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当会は、本日以下の緊急声明を発表しました。



2017年12月11日


子どもとお年寄りを狙い撃ちにし

市民生活の底下げをもたらす生活保護基準引下げの提案に強く抗議する緊急声明


生活保護問題対策全国会議


第1 引き下げの内容の過酷さ
1 前代未聞を更新する大幅引き下げ
 厚労省は,2017年12月8日の第35回生活保護基準部会において,2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に引き下げる方針を示しました。
 最大で13.7%もの削減となる世帯(夫婦子2人世帯)も生じる可能性があり,これは,後に述べる2013年から2015年までに行われた「前代未聞」の削減をも上回る大幅削減案です。
2004年からの老齢加算の段階的廃止,史上最大であった2013年からの生活扶助基準の削減(平均6.5%,最大10%),2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の削減に引き続くもので,生活保護利用世帯の厳しい生活をさらに追い詰める過酷な仕打ちというほかありません。
 特に,子どものいる世帯,高齢世帯が狙い撃ちされており,この国の生活保護バッシングは,国による一種の「児童虐待」「高齢者虐待」の域に達しつつ感があります。

2 子どものいる世帯の大幅削減
 部会で配布された資料(1・14~15頁)によると,生活扶助費は,夫婦子2人世帯(都市部)で18万5270円から15万9960円へと2万5310円(13.7%),子2人の母子世帯(都市部)で15万5250円から14万4240円へと1万1010円(7.1%)もの大幅削減となる可能性があります。また,母子加算についても,平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円)削減の可能性があると報じられています(2017年12月9日付毎日新聞朝刊)。
 夫婦子2人の多人数世帯は2013年の引き下げでも,平均18万6000円から16万9000円へ1万7000円(9%)もの削減をされています。このような,子どものいる世帯に対する相次ぐ引き下げは,一方で,国が「子どもの貧困対策の推進に関する法律」で進めようとしている貧困の連鎖解消の方針に真っ向から反するものです。
 生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると「世帯分離」され当該子どもの保護費が打ち切られることもあり,一般世帯の大学等進学率が73.2%(浪人を含めると80%)であるのに対し,生活保護世帯の大学等進学率はわずか36%と半分以下です。
 このことが社会問題となり超党派の国会議員連盟が是正を求めたこともあり,国は,来年度,生活保護世帯の大学生等の住宅扶助費の削減を取りやめ,入学時の一時金を支給するという,ごく小幅の改善を検討していると報じられています。
 しかし,その原資を捻出するために,子どものいる世帯の保護費を大幅削減するというのであれば,全く本末転倒です。わずかな貧困対策をしても「焼け石に水」どころか,大学進学にたどり着く前に生活保護世帯の子どもたちの成長の芽を摘み,大学等進学率はより一層悪化することになるでしょう。

3 高齢世帯に対する相次ぐ削減
 部会で配布された資料(1・15頁)によると,単身高齢(75歳)世帯(都市部)で7万4630円から6万8840円へと5790円(7.8%),高齢(65歳)夫婦世帯(都市部)で11万9200円から10万6020円へと1万3180円(11.1%)の削減がされる可能性があります。
 しかし,単身高齢世帯については,2013年検証の際の生活保護基準部会報告書では,平均7万3000円から7万7000円に4000円(5%)の引き上げが必要とされていました。これは,2004年からの老齢加算(都市部で1万7930円)の段階的廃止で下げ過ぎたので,第1十分位(下位10%)の低所得層と比べても生活扶助基準が低くなり過ぎていたことによるものです。
 ところが,このとき国は,基準部会報告書を全く無視して,部会が出した数値を勝手に2分の1にし,さらに,「デフレ考慮」と称して「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」という全く独自の計算方法で,生活保護世帯は,一般世帯の消費者物価指数の下落率(2.34%)の2倍以上(4.78%)もデフレの恩恵にあずかっているというあり得ない数値を偽装しました。そして,結局,高齢単身世帯の生活扶助基準は,平均7万1000円へと2000円引き下げられたのです。
 このような,相次ぐ高齢世帯の生活保護費削減は,財政の削減効果を出すために,生活保護世帯の大多数を占める高齢世帯をターゲットにしたものとしか考えられません。

