自宅で死亡した生活保護利用者を3カ月間放置していたことが問題になっている東京都江戸川区に対して、私たちは、2023年8月21日、「生活保護行政に関する公開質問状」を提出しました。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-489.html
これに対して、同区からは、同年9月4日付で以下の回答書が届きました。
回答書
しかし、同区の検証方法には、
1 当事者的立場にある区議会副議長を含む「検証・検討委員会」内に「第三者専門委員会」を設置し、これにまさに当事者である同区幹部らで構成する「内部検討委員会」が終始伴走するという異例の三層構造で、検証委員会としての中立性・独立性に疑問があること
2 原則公開といいながら原則非公開であって、公開部分の傍聴にも制限が多いこと
などの疑問があります。
そこで、私たちは、9月19日、改めて江戸川区に対し、以下の「生活保護行政に対する公開質問状(2)」を提出しました。
東京都江戸川区長
斉藤 猛 殿
当会の2023年8月21日付け「生活保護行政に関する公開質問状」に対する、貴殿の令和5年9月4日付け回答を拝受しました。ご多忙中にご対応いただいたことにつき感謝申し上げます。
しかしながら、貴殿の回答書及びその後の検証・検討委員会の推移を拝見していますと、当会が上記公開質問状で示した懸念点が全く解消されないだけでなく、むしろ、あらたな懸念点や疑問が生じましたので、本書において、改めて意見を申し述べるとともに質問事項に回答されたく要請致します。
御多忙中に短い時間設定で恐縮ですが、2023年9月29日までに上記連絡先あてに書面にてご回答いただきますよう、よろしくお願い致します。回答内容は当会HPなどで公表させていただきますので予めご承知おき下さい。
なお、本書面については、検証・検討委員会の委員の方々にも事前に配布していただけますよう、お願い致します。
1 異例の三層構造による検証スキームと手順について
第1回検証・検討委員会で配布された資料(15頁)によれば、今般の検証作業にあたっては、区議会副議長を含む「検証・検討委員会」内に学識経験者3名、医師、弁護士の5名からなる「第三者専門委員会」を設置し、それとは別に副区長2名を正副委員長として福祉部をはじめとする関連部署の幹部で構成する「内部検討委員会」が終始伴走するという、異例の三層構造のスキームとなっています。
しかし、第1に、このような検証スキームでは、本来検証の対象とされるべき貴区幹部が検証の内容及び結果に大きな影響を与え、これを歪めるおそれが極めて大きいと言わざるを得ません。
特に、第1回の専門委員会と検証・検討委員会が開催された本年9月5日に先行して、本年8月7日から28日にかけて、既に関係職員111名中103名の内部検討委員会によるヒアリングが終了しているということですが(上記資料21頁)、本来検証の対象とされるべき貴区幹部が主体となって行われるヒアリングでは、現場の職員が事実や意見を率直に述べることができないばかりか、第三者たる専門委員がヒアリングを行う段階では、既に貴区幹部にとって都合のいいストーリーに沿った「供述がため」が行われているおそれが否定できません。
第2に、事実認定や評価、本件に関する検証作業は「第三者専門委員会」のみで行うとのことですが、貴区の「検証・検討委員会」設置要綱には「第三者専門委員会」の役割や権限について特段の定めもないだけでなく、肝心の再発防止策の検討については「検証・検討委員会」において行うとのことです。これでは、前の公開質問状で指摘した、当事者的立場にある区議会副議長が検証作業に関与するという問題が解消されたものとはいえません。
以上のとおり、貴区が構築した検証スキームは、検証委員会の独立性・第三者性に大きな疑問が残ります。専門家からなる「第三者専門委員会」が真に独立して主体的に検証作業のすべてを行うことができるよう、検証スキームそのものを再構築するか、少なくともそれに近い運用となるよう格段の配慮が必要であると考えます。
ついては、以下の点についてご回答ください。
1-1 当会は、行政機関の第三者検証委員会において、上記のような三層構造の検証スキームが採用された例を寡聞にして知りませんが、貴区が上記検証スキームを採用するにあたって参考にされた前例があればご教示ください。仮に、そうした前例がないのであれば、どなたがどのような意図で発案されたのかご回答ください。
1-2 検討委員会の開催前に関係職員に対するヒアリングを先行させることについて、上記のような懸念点があることを検討されましたか。また、上記のような懸念に及ばないということであれば、その根拠をご教示ください。
1-3 事実関係の解明のためには、第三者専門委員会が、貴区幹部の影響を受けない状況下で、直接関係職員等からのヒアリングを十二分に行う必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。
2 検討過程の公開について
