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2013(平成25)年1月22日

厚生労働大臣        田 村 憲 久 殿
消費者・ 少子化担当大臣 森    まさこ  殿
自由民主党 総裁      安 倍 晋  三 殿
公明党   代表       山 口 那津男 殿


子どもの貧困の連鎖を強め,市民生活全体に影響を与える生活保護基準の引き下げを行わないよう求める要請書

                          生活保護問題対策全国会議
                          代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨
 本年1月18日,社会保障審議会の生活保護基準部会(以下「基準部会」という。)が報告書をとりまとめたことから,来年度予算編成に向けて生活保護基準(生活扶助基準)の引き下げの動きが強まっていると報じられていますが,以下述べる理由から,生活保護基準の引き下げは行わないように,強く要請いたします。


第2 要望の理由

1 あまりにも拙速で乱暴です*******************

 厚生労働省は,本年1月16日開催の部会において初めて,平成21年度全国消費実態調査のデータを分析検証した数値を発表するとともに部会報告書案を提示しましたが,そのわずか2日後に報告書が取りまとめられました。
わずか2日で十分な検討ができるはずがなく,手続が余りにも拙速かつ乱暴であって,「最初に結論ありき」と言わざるを得ません。

2 基準部会報告書は生活保護基準引き下げを求めてはいません*****
(1)部会報告書は統計上の信用性に限界があることを自認しています 

 報告書(9頁)は,「(生活保護基準の)値と一般低所得世帯の消費実態との間には,世帯構成によってさまざまに異なる差が生じ得る」としつつ,「具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと,また,特定の世帯構成等に限定して分析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから,全ての要素については分析・説明に至らなかった。」とし,「今後,政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には,(略)検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。」として,分析方法自体の統計上の信用性に限界があることを認めています。

(2)各委員の研究結果によると現行保護基準はむしろ低すぎます
 報告書(同前)が「本部会の議論においては,国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり」と紹介している委員(駒村部会長,岩田委員,山田委員,阿部委員)独自の調査研究の結果は,別紙のとおり,生活保護基準(1級地1)が月額13万8839円であるのに対し,各委員の研究によれば,あるべき最低生活費は月額16ないし21万円であって,むしろ現行生活保護基準の低さが浮き彫りとなっています。
 実際の保護基準の設定にあたっては,こうした委員の研究成果を十分考慮し,反映させるべきです。

(3)第1十分位と比較するという手法自体に大きな問題があります
ア 最下位層との比較は際限のない引き下げを招きます

報告書(9頁)は,「現実には第1十分位の階層には生活保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要」と指摘しています。
 生活保護の「捕捉率」が2~3割に過ぎず,生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「漏給層(制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)」が大量に存在する現状においては,低所得世帯の消費支出が生活保護基準以下となるのは当然のことです。にもかかわらず,最下位層の消費水準との比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば,保護基準を際限なく引き下げていくことにつながり,その結果に合理性がないことは明らかです。

イ 低所得層の生活が地盤沈下している中で最下位層と比較するのは危険です
 そもそも,1984(昭和54)年以降採用されてきた消費水準均衡方式というのは,①平均的一般世帯,②低所得世帯(ここでいう低所得世帯とは第1五分位(下位20%)と第2五分位(下位40%)の世帯),③被保護世帯のそれぞれの消費支出の間の格差の均衡に留意するということであり,単純に第1十分位という下位10%の最下位層の消費支出に生活扶助基準を合わせるというものではありません。
 そのうえ,報告書(9頁)は,「全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移をみると,中位所得階層である第3五分位の占める割合及び第1十分位の占める割合がともに減少傾向にあり,」「とりわけ第1十分位の者にとっては,全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても,その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。」としていることからすると,より一層第1十分位層との比較には慎重であるべきです。

3 生活保護基準の引き下げは生活保護を利用していない市民生活全体に影響します
 ナショナル・ミニマムである生活保護基準の引き下げは,生活保護利用者だけでなく,最低賃金ぎりぎりで働いている労働者,地方税非課税世帯や就学援助等の社会政策を利用している低所得世帯全般に大きな影響を及ぼします。低所得者の所得が減れば,消費減に直結します。20兆円規模の緊急経済対策を打ち出し,公共事業等に惜しげもなく税金を注ぎ込む一方,生活保護利用者をはじめとする低所得者層に対しては容赦なく負担増(実質的な増税)を強いるのは,国家による「弱い者いじめ」であって著しく公平を欠くと言わざるを得ません。
この点については,報告書(8頁)も,「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、(略)現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい。」と強く指摘しています。

4 生活保護世帯の子どもの未来を奪い「貧困の連鎖」が強化されます***
 報告書の検証結果によれば,高齢者世帯以外については,単身世帯,母と子1人世帯,夫婦と子1人世帯,夫婦と子2人世帯のすべてについて軒並み保護基準を引き下げるべきことが示唆されています。特に,子育て世帯の引き下げ率は子どもの数が多いほど大きく,子育て世帯に過酷な内容となっています。
 生活保護世帯における「貧困の連鎖」がかねてから問題とされ,その解消のために生活支援戦略において学習支援の強化などの方策をとろうとする一方で,子育て世帯への現金支給を大幅に減額するというのは矛盾しています。引き下げが実施されれば,生活保護世帯の子どもたちは,ますます厳しい状況に追い込まれ,長じて生活保護から脱却することができず,「貧困の連鎖」が強まることが必至です。
 この点は,報告書(9頁)でも,委員からの意見によって,「今般,生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。」との文言が追加され,特に強調されています。
 子どもたちの未来を奪わないでください。

5 高齢世帯の基準アップは廃止された老齢加算廃止の額に大きく足りません
 報告書の検証結果によれば,高齢者世帯については,保護基準が引き上げられるべきことが示唆されています。
 しかし,検証結果のとおりに生活保護基準が引き上げられることになったとしても,高齢者単身世帯における引き上げ額は約4000円,高齢者夫婦2人世帯における引き上げ額は約2000円に過ぎず,2006(平成18)年に廃止された老齢加算の金額である月額1万7930円(1級地の1)には遠く及びません。
 母子加算同様,老齢加算の復活こそが必要です。

6 電気料金値上げ・インフレ目標のもとでは見送りを      ******
 デフレと言われて久しいですが,価格が大きく下がっているのは耐久消費財等であって水光熱費や食料などの生活必需品の価格は下落しておらず,むしろ電気料金の値上げラッシュが始まっています。しかも,安倍新政権は2%物価を上げると明言しています。
 2007年末にも現在同様に生活保護基準の引き下げが検討されましたが,原油価格の高騰を理由に引き下げが見送られました。今回も同様に,低所得者の生活を直撃する生活保護基準の引き下げはしないよう,強く要請いたします。

                                       以 上


[添付資料①:別紙(あるべき最低生活費についての委員調査結果一覧)]
別紙(あるべき最低生活費についての委員調査結果一覧)]



 









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