4 「引き下げありき」の「引き下げ部会」か
 現在,政府の政策もあり,物価は上昇局面にあります。ところが,今回の検証ではインフレを考慮するという話は一切出てきていません。「デフレは考慮するがインフレは考慮しない」というのは,まさしく「引き下げありき」で検証がされていることが明らかです。
 第25回の生活保護基準部会で岩田正美部会長代理が「次々と保護課の方からお題が出てきて,部会が開かれるごとに何かを下げている。引き下げ部会みたいなイメージがある」と指摘したとおり,生活保護基準部会は「引き下げ部会」に成り下がるのでしょうか。

第2 引き下げの根拠の乏しさ
 今回の引き下げの考え方は,第1十分位という,所得階層を10に分けた一番下(下位10%)の階層の消費水準に合わせて生活保護基準を引き下げるというものです。
 しかし,以下述べるとおり,この手法自体が根本的に間違っていますし,これまでの生活保護基準部会での議論の流れにも反しています。

1 引き下げスパイラルを招く
 日本では,生活保護の捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割以下といわれ,先進諸国と比べても著しく低くなっています。つまり,第1十分位(下位10%)層の中には,生活保護以下の生活をしている人たちがもともと大量に含まれているのであり,その人たちが放置されていることこそが問題です。国に求められているのは,ドイツのように国が生活保護の利用を呼び掛けて捕捉率を上げること,最低賃金を上げ,最低保障年金制度をつくって低所得者層の生活水準を底上げすることです。
 生活保護を利用していない低所得者層と生活保護基準を比べれば,当然生活保護基準が高いという結果になり,これをもとに保護基準のあり方を考えれば,保護基準を下げるしかありません。これでは,どこまでも生活保護基準を下げ続ける引き下げスパイラルを招きます。
 生活保護基準は,ナショナル・ミニマム(国民生活の最低水準)ですから,最低賃金,住民税非課税基準,就学援助など様々な低所得者施策と連動しています。生活保護基準の引き下げスパイラルは,生活保護を利用していない市民全般の生活水準の引き下げスパイラルにつながります。実際,生活保護基準が下げられた後,就学援助の基準が下がる自治体が続出し,年金,医療,介護とあらゆる社会保障制度が削減,自己負担増となり,今や市民生活全般が危機に瀕しています。
 ドイツでは,2010年2月9日の連邦憲法裁判所が,「参照世帯に含まれるのは,統計上確実に社会扶助受給レベルを上回る個人及び世帯でなければならない」として基準額違憲判決を言い渡しています。
 これを契機として,「基準算出需要法」が制定され,単身世帯については下位15%,家族世帯については下位20%を参照世帯とすることが法律で定められました。それでもなお,「隠れた貧困層」(社会扶助を受けられるのに受けていない層)が参照世帯に含まれているのは問題ではないかという議論が続いているのです(ヨハネス・ミュンダー「貧困研究」14号34頁以下,嶋田佳広「ドイツにおける社会扶助基準設定の新たな展開」)。

2 これまでの生活保護基準部会での議論の流れに反する
(1)2013年検証の際の議論
 2013年検証の際の第9回と第11回の生活保護基準部会では,富裕層が「富の取り分」を増やす一方,中間層を含む低所得層が「富の取り分」を減らしているデータが示されました。
緊急声明グラフ
 これを見ると上位30%はいずれも「富の取り分」を増やし,全体所得の約6割を占めていること,「平均的世帯」とされてきた第5・6十分位(=第3五分位)以下の階層のシェアは全体の3割の位置にあること,第1十分位のシェアも減少傾向でほとんど地べたに張り付いていることが分かります。
 この点に関する議論をふまえ,駒村部会長は,このような傾向が続くのであれば,「今後もこの方法(第1十分位を比較対象とする方法)でいいのだろうか。将来この方法を使えるだろうかという懸念がある」と言及していました(第11回部会)。

(2)2013年検証の際の部会報告書~「新たな検証手法の開発が部会の使命」
 こうした議論も踏まえ,どうやって水準均衡方式の相対比較をするのかという手法の開発こそが基準部会の使命と責任である旨の岩田部会長代理の意見で(第12回部会),2013年の基準部会報告書(9頁)に「本部会の議論においては,国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり,将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。」と記載されました。