貴殿の回答書によれば、検証・検討委員会の審議については、「公開することを原則」としつつ、①情報公開条例にいう不開示情報を取り扱う場合、②公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害するおそれがある場合には非公開とするとのことですが、実際には、内部検討委員会での検討内容はもちろん、専門委員会での審議内容は非公開とされ、検証・検討委員会の審議もその一部は非公開とすることを前提としているようです。これでは、原則非公開であって、原則公開とは到底いえません。そもそも、検証委員会の議論は市民の目からの批判に耐えうるものでなければならず、検証委員会において「公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害する」議論が行われているとすれば、その議論の信頼性自体に疑問が生じかねません。
また、第1回検証・検討委員会で配布された資料についても、当会の要請によって、ようやくHPに掲載されたものの、議事録については本書発出時点においても掲載されておらず、いつ掲載されるかの目途も不明です。
さらに、第1回検証・検討委員会(9月5日18時開始)の傍聴についても、当日の午前8時30分から午後3時までの間に電話で申込む方法しかなく、1回の電話で複数人の申込みはできず、報道関係者でさえ1社につき原則1名(撮影のための補助員1名のみ追加可)と極めて制限的であって、出来る限り傍聴されたくないという隠蔽の意図を疑わざるを得ません。
神奈川県小田原市の「保護なめんなジャンパー事件」後に設置された検証委員会では、傍聴希望者に対する万全の配慮と資料や議事録の速やかな公開等によって、検証過程が完全に公開された中で充実した議論が行われることで保護行政に対する市民の信頼を取り戻していきました。貴区においても、こうした先例にならった真摯な取り組みが期待されています。
ついては、以下の点について、ご回答ください。
2-1 非公開とする検証過程については、いかなる意味で「公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害するおそれがある」のか、より具体的に明らかにしてください。
2-2 傍聴については、一定期間オンラインを含めた申込みを可能とし、マスコミ関係者については自由に膨張できるようにすべきと考えますが、いかがですか。
2-3 公開とする検証過程については、小田原市のようにHPに特設ページをつくり、資料や議事録等をすみやかに掲載すべきだと考えますが、いかがですか。
2-4 非公開とする検証過程についても、検討の概要その他可能な範囲でその内容を明らかにすべきだと考えますが、いかがですか。
2-5 「検証・検討委員会」の運営方法や再発防止策の検討の参考とするため、小田原市において検証作業に従事した方の経験や意見を聴く機会をもつことが有益ではないかと考えますが、いかがですか。
質問状
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-489.html
これに対して、同区からは、同年9月4日付で以下の回答書が届きました。

しかし、同区の検証方法には、
1 当事者的立場にある区議会副議長を含む「検証・検討委員会」内に「第三者専門委員会」を設置し、これにまさに当事者である同区幹部らで構成する「内部検討委員会」が終始伴走するという異例の三層構造で、検証委員会としての中立性・独立性に疑問があること
2 原則公開といいながら原則非公開であって、公開部分の傍聴にも制限が多いこと
などの疑問があります。
そこで、私たちは、9月19日、改めて江戸川区に対し、以下の「生活保護行政に対する公開質問状(2)」を提出しました。
2023年9月19日
生活保護行政に関する公開質問状(2)
東京都江戸川区長
斉藤 猛 殿
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局長 弁護士 小久保 哲郎
代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
(連絡先)530‐0047大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
電話06(6363)3310 FAX06(6363)3320
事務局長 弁護士 小久保 哲郎
当会の2023年8月21日付け「生活保護行政に関する公開質問状」に対する、貴殿の令和5年9月4日付け回答を拝受しました。ご多忙中にご対応いただいたことにつき感謝申し上げます。
しかしながら、貴殿の回答書及びその後の検証・検討委員会の推移を拝見していますと、当会が上記公開質問状で示した懸念点が全く解消されないだけでなく、むしろ、あらたな懸念点や疑問が生じましたので、本書において、改めて意見を申し述べるとともに質問事項に回答されたく要請致します。
御多忙中に短い時間設定で恐縮ですが、2023年9月29日までに上記連絡先あてに書面にてご回答いただきますよう、よろしくお願い致します。回答内容は当会HPなどで公表させていただきますので予めご承知おき下さい。
なお、本書面については、検証・検討委員会の委員の方々にも事前に配布していただけますよう、お願い致します。
1 異例の三層構造による検証スキームと手順について
第1回検証・検討委員会で配布された資料(15頁)によれば、今般の検証作業にあたっては、区議会副議長を含む「検証・検討委員会」内に学識経験者3名、医師、弁護士の5名からなる「第三者専門委員会」を設置し、それとは別に副区長2名を正副委員長として福祉部をはじめとする関連部署の幹部で構成する「内部検討委員会」が終始伴走するという、異例の三層構造のスキームとなっています。
