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10年で生活保護率が半減した群馬県桐生市に対し、「全国調査団」が、原因分析をふまえた要望書を提出しました。

 群馬県桐生市では、「生活保護費を1日1000円に分割して支給し、基準額の半額程度しか渡さない」、「職員に恫喝されたり、暴言を吐かれた」等、数々の違法行為・人権侵害が発覚しました。
 今年2月に発足した「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(団長:井上英夫 金沢大学名誉教授)は、3月4日、桐生市に公開質問状を提出し、3月末に回答書を受け取りました。

桐生市の生活保護行政に関する公開質問状 


桐生市の生活保護行政に関する公開質問状に対する回答  


 桐生市の回答などから、同市では、2011年度からの10年間で生活保護利用者数と保護率が半減し、生活保護費は半分以下の45%まで減少したこと、特に「母子世帯」は2011年の26世帯から2022年にはわずか2世帯と急減したことが分かりました。

 さらに、回答内容を分析すると、その背景には、「警察官OB」の配置数が異常に多く、新規面談の同席や就労支援など趣旨を逸脱した活用がなされていること、他自治体では見られない民間の金銭管理団体を活用した事業をおこなっていること、女性職員の比率が極端に低いことなどがあり、生活困窮者をまるで犯罪者のように扱い、無理な就労指導や違法な金銭管理を通じた管理・支配がなされている疑いが生じました。

 そこで、「調査団」は、4月4日~5日に現地での調査活動を展開。5日には桐生市長、群馬県知事、桐生市が設置した第三者委員会の座長あてに「要望書」を提出しました。

要望書 





2024年4月5日

要  望  書


桐生市長  荒木 恵司 殿
群馬県知事 山本 一太 殿
桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会座長 吉野 晶 殿

桐生市生活保護違法事件全国調査団
団長 井上 英夫


第1 はじめに(本要望の趣旨)
私たち「桐生市生活保護違法事件全国調査団」(以下、桐生調査団)は、桐生市の生活保護行政における不適切な対応について、その問題点や改善策を把握・検討するため、桐生市に対し2024年3月4日に公開質問(「桐生市の生活保護行政に関する公開質問状」)を行いました。
 桐生市から2024年3月29日付で回答のあった「公開質問状に対する回答」(令和6年3月29日付桐市相発第05・84号)のほか、調査団が独自に調査収集した資料や調査団に寄せられた当事者の生の声から、桐生市における生活保護行政の違法・不適切な対応、また、桐生市における被保護人員の急減をもたらした要因として疑われる問題点が複数確認されました。
 現在、桐生市においては、①市による内部調査チームによる検証(「不適正な生活保護業務に対する内部調査」、②群馬県庁による特別監査、③第三者委員会(桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会)による調査・監査・検証が行われています。
 今回、私たちの調査によって明らかになった桐生市の生活保護行政における問題構造と論点について、以下の調査分析を参考としていただき、さらなる調査と検証によって徹底的な実態解明を行われることを要望いたします。

第2 調査分析と問題点における要望
1 桐生市の生活保護行政全般に関する問題点-被保護人員・保護費の半減、特に母子世帯・その他世帯の急減

 桐生市においては、2011年をピークに現在まで、被保護世帯数・被保護人員・保護率が急減少を続けています。結果として、桐生市の保護費総額(年間)は2011(H23)年19億6121万円から、2022(R04)年8億7313万円と、2011年水準の45%にまで減少しています。全国傾向及び近隣他市と比べてもこのような減少は異様な状態であり、これは違法・不適切な対応により保護申請数を抑制する「水際作戦」や、同じく違法・不適切な対応により保護受給者を廃止に追いやる「硫黄島作戦」が強く疑われます。




