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現在、生活保護利用者が自動車を保有することは厳しく制限されていますが、せっかく保有を認められても、通院等の保有を認めた目的以外の日常生活の利用を禁じるという理不尽な対応が横行しています。
今般、札幌市が、保有を認めた自動車を日常生活に利用することも許されるとの正当な見解を示したところ、厚生労働省が、不可解な事務連絡事務連絡書)を発出して札幌市に圧力をかけ、その見解を撤回令和4年5月12日付文書)させるという事件が起きました。

私たちは、厚生労働省に対し、以下の申入書を提出して事務連絡を撤回することなどを求める予定です。申入書の趣旨にご賛同いただける団体の方々は、記事末尾の賛同フォームから団体名、担当者名を入力してください。

また、保有を認められた自動車の日常生活上の利用を理不尽に制限された事例をご存じの方は、記事末尾の入力フォームから情報をお寄せください。

6月9日に予定している厚労省への申入れと記者会見の場での公表を考えているため、1次締切は6月7日とさせていただきます。(最終締切:6月末日
短い期間で恐縮ですが、ご協力をいただけると幸いです。




■厚生労働省宛て「保有を容認された自動車の利用を制限する事務連絡の撤回を求める申入書



2022年6月9日

厚生労働省社会・援護局保護課長 殿

生活保護問題対策全国会議
全国生活と健康を守る会連合会
北海道生活と健康を守る会連合会
一般社団法人つくろい東京ファンド
特定非営利活動法人DPI日本会議
きょうされん


保有を容認された自動車の利用を制限する
事務連絡の撤回を求める申入書


第1 申入れの趣旨
 私たちは、貴課に対し、令和4年5月10日付け事務連絡「生活保護制度上の自動車保有の取扱いについて(注意喚起)」を撤回するよう申し入れます。

第2 申入れの理由
 1 事実経過
(1)保有容認自動車の利用範囲についての札幌市の当初の回答
 札幌市長は、北海道生活と健康を守る会連合会(以下「道生連」といいます。)からの「車の保有を認めたが、使用を認めないという指導指示はやめること」という要望に対し、2022年1月26日付け「「2022年度札幌市予算要望書」について(回答)」の中で、「障害等を理由に自動車の保有を認められた場合は、保有する自動車を日常生活で利用することは、被保護者の自立助長、保有する資産の活用の観点から認められるものと考えております」と回答しました。この回答は、後述する生活保護法の趣旨に適合した至極正当な内容であり、私たちを含む関係者からも高く評価されていました。

 (2)上記回答が撤回されたこと
 ところが、札幌市は、2022年5月12日付けの札幌市保健福祉局総務部保護自立支援担当部長名による「「2022年度札幌市予算要望書」回答の一部訂正について」において、「当初回答の内容の一部について、生活保護の実施要領に沿うものではなく、誤解を招きかねない表現となっていたため」として、上記部分を削除すると道生連に対して連絡をしてきました。

 (3)貴課による事務連絡の存在
 急にこのような撤回がなされた背景を確認したところ、貴課が発出した令和4年5月10日付け事務連絡「生活保護制度上の自動車保有の取扱いについて(注意喚起)」(以下「本件事務連絡」といいます。)の存在が明らかになりました。
 本件事務連絡は、「通勤用自動車の保有、障害者が通院等のため自動車を必要としている場合等の自動車保有について、一定の要件を満たす場合に限って、通勤や通院等のための自動車の保有を認めているところです。一方で(中略)生活用品としての自動車は、単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率の如何にかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っておりません」と述べた上で、「今般、ある自治体において、障害等を理由に通院のために自動車の保有を容認された者について、通院以外に日常生活に用いることが認められるような考えを示した事例が確認されたことから、改めて実施要領における自動車の保有の取扱いについてご留意いただき、引き続き、自動車の保有について適切な指導をお願いいたします」とし、「ある自治体」としながらも札幌市の回答を問題視する内容になっています。
 
