チラシのダウンロード(PDF)はこちらから click!

140528市民集会(大阪)

大阪市生活保護行政問題全国調査団
「大阪市の生活保護行政を考える市民集会
 ~区役所交渉でなにがわかったのか~(仮称)」


日時:2014年5月28日(水)18時30分
会場:エルおおさか南館ホール

   アクセス

保護率が日本一高いといわれる大阪市。
その大阪市での生活保護の運用は、一体どうなっているのでしょうか。

区役所での交渉結果をご報告しながら、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。


 大阪市では、生活保護を利用できる人や利用している人たちに対する様々な違法対応が確認されており、「改正」生活保護法の施行を前にして看過できない事態にあります(政令市の中で生活保護利用世帯を減少させているのは、大阪市だけです)。
 私たちは、あるべき生活保護行政を実現するための調査活動を行い、さらに、大阪市の違法運用が他地域に波及することを抑止する意味で「大阪市生活保護行政問題全国調査団」実行委員会を結成しました。
 調査団は5月28日、29日に具体的な事例に基づき、大阪市およびいくつかの区役所との交渉・懇談を行い、市民集会も企画しています。

問題を解決するためには大きな力が必要です。
みなさんの参加をお待ちしています。

連絡先:普門法律事務所 大阪市北区天神橋3丁目3番3号南森町イシカワビル7階
                 電話06-6354-1616 FAX06-6354-1617



 当会は、本日、NPO法人POSSE京都支部と共同で、以下のとおりの公開質問状を大阪市に対して提出しました。

印刷アイコン 印刷用ダウンロードはこちらから







                                    2013年3月4日
                公 開 質 問 状

大阪市長 殿
大阪市福祉局生活福祉部保護課長 殿

                               生活保護問題対策全国会議 
                         (連絡先)大阪市北区西天満3-14-16
                                西天満パークビル3号館7階
                                      あかり法律事務所
                                   弁護士 小久保 哲郎
                                     TEL:06-6363-3310
                                     FAX:06-6363-3320
 
                                  NPO法人POSSE京都支部
           (連絡先)京都市下京区西木屋町通上ノ口上る梅湊町83番地の1
                      ひとまち交流館2階 市民活動総合センター内
                                      代表 川久保 尭弘
                                     TEL:075-365-5101
                                      FAX:075-365-5102

 平素より、職員の皆様におかれましては、より良い生活保護行政の実施のためにご尽力されていることと存じます。
 しかしながら、2012年12月、誤った運用で生活保護廃止を決定し、指摘を受けて撤回するという事件が天王寺区で生じてしまいました。また、鶴見区では高校生のアルバイト収入未申告が当初法78条違反として取り扱われたものの、数ヶ月後に弁護士による指摘があり法63条に変更されるという事例もありました。
 私たちは、これらの事件に関わる中で、なぜこのような事件が生じたのかを調査し、再発を防ぐ措置を講じることについて、強い問題意識を抱いています。そこで、実態や今後の対応に関するいくつかの質問を掲げました。
 現状を正確に把握し、オープンな議論を重ねていくことで、透明性・信頼性の高い保護行政の条件が整います。より良い生活保護行政を目指す想いは共通のものと考えておりますので、以下の質問項目についてご回答くださいますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
 ご多忙中にお手数をおかけして恐縮ですが、2013年3月18日までに上記連絡先宛てにご回答いただきますよう、よろしくお願いいたします。

1 天王寺区でおこった事案について(事案については、後記を参照)
1-1 この事案について、どの点において天王寺区の対応が誤っていたと認識しているか。引っ越し費用の支給について当初言及しなかったことについてどう認識しているのか。
1-2 なぜ、文書による指導なしにいきなり廃止という判断になったのか。ケース検討会議で、その問題性は検討されなかったのか。
1-3 保護受給者の後を付けていく「行動確認」という行為は、生活保護法における具体的にどの条文、あるいは通達に基づいて正当化されるものなのか。また、不要不急の行動確認によって保護受給者のプライバシー等を不当に侵害することのないよう、「行動確認」を正当化し得る場合の基準や方法についての内規等を定めているか。定めている場合には、その内容を明らかにされたい。
1-4 平成25年2月27日に開催された第4回生活保護適正化連絡会議の会議資料「区における不正受給調査専任チームの活動の検証」には、「調査が困難な事例については、ブロック会議などでも調査方法などをお互いに情報共有して対応を行っているが、調査には法的な限界がある。(法では収入・資産しか調査対象とならないため、それ以外の調査は本人の協力(同意) を求めるしかないことなど) 」との記載があるが、収入・資産調査ではなく本人の同意もない「行動確認」を、大阪市は法的にどのように認識しているのか。
1-5 今後、同様の誤りが発生しないようにどのような対応をとるのか。

