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東京都江戸川区の生活保護検証・検討委員会報告書の公表をふまえて、なお残る大きな問題点について要望書を提出しました。

東京都江戸川区で、生活保護利用者が自宅で死亡していることを担当職員が把握しながら長期間放置し、2023年3月27日、一部白骨化した状態で第三者により発見されてこれが顕在化した件について、同区は、2023年8月15日、外部専門家等による委員会の設置を公表しました。
これ受けて、当会議は、8月21日、同区に対し、公開質問状を提出するなどしました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区に「生活保護行政に関する公開質問状」を、同区が設置した検証及び検討委員会に「要望書」をそれぞれ提出しました。 (fc2.com)

これに対し、同区から9月4日、回答書が届きましたが、当会議は、9月19日、なお残る疑問点について、公開質問状(2)を提出しました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区からの回答書に対し、「生活保護行政に関する公開質問状(2)」を提出しました。 (fc2.com)

これに対し、同区から10月20日、回答書が届き、今後は、専門委員会が十分な審議検討を行うとともに、「議事録及び非公開の場合の議事概要の公表及び最終的な調査報告書の公表において説明責任を果たしていく」との回答でしたので、当会議としては推移を注視することとしました。
生活保護問題対策全国会議 -東京都江戸川区から「生活保護行政に関する公開質問状⑵」に対する回答書が届きました。 (fc2.com)

「江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会」は、検証・検討を重ね、2024年1月29日、検証結果を取りまとめた報告書を提出しました。
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会 江戸川区ホームページ (city.edogawa.tokyo.jp)

今後は、報告書の提言にそった業務改革が進められていくことになりますが、報告書の提案は基本的には評価できるものの、なお大きな問題が残っていると言わざるを得ません。
そこで、当会議は、今後の業務改善にあたっての参考としていただく趣旨で、以下の意見書を江戸川区等に提出しました。

意見書(PDF)のダウンロードはこちらから




2024年(令和6年)4月15日

東京都江戸川区長
 斉藤 猛 殿
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会委員長
 池谷 秀登 殿
 
江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び
再発防止対策検討委員会報告書についての意見書
           

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 弁護士  尾 藤 廣 喜
(連絡先)〒530-0047大阪市北区西天満3-14-16
  西天満パークビル3号館7階 あかり法律事務所
事務局長 弁護士  小久保 哲 郎
TEL 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320

 当会議は、2024年(令和6年)1月29日付け江戸川区生活保護業務不適切事案の検証及び再発防止対策検討委員会(以下「検討委員会」といいます。)報告書(以下「報告書」といいます。)について、

① 本事案の再発防止策について、単発の事件に対する再発防止策にとどまらず、組織的総合的な視点から再発防止策が提案されていること
② 本事案について、単に「不適切」かどうかの検討を行うことにとどまらず、 地方公務員法及び生活保護法に違反した事実があるかどうかの検討を行ったこと


など、全体的には優れた報告書であると評価しております。
 ただし、以下の諸点については、大きな問題が残されていると考えますので、今後の参考としていただきたく、以下のとおり、意見を申し述べます。

1 区議会副議長を検討委員会委員としたことの問題
 当会議は、2023年(令和5年)8月21日付けの東京都江戸川区長宛の「生活保護行政に関する公開質問状」(以下「公開質問状」といいます。)において、第三者委員会については、「対象事案につき、識見を持ち、予断と偏見を排することができる者であり、かつ、利害関係を有しない者でなければならないことは当然のことであり」、区議会副議長が検討委員会の構成員になることは問題であり、同委員から排除すべきものと考えると主張しました。
 この点について、報告書に直接の記載はないものの、「報告にあたって」と題する検討委員会委員長のコメントが報告書とあわせて公表されています。そこでは、上記の検討委員会の構成について、このような「委員会構成は前例を見ない」としながらも、「第三者専門委員会の検討の結果を団体代表委員に示し意見を求めたことで、報告内容がより区民目線に近づくとともに、団体代表委員も第三者専門委員会報告の理解が深まり、各団体代表委員の立場からも今後の再発防止対策が推進されるものと考える」との意見が表明されています。
 しかしながら、このコメントの内容には、以下指摘する種々の問題があります。区議会副議長を検討委員会の委員としたことは、公正・中立性の確保という観点からは明らかに問題で、委員長のコメントにあるような積極的評価はできません。やはり、このような手法は取るべきではなかったことを改めて指摘せざるを得ません。

