当会は、本日、放送倫理・番組向上機構の放送倫理検証委員会に対し、一部の民間放送局による「生活保護問題」に関する報道について、放送倫理基本綱領・日本民間放送連盟放送基準等に照らし、放送内容に問題がないか否か、「放送倫理及び番組の向上に関する審議」に付議し、当該審議に基づく意見をその理由とともに公表されるよう要請いたしました。
 なお、今回審議に付すことを要望する番組については、大別して、以下の三つの観点に基づき、具体的問題点を指摘しております。

(1)番組を全体として見た場合、多様な意見の提示、多角的観点に基づく検証を
  行わず、過剰な演出、一方的な報道等により誤解を招くもの。
(2)放送局が関知しておらず、裏付け取材がなされていない個人の私的な証言を
  一方的に報道したもの。
(3)番組コメンテーターの発言を通して不公正、不正確な内容を報道したもの。

                                      以上


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生活保護制度に関する冷静な報道と議論を求める緊急声明


              生活保護問題対策全国会議 代表幹事 弁護士 尾藤廣喜
              全国生活保護裁判連絡会  代表委員  小 川 政 亮


1 人気お笑いタレントの母親が生活保護を受給していることを女性週刊誌が報じたことを契機に生活保護に対する異常なバッシングが続いている。
 今回の一連の報道は、あまりに感情的で、実態を十分に踏まえることなく、浮足立った便乗報道合戦になっている。「不正受給が横行している」、「働くより生活保護をもらった方が楽で得」「不良外国人が日本の制度を壊す」、果ては視聴者から自分の知っている生活保護受給者の行状についての「通報」を募る番組まである。一連の報道の特徴は、なぜ扶養が生活保護制度上保護の要件とされていないのかという点についての正確な理解(注1)を欠いたまま、極めてレアケースである高額所得の息子としての道義的問題をすりかえ、あたかも制度全般や制度利用者全般に問題があるかのごとき報道がなされている点にある。

 つまり、①本来、生活保護法上、扶養義務者の扶養は、保護利用の要件とはされていないこと、②成人に達した子どもの親に対する扶養義務は、「その者の社会的地位にふさわしい生活を成り立たせた上で、余裕があれば援助する義務」にすぎないこと、③しかも、その場合の扶養の程度、内容は、あくまでも話し合い合意をもととするものであること、④もし、扶養の程度、内容が、扶養義務の「社会的地位にふさわしい生活を成り立たせ」ることを前提としても、なお著しく少ないと判断される場合には、福祉事務所が、家庭裁判所に扶養義務者の扶養を求める手続きが、生活保護法77条に定められていることなどの扶養の在り方に関する正しい議論がなされないまま、一方的に「不正受給」が行なわれているかのごとき追及と報道がなされているのである。
 また、そこでは、①雇用の崩壊と高齢化の進展が深刻であるのに雇用保険や年金等の他の社会保障制度が極めて脆弱であるという社会の構造からして、生活保護利用者が増えるという今日の事態はて当然のことであること、②生活保護制度利用者が増えたといっても利用率は1.6%に過ぎず、先進諸国(ドイツ9.7%、イギリス9.3%、フランス5.7%)に比べてむしろ異常に低いこと,③「不正受給」は、金額ベースで0.4%弱で推移しているのに対して、捕捉率(生活保護利用資格のある人のうち現に利用している人の割合)は2~3割に過ぎず,むしろ必要な人に行きわたっていないこと(漏給)が大きな問題であることなど,生活保護制度利用者増加の原因となる事実が置き去りにされている。(注2)
 さらに、今回の一連の報道は、厳しい雇用情勢の中での就労努力や病気の治療など、個々が抱えた課題に真摯に向き合っている人、あるいは、苦しい中で、さまざまな事情から親族の援助を受けられず、「孤立」を余儀なくされている高齢の利用者など多くの生活保護利用者の心と名誉を深く傷つけている。