2 鶴見区でおこった事案について(事案については、後記参照)
2-1 処分庁は、本案件について「収入未申告は全て法78条で対応している」「法78条の適用にあたり『不正受給の意図』といった主観的要件は不要と考えている」という説明を代理人弁護士に対して行っている。「収入未申告はすべて法78条を適用する」、「法78条の適用にあたり主観的要件を不要とする」という対応について、大阪市の一般的見解を明らかにされたい。
2-2 法78条の適用にあたって「不実の申告その他不正な手段により保護を受けた」ことに対する主観的要件の要否について大阪市の見解を明らかにされたい。
2-3 鶴見区保健福祉センター所長は、「法78条の返還決定は『不実の申告その他不正な手段により保護を受けた場合』に決定するとされている」が、本案件について改めて確認したところ「不実の申告その他不正な手段により保護費を受けたと立証できないため法第63条に変更するとの判断を行っ」ている。
 一般的に、法78条の適用にあたって同条の適用要件に関する立証責任は実施機関にあるという理解でよいか。
2-4本案件は、代理人弁護士によって審査請求の申立てが行われているが、処分庁は2度にわたって、審査請求人本人に対し、審査請求の取り下げを依頼している(しかも2度目の取り下げ依頼について、審査請求人の了承を得た、と再弁明書に記述されている)。一般的に、異議申立てが代理人によって行われている場合(行政不服審査法第12条)、代理人弁護士を経ずに審査請求人本人に対し、申立ての取り下げを求めることは代理人の代理権を侵害するおそれがあると思料するが、この点に関する大阪市の見解を求める。

3 大阪市における「不正受給」に対する認識について
3-1
 過去10年間の大阪市における各年の不正受給案件(法78条に基づく返還請求案件)の件数及び金額を明らかにされたい。
3-2 過去10年間の大阪市において、法63条に基づく返還請求案件の各年の件数及び金額を明らかにされたい。
3-3 過去10年間の大阪市における不正受給事案について、その件数及び金額の内訳(稼働収入関係・稼働収入以外の収入関係、など)を年別に明らかにされたい。特に「保護世帯員である高校生のアルバイト収入の不申告」事案の件数及び金額を年別に明らかにされたい。また、無申告または未申告になっていた稼働収入を得た者の世代別(10歳代、20歳代・・・)の件数および金額を明らかにされたい。
3-4 過去10年間の大阪市における不正受給事案について、警察と協議を行った件数、刑事告訴件数、刑事事件として立件(逮捕又は起訴)された件数の年別の推移を明らかにされたい。
3-5 生活保護法78条に「不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。」とあるが、大阪市の認識によると「不実の申請その他不正な手段」とはなにか。
3-6 『生活保護手帳別冊問答集 2012』 「問13-1 不正受給に係る保護費の法第63条による返還又は法第78条による徴収の適用」には、「受給者に不正受給の意図があったことの立証が困難な場合等については返還額についての裁量が可能であることもあって法第63条が適用されているわけである。」とあるが、「不正受給の意図があったことの立証」をどのように行っているのか。