① コメントでは、区議会副議長と民生・児童委員協議会会長及び東京都人権擁護委員協議会江戸川地区委員会会長を、いずれも代表者委員として同列に扱っていますが、検討委員会の構成上問題とされているのは、日本弁護士連合会のガイドラインからも明らかなとおり、当該自治体の「議員の職にある者」です。区議会副議長と民生・児童委員協議会会長及び東京都人権擁護委員協議会江戸川地区委員会会長を同列に考え、あわせて評価の対象とすることは、そもそも妥当性を欠いています。
② 本来検討委員会の委員から排除すべき区議会副議長の意見を求め、これが、報告書に万一反映されるようなことがあれば、検討委員会が第三者委員会として公正・中立な立場で検討するという考え方と明らかに矛盾します。
③ 委員長のコメントにいう、区議会副議長が委員になることが、「報告内容がより区民目線に近づく」と判断することの根拠がありません。
④ むしろ、報告書作成前に区議会副議長という区の機関の幹部の意見を求めること自体が、報告書の内容について、区の機関とのネゴシエーシュンを図るという結果を招きかねず、検討委員会の公正・中立性を害するものです。
⑤ 今後の再発防止対策の推進は、あくまでも、検討委員会の報告書が出されてから、首長、関係職員、さらに必要であれば関係団体代表委員と協議の場を持つなどしてなされるべきで、報告書作成前に関係団体代表役員が委員として意見を述べることを正当化する理由にはなりません。

  
2 検討過程の公開性が欠けていたことの問題
 当会議は、2023年(令和5年)8月21日付けの「検討委員会の審議にあたっての要望書」の3において、検証委員会の公開を要望しました。
 この点について、検討委員会委員会の設置要綱上は、「会議は公開とする」とされ、「ただし、会議を公開することにより、率直な意見交換若しくは審議の公正性が阻害され、又はそのおそれがあるとき」などに限って非公開とすることができるとされています。ところが、現実には、検証委員会の議論や調査の過程は殆ど公開されず、議事録として公開された部分も、結論を簡潔に記載したものばかりで、実質的な公開はないに等しい内容となっています。
 しかも、事実の認定については、結論が示されているのみで、どのような証拠に基づいて当該の事実認定がなされたのか全く不明です。
 本事案については、当事者からのヒアリングなど公開に適さない部分は非公開とすることで個人情報の保護には十分配慮しながらも、検討委員会の結論に至る議論や調査の過程を公開し、また、事実認定の根拠を十分に示すことによって、公開の実をあげるべきであったと考えます。

3 事案の経過に関する解明が不十分である問題
(1)2023年(令和5年)1月10日、介護ヘルパーが利用者の死亡を発見し、そのことが担当ケースワーカー(以下、「CW」)に伝えられたのに、同年3月27日、福祉用具を貸与していた事業者がご遺体を発見するまでの2か月半の間、どのような経過があり、なぜ放置されたままとなったのか、本事案の検証にあたって、最も解明されるべき肝心なところが、以下のとおり、全く解明されていません。

① 担当CWは、なぜ放置したのか。
② 担当CWがメンター職員に同日、利用者の死亡について報告し、メンター職員が葬祭事業者や不動産会社に連絡するよう助言したにもかかわらず、担当CWは、なぜこの指示に従って行動を起こさなかったのか。
③ メンター職員は、自らが助言した内容が実施されたかどうかを確認したのか。確認していなかったとすれば、なぜ確認しなかったのか。さらに確認した結果放置されていたとすれば、なぜ指示した行動を行うよう督促しなかったのか。
④ その後も、担当CWは、なぜ訪問診療所からの問い合わせに対し虚偽の回答をし、再三の福祉用具事業者から福祉用具の回収の立ち合いの請求に応じなかったのか。また、査察指導員がその状況について、全く把握していなかった具体的な経過と理由、あるいはそこに組織的な問題点があったかどうか。さらに、利用者の死亡後、緊急対応として保護費の支給を窓口払いに変更したとしても、その後1か月以上にわたって支給停止処理をしないことについて、なぜ査察指導員等が疑問を持たなかったのか。
⑤ 利用者の死亡後、当然支給されるべき葬祭扶助の支給がなされていないのに、なぜその点の確認を誰もしなかったのか。


