
アップが遅くなりましたが、公開質問状を10月11日に各党に発出しました。
2021(令和3)年10月11日
●●党 御中
生活保護制度に関する公開質問状
生活保護問題対策全国会議
いのちのとりで裁判全国アクション
いのちのとりで裁判全国アクション
謹啓 晩秋の候、貴党にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
また、日頃よりの、国政・地方を通じた国民生活向上のためのご尽力に心より敬意を表します。
さて、来る10月31日に投開票となる衆議院総選挙には、貴党も候補者を擁立して国民の信を問われることと存じ上げます。
私たちは、生活保護の改善・充実を求めて活動している市民団体です。
コロナ禍が長期化で生活に困窮する方々が増える中、生活保護制度が果たすべき役割が高まっています。しかし、根強い誤解や偏見等のため、被保護実人員は、2015年3月の217.4万人をピークとして2021年6月の203.9万人までコロナ禍に入ってからも減り続け、制度本来の役割を発揮できていません。
そこで、今回の総選挙に際して国民が政党を選択するための判断材料として提供すべく、別紙の公開質問事項にご回答いただき、生活保護制度に関する貴党のお考えをうかがいたいと思います。
このアンケートは、貴党をはじめとする政党各位に送付させていただき、その結果は、私たちのウェブサイト(http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/、https://inochinotoride.org/)に掲載させていただくほか、報道機関各位にもお知らせをしたいと考えています。
つきましては、ご多忙の折誠に恐縮ですが、本年10月21日(できる限り10月18日)までに、ご返送(メールまたはファックス)の上、ご回答をいただければ幸いです。
書簡にて失礼ながら、まずはご挨拶までにて失礼します。
謹白
生活保護制度に関する公開質問事項及び回答書
生活保護制度に関する以下の質問事項について、貴党のお考えをご回答ください。なお、各論点についての【私たちの意見】をご参照のうえ、理由欄については400字程度を上限として、ご回答をいただけると幸甚に存じます。
質問1 貧困率の改善
我が国の相対的貧困率は2018年の時点で15.4%となっていますが、これが2030年までに半減されるよう、改善に取り組むべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
SDGsの17の目標のうち1番目が「貧困をなくそう」で、そのターゲットの1つとして「2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる」とされています。当会としても、この目標を達成すべきだと考えます。
質問2-1 生活保護の捕捉率向上
日本の生活保護の捕捉率(本来なら生活保護を受けることができる人のうち、実際に生活保護利用に至っている人の割合)は2~3割に留まり、利用できない状態の方が多くいると考えられています。生活保護の「捕捉率」を上げるべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
生活保護の捕捉率が低いということは、セーフティネットに穴が開いているということを意味します。その原因となっている生活保護制度へのスティグマを払拭するために名称を変更し(「生活保障法」)、捕捉率の調査や制度の啓発・教育を国・自治体に義務づけるなどの施策を講じるべきです。
<参考>
日弁連 生活保護法改正要綱案(生活保障法案)
190520_seikatsu_hosyo.pdf (nichibenren.or.jp)
質問2-2 水際作戦の根絶
生活困窮者が生活保護の申請を行った場合に、窓口で違法な申請拒絶(いわゆる「水際作戦」)を受けることがあります。このような「水際作戦」を根絶するための施策を講じるべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
申請権の侵害が違法であることや、申請書式を福祉事務所に備え置くことなどを生活保護法に規定し、生活保護申請の違法な拒絶を行わせないようにすべきです。
質問3-1 ケースワーカーの増員と専門性確保
生活保護制度の運用の問題の背景には、現場で働くケースワーカーの人員の不足や専門性の不足が要因の1つとされています。福祉事務所に配置されるケースワーカーの人員を増員し、福祉専門職の採用を促すような施策を講じるべきと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
福祉事務所への人員の配置について規定する社会福祉法を改正し、①ケースワーカー1人あたりの担当数を「法定数」とし、その数を郡部40、都市部60とする、②ケースワーカーの資格を社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者を中心とし、社会福祉の専門知識を得るための研修を義務とする、ことが必要です。
質問3-2 ケースワーク業務の外部委託
現行法制度上、外部委託が許されない「保護の決定・実施」(公権力の行使)と不可分一体であるケースワーク業務(家庭訪問、面接、調査、指導等)について、厚生労働省は、「外部委託を可能とすることについて検討し、令和3年度中に結論を得る」としています。外部委託を可能とする方向での法改正を行うべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
現行法は、「保護の決定及び実施」業務とケースワーク業務について、表裏一体のパッケージとして、専門性ある公務員が一元的に担うことで、国家による生存権保障(憲法25条)を実現しようとしており、外部委託を可能とする法改正は許されません。10年以上にわたってケースワーク業務を違法に外部委託してきた東京都・中野区では、受託NPO職員による人権侵害、偽装請負、事業費中抜き等の問題が生じており、外部委託の解禁によって同種の事態が全国化するおそれがあります。法
<参考>
厚労省保護課令和3年3月31日付事務連絡
http://665257b062be733.lolipop.jp/210827shiryo02.pdf