4 適正化推進チーム及び不正受給調査専任チームの実績について
4-1
 適正化推進チーム、および不正受給調査専任チームの取り組み内容はそれぞれどのようなものか。
4-2 これまで適正化推進チーム、および不正受給調査専任チームが関与した不正受給事案の件数及び金額を年別に明らかにされたい
4-3 大阪市が雇用している警察官OBの人数及び配属先を年別に明らかにされたい。
4-4 大阪市の生活保護適正化関連予算の金額及び事業ごとの内訳及び警察官OBの人件費金額を各年別に明らかにされたい。
4-5 適正化推進チームおよび不正受給調査専任チームそれぞれのメンバーに対し、生活保護制度の理念やあるべき実務運用に関する研修や教育の機会を設けてきたか。また、その他に適切な運用を担保するためにどのような措置を講じてきたか。
4-6 不正受給の摘発に関し、職員が利用しているマニュアルのようなものはあるか。
4-7 適正化チーム、および不正受給調査専任チーム設立以来、それぞれのチームが関わった法78条違反事案について、特に打ち切りなどにいたった重大なケースについて、実際の調査の手法や違反と認定した根拠、それらを踏まえた措置(行政処分および立件内容など)がなんであったのか。

5 ケースワーカー業務の実施体制について
5-1
 過去10年間の大阪市におけるケースワーカーの人数及び正規雇用及び非正規雇用(任期付き・パート・アルバイト等)の内訳の推移を明らかにされたい。
5-2 過去10年間の大阪市におけるケースワーカー1人あたりの平均担当受給世帯数はどのくらいか。
5-3 ケースワーカー数、特に正規雇用のケースワーカー数を増やす上で何が障害となっているか。
5-4 大阪市におけるケースワーカーのケースワーカーとしての平均勤続年数を明らかにされたい。
5-5 過去10年間の大阪市におけるケースワーカーのうち、社会福祉主事任用資格保持者率、社会福祉士有資格者率、精神保健福祉士有資格者率は、それぞれ何パーセントか。査察指導員と一般職員について、年別の推移をそれぞれ明らかにされたい。
5-6 今後、社会福祉士等の有資格者をケースワーカーとして積極的に採用していく計画はあるか。計画がないとすれば、その理由は何か。

                        以上



公開質問状は以上ですが、公開質問状中にあげられた天王寺区と鶴見区の事例概要を補足します。

(1)天王寺区の事例
 Aさんは心臓病で働けず、天王寺区内の友人宅に長く居候していましたが、同じ天王寺区内のアパートを借りて生活保護を利用して暮らすことになりました。アパートの入居費用は生活保護から支給されましたが、友人宅においてある生活用品(段ボールにして20箱)を移動させる費用が支給されず荷物が移せなかったので、生活の本拠は依然として友人宅になりました。CWがアパートに家庭訪問した際に、AさんはそのことをCWに訴えましたが、引っ越し費用が支給されることはありませんでした。
 数ヶ月後に、福祉事務所はAさんを役所に呼び出して帰り道を尾行し、メーターや郵便ポストを確認するなどの「行動確認」をして、アパートにAさんの居住実態がないとして、いきなりAさんの生活保護を廃止し、生活保護法78条に基づいて住宅扶助分35万円の返還を求める旨を告げました。
 Aさんから相談を受けたPOSSE京都支部が天王寺区と交渉した結果、当初は区の対応に問題が無いとの回答でしたが、POSSE京都支部が厚労省に問い合わせて指導指示なしの廃止はおかしいとの回答を得た直後に、保護廃止・35万円の返還決定を白紙撤回するとの連絡がありました。
 なお、引っ越し費用についても支給され、Aさんは今はアパートで生活しています。
※事案の詳細は、POSSE京都支部のブログをご参照下さい。

(2)鶴見区の事例
 Bさんの世帯は母子世帯です。10年以上生活保護を利用しており、保護開始時点で長男は3歳でした。その際、長男がアルバイトをした場合の取扱についての説明はありませんでした。Bさん自身の月々の収入申告は欠かさず行っていました。
 数年前に、長男が高校生になりアルバイトをすることになりましたが、Bさんはこのアルバイト代について収入申告が必要であるとは認識していませんでした。2年後にCWとのやりとりの中で、申告の必要があることを指摘され、指示に従ってすぐに通帳などを提出しました。
 鶴見区は、それまでのアルバイト代140万円全額について法78条に基づく返還決定をおこないました。なお、決定より前にもかかわらずBさんに60回以内で分割返済するとの誓約を促していました。
 代理人弁護士が交渉にあたると、鶴見区は「収入未申告は全て法78条で対応」「78条適用に『不正の意図』という主観要件は不要」と説明していました。しかし、Bさんが決定に対して審査請求をすると、「不正受給の意図があったということを立証できない」として78条に基づく処分を撤回しました。
(なお、Bさんは法63条にもとづいての返還を行っています。)
 