図 桐生市の被保護人員数・生活保護費総額


 桐生市はこの保護世帯数(保護率)の急減について、「高齢化率の高さ」「高齢世帯の割合の多さ」を理由として挙げています。たしかに桐生市は全国に比べて、やや高齢化率が高い傾向にありますが、これは桐生市に限った特異な状況とはいえず、このような理由で近隣自治体と比べて異様な急減を説明することはできません。
また、桐生市の被保護世帯別の人数によると、どの世帯類型においても減少していますが、とりわけ顕著なのは「母子世帯」(2011(H23)年26人→2022(R4)年2人)と「その他世帯」(2012(H24)年107人→2022(R4)年14人)です。稼働年齢層に対する無理な「就労指導」による「水際作戦」や「硫黄島作戦」が疑われるため、「母子世帯」や「その他世帯」の減少理由を検証する必要があります(なお、桐生市はこの点について現在に至るまで説得力のある説明を行なっていません)。
通常では、保護率の増減に関して人口動態や社会経済的といった外在的な要因による説明がつかなければ、内在的な要因、すなわち保護行政における組織的な問題や関与(申請・開始時の不適切な対応。生活保護利用者に対する行き過ぎた指導や不適切な廃止など)が強く疑われます(これら組織的な問題や関与については、「2」以下の調査分析の結果が参考になります)。この点から桐生市の生活保護行政に関しては、以下の点の調査検証が必要です。

・桐生市における保護率・保護人員の急減少の原因について検証を行うこと。
・特に「母子世帯」「その他世帯」の急減少の原因について検証を行うこと。

2 保護の開始時、廃止における対応における問題点

(1)却下率・取下率の多さ

表 桐生市の申請件数、開始件数(開始率)、却下件数(却下率)、取下件数(取下率)




 表のとおり、桐生市における開始率は、全国平均に比べて非常に低い傾向にあります。全国平均(2022)では開始率(申請件数に占める開始の割合)は87.6%ですが、桐生市では、最高でも78.0%であり、もっとも低い2018年度はわずか47.6%と、申請件数の半分以下しか保護開始していません。この開始率の低さの原因は、却下率・取下率の高さにあります。全国平均(2022)では却下率(申請件数に占める却下の割合)は7.5%、取下率(申請件数に占める取下の割合)4.6%ですが、桐生市では却下率が最高で47.6%(2018)、取下率が最高で9.1%(2015,2019)と非常に高い割合となっています。この却下・取下の実態について解明がなされる必要があります。却下・取下の徹底的な検証には、却下・取下したケースの最低生活費と収入・資産の状況について正確な調査が必要です。保護率が急減した期間において却下・取下された全ケースに対して、「最低生活費の算定及び、収入・資産の正確な把握がなされたうえで、適切に要否判定が行われていたか」、「取下理由は適切で、申請者が急迫状態に陥らないよう適切な配慮がなされていたか」、また、桐生市では印鑑が多数保管されていたことが報道されていたことから、「取下届」における印影を確認し、保管された印鑑と同一のものではないかを調査する必要があります。
 なお、高い却下率について、桐生市は「境界層却下」が多いことを理由として挙げていますが、近隣他市に比べて境界層却下の数が異様に多く、単に高齢化や高齢者施設数のみでは説明がつきません。要否判定や収入状況の把握が適切になされていたのか疑問があり、保護を適用すべきなのに「境界層却下」で対応していた疑いがあります。

・桐生市における高い却下率・取下率について、当該期間の却下・取下ケースを全件調査し、その実態について検証すること。
・特に境界層却下については、保護の要否判定や収入状況の把握が適切であったか検証すること。

