活保護利用者に支給される一律給付金については、定額給付金と同様に一律収入認定除外する取扱いとする処理基準を設定すべきである。

(2) なお、2項で述べる「包括的自立更生計画」の方法は、実施機関から生活保護利用者に対する周知・説明と自立更生計画書の提出・徴求という手続を要する。そのため、真面目に手続を行う実施機関にとっては膨大な事務負担を生じるし、それを厭う実施機関管内の生活保護利用者は自立更生計画を提出する機会を奪われて収入認定されてしまうという不利益を被る。実際、東日本大震災の際には、実施機関が周知・説明を怠り、多くの生活保護利用者が収入認定除外の機会を失う不利益を受けた。
実施機関の事務負担の軽減を図るとともに、不利益を受ける生活保護利用者が生じる不公平・不正義を回避するためには、一律収入認定除外する旨の処理基準を設定するのが最も簡便かつ確実であることが明らかである。

2 少なくとも包括的自立更生計画による収入認定除外を認めるべきである
(1)国は、東日本大震災の際に被災者が受ける義援金等について、保護の実施要領第8の3(3)オに従い、「当該被保護者世帯の自立更生のために当てられる額」を収入として認定しないこととするとともに、「第1次義援金のように、震災後、緊急的に配分(支給)される義援金等については、(略)一費目が低額で、かつ世帯員ごとに必要となる費目を個々に自立更生計画に計上することとすると被保護者の負担が大きくなることにかんがみ、費目・金額を積み上げずに包括的に一定額を自立更生に充てられるものとして自立更生計画に計上して差しつかえない」とした上で、「使途について確認する必要はない」と事実上一律の収入認定除外を認める柔軟な取扱いを指示した(平成23年5月2日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」)。
 この取り扱いは、熊本地震等においても準用されていることからすれば、個別の災害に関する通知ではなく、大規模災害の際の一般的な取扱いになっているものといえる(平成28年4月27日付「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」、平成30年9月26日付「平成30年北海道胆振東部地震による被災者の生活保護の取扱いについて」、令和元年10月17日付「令和元年台風19号による被災者の生活保護の取扱いについて」など)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000123911.pdf
 今般の一律給付金は、まさに「大規模災害」というべき新型コロナウイルス感染拡大に伴い一律支給されるものであり、数十万円単位の第1次義援金より金額も少ないことからすれば、少なくとも大規模災害の際の対応に準じて、金額・費目を積み上げない包括的自立更生計画に計上することで収入認定除外し、使途の確認も要しない取扱いをすべきである。

(2) また、1(2)でも述べたとおり、この方法には、実施機関の事務負担の増大等の問題がある。今後、新型コロナウイルスの影響が長期化するに伴い、生活保護利用者が増加し、実施機関の業務量も増えて繁忙を極めるのは必至である。
したがって、この方法を採用する場合には、実施機関の事務負担を軽減する見地からも、自立更生計画書の提出・徴求を必要とせず、口頭の確認で足る旨を併せて通知すべきである。仮に、自立更生計画書の提出・徴求を要するとするのであれば、例えば「防疫用品の購入、食生活改善等に要する費用10万円」と記載した簡易な自立更生計画書の書式を示して、実施機関と生活保護利用者の負担軽減を図るべきである。

以 上


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