 
 



当会含め27団体で6月4日に大阪市に申し入れた「西成区における生活保護受給者の医療機関等登録制度の撤回を求める要望書」に対する回答が、大阪市西成区長から、2012年6月29日にありました。

西成区における生活保護受給者の医療機関等登録制度の撤回を求める要望書

印刷はこちらから 印刷アイコン






(西成区の回答)

 西成区におきましては、これまでも生活保護受給者の適正な医療の確保のため、重複受診の指導を行ってまいりました。しかし、最近の新聞等の報道にもありますように、一部受給者によります重複受診や複数医療機関を利用しての重複服薬が問題視されています。そこで、生活保護受給者の適正な医療を確保するために、「医療機関等登録制度」の実施を検討しております。
 医療扶助の実施にあたっては、便宜上、社会保険等の他制度に準じて取り扱いをしておりますが、生活保護制度は国民の最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これをこえないものでなければならないという原則があり、医療機関等の登録に際しまして、生活保護受給者の希望を聞きながら「医療機関等登録証」に記載していくこととなりますので、これまでの医療扶助に係る指導・助言を越えるものではありません。
 主治医の判断で他医療機関の受診が必要となれば、登録して受診していただくこととなります。大学付属病院などの高次の医療機関と地域のかかりつけ医との同時受診についても、医者の紹介状等をうけとり、受診していただくこととなります。
 セカンドオピニオンや転院についても、必要に応じて対応していきます。
 重複受診や重複服薬を受けることは、生活保護受給者自身の身体にも悪影響を及ぼすことが懸念されることから、これを予防し、生活保護受給者に対する適正な医療を確保するため、医療機関等登録制度は必要と考えます。




 本日、当会議他合計27団体で、大阪市に対し、西成区で導入されようとしている生活保護利用者に
対する医療機関登録制度の撤回を求める申し入れを行いました。

 その後、13時30分より、大阪市政記者クラブにて記者会見を行いました。
 
 記者会見の様子は下記からご覧いただけます。
 (30分ごとに録画が切れてますので、順次ご覧下さい)


 要望書はこちら

   1番目
    

   2番目
    

   3番目
    




印刷用はこちら

                       2012(平成24)年6月4日

西成区における生活保護受給者の医療機関等登録制度の撤回を求める要望書


大阪市長 橋下 徹 殿


(要望団体)
生活保護問題対策全国会議,大阪クレジット・サラ金被害者の会(大阪いちょうの会),社会福祉法人聖フランシスコ会ふるさとの家,歯科保健研究会,わたなべ往診歯科,全大阪生活と健康を守る会連合会,特定非営利活動法人ジョイフルさつき,釜ヶ崎キリスト教協友会,釜ヶ崎医療連絡会議,釜ヶ崎高齢者特別就労組合準備会,野宿者ネットワーク,日本福音ルーテル教会「喜望の家」,関西合同労働組合,派遣労働ネットワーク関西,豊中社会保障推進協議会,大阪民主医療機関連合会,
兵庫県精神障害者連絡会,怒っているぞ!障害者切りすて!ネットワーク関西,怒っているぞ!障害者切りすて!全国ネットワーク,和歌山あざみの会,笹島診療所,右京生活と健康を守る会,近畿生活保護支援法律家ネットワーク,北陸生活保護支援ネットワーク福井,特定非営利活動法人自立生活サポートセンター・もやい,全国クレジット・サラ金問題対策協議会,反貧困ネットワーク(以上,総計27団体)



第1 要望の趣旨
   
1 要望の趣旨

 西成区の生活保護受給者について導入しようとしている「医療機関等登録制度」は,過剰診療・過剰処方の抑制につながらない一方,同区の生活保護受給者に限り不合理な受診障壁をもうけることによって,その適切な医療を受ける権利を侵害し,憲法13条,14条,25条の精神にもとるものであるから,導入を撤回されたい。