(2)保護廃止時の対応の問題点
○辞退廃止

桐生市における保護廃止の事由別から、まず「辞退廃止」が際立っています。もっとも多い2014(H26)年には、廃止件数126件のうち26件で辞退廃止となっており、死亡による廃止63件を除けば(126件-63件=63件)、4割以上で辞退届を徴収していたことになります。
また、群馬県庁が実施する生活保護法施行事務監査においても、私たちが確認した2018(H30)年から2022(R5)年までの期間において、桐生市は「保護の廃止」(辞退届による廃止など)について不適切な対応がなされていたことが確認され、毎年監査指摘が行われています(出所:「群馬県庁地域福祉推進室保護係による生活保護法施行事務監査の実施結果」資料)。毎年、是正改善を求められていたにもかかわらず、なぜ(少なくとも)5年連続で、監査指摘が繰り返されていたのか、桐生市の保護の廃止時の対応について検証が必要です。具体的な検証として、保護辞退した全ケースに対して総点検を行うこと。また、ケース記録だけの検証では、限界があることから、当該期間に辞退廃止したケースに対してアンケート調査を行うなどによって、保護辞退が被保護者の真摯な意思によるものであったか(辞退の強要がなかったのか)を確認する必要があります。
加えて、申請取下と同様に、桐生市では印鑑が多数保管されていたことから、「辞退届」における印影を確認し、保管された印鑑と同一のものではないかを調査するべきです。

○施設入所による廃止について
 桐生市の廃止理由に占める「施設入所」が非常に高い割合となっています。全国平均(2022)では廃止件数に占める「施設入所」の割合は2.1%ですが、桐生市においては常時10%を上回っており、2022(R5)年は20.3%となっています。全国平均の5倍、10倍の割合は高齢化率を考慮しても異様です。「施設入所」による廃止は、入所それ自体のみをもって保護の廃止の要件とはなりません。施設入所による保護基準の変更等により保護の要否判定が行われ、最低生活費を上回る状態が確認された場合に、保護否となります。「施設入所が本人や家族の真摯な意向に沿ったものであったのか」、「施設入所時の実施責任や要否判定が適切になされていたのか」を検証する必要があります。

・辞退廃止の多さについて、当該期間の辞退廃止ケースの全件調査を行い、その実態について検証すること(特に辞退廃止した者についてケース記録による検証だけでなく、アンケート/インタビュー調査をするなどして当人の声を元に検証すること)。
・辞退届に押印された印鑑が、預かり保管されている印鑑を冒用したものでないか検証すること。
・施設入所を理由とした廃止については、その件数の高さを検証し、保護の要否判定や実施責任が適切であったか検証すること。

3 生活保護の実務運用上の問題点
(1)保護費の分割支給

 「公開質問状に対する回答」(p.18)によると、2018(H30)年度からの分割支給を行なっていた件数14件のうち、保護開始時から分割支給を行なっていた件数が9件(64%)、家計簿の提出をさせたうえで分割支給した件数が12件(86%)、1か月を超えて保護費の全額を渡していなかった件数が11件(79%)を占めています。
桐生市は、分割支給をおこなっていた理由として、「保護費のやりくりができない方や生活習慣に課題を抱えている方の自立に向けた支援のため」と回答していますが、生活保護利用者を管理・支配する道具として、明らかに違法な保護費の分割支給を活用していた疑いが濃厚です。
 保護費の分割支給自体は、すでに県庁から不適切な支給であったことも指摘があるところですが、その実態解明と再発防止のために、分割支給を行なった経緯について当時のケースワーカー、査察指導員を含めてどのような組織的決定がなされたのかを検証する必要があります。とくに、保護開始時点から分割支給を行なっていたケースについては、「保護費のやりくりができない/生活習慣に課題を抱えている」という理由をどうして把握できたのかも含めて明らかにされるべきです。
 また、「1か月を超えて保護費の全額を渡していなかった件数」11件に関しては、生活保護法第31条2項において「生活扶助のための保護金品は、1月分以内を限度として前渡するものとする」とあるとおり、明確に法律違反です。桐生市は現在まで、これらの対応について「不適切であったこと」を認めても、「生活保護法違反」であることは認めていません(但し、今回の回答書3(4)⑦「1か月を超えて、保護費の全額を支給することが正当化される法的根拠」については「なし」と回答しています)。上記の対応が違法であることを明確に認定し、かかる違法な運用を構築した者の責任が明らかにされるべきです。

