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●●党 御中
生活保護制度改革に関する公開質問状
2012(平成24)年11月26日
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜
謹啓
晩秋の候、貴党にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、日頃よりの、国政・地方を通じた国民生活向上のための貴党のご尽力に心より敬意を表します。
さて、来る12月16日に投開票となる衆議院総選挙には、貴党も候補者を擁立して国民の信を問われることと存じ上げます。
私たちは、弁護士、司法書士、研究者、支援者、生活保護ケースワーカー、マスコミ関係者、生活保護利用当事者など約350名の会員で構成し、生活保護をはじめとする社会保障制度の改善・充実を求めて活動している市民団体です。
現在、国は、さまざまな生活保護改革を検討し、今回の総選挙にあたっても主要政党が生活保護改革案を提案しています。しかし、その改革案の多くは、不正確な現状認識を前提とする財政的観点からの給付抑制策であって、私たちは、これが実行されると憲法が保障する生存権が空洞化し、餓死・孤立死・自殺などの悲劇が続発するのではないかと危惧しています(生活保護制度の現状等については、同封しているパンフレット類をご参照ください)。
そこで、今回の総選挙に際して国民が政党を選択するための判断材料として提供すべく、別紙の公開質問事項にご回答いただき、生活保護制度改革に関する貴党のお考えをうかがいたいと思います。
このアンケートは、貴党をはじめとする政党各位に送付させていただき、その結果は、当会のブログ(http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/)に掲載させていただくほか、報道機関各位にもお知らせをしたいと考えています。
つきましては、ご多忙の折誠に恐縮ですが、11月末日までに、当会宛てご返送(又はファックスやEメール送信)の上、ご回答をいただければ幸いです。
書簡にて失礼ながら、まずはご挨拶までにて失礼します。
謹白
生活保護制度に関する公開質問事項及び回答書
現在、検討又は提案されている下記の生活保護改革案についての貴党のお考えをご回答ください。なお、各論点についての当会の見解は、別紙のとおりですので、それをご参照のうえ、ご回答をいただけると幸甚に存じます。
1.貧困の拡大と生活保護の現状について
・わが国の貧困率は年々悪化し16%に達しています。このような現状は改善すべきと思いますか。
思う 思わない その他( )
・わが国の生活保護の「捕捉率」は2~3割で受給漏れが多く、保護率(1.6%)も保護費の対GDP比(0.6%。OECD平均の4分の1)も先進国中特異な低さとなっています。このような現状は改善すべきと思いますか。
思う 思わない その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えと、貧困解消のためにどのような施策が必要かについての貴党のお考えをお聞かせください。)
2.「生活保護給付水準の引き下げ」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
3.「現金給付から現物給付へ」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
4.「働ける層(稼働層)の自立支援策実践の義務化や有期保護制」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
5.「ジェネリック医薬品の使用義務付けや医療費一部自己負担制の導入による医療費抑制」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
6.「特定の扶養義務者に対し扶養できないことの証明義務を課す」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
7.「ケースワーカーの民間委託」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
ご協力ありがとうございました。
<本件に関する問合先・返信・返送先>
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 ℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
tk-akari@wmail.plala.or.jp 事務局長 弁護士 小久保 哲郎
<別紙>
生活保護改革に関する各論点についての当会の見解(要旨)
1.貧困の拡大と生活保護の現状について
・国は貧困率の削減目標を立て、年金、雇用保険、子育て支援などの社会保障制度を充実させるべきです。
・不正受給(濫給)対策だけでなく、生活保護の捕捉率を上げ、受給漏れ(漏給)をなくすべきです。
2.「生活保護給付水準の引き下げ」について
・生活保護基準は、最低賃金、住民税非課税基準、就学援助、国民健康保険料や介護保険料等の減免基準などと連動しており、引き下げは市民生活全般の地盤沈下をもたらし、消費不況を悪化させます。
・捕捉率が2~3割程度で受給漏れが大量にある中で、最低位(下位10%)層の消費実態と比較することは貧困ラインの歯止めない引き下げを招きます。
・最低賃金額や年金額とのアンバランスは、国民の最低生活保障の観点から最低賃金額や年金額を引き上げる方向で解消すべきです。
3.「現金給付から現物給付へ」について