第2 要望の理由
1 「医療機関等登録制度」の内容
 
 貴市は,重複受診・重複薬剤処方・不必要な訪問診療などを抑制し,適正な医療を確保することを目的とし,西成区の生活保護受給者が受診する医療機関・調剤薬局の登録制度(以下,「本制度」という。)を本年8月1日から実施するとし,既に,同区の生活保護受給者に対する告知を開始している。
 本制度の概要は,判然としない面もあるが,現在明らかにされている「医療機関等登録制度実施要項(案)」や「医療機関等登録証」裏面の説明文等によれば,次のとおりであると理解できる。

① 西成区の生活保護受給者については,原則として,1診療科につき1医療機関,1被保護者につき1薬局を予め「医療機関等登録証」に登録し,医療機関や薬局の利用の際にこれを提示させることによって,登録していない医療機関や薬局の利用を認めない。
② 登録医療機関以外には医療券は発行しないこととし,救急時以外に医療券を持たずに受診したときは自己負担させる場合もある。
③ 主治医の判断で,専門医への受診・検査等が必要な場合には,紹介状等を受け取り,担当ケースワーカーに相談のうえ,担当ケースワーカーの判断で登録内容を変更する。

2 本制度は,西成区の生活保護受給者の医療を受ける権利を侵害し,その生命・健康に害悪を及ぼすおそれが強い
(1)適切な医療を受ける権利の保障 

 世界医師会総会の「患者の権利に関するリスボン宣言」は,すべての人は,差別なしに適切な医療を受ける権利を有すること,すべての患者は,いかなる外部干渉も受けずに自由に臨床上及び倫理上の判断を行うことを認識している医師からケアを受ける権利を有すること,患者は,担当の医師,病院等を自由に選択し,また変更する権利を有すること,患者はいかなる治療段階においても他の医師の意見を求める権利を有することなどを宣言している。また,わが国も批准している国際人権規約A規約(社会権規約)12条1項は,「この規約の締結国は,すべての者が到達可能な最高水準の身体及び精神の健康を享受する権利を有することを認める」と規定している。これらの権利の保障は,自己決定権(憲法13条),平等原則(同14条),生存権(同25条)を保障した日本国憲法上の要請でもある。
 そして,こうした権利の保障は,生活保護受給者も等しく受けることは当然であるし,西成区の生活保護受給者だけが異なる扱いを受けるいわれのないことも言うまでもない。
 この点,福岡地裁平成21年5月29日判決(確定)も,「医療行為は,人の生命身体に関わる重要なものであるから,本来,患者は,どの病院において,どのような治療,リハビリ等の医療行為を受けるかについて,自ら選択し決定する権利を有するというべきであり,また,その実施にあたっては,医師と患者との信頼関係が極めて重要であることも多言を要しないところである。これらのことは,当該患者が被保護者である場合においても基本的に異なるものではないというべきである。」と判示しているところである。
 ところで,貴市は,本制度の根拠として,生活保護実施要領・医療扶助運営方針3が,「生活保護制度は,国民の最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これをこえないものでなければならないという原則において,他制度と基本的な差異がある」としていることを挙げている。
 しかし,同運営方針2は,「疾病が貧困の主たる原因の一つとなっている現状にかんがみて,特に,医療扶助の実施については,(略)制度の基本原理及び原則に基づき公正妥当な取扱いを行うよう留意すること」としているのであって,生活保護受給者の受ける医療がその他の市民の受ける医療よりも低劣であっても良いということはどこにも述べられていない。平成22年3月30日付厚生労働省社会・援護局保護課長通知が,「生活保護法による医療扶助における指定医療機関の診療方針及び診療報酬については,国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例によって」いるとしているのも,生活保護利用者も一般市民と同様の医療を受ける権利が保障されることが当然の前提とされているからである。

(2)手間が増えること自体による受診抑制の危険性  
 本制度では,登録証に登録されていない医療機関や薬局を利用するためには,主治医の紹介状等を得,担当ケースワーカーに相談して承認を得,登録証の記載を変更してもらったうえで,医療券を発行してもらう必要がある。現在の実務よりも相当な手間・ハードルが増え,時間を要することになる。こうした「手間」は,認知症の高齢者,精神疾患や知的障害を持つ者にとってはもちろんのこと,自己主張や対人交渉が不得手であることの多い生活保護受給者にとっては極めて大きなハードルとなり得る。
支援団体等の支援を得られる者は良いが,そうでない多くの者は,こうした「手間」をこなすことができないことから,本来,必要な受診を抑制し,病状を悪化させることが大いに懸念される。