(3)突然登場した第1十分位との比較論
 こうした経緯から,今回の2017年検証に際しても当初は,「新たな検証手法の検討」が検討課題としてあげられる一方,第1十分位を比較対象とするといった議論はなされてきませんでした。むしろ,岩田部会長代理や山田委員などから第1十分位などの低所得層を比較対象とすることに対して否定的な意見が述べられ,駒村部会長や阿部委員,岡部委員など多くの委員が,その意見に賛意を示していたのです。
 それが,「新たな検証手法の検討」については,2017年6月6日開催の第29回部会の参考資料1における,「現行の水準均衡方式が導入された昭和59年に比べて,雇用基盤や世帯構成などの変化によって社会経済情勢は大きく変化しており,今日の状況により相応しい生活扶助基準の改定方式の開発を目指して,新たな検証手法を検討する必要がある。」等の記述を最後に消えてしまいました。そして,報告書のとりまとめ直前になって,なぜ突然,2013年検証においても疑問視され始め,今回の2017年検証においても委員の多くが疑問を呈していた第1十分位との比較をすることが結論とされたのか,全く理解できません。
 第35回の部会資料1によると,第1十分位と比較する方法と全所得層と比較する方法がありうる(4頁)としながら,後者をとらなかった理由については一応の説明があるものの(13頁「18~64歳の年齢別指数に特異な傾向がみられたほか,2類費について3級地で費用が増加する結果となった」。要はデータに不具合があったということのようですが,中身が分からないので本当かどうかも不明です。),なぜ前者をとるのかの説明は一切ありません。
 (4)アで紹介する2007年検討会報告書が示唆したように,またドイツの法律が定めているように,第1五分位(下位20%)層と比較するなど,別の方法がなぜ検討されていないのか不可解というほかありません。

(4)これまでの検証手法とも矛盾
ア 第1十分位の高齢単身世帯の消費水準が著しく低いことが無視されている
 第35回基準部会資料1(17頁)によると,第3・五分位(平均的所得階層)と比較した第1十分位の消費水準は,夫婦子1人世帯は66%ですが,高齢夫婦世帯は61%,高齢単身世帯は50%にとどまっています。
 2007年検証でも,同様に「平均的所得階層」とされていた第3五分位と第1十分位の消費水準の比較がなされ,夫婦子1人世帯は70%だが,単身高齢世帯は50%にとどまることから,単身高齢世帯について第1十分位を比較対象とすることについて委員から強い異論が出ました。
 そのため,検討会報告書にも,「単身世帯(60歳以上)では,第1十分位の消費支出は第3五分位の消費額の5割程度にとどまっていて低いことから,第1十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは,その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意すべきである(5頁脚注6)」こと,そして,この点を考慮して,「仮に第1五分位を基準にした場合,現在の生活扶助基準額は均衡した状態にあると評価される(5頁2つ目の〇)」ことが記述されました。そして,引下げに反対する世論が高まる中,検討会委員5名全員が連名で出した「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」という異例の文書でも,「『生活扶助基準額の引き下げには,慎重であるべき』との考えを意図し,全委員の総意により,確認されたところである」と説明されているのです。
 このように,2007年検証では,第3五分位と比較した第1十分位の消費水準が単身高齢世帯で50%に止まることが引き下げ見送りの理論的根拠とされました。にもかかわらず,今回の検証では,この点が全く問題とされていないのは一貫性を欠きます。 今の基準部会には,2007年の検討会と同じ委員(駒村康平部会長,岡部卓委員)もおられるのに,なぜこの点を無視した案が提出されているのか不可解でなりません。
イ 必需的耐久消費財の保有率の検討がされていない
 また,2007年検証,2013年検証では,いずれにおいても,「必需的な耐久消費財の保有率」が第1十分位層と第3五分位層とで遜色ないことが,第1十分位を比較対象とすることの正当性として検討されていました。
 上記の2007年検証,2013年検証が必需的耐久消費財のみを検討対象としたこと,何を「必需的」と見るかの選別方法も厳格に過ぎることから,私たちには,両検証の結論そのものに強い異論があります。しかし,それを措くとしても,今回はその検討がされた形跡さえありません。なぜ検討されていないのか,仮に同じような検討をしたらどうなるのか,この点にも疑問が残ります。