(2)ご遺体が2ヶ月半もの間、放置されたままとなっていたことについて、担当CWが停職5日、担当査察指導員が訓告、担当課長が厳重注意の各処分を受けた後、一部報道機関がその情報を聞き、取材を受けるようになって初めて公表するに至った理由とそこに問題がなかったかも、解明されていません。

(3)生活援護第三課において、2022年(令和4年)4月から同年12月までの短期間に6人ものCWが退職するという異常事態の原因究明がなされていません。この点の究明は、本事案の再発防止を図るために重要な点だと思われます。
また、生活援護第三課において、精神疾患を理由とする病気休職者の割合が全区庁に比べて高くなっているとの指摘がありますが、そのことの原因究明がなされていません。

(4)生活援護第三課において、一部職員が保護受給者や同僚職員に対してハラスメント的な言動を繰り返していたことが確認されたとの指摘がありますが、どのような証拠と手続きでこのような事実認定をしたのか、後日内部公益通報がなされたことや、生活援護第三課の上司が、なぜ当該職員が「言っていることは正論」「完全にブラックなら対処できるがグレーゾーン」と評価したことからすると、ハラスメント的な言動と評価してよいのかどうか、明確にされていません。
この点も、本事案のような事件の再発防止策を検討するにあたって、重要な点であると考えます。

(5)生活援護第三課職員の約3割が、上司の指導・支援・配慮の不足を指摘しているとありますが、具体的にどのような点について、職員が不満を示し、これについて、どのような対策がとられ、あるいはとられずにいたことが、上司の指導・支援・配慮の不足を招いたと評価されるのか、またその対策としては、どのような対策がとられるべきであったのかが、明らかにされていません。

(6)本事案について、区が保有する関係者の個人情報等が外部に漏洩した可 能性が疑われたとあります。しかし、本事案については、区が本件の経過を公表しない中、マスコミの取材が先行し、その結果、区も公表するという経過をたどったことからすると、どの点が内部公益通報と判断され、どの点が個人情報等の漏洩とされるのかが明確にされなければ、議論が進みません。
ところが、その点が明確に整理されていません。
 
4 再発防止策の実効性に疑問が残る問題
(1)「3 事案の経過」において指摘したとおり、本事案の具体的経過と原因究明が十分になされていないため、組織的総合的な視点から提案された再発防止策が、はたしてこれで十分実効性をあげるかについては疑問が残ります。

(2)具体的には、3の(3)及び(5)に関連しては、提案された再発防止策だけで十分なのかに疑問が残ります。
また、3の(4)及び(6)に関連しては、ハラスメント対策の強化とともに、職場内の自由な意見交換の場の保障、さらには、内部公益通報の重視などを行い、本事案を契機に職場の言論が統制されるなどの弊害を招かないような対策も重視される必要があります。

5 継続的な点検・検証、職場内の自由な意見交換、内部通報尊重の必要性
 江戸川区は、既に取り組んでいる再発防止策に加え、報告書で提言を受けた再発防止策についても実施に向けて検討していくとともに、第三者専門委員の協力を得ながら再発防止策の定期的な効果検証を行う考えであることを表明しているところですが、検討委員会から、せっかく組織的総合的な視点からの再発防止策が提案されていることに鑑みて、少なくとも毎年1回程度、検討委員会において、その実行の有無と程度、さらなる再発防止策が必要であるかどうか、また、弊害が発生していないかどうかについて点検、検証する機会を持つべきだと考えます。
 また、江戸川区は、不適切な言動の事実が確認された職員については、所属長による指導を行うとしていますが、本事案の経過と問題点を早急に公表せず、マスコミの取材が先行して初めて公表されたこと、本事案の発生以降、さらに内部公益通報の結果新たな問題事案が表面化していることからすれば、職場内での自由な意見交換の場を保障し、内部公益通報を重視・尊重することが重要であると考えます。
以 上



2024/4/15




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