(3)過度の医療機関・薬局のとりまとめの危険性  
 例えば,同じ内科系でも,循環器,消化器,呼吸器などに複数の疾病を抱えている患者も少なくなく,医療機関側も疾病ごとに専門分野があるので複数の医療機関に通院している場合も多い。
したがって,1診療科1医療機関に限定することの合理性自体が乏しいのであるが,本制度が導入されると,例えば,循環器についてはA病院,消化器についてはB病院,呼吸器についてはC病院を受診している場合に,A病院ですべての疾患について一応受診が可能であれば,受診医療機関をA病院にとりまとめるよう指導がなされるおそれがある。
 1被保護者1薬局に限定することの合理性はさらに乏しい。例えば,内科・整形外科はA病院,精神科は離れた場所にあるB病院に通院している患者は,それぞれの病院の近くにある薬局で処方を受けるのが通常である。しかし,精神科への通院頻度の方が多いことから,B病院近くの薬局に一本化してもらうことになると担当ケースワーカーから言われたという例が既に出ている。そうすると,患者は,A病院に通院した日にも,わざわざB病院近くの薬局まで処方薬をもらいに行かなければならないうえ,精神科の近くにある薬局が,内科や整形外科等に関する処方薬を問題なく取りそろえているとも限らない。
 さらに,上記の例で言うと,A病院は総合病院で精神科もあることから,精神科についてもA病院を受診するよう言われるという,本制度の趣旨さえ逸脱した過度の医療機関のとりまとめの動きも既に出ている。

(4)転院やセカンドオピニオンを受けることができなくなる  
 例えば,ある病院に通院しているが一向に症状が改善せず,主治医の判断が信頼できない場合,患者は,別の病院の医者の意見(セカンド・オピニオン)を聞き,場合によっては,受診先そのものを変更する。特に,精神科では,患者と医師の「相性」が重要であり,患者は信頼できる医師に巡り会うまで転院を繰り返すことが少なくないが,これは他の診療科においても多かれ少なかれ同様であり,こうした行動が保障されることが,より適切な医療を受ける得ることにつながる。
 しかし,本制度では,登録されている以外の医療機関を受けようとする場合には,主治医の紹介状等が必要とされているところ,上記のように患者が主治医を信頼できない場合に主治医から紹介状を書いてもらうことなどできない。

(5)小括  
   以上のとおり,本制度は,不合理な受診障壁をもうけることによって受診抑制を招くおそれが強いこと,過度の医療機関・薬局のとりまとめによって適切な医療を受けられなくなるおそれがあること,新たな病院へのフリーアクセスやセカンドオピニオンを求めることが阻害されることなどから,西成区の生活保護受給者に限って合理的な理由なく,その適切な医療を受ける権利を侵害するものであり,憲法13条,14条,25条の精神にもとるものと言わなければならない。

3 条例によらず「実施要綱」によって権利制限を行うことの違法性

 上記のとおり,本制度は,生活保護受給者の適正な医療を受ける権利を制約するものであるから,正当な根拠があると仮定したとしても,少なくとも条例等の法規によらなければならない。しかし,本制度は,本来,行政機関内部の基準に過ぎない実施要項によって,これを実現しようとする点において,極めて大きな問題がある。
 最高裁昭和60年7月16日判決が,「(市民が)行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には,かかる明示の意思に反してその受忍を強いることは許されない」と判示しているとおり,要綱は法規ではあり得ず法的拘束力を伴わないものであり,それに従わないことそのものを理由として当該市民に不利益を課すことは許されないのである。この点は,行政手続法32条2項が,「行政指導に携わる者は,その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として,不利益な取扱いをしてはならない。」と明記している。
 したがって,仮に西成区内の生活保護受給者が,医療機関等登録証を持参せずに,同登録証に記載のない医療機関を受診しようとしたとしても,そのことを理由として,当該受給者に医療券を発行せず,受診をさせないという不利益を課すことは,行政手続法32条に違反し許されない。このように,強制することが違法となることがらを要綱によって事実上強制しようとする本制度は,その根幹において論理矛盾があり,到底容認できない。