2 ところで、今回のタレントバッシングの中心となった世耕弘成議員と片山さつき議員は、自民党の「生活保護に関するプロジェクトチーム」の座長とメンバーである。
 そして、同党が2012年4月9日に発表した生活保護制度に関する政策は、
  ①生活保護給付水準の10%引き下げ、
  ②自治体による医療機関の指定、重複処方の厳格なチェック、ジェネリック薬の使用義務の法制化などによる医療費の抑制、
 ③食費や被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助等の現物給付化、
 ④稼働層を対象とした生活保護期間「有期制」の導入
などが並び、憲法25条に基づき、住民の生存権を保障する最後のセイフティーネットとしての生活保護制度を確立するという視点を全く欠いた、財政抑制のみが先行した施策となっている。
 かつて、小泉政権下においては、毎年2200億円社会保障費を削減するなどの徹底した給付抑制策を推進し、その行きつく先が、「保護行政の優等生」「厚生労働省の直轄地」と言われた北九州市における3年連続の餓死事件の発生であった。今回の自民党の生活保護制度に関する政策には、こうした施策が日本の貧困を拡大させたとして強い批判を招き、政権交代に結びついたことに対する反省のかけらも見られない。
 さらに問題なのは、社会保障・税一体改革特別委員会において、自民党の生活保護に関する政策について、現政権の野田首相が「4か3.5くらいは同じ」と述べ、小宮山厚生労働大臣が「自民党の提起も踏まえて、どう引き下げていくのか議論したい」と述べていることである。
 そこには、「国民の生活が第一」という政権交代時のスローガンをどう実現していくか、また、「コンクリートから人へ」の視点に基づき、貧困の深刻化の中で、この国の最低生活水準をどう底上げしていくのかという姿勢が全く見られない。
 そもそも、生活保護基準については、2011年2月から社会保障審議会の生活保護基準部会において、学識経験者らによる専門的な検討が進められているのであり、小宮山大臣の発言は、同部会に対して外部から露骨な政治的圧力をかけるものであって部会委員らの真摯な努力を冒涜するものと言わなければならない。
 そのうえ、小宮山大臣は、「親族側に扶養が困難な理由を証明する義務」を課すと事実上扶養を生活保護利用の要件とする法改正を検討する考えまで示している。しかし、今回のタレントの例外的な事例を契機に、制度の本来的在り方を検討することなく、法改正を行うということ自体が乱暴極まりない。
 また、生活困窮者の中には、DV被害者や虐待経験者も少なくなく、「無縁社会」とも言われる現代社会において、家族との関係が希薄化・悪化・断絶している人がほとんどである。
 かつて、札幌市白石区で25年前に発生した母親餓死事件は、まさに、保護申請に際して、この扶養をできない証明を求められたことが原因となって発生した事件であった。
 かかる点を直視することなく、法改正を行えば、ただでさえ利用しにくい生活保護制度がほとんど利用できなくなり、「餓死」「孤立死」などの深刻な事態を招くことが明らかである。小宮山大臣は、国民の生活保障に責任をもつ厚生労働大臣として、マスコミに対して冷静な対応を呼びかけるべき立場にありながら、混乱に翻弄されて軽率にも理不尽な法改正にまで言及しており、その職責に反していると言わざるを得ない。

3 今年に入ってから全国で「餓死」「凍死」「孤立死」が相次いでいるが,目下の経済状況下で、雇用や他の社会保障制度の現状を改めることなく、放置したままで生活保護制度のみを切り縮めれば、餓死者・自殺者が続発し、犯罪も増え社会不安を招くことが目に見えている。
 今求められているのは、生活保護制度が置かれている客観的な状況を把握し、制度利用者の実態に目を向け、その声に耳を傾けながら、冷静にあるべき方向性を議論することである。
 当会は,報道関係各位に対しては、正確な情報に基づく冷静な報道を心掛けていただくようお願いするとともに、民主党政権に対しては、今一度政権交代時の「国民の生活が第一」の原点に戻った政権運営を期待し、自民党に対しては、今回の生活保護制度に関する政策の根本的見直しを求め、本緊急声明を発表する次第である。


注1:生活保護制度における扶養義務の取扱いについての詳細については、別に発表する見解を参照されたい。

注2:詳細は、当会ほか59団体の2011年11月9日付「利用者数の増加ではなく貧困の拡大が問題である~生活保護利用者「過去最多」にあたっての見解~」を参照されたい。