2 本件事務連絡の問題点
 (1)本件事務連絡が論理的に成り立っていないこと
 本件事務連絡の趣旨は、「障害等を理由に通院のために自動車の保有を容認された者について、通院以外に日常生活に用いることが認められるような考えを示した事例」について、これが誤っていると各自治体に周知することにあると思われます。
 しかし、その前の段落で示された内容は、それを論理的に正当化する理由になっていません。
 「通勤用自動車の保有、障害者が通院等のため自動車を必要としている場合等の自動車保有について、一定の要件を満たす場合に限って、通勤や通院等のための自動車の保有を認めているところです。」という文章は、自動車の保有が容認されるのは、一定の要件を満たす場合に限られるという趣旨のものです。
 その次の文は、「一方で(中略)生活用品としての自動車は、単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率の如何にかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っておりません」と述べ、生活用品としての自動車の保有は認められない、と述べるものです。
 上記の2文の内容は、これまで厚生労働省が示してきた立場ではありますが、これらの2文を組み合わせても、「通勤や通院等のために保有を認められた自動車を、その他の目的のために利用してはならない」と読むことはできません。なぜなら、前者は「保有が認められる場合が限られること」を述べているもので、保有が認められた後の使用範囲について述べるものではありません。後者についても、「生活用品としての自動車」は認められないというもので、これも「保有が認められる場合が限られること」という点を述べるに留まるものです。
 要するに、この2文からは、保有が認められた後の自動車の利用可能範囲がどこまでであるかを読み取ることはできないのです。

(2)実施要領において利用目的を制限している場合は限られていること
実施要領において、明示的に利用目的を制限しているのは、課長通知問第3の9-2「保護開始時において失業や傷病により就労を中断している場合の通勤用自動車の保有」だけです。
これは、「就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者」について、6か月ないし1年の範囲で自動車の処分指導を行わないとするものです。この場合には、処分を保留する扱いなので自動車の使用を認めないとする一方、「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については、求職活動に必要な場合」には利用を認めるとしています。
その他に、このような利用範囲を制限する規定は存在していません。
この点、2022年5月20日の衆議院厚生労働委員会において、厚生労働省社会・援護局長は、事務次官通知「第3 資産の活用」を根拠として自動車の日常生活での利用を制限できる旨答弁しました
しかし、上記次官通知は、「最低生活の内容としてその所有又は利用を容認するに適しない資産は、次の場合を除き、原則として処分のうえ、最低限度の生活の維持のために活用させること」とするもので、例外的に保有を容認された資産の利用については何も述べていません。
障害や交通不便、事業用を理由として保有が容認される場合は、上記次官通知が例外的に資産の保有を認める「その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの」に当たるものであり、後述の生活保護法1条(最低生活保障)と同法4条1項(資産の活用)の趣旨からは、このような場合に保有を容認された資産を日常生活の用に供することは、本来、生活保護利用者の自由とされるべきです。とりわけ障害を理由として保有を認められた者に対して日常生活の利用を禁止する指導指示は、後述の移動の自由の保障の観点からして、法27条1項の「生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示」といえませんし、同条2項の「被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない」にも反するので到底許されません。

(3)別冊問答集で示された見解と整合しないこと
 また、生活保護手帳別冊問答集問3-20「他人名義の自動車利用」では、自動車の借用について論じる中で、「特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず、遊興等単なる利便のため度々使用すること」は認められないとしています。その理由として、「最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準、生活感情を考慮すれば、勤労の努力を怠り、遊興のため度々自動車を使用するという生活態度を容認することもまたなお不適当と判断されること」を挙げています。
 この見解は、「遊興等」に用いることについて問題視するものですが、そうではない生活上必要な利用についてまで排除するものにはなっていません。
 その点で、本件事務連絡で貴課が示した見解は、これまでの厚労省の立場と相違するものです。
 
3 保有容認自動車の日常生活利用を認める裁判例に反すること
 歩行に支障がある障害を持つ原告が、自動車の保有を理由として生活保護を廃止されたこと及び申請を却下されたことを争った大阪地裁平成25年4月19日判決(賃金と社会保障1591=1592号64頁)では、保有要件を満たした場合の自動車の利用目的を通院等に限定する実務運用について、「生活保護を利用する身体障害者がその保有する自動車を通院等以外の日常生活上の目的のために利用することは、被保護者の自立助長及びその保有する資産の活用という観点から、むしろ当然に認められる」と判示しています。
すなわち、保有する自動車を日常生活上の目的に利用することこそが、「被保護者の自立助長(生活保護法1条)」と「資産の活用(同法4条1項)」という法の趣旨にむしろ合致するという司法判断が明快に示されているのです。
これに対し、大阪高裁平成28年10月28日判決(平成27年(行コ)第151号)は、「原則として自動車を保有できない他の被保護者との公平性を欠くことになりかねない」ことを理由として、保有を認められた自動車を目的以外に使用してはならないと指導又は指示をすることができると判示しています。
しかし、まず、上記の判決は事業用自動車についてのものであることに留意する必要があります。事業用品として保有が認められる場合は、移動の困難さは要件とされていません。一方で、通勤や通院等のために保有が認められる場合は、障害等があることや公共交通機関の利用が困難な地域に住んでいることなど、自動車が無ければ日常の移動も困難であるケースが多く、保有目的以外の利用を認める必要性が高くなります。
また、大阪高裁判決の考え方に従うとするならば、生活の維持に必要な用件の場合には、自家用車をわざわざ家に置きに戻ったうえでタクシー等を利用しなければならないことになります。それは、「資産の活用(同法4条1項)」の趣旨に反しますし、生活水準をより苦しい方に引き下げて実現する「公平性」であり、少ない最低生活費から更に交通費を求められる事態をもたらすものであって、「最低生活保障(同法1条)」という法の目的に反することが明らかです。
 