4 制度創設の合理的理由に乏しい
(1)大阪市と西成区の医療扶助費は問題視すべき割合ではない  
 保護費総額のうち医療扶助費が占める割合は,大阪市では,平成11年度の59.2%から平成22年度の45.0%に大きく減少しており,平成22年度の全国の割合47.2%よりも低い。そして,同年の西成区の割合は,43.4%であって,さらに低い。このように全国的にみて,大阪市(とりわけ西成区)の医療扶助費の割合は問題視する数字ではない。
 大阪市の医療扶助費の割合が大きく減少してきたのは,緊急入院保護業務センターの月平均延べ入院人数と保護費総額が,平成16年度の2293人・約146億円から1039人・約74億円に半減したことに起因している。これは,従前,ホームレスの人に対してはアパートでの居宅保護が適用されず,社会的入院を余儀なくされていたものが,ここ数年の間に居宅保護の適正な適用が進み,社会的入院が大幅に解消されつつあることによるものと考えられる。

(2)重複受診・重複服薬の規模が明らかでない  
 本制度の目的は,「重複受診・重複薬剤処方・不必要な訪問診療などを抑制し,適正な医療を確保すること」とされているが,このような不適正な受診行動がどの程度の規模で生じているかのデータは乏しく,平成24年2月の「(仮称)医療機関等登録制度の実施について」と題する文書には,「最近の新聞等による報道にもありますように,一部受給者によります重複受診や複数医療機関を利用しての重複服薬が問題視されております。」と記載されていることからすると,客観的なデータに基づいて本制度の必要性が認識されたわけではなさそうである。厚生労働省が平成22年9月に発表した緊急サンプル調査の結果によっても,後に述べる処方薬依存による過剰処方が一定数予想される精神科に限って,4万2197人の通院レセプトを抽出調査した結果でも,不適切な受診とされたのは4.2%の1797人にとどまっている。
 そうすると,西成区の生活保護受給者による重複受診等の規模が明らかでないままに,同区内の全受給者について一律に本制度を導入することの必要性・合理性もまた不明確であると言わざるを得ない。

(3)本制度という手段を採用することに合理性がない  
 仮に,過剰診療・過剰処方が一定数存在するとしても,本制度という手段を採用することによって,過剰診療等が抑制されることとなるのかについても疑問がある。
 過剰診療・過剰処方については,受給者の側に意図的な悪意がある場合は少なく,医療機関等の側が経営的理由から行っている場合や,患者が処方薬依存になってしまっている場合が多いと思われる。後者の場合も,多くの医師が依存症についての知識や警戒心のないまま,さまざまな依存性薬物を処方し続けることによって「常用量依存」を発症し,減薬や服薬中止をすると,不安,焦燥感,気分の落ち込み,頭痛,発汗,手足のしびれ,離人感,動機,嘔吐などの退薬症状を呈することによるものであるので,ここでも,問われているのは医療のあり方である。
 1箇所で大量の依存性薬物を処方する医療機関も少なくないことからすれば,お酒を買う酒屋を1軒に限っても,アルコール依存症は治らないのと同様に,受診先を1箇所に限定することでは過剰診療や処方薬依存に対する効果は乏しいと言わざるを得ない。

(4)過剰診療等の抑制は,より実質的な効果のある別の方法によるべきである  
ア 厚生労働省が提示している諸施策
 過剰診療等の抑制のためには,厚生労働省が,既に次のような様々な施策を提示している(平成24年3月1日付同省社会・援護局関係主管課長会議資料37頁以下)。
 過剰診療等の抑制を考えるのであれば,まずはこういった諸施策を積極的に実施するべきであり,そうすれば相応の効果が見込まれる。

① 電子レセプトを活用したレセプト点検の強化
 「医療扶助適正化に関する電子レセプト活用マニュアル」(平成24年1月配布)に基づき,レセプト点検を強化することで,頻回受診者,向精神薬重複処方者などの適正化対象者を抽出するとされている。まずは,その実施により過剰診療等の疑いのある者を的確に把握することが対策の出発点である。
② 医療扶助相談・指導員(仮称)の配置
  厚労省案では,後発医薬品の利用促進に主眼が置かれ,ケースワーカーOB等でもよいとされているが,薬剤師・看護師・保健師等の医療専門職を医療相談担当者として各福祉事務所に配置し,不適切な受診行動を行っている者に対する助言指導も担わせるとよい。
③ 指定医療機関に対する効果的・効率的な指導
  電子レセプト等を活用して,生活保護受給者に関する1件あたりの請求金額が高い等突出しているケースについて,重点的にレセプトを個別に内容審査し,請求内容に問題の疑いがある医療機関に対しては重点指導を実施するとされている。