※生活保護基準(支給金額)についてはこちらを是非お読みください。
市民生活の岩盤である生活保護基準の引下げに反対する意見書~低きに合わせるのは本末転倒!~

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2011年11月9日

利用者数の増加ではなく貧困の拡大が問題である~「生活保護利用者過去最多」に当たっての見解~

生活保護問題対策全国会議 、全国生活保護裁判連絡会、全国生活と健康を守る会連合会、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、東海生活保護利用支援ネットワーク、生活保護支援ネットワーク静岡、生活保護支援九州ネットワーク、神戸公務員ボランティア、関西合同労働組合、北九州市社会保障推進協議会、福岡生存権裁判弁護団、生存権裁判新潟弁護団、NPO法人青森ヒューマンライトリカバリー、東京借地借家人組合連合会、無年金者同盟、NPO法人多重債務による自死をなくす会コアセンター・コスモス、和歌山あざみの会、くにたち・あみてぃ、反貧困ネットワーク、反貧困ネットワーク栃木、反貧困ネットワーク神奈川、反貧困ネットワーク埼玉、反貧困ネットワークあいち、反貧困ネット北海道、ユニオンぼちぼち(関西非正規等労働組合)、京都健康よろずプラザ、兵庫県精神障害者連絡会、NPO法人神戸の冬を支える会、釜ヶ崎医療連絡会議、女性ユニオン東京、女性と貧困ネットワーク、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡、しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄、女性のための街かど相談室 ここ・からサロン、発言するシングルマザーの会、NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会、全国クレジット・サラ金問題対策協議会、笹島診療所、生活保障支援の会・名古屋、自由と生存の家実行委員会、NPO法人ほっとプラス、ホームレス総合相談ネットワーク、野宿者ネットワーク、みなから相談所、派遣労働ネットワーク・関西、社会保障解体に反対し公的保障を実現させる会、ホームレス法的支援者交流会、大阪いちょうの会(大阪クレジット・サラ金被害者の会)、非正規労働者の権利実現全国会議、全国追い出し屋対策会議、全国公的扶助研究会、夜まわり三鷹、日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会、首都圏青年ユニオン、労働者福祉中央協議会(中央労福協)、反貧困ネットワークえひめ、NPO法人松山たちばなの会、全国「精神病」者集団(以上60団体)


 厚労省は、本日、2011年7月の生活保護利用者数が現行生活保護法において過去最多となったと発表した。利用者数に関するこの間の報道は、その増加自体が問題であるかのようなものが多い。しかし、現在の経済不況や震災失業といった未曾有の危機的状況においても多数の国民が飢えることなく生活できているのは、憲法25条で保障された生活保護制度があればこそである。最後のセーフティネットとして機能している生活保護制度そのものの評価を下げるような報道には違和感を覚える。問題とすべきは、貧困そのものの拡大である。その結果として、やむなく生活保護を利用せざるを得ない人が増加しているのが実状である。
 当会議は、「生活保護利用者数過去最多」に当たって、以下の見解を公表するものである。

第1 見解の趣旨

 第1に、2011年6月の保護利用者数は204万1592人であったが、同年7月の同利用者数が約205万人となったといっても、保護率(保護利用者数の人口比)は約1.6%にとどまり、現行生活保護法において過去最多数の1951年時の保護率2.4%に比してまだ3分の2程度であり、実質的には過去最多とはいえない。

 第2に、すべての国民、市民に最低生活を保障するという生活保護の目的からみると、貧困率16%(2009年)に対して、保護率は1.6%にとどまり、やっと10分の1しか捕捉していない。資産要件(貯金)を加味しても3割余りの捕捉にとどまる。

 第3に、諸外国との比較においても、日本の生活保護率、捕捉率は際立って低い。よって、生活保護がその役割を十分に果たしているとは到底いえない。
 現在求められているのは、貧困の拡大に対して、社会保障制度を拡充し、雇用を立て直すとともに、生活保護制度の迅速な活用によって生活困窮者を漏れなく救済することである。



第2 見解の理由
1 過去最多は過去最大を意味しない ~1951年204万6千人との比較の意味~
(1)利用者数ではなく、保護率で比較するべき

 1951年度の保護利用者数は204万6千人であるが、当時の人口は8457万人であるから、保護率は2.4%になる。これに対して、2011年7月の利用者数が約205万人に達したといっても、現在の推計人口は1億2691万人であるから、保護率は1.6%にとどまる。すなわち、現在の保護率は、1951年の3分の2程度である。当時と同等の保護率になるには、保護利用者が現在の約1.5倍の309万人に達する必要がある。
 このように、実質的に「過去最高水準」と言えるか否かは、利用者数ではなく保護率で比較すべきである。保護率で見ると、近年増加しているとはいえ、未だ「過去最高水準」には遠く及ばないことに留意すべきである。