4 障害者等の「移動の自由」(憲法22条1項・障害者権利条約20条)を侵害すること
 また、保有容認自動車の私用目的を制限することは、障害等をもつ被保護者の「移動の自由」を保障する観点からも問題があります。
 「移動の自由」は、「居住移転の自由」の一環として憲法22条1項で保障されている基本的人権であり、障害者権利条約20条にも謳われています。移動には、生活を維持するための活動ができるという面や、移動した場所で学習をしたり、表現活動を行ったり、選挙に投票したりすることができるようになるなど他の自由を行使することを補助する面など様々な側面があります。
 障害等を理由として自動車の保有を認められたということは、自動車が無ければ通院等ができないと判断されたということです。自動車がなければ通院等ができないということは、日常生活上の移動全般ができないということです。そのような方について、通院等以外に自動車の利用を禁じることは、「日常生活上、移動するな」と命じているに等しく、上記のように重要な役割を有している「移動の自由」の侵害にほかなりません。
 障害等を持つ方に「移動の自由」を保障する観点からも、保有容認自動車の利用の制限は許されません。
 
5 最後に
 貴課の発出した本件事務連絡は、札幌市を事実上名指ししたもので、札幌市が道生連に対して行った回答を撤回した背景には貴課の介入があることは明らかです。このような介入は、実施機関における自主的な判断への不当な圧力であると言わざるを得ません。
 以上の申入れを踏まえ、貴課において、本件事務連絡を直ちに撤回するよう強く求める次第です。
以 上






■札幌市宛て「撤回された回答の維持を求める申入書



2022年6月9日

札幌市長 殿

生活保護問題対策全国会議
全国生活と健康を守る会連合会
北海道生活と健康を守る会連合会
一般社団法人つくろい東京ファンド
特定非営利活動法人DPI日本会議
きょうされん


撤回された回答の維持を求める申入書


第1 申入れの趣旨
 私たちは、貴殿に対し、2022年1月26日付け「「2022年度札幌市予算要望書」について(回答)」の中で示された「障害等を理由に自動車の保有を認められた場合は、保有する自動車を日常生活で利用することは、被保護者の自立助長、保有する資産の活用の観点から認められるものと考えております」との回答を維持するよう申し入れます。

第2 申入れの理由
 1 事実経過
(1)保有容認自動車の利用範囲についての札幌市の当初の回答
 貴職は、北海道生活と健康を守る会連合会(以下「道生連」といいます。)からの「車の保有を認めたが、使用を認めないという指導指示はやめること」という要望に対し、2022年1月26日付け「「2022年度札幌市予算要望書」について(回答)」の中で、「障害等を理由に自動車の保有を認められた場合は、保有する自動車を日常生活で利用することは、被保護者の自立助長、保有する資産の活用の観点から認められるものと考えております」と回答しました。この回答は、後述する生活保護法の趣旨に適合した至極正当な内容であり、私たちを含む関係者からも高く評価されていました。

 (2)上記回答が撤回されたこと
 ところが、貴市は、2022年5月12日付けの札幌市保健福祉局総務部保護自立支援担当部長名による「「2022年度札幌市予算要望書」回答の一部訂正について」において、「当初回答の内容の一部について、生活保護の実施要領に沿うものではなく、誤解を招きかねない表現となっていたため」として、上記部分を削除すると道生連に対して連絡をしてきました。