・保護費の分割支給に至った組織的な経緯と担当者の判断について詳細な聞き取り調査等を行い、その判断の適否を実態解明すること。
・1か月分を超えて保護費の全額を渡していなかったことが違法であることを明確に認定し、かかる違法運用を構築した者の責任を明らかにすること。


(2)ハローワークへの通所指導

 桐生市においては、ハローワークへ毎日(またはそれに近い数)の通所を事実上指導され、その通所報告を半ば要件のようにして保護費の分割支給(日々支給)がなされていたとの報道があります。今回、「公開質問状に対する回答」(p.19)では、「ハローワークへ毎日(もしくはそれに近い数の)通所を指導した件数」として、2018(H30)〜2022(R4)年度にかけていずれも「0件」であるとの回答がありました。
 これは、報道にあったような事実については否定されるということでしょうか。それとも「指導のつもりはなかった」(支援や助言として行なった)ということでしょうか。仮にその場合は、福祉事務所職員と要保護者の間には大きな権力関係があり、要保護者は常に大きなプレッシャーを感じていることに対して無自覚であったことを指摘せざるをえません。
 また、同じ「公開質問状に対する回答」(p.18)の分割支給に関する項目で、「ハローワークに毎日通所するよう指導し、「求職活動状況・収入申告書」を提出させたうえで保護費の分割支給をしていた件数」として「1件」が計上されています。上記の回答と矛盾するものであり、桐生市の回答の正確性自体に疑念を生じさせます。先述したとおり、桐生市の保護率減少の要因の一つが、稼働世帯が多く含まれると言われる「その他世帯」の減少です。このことから、就労支援対象者に対して無理な指導・支援が行われていないかを検証する必要があります。

・ハローワークへの日々通所を含めて、稼働能力世帯に対して無理な就労指導が行われていないかを検証すること(就労支援員(警察OB)の支援対象者、CWによる就労指導を行なった対象者の指導状況を検証すること)。

(3)家計簿提出と保護の打切り

 「公開質問状に対する回答」(pp.18-19)によると、桐生市において「家計簿の提出を指導した件数」は集計資料のある範囲で、2019(R1)年度17件、2020(R2)年度11件、2021(R3)年度7件、2022(R4)年度15件が確認されています。この家計簿提出指導の対象者のうち、2019(R1)年度に2件、2020(R2)年度に1件、2022(R4)年度に1件の合計4件が辞退廃止をされています。この家計簿提出が本人の真摯な意思に則した支援ではなく、生活保護の受給継続を断念させるようなものとなっていなかったかについて、辞退廃止となったケースのケース記録等を踏まえて、直接本人への聴き取り等により実態が解明される必要があります。
 また、「平成31年度桐生市福祉事務所実施方針・事業計画」に次のような記載があります。




出所:平成31年度桐生市福祉事務所実施方針・事業計画


 桐生市の独自取り組みとして、「被保護者家計相談支援事業」を策定し、「金銭管理のできない対象者に対して、家計簿をつける習慣をつけることや、NPO法人による金銭管理の利用等を進めた結果、平成30年6月の時点での利用者の数が、成年後見人1名、社協の権利擁護17名、NPO法人37名、家計簿提出指導38名であったが、平成31年3月25現在、成年後見人0名、社協の権利擁護16名、NPO法人28名、家計簿提出指導17名となり、また、家計簿提出停止12名、保護廃止17名という結果となった」と記載されています。
この資料から、桐生市が、組織的に家計簿提出を求めていたこと、NPO法人による金銭管理の利用を勧めていたことがわかります。さらに、「家計簿提出指導17名、家計簿提出停止12名、保護廃止17名」を取り組みの成果として記載していることからすると、生活保護の打切りを目的として家計簿提出を活用していたことが強く疑われます。しかし、収入が増えない限り要保護性に変化はないはずであり、家計簿の提出がなぜ生活保護の打切りにつながるのか、その機序が不可解です(桐生市の回答第2の1⑫によると文書による指導指示件数は2018年が12件である以外は毎年0件であり、指導指示違反による停廃止でもなさそうです)。この家計簿提出(被保護者家計相談支援事業)の組織的運用の実態解明が必要です。