第3 これ以上の引き下げは許されない
 2013年からの生活扶助基準の引き下げに対しては,現在,全国29都道府県において955名の原告が違憲訴訟(いのちのとりで裁判)を提起して闘っています。
 既に憲法が保障する「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者をさらに追い詰め,市民生活全般の底下げをもたらす生活保護基準の引き下げは断じて容認できません。
 私たちは,この暴挙に対して最大限の抗議の意思を表明するとともに,全国の当事者,支援者に対して,ともに声をあげることを呼びかけます。

以 上




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 大阪市の4区が顔写真付きの「確認カード」を作成交付している問題で、本日、浪速区の生活保護利用当事者14名(うち7名は代理人弁護士への委任)が「確認カード」を返上し、保管されている写真の廃棄を求めました。これは、10月18日の協議の際、大阪市が「作成はあくまで任意であり、カードの返上、写真の廃棄の要請があれば応じる」旨述べたことを受けたものです。
 当事者代表が下記声明文を読み上げた後、同区の保護課長が、順次、手動シュレッダーでカードと写真を裁断しました。
 保護課長が一人でシュレッダーを回そうとするとうまくいかず、当事者代表が手を添えてシュレッダーを固定するとスムーズにいきました。課長と当事者の共同作業で14人分のカードと写真が裁断されたのです。役所が上から監視管理しようとすると空回りし、役所と当事者が信頼に基づいて手を携えればうまくいくことを象徴しているようで印象的でした。
 私たちは、確認カードの返上が自由であることを当事者に周知するとともに、引き続き大阪市に対して制度の廃止を求めていきます。



2017年11月17日

声明文


大阪市浪速区長 榊  正文 殿


浪速区生活保護利用者一同


 私たちは、貴区に顔写真を撮られ、その顔写真がついた確認カードを交付されました。しかし、この確認カードは、生活保護行政において、全く不要のものであることから、本日これを返却しますので、貴区において保管している私たちの顔写真とともに私たちの面前で廃棄処分をするよう求めます。

確認カードの交付の際、カードの作成が任意であることやこれを拒否しても不利益がないこと、大阪市の4区だけの特別な制度であることについて一切説明がなかったので、私たちはカードの作成は必要なものだと誤解してしまいました。このように何ら説明無く、まるで犯罪者のように顔写真と番号の入った確認カードを作成したことに対し、強く抗議いたします。

確認カード導入の理由について、窓口での生活保護費の支払時や医療券発行時に本人確認を確実に行い、保護費の誤支給やなりすましによる不正受給を防止するとともに窓口での本人確認を速やかに行うためと説明されております。しかし、誤支給はそもそも職員側の事務ミスによって生じるものであり、またなりすましについても、実際に窓口での支給の際になりすましたという例は全くありません。さらに、「確認カード」以外の本人確認の方法と「確認カード」による本人確認で交付の時間にそれほど差が生じるとも考えられません。

このように確認カードは有害無益なものですので、直ちに廃止してください。
そして、このような有害無益なカードにではなく、子どもの学習支援など生活保護利用者にとっても行政にとっても有益なことに力を入れ、血の通った生活保護行政を行ってください。



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 当会が、神奈川県と同県下の全市(ただし、協力を得られなかった厚木市、大和市、南足柄市を除く)の「保護のしおり」を分析・チェックしたところ、誤解を招く不適切な記載が多々見受けられました。そこで、当会は、本日、神奈川県に「小田原市『ジャンパー事件』を契機に福祉事務所への監査のあり方見直しを求める要望書」を提出しました。



2017(平成29)年10月6日

神奈川県知事 黒 岩 祐 治 殿


小田原市「ジャンパー事件」を契機に
福祉事務所への監査のあり方見直しを求める要望書

              
生活保護問題対策全国会議
                       代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨
1 生活保護法施行事務監査は、濫給防止に偏ることなく、漏給防止の観点からも実施すること。
2 平成30年度から、貴県の上記事務監査実施計画の重点事項として、「保護のしおり」及びホームページの記載等につき、①内容が法に適合しているか(誤解を招くものとなっていないか)、②記載すべき事項が記載されているか、③記述が分かりやすいものとなっているか、④アクセスが容易であるか等の項目を加え、添付の評価一覧表を参考に記載内容の是正を求めること。

