『生活保護基準「減額見送り」にあたり基準の引上げと「新たな検証手法の開発」等を強く求める緊急声明』を発表しました。
5年に1度の生活保護基準の見直しに向けて、75歳以上の高齢者世帯を中心に検討されていた引下げについて、物価高に「配慮」し、2年程度見送る方針であると報道されている。
40年ぶりという異常な物価高の中、引下げを見送るのは当然であり、その判断自体は歓迎する。しかし、当面据え置くだけで2年後に再度引下げを検討する模様であることについては、以下の理由により、到底容認できない。
すなわち、当会議の2022年12月5日付け「生活保護基準部会の報告書とりまとめにあたっての緊急声明」において指摘したとおり、今回の検証は、「年収階級第1・十分位」という下位10%の低所得層の消費水準と生活保護基準を比較する方法が用いられている。生活保護の捕捉率が2割程度といわれる我が国において、第1・十分位層には、生活保護基準以下の生活をしている低所得層が多数含まれており、こうした層との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」(今回の基準部会報告書35頁)。そのため、「消費実態との比較によらない新たな検証手法」を開発することが、2012年検証のときに「喫緊の課題」とされて以来、既に10年が経過している。
そもそも、「第1・十分位との均衡」という検証の手法自体に根本的な問題があるのである。
第1・十分位層との比較による今回の検証によっても、引上げとなる世帯類型があるということは、現行の生活保護基準が既に「絶対的な水準」を割り込んでいることを強く示唆している。実際、2013年からの史上最大の生活保護基準引下げの違法性を問う「いのちのとりで裁判」では、大阪、熊本、東京、横浜の4つの地方裁判所において違法を認める原告勝訴判決が言い渡されており、来年2月から5月にかけて8つの地方裁判所と1つの高等裁判所において、更に勝訴判決が積み上がることが予想される。
そこで、当会議は、国及び生活保護基準部会に対し、改めて以下のことを強く求めるものである。
1 現下の物価高に対応する生活保護基準全体の引上げの措置を直ちに講じること。
2 市民参加で社会的経費も加味した「健康で文化的な最低限度の生活」を探求するMIS手法などの「新たな検証手法」を可及的速やかに開発・確立し、現行の違法状態を是正するとともに、かかる検証手法が確立するまでの間は引上げのみを行い、引下げは行わないこと。
3 級地の統合については、統合を理由に基準が引き下げられるようなことがあってはならず、具体的方法や影響について、改めて基準部会における専門的検証を行うこと。
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2022年12月21日
生活保護基準「減額見送り」にあたり
基準の引上げと「新たな検証手法の開発」等を
強く求める緊急声明
基準の引上げと「新たな検証手法の開発」等を
強く求める緊急声明
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜
〒530-0047 大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
電話06‐6363-3310 fax06‐6363-3320
事務局長 弁護士 小久保 哲 郎
代表幹事 尾 藤 廣 喜
〒530-0047 大阪市北区西天満3丁目14番16号
西天満パークビル3号館7階あかり法律事務所
電話06‐6363-3310 fax06‐6363-3320
事務局長 弁護士 小久保 哲 郎
5年に1度の生活保護基準の見直しに向けて、75歳以上の高齢者世帯を中心に検討されていた引下げについて、物価高に「配慮」し、2年程度見送る方針であると報道されている。
40年ぶりという異常な物価高の中、引下げを見送るのは当然であり、その判断自体は歓迎する。しかし、当面据え置くだけで2年後に再度引下げを検討する模様であることについては、以下の理由により、到底容認できない。
すなわち、当会議の2022年12月5日付け「生活保護基準部会の報告書とりまとめにあたっての緊急声明」において指摘したとおり、今回の検証は、「年収階級第1・十分位」という下位10%の低所得層の消費水準と生活保護基準を比較する方法が用いられている。生活保護の捕捉率が2割程度といわれる我が国において、第1・十分位層には、生活保護基準以下の生活をしている低所得層が多数含まれており、こうした層との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると「絶対的な水準を割ってしまう懸念がある」(今回の基準部会報告書35頁)。そのため、「消費実態との比較によらない新たな検証手法」を開発することが、2012年検証のときに「喫緊の課題」とされて以来、既に10年が経過している。
そもそも、「第1・十分位との均衡」という検証の手法自体に根本的な問題があるのである。
第1・十分位層との比較による今回の検証によっても、引上げとなる世帯類型があるということは、現行の生活保護基準が既に「絶対的な水準」を割り込んでいることを強く示唆している。実際、2013年からの史上最大の生活保護基準引下げの違法性を問う「いのちのとりで裁判」では、大阪、熊本、東京、横浜の4つの地方裁判所において違法を認める原告勝訴判決が言い渡されており、来年2月から5月にかけて8つの地方裁判所と1つの高等裁判所において、更に勝訴判決が積み上がることが予想される。
そこで、当会議は、国及び生活保護基準部会に対し、改めて以下のことを強く求めるものである。
1 現下の物価高に対応する生活保護基準全体の引上げの措置を直ちに講じること。
2 市民参加で社会的経費も加味した「健康で文化的な最低限度の生活」を探求するMIS手法などの「新たな検証手法」を可及的速やかに開発・確立し、現行の違法状態を是正するとともに、かかる検証手法が確立するまでの間は引上げのみを行い、引下げは行わないこと。
3 級地の統合については、統合を理由に基準が引き下げられるようなことがあってはならず、具体的方法や影響について、改めて基準部会における専門的検証を行うこと。
以 上