・特定の事業者の店舗で使える食料や被服費のクーポン券や電子マネーなどは、システムの構築に莫大な費用を要し、企業の新たな利権を生みます。
・日常生活の中で生活保護利用者であることが分かることになり、さらに生活保護利用に対するスティグマ(恥の烙印)を強めます。
・生活保護利用者のうち、多くを占める乳幼児、高齢者、さらには難病やアレルギー・化学物質過敏症などの疾患や障がいのため、食糧に特別のニーズを持つ人たちが必要な食糧を入手できず、生きていけなくなります。
4.「働ける層(稼働層)の自立支援策実践の義務化や有期保護制」等について
・一定期限で保護を打ち切る合理的根拠はなく、憲法25条に明確に違反します。
・就労困難者のための多様な就労の場を公的に創出するとともに、当事者のニーズに寄り添い、意欲を引き出す支援こそが必要であり、厳しく追い立てるだけでは却って効果が上がりません。
5.「ジェネリック医薬品の使用義務付けや医療費一部自己負担制の導入による医療費抑制」について
・生活保護利用者の8割は高齢世帯、障害・傷病世帯であり、医療費が一般国民(国保)より高いのは当たり前です。
・処方薬依存が一定数予想される精神科に限った4万2197人のサンプル調査(厚生労働省平成22年9月発表)の結果によっても、不適切な受診とされたのが1797人(4.2%)にとどまっており、モラルハザードが生じているという根拠はありません。
・医療費の一部自己負担制度を導入すれば、受診抑制による疾病の重篤化を招き、却って医療費が増大し、当事者の健康や生命を害する結果となる。また、最低生活費を下回る生活を余儀なくされ、生存権を保障した憲法25条違反である。ケースワーカーの事務負担量も莫大に増えます。
・先発薬とジェネリック薬の薬効は全く同一ではなく、特に精神科治療において体質に合わないジェネリック薬の使用が強制されると病状の悪化が懸念されます。
6.「特定の扶養義務者に対し扶養できないことの証明義務を課す」について
・具体的な扶養義務の有無・程度は、扶養義務者の資産、収入だけでなく、家族数や扶養権利者である被保護者との関係(交流の有無、DV・虐待歴の有無等)等にもよるので、証明義務を課す対象を特定し限定する基準づくりは不可能です。
・かかる改正がされれば、民法上、扶養義務の程度は第一次的には当事者の協議により、当事者の協議によって決せないときには家庭裁判所がこれを決するものとされていることとの整合性がとれず、民法改正も視野に入れる必要が生じてきます
・結局において、扶養を保護の要件とすることにほかならず、前近代的な救護法時代の法制度に戻り、生活保護の利用が大幅に抑制され、餓死や孤立死の悲劇が頻発します。
7.「ケースワーカーの民間委託」について
・単純に民間に丸投げするだけでは却ってケースワーク機能が低下することが予想されるので、正規職員の増員と専門職化こそが必要です。
以 上

●●党 御中
生活保護制度改革に関する公開質問状
2012(平成24)年11月26日
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜
謹啓
晩秋の候、貴党にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また、日頃よりの、国政・地方を通じた国民生活向上のための貴党のご尽力に心より敬意を表します。
さて、来る12月16日に投開票となる衆議院総選挙には、貴党も候補者を擁立して国民の信を問われることと存じ上げます。
私たちは、弁護士、司法書士、研究者、支援者、生活保護ケースワーカー、マスコミ関係者、生活保護利用当事者など約350名の会員で構成し、生活保護をはじめとする社会保障制度の改善・充実を求めて活動している市民団体です。
現在、国は、さまざまな生活保護改革を検討し、今回の総選挙にあたっても主要政党が生活保護改革案を提案しています。しかし、その改革案の多くは、不正確な現状認識を前提とする財政的観点からの給付抑制策であって、私たちは、これが実行されると憲法が保障する生存権が空洞化し、餓死・孤立死・自殺などの悲劇が続発するのではないかと危惧しています(生活保護制度の現状等については、同封しているパンフレット類をご参照ください)。
そこで、今回の総選挙に際して国民が政党を選択するための判断材料として提供すべく、別紙の公開質問事項にご回答いただき、生活保護制度改革に関する貴党のお考えをうかがいたいと思います。
このアンケートは、貴党をはじめとする政党各位に送付させていただき、その結果は、当会のブログ(http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/)に掲載させていただくほか、報道機関各位にもお知らせをしたいと考えています。
つきましては、ご多忙の折誠に恐縮ですが、11月末日までに、当会宛てご返送(又はファックスやEメール送信)の上、ご回答をいただければ幸いです。
書簡にて失礼ながら、まずはご挨拶までにて失礼します。
謹白
生活保護制度に関する公開質問事項及び回答書
現在、検討又は提案されている下記の生活保護改革案についての貴党のお考えをご回答ください。なお、各論点についての当会の見解は、別紙のとおりですので、それをご参照のうえ、ご回答をいただけると幸甚に存じます。
1.貧困の拡大と生活保護の現状について
・わが国の貧困率は年々悪化し16%に達しています。このような現状は改善すべきと思いますか。
思う 思わない その他( )
・わが国の生活保護の「捕捉率」は2~3割で受給漏れが多く、保護率(1.6%)も保護費の対GDP比(0.6%。OECD平均の4分の1)も先進国中特異な低さとなっています。このような現状は改善すべきと思いますか。