第2 理由
1 漏給防止の観点からの適切な監査を
 2017(平成29)年1月、神奈川県小田原市の福祉事務所職員らが、「保護なめんな」「不正を罰する」等生活保護利用者を威圧するような文言が記載された揃いのジャンパーを十年間着用し続けていたことが報道され問題となった。
 その後、同市が設置した「生活保護行政のあり方検討会」では、有識者らから、①申請から14日以内の決定という法定期間の不遵守、②ホームレス状態の人々に対して無料低額宿泊所のみを紹介する居宅保護原則に違反する運用、③過度に厳しい扶養調査、④「保護のしおり」の記載内容の不親切・不適切等、多くの問題点が厳しく指摘された。こうした指摘を受けて、同市は、「生活保護のしおり」を全面改訂するなど、保護行政改善の一歩を踏み出している。
 ところが,上記検討会においては、「これまで神奈川県の監査では誉めてもらっていたので混乱している」旨の同市職員の発言がみられた。また、同市職員に対するアンケートでも、「県監査の実施状況からも、現在でも CW の質については県内でもトップクラスであると思う。」、「県の施行監査結果でもわかるとおり、他市と比べてもしっかりと行っているし、ひとりひとりの意識は高いと思っている。」、「県の監査結果を確認してもらえれば一目瞭然であると思うが、県内の福祉事務所の中で保護適正実施ではトップと言っても過言ではないほどの評価を頂いている。」等の記載があり、貴県が小田原市の生活保護行政に対して高い評価を与えていたことが伺える(生活保護アンケート、自由記載欄 質問ⅢーQ5より)。
 すなわち、貴県は、長年にわたって同市の違法又は不適切な生活保護運用を見過ごし、むしろ高い評価を与えていたというのである。とすれば、今回の小田原市「ジャンパー事件」は、違法又は不適切な生活保護運用を是正すべき立場にある貴県が、「漏給(保護を必要とする人が給付を受けられないこと)防止」の観点からの適切な監査を行い得ていなかったために発生したという側面がある。
 そこで、私たちは、貴県に対し、生活保護法施行事務監査を、「濫給(保護を必要としない人が給付を受けていること)防止」に偏ることなく、「漏給防止」の観点からも実施することを求める。


2 特に「保護のしおり」について

(1)はじめに
 厚生労働省の生活保護法施行事務監査事項1(1)は、「保護の受給要件等制度の趣旨は、『保護のしおり』の活用等により、要保護者に正しく理解されるよう十分説明され、相談内容に応じた懇切丁寧な対応が行われているか」を着眼点の冒頭に掲げている。かかる監査を行うためには、その前提として、「保護のしおり」に記載されるべき事項が適切に記載されているか否かを確認することが当然に求められる。
 そこで、私たちは、貴県の事務監査実施計画の重点事項として、「保護のしおり」及びホームページの記載等につき、①内容が法に適合しているか(誤解を招くものとなっていないか)、②記載すべき事項が記載されているか、③記述が分かりやすいものとなっているか、④アクセスが容易であるか等の項目を加えることを求める。
 また、今般、上記のとおり小田原市の「保護のしおり」が大幅に改良されたのを機に、私たちは、貴県及び神奈川県下の全市に「保護のしおり」の提供を求め、回答のなかった厚木市、大和市、南足柄市を除く全自治体の「保護のしおり」について分析評価を行った。その結果、貴県を含むほとんどの自治体の「保護のしおり」に誤解を招く記載など是正を要する記載が多々見受けられた。
 そこで、私たちは、貴県に対し、添付の「保護のしおり」チェックポイント一覧表を参考として、各自治体に記載内容の是正を指導するよう求める。

(2)具体的なチェックポイントと神奈川県下の自治体の保護のしおりの問題点

ア 形式面
 相談すべき場所や電話番号がわかりやすく書かれていることは最低限必要である。
 イラストや図表を利用するなどして見やすいレイアウトがなされていることも不可欠であるが、文字ばかりで一見して読む気をなくすものも少なくない。
 生活保護利用者の中には、障がいや低学歴等で漢字を読めない方も少なからずおられるので、ルビがふってあることが望ましい。