(2)当時も膨大な漏給(保護漏れ)状態であった
 当時は戦後の混乱期の影響が色濃く残っており、膨大な生活困窮者が存在していたが、生活保護によって救済されていたのは2割にも満たなかった。例えば、やっと戦後が終わったといわれる1955年でも、当時の厚生行政基礎調査(現・国民生活基礎調査)によれば、生活保護世帯の消費水準と同等かそれ以下の水準に留まっている世帯は、204万2千世帯、999万人にも上っていた。これに対して、当時の保護利用者は、66万1千世帯、192万9千人にとどまっていた。したがって、1951年の保護利用者204万6千人といっても、膨大な生活困窮者の中のごく一部分であることに留意すべきである。

(3)当時は社会保障制度が未整備であり、生活保護がワーキングプアを引き受けていた
 当時は、戦後の混乱期の影響から、低賃金労働者が広範に存在していたが、社会保障制度が未整備な段階であった(最低賃金法は1959年、国民皆年金皆保険は1961年)。このため、1951年では、世帯主稼働世帯(世帯員のみ稼働除く)55.3%、1958年では稼働世帯(世帯員のみ稼働も含む)57.7%であった。これに対して、2010年11月の稼働世帯は13.4%にとどまる。1951年当時は、現在以上にワーキングプアを生活保護で支えなければならない状況であり、生活保護への負担がかかって当然であった(にもかかわらず、漏給が多かったのは(2)で述べたとおり)から、この点も留意すべきである。

2 先進諸外国に比べて日本の保護率は著しく低い
 参考図 にあるように、日本の保護率は異常に低い。諸外国では、スウェーデンを始め、少なくとも日本の3倍以上である。また、捕捉率(収入ベースで、貧困水準未満の世帯中の保護利用世帯)も、イギリスを始め、少なくとも日本の3倍以上である。

3 生活保護利用者増加の背景にある雇用と社会保障制度の不全
(1)なぜ生活保護利用者が増えているのか

 近年、稼働年齢層を含む「その他世帯」の比率が増加しているとはいえ13.5%にとどまり、高齢者世帯(44.3%)と傷病・障害者世帯(34.3%)が約8割を占めている(21年度)。すなわち、日本で生活保護利用者が増えているのは、まずもって、年金制度が未成熟で生活保障機能に乏しく、無年金低年金の高齢者や障害者が多数存在することに原因がある。また、非正規雇用の蔓延等によって雇用が不安定化し低賃金の労働者や長期失業者が増えたこと、雇用保険のカバー率が失業者の2割程度と著しく低いこと、子育て世代への支援が乏しく、低所得者に対する住宅セーフティネットもほとんど存在しないことなど、生活保護の手前にある雇用や社会保障制度の手薄さに原因がある。
 こうした状況の中で「最後のセーフティネット」と言われる生活保護の利用者数が増えることはむしろ当然のことであり、多くの生活困窮者の生存を支えているという積極的な面にこそ目を向けるべきである。
問題は、「生活保護利用者が増えていること」や「生活保護利用者そのもの」にあるのではなく、そうならざるを得ない雇用やその他の社会保障制度の脆弱性にある。こうした生活保護利用者増加の真の原因を解決しないまま、生活保護制度や制度利用者を問題視することでは解決にならないし、中長期的には却って問題をこじらせることが明らかである。生活保護制度を切り縮めることではなく、低賃金・不安定雇用への規制を強化し、雇用保険、年金、健康保険、児童扶養手当、子ども手当、住宅手当、生活保障付き職業訓練などの中間的セーフティネットを充実することこそが求められている。

(2)すべての市民に最低生活を保障するという生活保護の目的からみてどうか
 上記のとおり、貧困が広がる中、生活保護制度が積極的な機能を果たしつつあるものの、未だ十分にその本来の機能を果たし得ているとは言えない状況にある。
 すなわち、相対的貧困率(2009年)は過去最高の16%に達している(2011年7月厚労省 )。これに対して、保護率は1.6%にとどまり、生活保護で救済されているのは、やっと1割である。資産要件(貯金)を加味しても3割余りの捕捉にとどまる(2010年4月厚労省)。この要因は、①生活保護水準以下の収入で生活しているにもかかわらず、現行の厳しい受給要件(最低生活費の1か月分以上の預貯金を保有していると保護が開始されない。自動車の保有や使用は原則として認められない。64歳まで稼働能力の活用を求められるなど)を満たさず受給できない世帯、②現行の受給要件を満たしているにもかかわらず、行政の違法な窓口対応(いわゆる「水際作戦」)や違法な指導指示によって保護から排除されている世帯、③行政の広報不足から自らが受給要件を満たしていることを知らない世帯、④世間の偏見、スティグマから申請を思いとどまっている世帯等、膨大な生活困窮者が生活保護から排除されていることにある。
 以上のように、1951年当時の人口、生活保護での救済率、生活保護の目的、海外主要国の公的扶助率等から検証すると、日本の生活保護がその機能を十分に果たしているとは到底いえない。