・家計簿提出を指導したケースについて、その指導の適否を検証すること。とくに、辞退廃止を含めて停廃止となったケースについては、指導(家計簿提出)が保護の受給継続を断念するようなものになっていなかったか、停廃止に向けた手続が適法であったかを本人への聞き取りも含めて検証すること。
・家計簿提出の取り組みとして、桐生市で策定した「被保護者家計相談支援事業」の事業経緯と組織的運用の実態解明を行うこと。

(4)金銭管理団体との関わりについて

「公開質問状に対する回答」(p.18)によると、「第三者に保護等の金銭管理が委託された件数」について、2022(R4)年度においては、1)成年後見人2件、2)社会福祉協議会の自立支援事業11件、3)民間団体(日本福祉サポート)26件、4)民間団体(ほほえみの会)29件、5)その他0件となっており、合計68件となる。
2022(R4)年度の被保護世帯数(490世帯)の実に13.9%が金銭管理団体に保護費の委託を行っていることとなる(うち、民間団体2社(26+29=55件)で、全保護世帯の11.2%)。
金銭管理は対象世帯にとって生活の根幹的行為であるが、金銭管理団体とのトラブル等により望まぬ金銭管理を強いられているとの声が、私たちのところにも届いている。(3)にして指摘したとおり、桐生市の実施方針において、「NPO法人による金銭管理の利用等を進めた」との記載があり、このような金銭管理団体の活用が、特定のNPO法人に偏った癒着構造になっていないか。また、金銭管理サービスの利用が、保護利用者の真摯な意思によるものであったのかを検証する必要がある。

・金銭管理団体の金銭管理サービスが、要保護者の権利擁護の視点から問題がないものであるかを検証すること(実際に金銭管理団体により金銭管理サービスを利用している利用者の声を聞き、その内容に問題がないか調査をすること。
・福祉事務所から金銭管理団体に紹介・斡旋を行う場合、金銭管理サービスの利用が必要と判断する場合の基準や目安、運用方法を明らかにして、それぞれの妥当性を検証すること。


(5)通院移送費支給額の異常な低さ
「公開質問状に対する回答」によると、桐生市の通院移送費の支給件数、支給額は下表の通りです。

表 通院移送費の支給件数、支給額


 通院移送費については、保護の実施要領に記載のあるとおり、要保護者の居住地等から比較的近距離に所在する医療機関での対応が困難な場合(徒歩等による通院が困難な場合)、電車・バス等(傷病・障害の状態により、公共交通機関の利用が困難な場合はタクシーなども含む)、生活扶助費とは別に、通院移送費の支給が認められています。また、厚生労働省も、通院交通費が支給できることを生活保護利用者に福祉事務所が周知することを求めています。
桐生市の地理的特性を鑑みれば、近隣の徒歩圏内に適切な医療機関が存在しないことがありうることは容易に想像ができますが、桐生市の被保護人員の規模から考えても、この支給件数、支給額はあまりに低すぎます。特に2022(R4)年においては、年間で8件2400円しか決定されておらず、全国的な傾向からしても異様な状態で、作為的な要因がなければ説明がつきません。この通院移送費の支給状況について検証が必要です。

・通院移送費の支給件数、支給額が著しく低い理由について検証すること。特に、要保護者に対して、通院移送費の適切な説明がなされていたか。支給申請を抑制するような事例がなかったかを検証すること(前年度支給していた世帯の支給状況などを点検・聴き取りすることが考えられる)。