イ そのほかに考えられる施策
上 記以外に西成区独自に試行的な施策を実施し,より効果を上げようというのであれば,次のような施策を検討すべきである。

① より一層の社会的入院解消の促進
 先に述べたとおり,社会的入院の解消は,医療扶助費の削減に大きな効果を及ぼすものであるから,元野宿生活者等の入院患者のうち居宅生活が可能な者について,必要な在宅での支援体制を整えながら居宅保護への変更手続をし,より一層の退院促進策を講じるべきである。
② 釜ヶ崎(あいりん地域)に医療相談室を設置
 医療扶助相談員が西成区役所に置かれたとしても釜ヶ崎とは遠いので,釜ヶ崎地域に医療相談室を設置し,医療扶助相談員として薬剤師・看護師・保健師を常駐させる。
③ 専従医師による疑義医療機関との協議
 レセプトチェックによって診療・処方内容に疑義の生じた医療機関について,医師が出向いて,診療・処方内容等について協議する。間接的に過剰診療等を抑止する効果は大きいと思われる。
④ お薬手帳の活用による処方薬の把握
 生活保護受給者には,1冊のお薬手帳を必ず持ってもらうことにより,重複受診・重複処方を抑制することも考えられる。


5 まとめ
 以上のとおり,本制度は,それを実施したとしても制度目的である過剰診療・過剰処方を抑制する効果は乏しい一方で,生活保護を受給する患者の適切な医療を受ける権利を侵害し,その生命や健康に悪影響を及ぼすおそれが強い。まして,西成区内の生活保護受給者についてのみ,こうした権利制限を及ぼすことの合理的根拠などはなく,法の下の平等に違反する。
 本制度の実施により,結果的に西成区の医療扶助費が減少する可能性はあるだろう。しかし,それは,過剰診療・過剰処方が抑制された結果ではなく,登録制度という受診障壁をもうけることによる受診抑制の結果である。
生活保護受給者の命と健康を削ることによって医療扶助費を削減することが人道にもとることは明かである。
 私たちは,本制度の実施撤回を強く求める。

                   以 上


RECENT ENTRYS

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

来場者数 (2012.6.19~)

コンテンツ

書籍のご案内

生活保護に関する書籍を監修・編著・発行しています。
書籍のご案内は、こちらをご覧下さい
①ネットのでのお申込は
 → 注文フォーム
②FAXでのお申込は、
 → 注文用紙をダウンロード

入会案内・寄付お願い

当会の活動・趣旨に賛同いただける方の入会・寄付を、随時受け付けています。
 →当会の設立趣旨と活動
会員には年1~2回の会報をお送りするほか、メーリングリストで生活保護問題についての情報交換をしています。
入会は、こちらから入会申込書をダウンロード(クリックしてください) の上、事務局までFAXをお願いします。

年会費
○弁護士・司法書士 5,000円
○団体      5,000円
○一般      2,000円
(生活保護利用者、それに準じる所得の方は1,000円)

会費・寄付のお振り込みは以下の口座までご送金下さい。
 りそな銀行 柏原支店
 普通 0096268
 生活保護問題対策全国会議

生活保護問題対策全国会議

問い合わせ先


【お願い】個別事例に対する相談はお受けしておりません。各地の生保ネット clickにご相談下さい。

(事務局)
〒530-0047
大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
あかり法律事務所
  弁護士 小久保 哲郎
 電話 06-6363-3310
 FAX 06-6363-3320

(ブログ作成担当)
〒582-0006
大阪府柏原市清州1-2-3-4
とくたけ司法書士事務所
司法書士 徳武聡子
電話 072-970-2232
FAX 072-970-2233

 seihokaigi@hotmail.co.jp

過去の記事を探す

リンク