思う 思わない その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えと、貧困解消のためにどのような施策が必要かについての貴党のお考えをお聞かせください。)
2.「生活保護給付水準の引き下げ」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
3.「現金給付から現物給付へ」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
4.「働ける層(稼働層)の自立支援策実践の義務化や有期保護制」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
5.「ジェネリック医薬品の使用義務付けや医療費一部自己負担制の導入による医療費抑制」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
6.「特定の扶養義務者に対し扶養できないことの証明義務を課す」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
7.「ケースワーカーの民間委託」について
賛成 反対 その他( )
【貴党のご意見】(別紙「当会の見解」についてのお考えをお書きください。)
ご協力ありがとうございました。
<本件に関する問合先・返信・返送先>
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所 ℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
tk-akari@wmail.plala.or.jp 事務局長 弁護士 小久保 哲郎
<別紙>
生活保護改革に関する各論点についての当会の見解(要旨)
1.貧困の拡大と生活保護の現状について
・国は貧困率の削減目標を立て、年金、雇用保険、子育て支援などの社会保障制度を充実させるべきです。
・不正受給(濫給)対策だけでなく、生活保護の捕捉率を上げ、受給漏れ(漏給)をなくすべきです。
2.「生活保護給付水準の引き下げ」について
・生活保護基準は、最低賃金、住民税非課税基準、就学援助、国民健康保険料や介護保険料等の減免基準などと連動しており、引き下げは市民生活全般の地盤沈下をもたらし、消費不況を悪化させます。
・捕捉率が2~3割程度で受給漏れが大量にある中で、最低位(下位10%)層の消費実態と比較することは貧困ラインの歯止めない引き下げを招きます。
・最低賃金額や年金額とのアンバランスは、国民の最低生活保障の観点から最低賃金額や年金額を引き上げる方向で解消すべきです。
3.「現金給付から現物給付へ」について
・特定の事業者の店舗で使える食料や被服費のクーポン券や電子マネーなどは、システムの構築に莫大な費用を要し、企業の新たな利権を生みます。
・日常生活の中で生活保護利用者であることが分かることになり、さらに生活保護利用に対するスティグマ(恥の烙印)を強めます。
・生活保護利用者のうち、多くを占める乳幼児、高齢者、さらには難病やアレルギー・化学物質過敏症などの疾患や障がいのため、食糧に特別のニーズを持つ人たちが必要な食糧を入手できず、生きていけなくなります。
4.「働ける層(稼働層)の自立支援策実践の義務化や有期保護制」等について
・一定期限で保護を打ち切る合理的根拠はなく、憲法25条に明確に違反します。
・就労困難者のための多様な就労の場を公的に創出するとともに、当事者のニーズに寄り添い、意欲を引き出す支援こそが必要であり、厳しく追い立てるだけでは却って効果が上がりません。
5.「ジェネリック医薬品の使用義務付けや医療費一部自己負担制の導入による医療費抑制」について
・生活保護利用者の8割は高齢世帯、障害・傷病世帯であり、医療費が一般国民(国保)より高いのは当たり前です。
・処方薬依存が一定数予想される精神科に限った4万2197人のサンプル調査(厚生労働省平成22年9月発表)の結果によっても、不適切な受診とされたのが1797人(4.2%)にとどまっており、モラルハザードが生じているという根拠はありません。
・医療費の一部自己負担制度を導入すれば、受診抑制による疾病の重篤化を招き、却って医療費が増大し、当事者の健康や生命を害する結果となる。また、最低生活費を下回る生活を余儀なくされ、生存権を保障した憲法25条違反である。ケースワーカーの事務負担量も莫大に増えます。
・先発薬とジェネリック薬の薬効は全く同一ではなく、特に精神科治療において体質に合わないジェネリック薬の使用が強制されると病状の悪化が懸念されます。
6.「特定の扶養義務者に対し扶養できないことの証明義務を課す」について
・具体的な扶養義務の有無・程度は、扶養義務者の資産、収入だけでなく、家族数や扶養権利者である被保護者との関係(交流の有無、DV・虐待歴の有無等)等にもよるので、証明義務を課す対象を特定し限定する基準づくりは不可能です。
・かかる改正がされれば、民法上、扶養義務の程度は第一次的には当事者の協議により、当事者の協議によって決せないときには家庭裁判所がこれを決するものとされていることとの整合性がとれず、民法改正も視野に入れる必要が生じてきます
・結局において、扶養を保護の要件とすることにほかならず、前近代的な救護法時代の法制度に戻り、生活保護の利用が大幅に抑制され、餓死や孤立死の悲劇が頻発します。
7.「ケースワーカーの民間委託」について
・単純に民間に丸投げするだけでは却ってケースワーク機能が低下することが予想されるので、正規職員の増員と専門職化こそが必要です。
以 上