4 組織配置における問題点
(1)警察OBの配置数の多さと趣旨を逸脱した活用

「公開質問状に対する回答」(p.15)によると、桐生市の保護係には、面接相談業務の補助として、2012(H24)年7月から1名、2013(H25)年4月から更に1名の計2名の警察OBが配置されています。この導入時期は、桐生市の保護率が急減した時期とほぼ重なります
また、就労支援相談員としても警察OBが1名配置されています。さらにそのほか同じ福祉課の別係(福祉係)の自立支援相談員(生活困窮者対策)としても1名警察OBが配置されています。警察OBを配置している自治体は、桐生市に限らず複数存在していますが、桐生市の福祉事務所の規模(ケースワーカー6名程度)を鑑みれば、警察OBが保護係で合計3名、福祉課全体(生活保護・生活困窮部局)で合計4名が常時配置されているというのは、他自治体の状況からしてもかなり異様な状況です。

○相談員(警察OB)
この警察OBについては、桐生市から群馬県警に対して毎回、退職警察官の紹介依頼を行なっています(下図)。



 さらに、群馬県警に要望している人材として、「警察官」(警部補、巡査部長、巡査長)のうち、刑事課等での暴力団対応経験者を希望していることもわかりました。







このように、相談者による威嚇行為や不当要求者への対応が必要であるとして警察OBを雇用しており、桐生市は、国からの国庫補助金も毎年受領しています(警察との連携協力体制強化事業)。
上記の事業目的は、「暴力団関係者や威嚇行為、不当要求等に対応するため」としていますが、桐生市は、新規相談・面接では、相談員(警察OB)を原則同席させて2名体制で対応するルールを敷いていることが、私たちが群馬県庁から情報公開請求により入手した桐生市の生活保護監査資料によると明らかになりました。



出所:桐生市令和5年度生活保護法施行事務監査資料


 「公開質問状に対する回答」(p.15)によると、相談員(警察OB)の相談窓口における年間対応件数(新規面接相談における件数)は、2022(R4)年で132件となっており、桐生市の2022(R4)年の相談件数が延べ件数79件、実件数73件を上回る件数となっています。また、私たちが独自入手した相談員(警察OB)の対応記録(帳票)などを見ても、暴力団関係者や不当要求者に限定せず、相談のほとんどに警察OBが同席しています。
このような対応は上記の事業の趣旨目的を大きく逸脱していると考えられ、結果的に生活困窮している相談者や申請者を大きく萎縮させる「水際作戦」としての効果を持っていたことが強く疑われます。

○就労支援相談員(警察OB)

桐生市では、被保護者就労支援事業(生活保護法第55条の7)に基づく事業として、就労支援相談員を雇用していますが、この就労支援相談員は代々群馬県警から退職警察官の斡旋依頼を行なっています。
 この就労支援相談員の配置については、厚生労働省は下記の通知のなかで、「キャリアコンサルタントや産業カウンセラー等の資格を有する者やハローワークOB等の就労支援業務に従事した経験のある者など(中略)であることが望ましい」と示しています。


出所:「被保護者就労支援事業の実施について」(平成27年3月31日付 社援保発0331第20号 厚生労働省社会・援護局保護課長通知

 桐生市は、この就労支援相談員を警察OBから斡旋していますが、その理由を「専門性による」としています。しかしながら、警察OBの専門性は犯罪捜査にあるのであり、困窮者に対する就労支援の専門性として、警察OBの専門性を持ち出すのは明らかに不合理です。
 さらに、独自入手した就労支援相談員(警察OB)の対応記録(帳票)をみると、要保護者の新規相談・新規訪問の場に、この就労支援相談員(警察OB)が同席・帯同している場面が見られました。このような利用方法は、就労支援事業の枠組みを大きく逸脱するものであり、要保護者の権利擁護の面からも、国庫負担金の適正な利用の面からも大きな疑念があります。
 すでに報道でなされているとおり、桐生市は、ハローワークへの毎日通所を保護費支給の条件にしていた疑いが報じられています。このように強引な就労指導などの場面において、警察OBが活用されていた実態の解明と影響の検証が必要です。