 (3)厚労省保護課による事務連絡の存在
 急にこのような撤回がなされた背景を確認したところ、厚生労働省社会・援護局保護課長が発出した令和4年5月10日付け事務連絡「生活保護制度上の自動車保有の取扱いについて(注意喚起)」(以下「本件事務連絡」といいます。)の存在が明らかになりました。
 本件事務連絡は、「通勤用自動車の保有、障害者が通院等のため自動車を必要としている場合等の自動車保有について、一定の要件を満たす場合に限って、通勤や通院等のための自動車の保有を認めているところです。一方で(中略)生活用品としての自動車は、単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率の如何にかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っておりません」と述べた上で、「今般、ある自治体において、障害等を理由に通院のために自動車の保有を容認された者について、通院以外に日常生活に用いることが認められるような考えを示した事例が確認されたことから、改めて実施要領における自動車の保有の取扱いについてご留意いただき、引き続き、自動車の保有について適切な指導をお願いいたします」とし、「ある自治体」としながらも貴市の回答を問題視する内容になっています。
 
2 本件事務連絡の問題点
 (1)本件事務連絡が論理的に成り立っていないこと
 本件事務連絡の趣旨は、「障害等を理由に通院のために自動車の保有を容認された者について、通院以外に日常生活に用いることが認められるような考えを示した事例」について、これが誤っていると各自治体に周知することにあると思われます。
 しかし、その前の段落で示された内容は、それを論理的に正当化する理由になっていません。
 「通勤用自動車の保有、障害者が通院等のため自動車を必要としている場合等の自動車保有について、一定の要件を満たす場合に限って、通勤や通院等のための自動車の保有を認めているところです。」という文章は、自動車の保有が容認されるのは、一定の要件を満たす場合に限られるという趣旨のものです。
 その次の文は、「一方で(中略)生活用品としての自動車は、単に日常生活の便利に用いられるのみであるならば、地域の普及率の如何にかかわらず、自動車の保有を認める段階には至っておりません」と述べ、生活用品としての自動車の保有は認められない、と述べるものです。
 上記の2文の内容は、これまで厚生労働省が示してきた立場ではありますが、これらの2文を組み合わせても、「通勤や通院等のために保有を認められた自動車を、その他の目的のために利用してはならない」と読むことはできません。なぜなら、前者は「保有が認められる場合が限られること」を述べているもので、保有が認められた後の使用範囲について述べるものではありません。後者についても、「生活用品としての自動車」は認められないというもので、これも「保有が認められる場合が限られること」という点を述べるに留まるものです。
 要するに、この2文からは、保有が認められた後の自動車の利用可能範囲がどこまでであるかを読み取ることはできないのです。

(2)実施要領において利用目的を制限している場合は限られていること
実施要領において、明示的に利用目的を制限しているのは、課長通知問第3の9-2「保護開始時において失業や傷病により就労を中断している場合の通勤用自動車の保有」だけです。
これは、「就労により保護から脱却することが確実に見込まれる者」について、6か月ないし1年の範囲で自動車の処分指導を行わないとするものです。この場合には、処分を保留する扱いなので自動車の使用を認めないとする一方、「公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住している者については、求職活動に必要な場合」には利用を認めるとしています。
その他に、このような利用範囲を制限する規定は存在していません。
この点、2022年5月20日の衆議院厚生労働委員会において、厚生労働省社会・援護局長は、事務次官通知「第3 資産の活用」を根拠として自動車の日常生活での利用を制限できる旨答弁しました
しかし、上記次官通知は、「最低生活の内容としてその所有又は利用を容認するに適しない資産は、次の場合を除き、原則として処分のうえ、最低限度の生活の維持のために活用させること」とするもので、例外的に保有を容認された資産の利用については何も述べていません。
障害や交通不便、事業用を理由として保有が容認される場合は、上記次官通知が例外的に資産の保有を認める「その資産が現実に最低限度の生活維持のために活用されており、かつ、処分するよりも保有している方が生活維持及び自立の助長に実効があがっているもの」に当たるものであり、後述の生活保護法1条(最低生活保障)と同法4条1項(資産の活用)の趣旨からは、このような場合に保有を容認された資産を日常生活の用に供することは、本来、生活保護利用者の自由とされるべきです。とりわけ障害を理由として保有を認められた者に対して日常生活の利用を禁止する指導指示は、後述の移動の自由の保障の観点からして、法27条1項の「生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示」といえませんし、同条2項の「被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない」にも反するので到底許されません。