日弁連2021年8月19日「生活保護のケースワーク業務の外部委託化に反対する意見書」
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2021/210819_3.html
当会議2021年8月27日「中野区の生活保護行政の改善を求める要望書」
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-424.html
質問4 生活保護基準を2013年の段階に戻す
生活保護基準については2013年(生活扶助)、2015年(住宅扶助、冬季加算)、2018年(生活扶助、母子加算等)と3回にわたる引下げが行われ、生活保護を利用する方々の生活は厳しさを増しています。生活保護基準を2013年時点の水準に戻すべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
これまで行われた生活保護基準の引下げは、従来の検討方式(水準均衡方式)から外れ、専門家の意見を聞かずに引下げありきの姿勢で行われるなど問題のあるものでした。そのため、引下げを違法とする判決(大阪地裁2021年2月22日判決)も出されています。
生活保護を利用する方々の苦しい生活状況を聞き、引下げ前の2013年時点の水準まで生活保護基準を戻すべきです。
<参考>
リーフレット「知っていますか?いのちのとりで裁判」
https://inochinotoride.org/file/2002_aboutinochinotoride.pdf
質問4-2 級地の見直し
生活保護基準は最も高い1級地の1から最も低い3級地の2まで6段階で設定されていますが、専門家の審議会(社会保障審議会・生活保護基準部会)での検討と切り離して、これを統合する動きが見られます。どのように級地を見直すかについては、専門家の審議会による専門的な検討をふまえるべきと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
級地区分の統合によって、生活保護利用者の多い、都市部の保護費が下がることが予想されます。級地区分と生活保護基準は直結しており、専門家による慎重な検討を経ることなく、厚労省と地方自治体との密室調整で決めることは許されません。
<参考>
当会議2021年8月19日「更なる生活扶助基準の引き下げをもたらす『級地』の見直しに反対する緊急声明」
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-423.html
質問4-3 夏季加算の創設
生活保護制度では冬場の暖房費などに充てるための冬季加算が支給されています。しかし、夏にはそのような加算が無いことから、電気代を心配してエアコンを節約し、生命の危険に瀕するケースが後を絶ちません。近年の猛暑に対応するために、冷房費などに充てるための夏季加算の創設が必要だと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
夏にはエアコン利用のための電気代の増加などの需要が発生しており、それに対応するための夏季加算の創設が必要だと考えます。
質問5 一歩手前の困窮層への支援(一部扶助の単給化)
最低生活費を1円でも超えると一切の給付が受けられなくなる現状を改善するため、一部の扶助(住宅、教育、医療、生業)については、一歩手前の困窮層(例えば最低生活費の1.3倍未満)に単給できる(バラで受けられる)ようにすべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
最低生活費を超えると一切の給付が受けられなくなる一方、医療費等の自己負担が生じて却って生活が苦しくなる逆転現象を解消するために一部の扶助について単給化を認めるべきです。ただし、現行の最低生活費のままでの単給化は、最低生活費以下での生活保護利用につながるので、単給は最低生活費の少し上の困窮層に認めるべきです。
質問6 利用しやすい生活保護制度に
質問6-1 扶養照会の原則廃止(申請者の同意を要件に)
生活に困窮した方が生活保護制度の申請をするにあたって、扶養義務者に扶養照会(援助ができるかどうかの質問)がなされることになっていますが、扶養照会については、申請者の同意がある場合にのみ行うことができるという運用改正をすべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
生活保護を申請した方が持っているのは扶養請求権であり、扶養を求めるかどうかは申請者の意思で決まるものです。そのことからすれば、扶養照会についても申請者の同意がある場合に限って行うことができるように、厚労省の通知を改正すべきです。
質問6-2 自動車保有要件の緩和
現在、自動車については、原則として生活保護利用中の保有を認めない運用とされていますが、処分価値の乏しい自動車については生活用品としての保有を認めるなど、保有要件を緩和すべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
自動車の普及率が高まっていることを踏まえ、生活用品として自動車の保有を認めるよう、厚労省の通知を改正すべきです。また、自動車の維持管理費用(車検費用等)についても、社会福祉協議会からの借入れを行うことができるようにすべきです。
質問6-3 生活保護世帯の子どもの大学等への進学保障
現在の生活保護制度では、生活保護世帯の子どもが大学等に進学した場合、世帯分離(生活保護の適用において、世帯員としては扱わないこと)をすることになっており、当該世帯に対する保護費が減額され、進学の大きな支障になっています。大学生等の世帯内就学と就学等に必要な費用の収入認定除外を認めるなどして、進学保障をすべきだと思いますか。
1 思う
2 思わない
3 その他
〔理由〕
【私たちの意見】
子どもの教育を受ける権利を保障すべきであり、また、大学等への進学が世帯の自立に資することも考えれば、生活保護利用世帯からの大学等への進学を阻んでいる、進学時に世帯分離とする扱いは止め、世帯内就学と就学等に必要な費用の収入認定除外を認めるなどして、進学保障をすべきです。