4 「不正受給」は実態に即した冷静な議論と対策が必要
 不正受給報道が多いため、生活保護=不正受給というイメージが蔓延している。しかし、「不正受給」の実態を、量的・質的な両側面から冷静に捉えることが必要である。
 確かに、不正受給の絶対額は年々増えているが、それは、受給者増に伴い生活保護費の総額が増えていることに伴う当然のことである。発生率で見ると、2009年度では1.54%(発生件数/世帯数)、金額では0.33%にとどまり(別図表 )、大きな変動はない。
 また、不正受給とされるケースの内実はさまざまである。北海道滝川市で06年-07年に起きた元暴力団員による巨額の通院移送費不正受給事件のように悪質なものもあるが、これは役所の姿勢の甘さにも根本的な問題がある。一方で、わずかな勤労収入の不申告が不正受給とされることも多い。そこには、高校生のアルバイト収入の扱いなど制度の側を見直すべきものも含まれる。
 不正受給を解決するには、「不正受給」の背景や要因を、行政の責任も含めて明確にし、高校生のアルバイト収入等などの収入認定除外などの運用の改善、利用者へ申告義務の徹底、ケースワーカーの基準に従った配置(80利用世帯に対して1名)と専門性の向上などが重要である。
 さらに、無料低額宿泊所、「福祉」アパート、悪質医療機関など、いわゆる「貧困ビジネス」といわれる問題についても、当事者が生活保護を受給していることに問題があるわけではない。生活保護受給者を食い物にする業者と、それを容認し、むしろ活用している行政に問題があるのであって、悪質業者に対する規制を強化することによって対応すべき事柄である。
 
第3 まとめ 
 現在求められているのは、過去最高の貧困の拡大に対して、雇用を建て直し、雇用保険を始めとする社会保険の充実、第2のセーフティネットなど生活保護に至る前の社会保障制度を拡充して、生活保護制度への負担を軽減することである 。また、それらの社会保障制度から漏れる市民を、生活保護制度の迅速な活用によって漏れなく救済することである。
以 上

(1)保護率・捕捉率の国際比較
1 保護率 ~日本の保護率(利用者/人口)は異常に低い。
(注)アメリカはSNAP(補足的栄養扶助)
注1










2 捕捉率  ~日本の捕捉率(貧困水準未満の世帯中の保護利用世帯)も低い。
(注)日本・スウェーデンは当該国の公的扶助水準比、独・仏・英はEU基準比(所得中央値の60%、英は求職者)
gazo2








(2)相対的貧困率…日本に住む人を、所得の低い人から高い人からへ順番に並べ、まん中にあたる人の所得(中央値)の半分(112万円)に満たない人の割合。収入金額では、単身世帯では月収9万3千円未満、4人世帯では同じく18万6千円未満の世帯に属する人口の割合。結果的には生活保護基準とさほど変わらない。

(3)
gazu3





    
 



(4) 雇用状況等のデータ一覧
○ 完全失業率4.3%、完全失業者数276万人。有効求人倍率0.66倍(パート込み)。正社員は0.39倍。91万人分の仕事が足りない状況(いずれも2011年8月))
○ 完全失業者に対する失業給付のカバー率は20.9%(2008年)。
○ 基礎年金のみか旧国民年金受給者数は852万人、年金月額4万8,900円(2009年)
○ 国民健康保険料滞納世帯445万(全加入世帯中20.8%)、短期証交付世帯数120万、資格証世帯31万(いずれも2009年)。資格証の受診率は一般世帯の53分の1。国民年金保険料滞納世帯は4割超
○ 2011年10月から職業訓練中の生活保障給付制度が法制化され、求職者支援法が施行された。これは一歩前進といえるが、現在実施されている住宅手当制度も支給対象や内容を拡充したうえで、欧米諸国と同様に、より普遍的な家賃補助制度として法制化することが求められる(このままでは2012年3月で終了)。







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