 なお、相談員(警察OB:警察との連携協力体制強化事業)、就労支援相談員(警察OB:被保護者就労支援事業)による、各種相談員の業務目的、業務内容(業務の範囲)等の内容を規定する実施要領(要綱)の提出を情報公開請求にて求めたところ、桐生市はいずれの事業においても実施要領等の書類は作成していないとの回答がありました。警察OBの各種相談員に無限定に業務を丸投げするものであり、上記の事業において、実施要領等を整備していない他自治体の例は聞いたことがありません。この点についても行政運用として適切であったかどうかを検証されるべきです。

・警察OBの業務役割、実際の業務内容について、帳票等から実態を明らかにする(実際の窓口相談件数、ケース訪問等への帯同件数を調査する)。
・相談員(警察OB)の業務内容、対象範囲について、警察との連携協力強化事業が想定している範囲を超えて、対応していなかったか(相談者、申請者のすべてを対象とするなど)検証する。
・就労支援相談員について、警察OBとして雇用するようになった経緯とその適格性を検証する。
・就労支援相談員の業務内容について、帳票等から実態を明らかにする(新規相談への同席など、その業務の役割を大きく逸脱していることはなかったか調査する)。


(2)女性職員比率の低さ
「公開質問状に対する回答」(p.11)によると、保護係職員の男女比は2022(R4)年で男性81.8%、女性18.2%、2023(R5)年で男性90.0%、女性10.0%となっています。市職員全体の男女比(2019-2023年度)では女性職員の割合が3割を超えていることからすれば、保護係の男女比率には大きな偏りがあり、女性職員の比率の低さが際立っています。さらに、「回答」では保護係職員全体の男女比を回答されていますが、桐生市の生活保護監査資料によると、生活保護ケースワーカー、地区担当員、管理職に占める女性職員比率は毎年0%であり、女性職員は「医療・介護担当」「庶務・経理・統計担当」「レセプト点検(非常勤)」の事務職員のみです。
 他の自治体(かつての神奈川県小田原市等)の例でも、ケースワーカーや査察指導員に占める女性職員比率が低い自治体において、母子世帯等への厳しい対応を行なっている事例が散見されます。また、私たちが桐生市に対して情報公開請求により入手した「桐生市福祉事務所実施方針・事業計画」によると、桐生市福祉事務所は、「女性CWの配置」を毎年度人事・財政担当部局に要請していることがわかりました。毎年要請しているにもかかわらず、現在に至るまで女性職員が配置されていなかった理由について検証される必要があります。
 また、第三者委員会の第1回会議にて、桐生市から提出された「桐生市の生活保護業務の概要」によると、「3 保護係における職場研修および相談体制」(6頁)のなかで、「基本的には新規相談者が来た際は、該当地区の担当CWと相談員(会計年度職員)の2名で対応する。女性の相談者の場合は該当地区の担当CW及び女性職員で対応している」との記載がありますが、これは「医療・介護担当」や「庶務・経理担当」の女性職員に同席させていたということでしょうか?実際に、年間の女性相談者に対して、そのような事例が何件あったのか、を具体的な数値として提出いただき、その適否も含めて検証する必要があります。

・保護係における男女比の偏りと、福祉事務所からの女性CW要請についての人事・財政部局の対応について検証を行うこと。
・女性の新規相談者に対して、女性職員を同席させていた件数について調査・検証すること。



第3 上記を踏まえた要望
1 上記の調査分析を踏まえた上で、それぞれの問題点についてはさらに詳細な検証が必要である。各項目において検証のポイントを列挙しているので、桐生市の生活保護行政における違法・不適切事案の実態解明と再発防止のために、徹底した実態解明に役立てていただき、効果的で生活保護利用者の権利擁護に資する改善策の実施を行うこと。
  特に、警察官OBについては、直ちに本来の職域(対行政暴力事案等)に関与業務を限定し面接相談や就労相談への関与をやめさせること、警察官OBをはじめとする職員らに対する人権教育を徹底すること。

2 すでに桐生市の調査においても不適切事案の一部について概要が明らかとなり、対応・改善策(8点)が示されているが(令和6年3月27日「保護係職員による不適切事案の概要)、これらの改善策については直ちに行うこと。
以 上



2024/4/8




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