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八尾市長に対し、「八尾市の母子餓死事件と生活保護行政に関する公開質問状」を出しました。




2020年9月7日


八尾市の母子餓死事件及び生活保護行政に関する
公開質問状


八尾市長 大松 桂右 殿
       
八尾市母子餓死事件調査団
共同代表 井上 英夫(金沢大学名誉教授)
同    尾藤 廣喜(生活保護問題対策全国会議代表幹事)
同    矢部あづさ(八尾社会保障推進協議会会長)
 
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局 弁護士 小久保 哲郎

 本年2月22日,貴市において,無職の母親(54)と長男(24)が餓死死体で発見されるという痛ましい事件が起きました。母親は(一時は長男も)生活保護を利用していたにもかかわらず,2019年12月26日と2020年2月5日の支給日に生活保護費を取りに来庁することなく,水道の給水が停止され,民間事業者であるケアマネージャーによって遺体が発見されるという経過は極めて異常です。
 そこで,私たちは,こうした悲劇を二度と起こさないためには,なぜこのような事件が起きたのか,その背景と原因を明らかにする必要があると考え,生活保護などの貧困問題に取り組む民間団体や個人で本調査団を結成しました。
 つきましては,今般,上記の母子餓死事件について以下のとおり,質問および資料提供の要請をいたします。御多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが,2020年9月30日までに上記の連絡先宛に書面でご回答いただけますようお願い致します。(いただいた回答をふまえて意見交換の場をお持ちいただきたいと考えております。)
 なお,本公開質問状及び貴市のご回答ご対応内容はすべて公開いたしますので,予めご承知おき願います。
 
第1 貴市で発生した母子餓死事件の事実経過について
1 当調査団の調査によると,貴市で発生した母子餓死事件の事実経過は別紙時系列表のとおりです。
別紙時系列表記載の事実経緯に誤りがあれば,具体的にご指摘ください。

2 新聞報道及び本年6月10日の貴市議会議事録によると,2019年7月5日以前にも母子が生活保護を利用していたこと,過去にも何回か長男を生活保護から外したことが推測されます。貴市における母子の生活保護の利用状況を明らかにして下さい。また,いつ,どのような理由で長男を生活保護から外しましたか。また,その間の長男の生活実態をどのように把握していましたか。

3 2019年3月,5月の料金滞納による給水停止や,同月末の家賃滞納による退去の原因はどのように把握していましたか。母子2人が母親だけの生活保護費で生活していたことが原因となっていたのではありませんか。

4 母親が,同年7月5日,最後の居住地へ転居した際,貴市は転居費用を支給したのですか。

5 上記転居直前,母子が公園で寝泊まりしているところを警察に保護されたことが生活保護利用の契機であったのなら,なぜ母子2人ではなく母親だけの単身世帯として生活保護を再開し,転居費用を支給したのですか。長男の居所,収入についてはどのように聞き取り,把握しておられましたか。

6 生活保護再開後,貴市では母親から毎月2万円の返還金の回収を始めたということですが,何の費用の返還金だったのですか。また,返還決定にあたっての生活保護法上の根拠条文は何条ですか。また,何を根拠に毎月2万円という返還金額を決めたのですか。厚労省が示す返還金の目安額(単身世帯5000円,複数世帯1万円)に照らしても高すぎるとは考えませんでしたか。

7 生活保護再開後,母親一人の生活保護費で母子2人が生活していたと考えられますが,その事実は把握していましたか。把握していないとすれば,この間,長男はどこでどのように生活しているか,母親に質問しましたか。貴市ではどのように認識していましたか。

8 保護再開後,母親は来庁して生活保護費を受領していたとのことですが,支給日に遅れて来庁することはありましたか。来庁した際に,最低生活費より月2万円低い生活費でどのように生活しているか,問題は起きていないか,聞き取りや話し合いをしましたか。

9 同年12月26日,1月分の生活保護費の受け取りに来庁しなかったということですが,生活保護費以外に収入の当てがなく,年始年末を過ごすための預貯金があるはずもない(同年7月に保護再開されたばかりで月2万円の返還を行っていれば預貯金する余裕などないと考えます)母親がこれを受け取りに来ないというのは異常事態です。年末年始を挟むこともあり,不測の事態をも想定して,連絡票投函に留まらず家主・警察等とも調整するなどして住居に踏み込んで安否確認するのが,母親の生活と生存を守る立場である福祉事務所の通常の対応と考えられます。なぜ,そのような対応をとらなかったのですか。
 また,年内最終の開庁日である翌12月27日には何らかの対応をとられましたか。とらなかったとすれば,その理由も教えてください。
本年6月10日の貴市議会での議事録では,法28条の立入調査権について地域福祉部長は,「住居の中に立ち入る権限まであるものではないと認識しております」と答弁されていますがその根拠をお示し下さい。

10 2020年2月5日,2月分の生活保護費の受取に来庁しなかった際にも,上記同様の安否確認の対応をとらず,2月10日になって自宅訪問して投函するにとどめたのは何故ですか。

11 同年2月18日,1月1日に遡及して「失踪」を理由に保護廃止したということですが,生活保護法上「失踪」という廃止理由はありません。本年6月10日の貴市議会議事録では,地域福祉部長は,「保護をしている場合に,ケースワーカー等から必要な連絡をしても,連絡がとれない状況が続いて,保護費を受け取られない状況」と答弁していますが,その根拠をお示し下さい。保護廃止の法律上の根拠は生活保護法何条ですか。また「失踪」を理由とした保護廃止をするにあたって,失踪の事実をどのように確認しましたか。
 仮に「転出」による実施責任の消滅(法19条)ということであれば,「転出」の事実を具体的にどのようにして確認したのですか。
また,保護廃止日を「1月1日」とした根拠は何ですか。

第2 貴市における生活保護行政全般について
貴市における過去5年間の以下のデータをご提供ください。
(下線部についても漏れなくご回答ください)
1 生活保護行政全般
① 保護費総額
② 被保護世帯数
③ 被保護人員数
④ 保護率(③÷市人口)
⑤ 高齢,障害・傷病,母子,その他世帯の各割合
⑥ 相談件数
⑦ 申請件数
⑧ 申請率(⑦÷⑥)
⑨ 開始件数
⑩ 開始率(⑨÷⑥)
⑪ 申請から14日以内に決定した件数,30日以内に決定した件数,それ以上
要した件数
⑫ 文書による指導指示件数,それに基づく停廃止処分の件数
⑬ 廃止件数
⑭ 廃止理由の内訳及び内訳別件数
「その他」が異常に多いのは何故か。「その他」にはどのような事由がある
のかと,それぞれの件数(特に「その他」中の「辞退」の件数)。

2 職員体制について
① 生活保護査察指導員,同ケースワーカーの各人数
② ①のうち社会福祉主事,社会福祉士,精神保健福祉士,臨床心理士の各資格取得者の人数
③ ①の年齢別,在職年数別人数の内訳,平均在職年数,平均年齢
④ ケースワーカー一人あたりの持ちケース数
⑤ 貴市職員全体の男女比率と貴市の生活保護担当部署職員の男女比率
⑥ 生活保護担当部署職員に対して実施した研修の具体的な内容

3 貴市において作成している文書資料類
以下の資料類があれば,過去5年分について,開示,ご提供ください。
① 生活保護実務運用のための年度別生活保護運営方針または計画書面
② 府の監査における指摘事項書面及び府に対する回答書面
③ 各種自立支援プログラムの実施要領等書面。
④ 「失踪」廃止を含む保護廃止に至る手順等を定めたプログラム等があれば当該書面

以 上


八尾市
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