イ 制度の法的位置づけ
 憲法25条の生存権保障に基づく制度であることが記載されるべきであるが、ほとんどの自治体において言及がない。
 単なる「最低生活」ではなく「健康で文化的な生活」を保障するものであることが記載されるべきであるが、これもほとんどの自治体において言及がない。
 生活保護法1条にいう「自立の助長」の「自立」とは、「経済的自立(就労自立)」だけでなく、生活保護を利用しながらの「日常生活自立」や「社会生活自立」を意味するものである(生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書)。しかし、貴県を含めて多くの自治体が「1日も早く自分の力で生活していけるように」と経済的自立(保護から脱却すること)のみを求める誤った記載をしている。

ウ 権利と義務
 生活保護利用者の権利と義務がバランスよく記載されるべきであるが、多くの自治体が義務の記載に偏っている。不服申立て権などの重要な権利についての教示がない自治体も少なくない。
 保護開始・変更申請権の存在は極めて重要な事柄であるが、これが明記されている自治体がほとんどない。申請から決定まで原則14日の法定期間や手続きの流れさえ書かれていない自治体も多いが、これでは、どのようにして生活保護を利用すれば良いかが分からない。
 また、適正かつ自発的な申告を促すためには、申告義務の存在だけでなく、申告した場合の各種控除のメリットを教示することが不可欠である。しかし、申告義務の記載のみがあって申告した場合のメリットの教示がない自治体の方が多い。特に、不正受給の多くを占める高校生のアルバイト料の未申告については、申告しさえすれば多くの控除が認められて殆どの場合不正受給とならずに済むことを積極的に教示すべきである。これを行っている自治体もあるが、未だ少数派である。

エ 保護の要件・他法他施策
 資産保有については、預貯金、保険、不動産、自動車、バイク等を同列に列記し、いずれも同様に(保護を利用する前に)処分を要するかのごとき記載をしている自治体が多い。すぐに換金できる預貯金等以外は、処分を要する場合でも、生活保護利用後の換金で構わない(但し、その間受け取った保護費の返還が必要である)ことを明記すべきである。
 また、居住用不動産については原則保有が認められているのに、その説明がない自治体がほとんどである。また、生命保険や自動車についても例外的に認められる場合があることや、125CC以下のバイクについては原則的に保有が認められることの説明がない自治体がほとんどである。
 生活保護法4条2項にいう、親族扶養が保護に「優先」するとの表現は、最も誤解を招きやすい。扶養の期待可能性のある親族から現に仕送り等の扶養がなされた場合にその分保護費が減額されるという意味であることを正確に説明する必要がある。しかし、親族扶養が保護利用の前提条件であるとの誤解を招く記載も少なからず見受けられる。また、保護利用にあたって本人自身が常に親族に扶養を求めていかなければならないかのごとき誤解を招く記載も少なくない。生活困窮者には親族との関係が悪化している方も多いので、安心して生活保護を利用してもらえるよう、DV、70歳以上、20年以上音信不通等扶養の期待可能性がない場合には、役所からの扶養照会もされないことを積極的に記載し説明すべきである。

オ 保護の種類と内容
 保護の種類や内容について、イラスト等を利用しながらわかりやすく説明している自治体がある一方、こうした説明のない自治体もある。
 最低生活費と収入の差額が支給されることを図示して説明している自治体は多いが、就労の場合の基礎控除などまで説明している自治体は未だ少ない。
 医療については詳しい説明のある自治体とそうでない自治体がある。通院移送費については説明のない自治体が多いが、医療扶助運営容量第3-9(3)が明確に事前に周知を求めている以上、必ず記載されるべきである。治療材料費についても説明のない自治体が多い。
 貴県のしおりには、被服費、家具什器費、転居費用、住宅補修費等の一時扶助が可能であることが明記されており評価できるが、こうした記載のない自治体も少なくない。



(3)まとめ
 以上のチェックポイントは、私たちが議論を重ねて独自に設定したものである。これが唯一無二、完全無欠のものではなく、必要な情報がより正確に制度利用者に伝わるよう改善を重ねる必要があると考えているが、まずは、一つの参考意見として、各自治体に具体的な是正を求めていただきたい。
以 上