(3)別冊問答集で示された見解と整合しないこと
 また、生活保護手帳別冊問答集問3-20「他人名義の自動車利用」では、自動車の借用について論じる中で、「特段の緊急かつ妥当な理由が無いにもかかわらず、遊興等単なる利便のため度々使用すること」は認められないとしています。その理由として、「最低生活を保障する生活保護制度の運用として国民一般の生活水準、生活感情を考慮すれば、勤労の努力を怠り、遊興のため度々自動車を使用するという生活態度を容認することもまたなお不適当と判断されること」を挙げています。
 この見解は、「遊興等」に用いることについて問題視するものですが、そうではない生活上必要な利用についてまで排除するものにはなっていません。
 その点で、本件事務連絡で厚労省保護課が示した見解は、これまでの厚労省の立場と相違するものです。

 3 保有容認自動車の日常生活利用を認める裁判例に反すること
 歩行に支障がある障害を持つ原告が、自動車の保有を理由として生活保護を廃止されたこと及び申請を却下されたことを争った大阪地裁平成25年4月19日判決(賃金と社会保障1591=1592号64頁)では、保有要件を満たした場合の自動車の利用目的を通院等に限定する実務運用について、「生活保護を利用する身体障害者がその保有する自動車を通院等以外の日常生活上の目的のために利用することは、被保護者の自立助長及びその保有する資産の活用という観点から、むしろ当然に認められる」と判示しています。
すなわち、保有する自動車を日常生活上の目的に利用することこそが、「被保護者の自立助長(生活保護法1条)」と「資産の活用(同法4条1項)」という法の趣旨にむしろ合致するという司法判断が明快に示されているのです。
これに対し、大阪高裁平成28年10月28日判決(平成27年(行コ)第151号)は、「原則として自動車を保有できない他の被保護者との公平性を欠くことになりかねない」ことを理由として、保有を認められた自動車を目的以外に使用してはならないと指導又は指示をすることができると判示しています。
しかし、まず、上記の判決は事業用自動車についてのものであることに留意する必要があります。事業用品として保有が認められる場合は、移動の困難さは要件とされていません。一方で、通勤や通院等のために保有が認められる場合は、障害等があることや公共交通機関の利用が困難な地域に住んでいることなど、自動車が無ければ日常の移動も困難であるケースが多く、保有目的以外の利用を認める必要性が高くなります。
また、大阪高裁判決の考え方に従うとするならば、生活の維持に必要な用件の場合には、自家用車をわざわざ家に置きに戻ったうえでタクシー等を利用しなければならないことになります。それは、「資産の活用(同法4条1項)」の趣旨に反しますし、生活水準をより苦しい方に引き下げて実現する「公平性」であり、少ない最低生活費から更に交通費を求められる事態をもたらすものであって、「最低生活保障(同法1条)」という法の目的に反することが明らかです。

 4 障害者等の「移動の自由」(憲法22条1項・障害者権利条約20条)を侵害すること
 また、保有容認自動車の私用目的を制限することは、障害等をもつ被保護者の「移動の自由」を保障する観点からも問題があります。
 「移動の自由」は、「居住移転の自由」の一環として憲法22条1項で保障されている基本的人権ですが、移動には、生活を維持するための活動ができるという面や、移動した場所で学習をしたり、表現活動を行ったり、選挙に投票したりすることができるようになるなど他の自由を行使することを補助する面など様々な側面があります。。
 障害等を理由として自動車の保有を認められたということは、自動車が無ければ通院等ができないと判断されたということです。自動車がなければ通院等ができないということは、日常生活上の移動全般ができないということです。そのような方について、通院等以外に自動車の利用を禁じることは、「日常生活上、移動するな」と命じているに等しく、上記のように重要な役割を有している「移動の自由」の侵害にほかなりません。
 障害等を持つ方に「移動の自由」を保障する観点からも、保有容認自動車の利用の制限は許されません。

 5 最後に
 厚労省保護課の発出した本件事務連絡は、貴市を事実上名指ししたもので、貴市が道生連に対して行った回答を撤回した背景には厚労省保護課の介入があることは明らかです。このような介入は、実施機関における自主的な判断への不当な圧力であると言わざるを得ません。
 以上の申入れを踏まえ、貴市において、2022年1月26日付け「2022年度札幌市予算要望書」について(回答)」において示した正当な見解を維持するよう強く求める次第です。

以 上






【団体賛同入力フォーム】
上記の申入書に賛同していただける団体の方々は、以下のフォームから団体名・ご担当者名等を入力してください(申入れ時に団体名のみ公表させていただきます。)。



問題事例入力フォーム】
生活保護を利用しながら保有を認められた自動車について、日常生活上の利用を禁じられた問題事例をご存じの方は、以下のフォームから詳細を入力してください(申入れ時に内容を編集して公表させていただく場合があります)。



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