しかし、第1に、このような検証スキームでは、本来検証の対象とされるべき貴区幹部が検証の内容及び結果に大きな影響を与え、これを歪めるおそれが極めて大きいと言わざるを得ません。
特に、第1回の専門委員会と検証・検討委員会が開催された本年9月5日に先行して、本年8月7日から28日にかけて、既に関係職員111名中103名の内部検討委員会によるヒアリングが終了しているということですが(上記資料21頁)、本来検証の対象とされるべき貴区幹部が主体となって行われるヒアリングでは、現場の職員が事実や意見を率直に述べることができないばかりか、第三者たる専門委員がヒアリングを行う段階では、既に貴区幹部にとって都合のいいストーリーに沿った「供述がため」が行われているおそれが否定できません。
第2に、事実認定や評価、本件に関する検証作業は「第三者専門委員会」のみで行うとのことですが、貴区の「検証・検討委員会」設置要綱には「第三者専門委員会」の役割や権限について特段の定めもないだけでなく、肝心の再発防止策の検討については「検証・検討委員会」において行うとのことです。これでは、前の公開質問状で指摘した、当事者的立場にある区議会副議長が検証作業に関与するという問題が解消されたものとはいえません。
以上のとおり、貴区が構築した検証スキームは、検証委員会の独立性・第三者性に大きな疑問が残ります。専門家からなる「第三者専門委員会」が真に独立して主体的に検証作業のすべてを行うことができるよう、検証スキームそのものを再構築するか、少なくともそれに近い運用となるよう格段の配慮が必要であると考えます。
ついては、以下の点についてご回答ください。
1-1 当会は、行政機関の第三者検証委員会において、上記のような三層構造の検証スキームが採用された例を寡聞にして知りませんが、貴区が上記検証スキームを採用するにあたって参考にされた前例があればご教示ください。仮に、そうした前例がないのであれば、どなたがどのような意図で発案されたのかご回答ください。
1-2 検討委員会の開催前に関係職員に対するヒアリングを先行させることについて、上記のような懸念点があることを検討されましたか。また、上記のような懸念に及ばないということであれば、その根拠をご教示ください。
1-3 事実関係の解明のためには、第三者専門委員会が、貴区幹部の影響を受けない状況下で、直接関係職員等からのヒアリングを十二分に行う必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。
2 検討過程の公開について
貴殿の回答書によれば、検証・検討委員会の審議については、「公開することを原則」としつつ、①情報公開条例にいう不開示情報を取り扱う場合、②公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害するおそれがある場合には非公開とするとのことですが、実際には、内部検討委員会での検討内容はもちろん、専門委員会での審議内容は非公開とされ、検証・検討委員会の審議もその一部は非公開とすることを前提としているようです。これでは、原則非公開であって、原則公開とは到底いえません。そもそも、検証委員会の議論は市民の目からの批判に耐えうるものでなければならず、検証委員会において「公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害する」議論が行われているとすれば、その議論の信頼性自体に疑問が生じかねません。
また、第1回検証・検討委員会で配布された資料についても、当会の要請によって、ようやくHPに掲載されたものの、議事録については本書発出時点においても掲載されておらず、いつ掲載されるかの目途も不明です。
さらに、第1回検証・検討委員会(9月5日18時開始)の傍聴についても、当日の午前8時30分から午後3時までの間に電話で申込む方法しかなく、1回の電話で複数人の申込みはできず、報道関係者でさえ1社につき原則1名(撮影のための補助員1名のみ追加可)と極めて制限的であって、出来る限り傍聴されたくないという隠蔽の意図を疑わざるを得ません。
神奈川県小田原市の「保護なめんなジャンパー事件」後に設置された検証委員会では、傍聴希望者に対する万全の配慮と資料や議事録の速やかな公開等によって、検証過程が完全に公開された中で充実した議論が行われることで保護行政に対する市民の信頼を取り戻していきました。貴区においても、こうした先例にならった真摯な取り組みが期待されています。
ついては、以下の点について、ご回答ください。
2-1 非公開とする検証過程については、いかなる意味で「公開することで率直な議論を妨げ又は審議の公正を害するおそれがある」のか、より具体的に明らかにしてください。
2-2 傍聴については、一定期間オンラインを含めた申込みを可能とし、マスコミ関係者については自由に膨張できるようにすべきと考えますが、いかがですか。
2-3 公開とする検証過程については、小田原市のようにHPに特設ページをつくり、資料や議事録等をすみやかに掲載すべきだと考えますが、いかがですか。
2-4 非公開とする検証過程についても、検討の概要その他可能な範囲でその内容を明らかにすべきだと考えますが、いかがですか。
2-5 「検証・検討委員会」の運営方法や再発防止策の検討の参考とするため、小田原市において検証作業に従事した方の経験や意見を聴く機会をもつことが有益ではないかと考えますが、いかがですか。
以 上

2023/9/19