添付評価一覧表「保護のしおりチェックポイント」
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各自治体の「保護のしおり」
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 小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」等の不適切な表記のあるジャンパーを作成着用していた問題に関し,同市が設置した「生活保護行政のあり方検討会」が,本日,報告書をとりまとめたことをふまえ、当会は、本日以下の声明を発表しました。




2017年4月6日


小田原市の生活保護行政のあり方検討会報告書の
とりまとめにあたっての声明


生活保護問題対策全国会議


 小田原市の生活保護担当職員が「保護なめんな」等の不適切な表記のあるジャンパーを作成着用していた問題に関し,同市が設置した「生活保護行政のあり方検討会」が,本日,報告書をとりまとめ,同市長に提出した。

 既に,本年2月9日付緊急声明で述べたとおり,同検討会の委員として,学識経験者等のみならず,生活保護利用者の権利擁護に取り組んできた森川清弁護士と元生活保護利用者の和久井みちる氏を招聘したこと,特に元であれ生活保護利用当事者を委員として招聘したことは,それ自体が画期的なことである。当事者の声を直接制度の改善に反映させようとした小田原市の英断は,改めて高く評価されるべきである。

 また,同市は,検討会の運営にあたっても,要望を取り入れて希望者全員が傍聴できるよう最善の配慮を払い,検討会開催後速やかに配布資料をホームページにアップし,議事録についても比較的速やかに全面公開した。このような検討会の運営方法の透明性の高さも,評価されるべきである。

 検討会は,本年2月28日の第1回から3月25日の第4回のわずか1か月間というハイスピードで報告書を取りまとめた。拙速に過ぎるという懸念もあったが,蓋を開けてみれば,どの委員も真摯に忌憚のない意見を述べ,充実した議論が行われた。
同市に寄せられた声の中には担当職員らの行為を支持するものも相当数あったが,検討会は,経過を詳細に分析し,問題点を深く掘り下げる中で,職員らの行為を「愚かな行為」と位置づけ,検討会の第一の目的を「生活保護受給者の権利を守ること」と明確にしたうえで議論を重ねた。これは,当然のこととはいえ,昨今の「弱者バッシング」が蔓延する風潮の中で特に貴重な意味をもつものである。

 取りまとめられた報告書の内容を見ても,問題点として,①ジャンパー作成のきっかけとなった10年前の傷害事件について市側の対応に問題があったこと,②援助を受ける側の視点を欠く等ケースワーカーの専門性の欠如,③女性職員の少なさ,④申請から決定までの期間の長さ(法定期限の不遵守),⑤母子世帯率の低さ,⑥辞退廃止数の多さ,⑦扶養義務者調査の厳しさといった点が指摘され,改善策として,①当事者の声を聴くための無記名アンケート等,②外部の専門家を招いた研修等の強化,③標準数を充足する職員配置と社会福祉士,精神保健福祉士等の有資格者の採用,④保護のしおりや各種実務マニュアル等の見直し,⑤弁護士会等の法律専門家との連携といった提言もなされており,触れるべきと考えられる点がほぼ網羅的に言及されている。

 以上のとおり,今般の検討作業は,あらゆる面において,良い意味で異例であり,短期間で充実した報告書を取りまとめた検討会委員諸氏と,これを事務的に支えた小田原市職員諸氏に,心から敬意を表したい。

 しかし一方,今般の検討作業によって,小田原市の保護行政に大きな問題が厳然としてあることがより一層明確になった。問題はまだ何も解消されておらず,これまでの保護行政を抜本的に変えること,市民が安心して相談できるように改善することは,すべてこれからの課題である。
 私たちは,今後,報告書が指摘した問題点等が着実に改善されることによって,生活保護利用当事者と職員の関係性が相互の「信頼と尊敬」に変化することを望む。そして,ケースワーカーが市民に寄り添う姿勢に立ち,仕事に誇りとやりがいを感じるようになること,そのことが生活保護利用当事者や市民に実感として受け止められるようになることを強く求める。
 私たちは,引き続き同市の取り組みを注視するとともに,変革のために必要な支援・協力をしていく用意があることを改めて表明するものである。

 また,私たちは,今回の問題が,小田原市だけの問題ではないことを,数々の相談事例や取り組みの中で,痛感している。「見えないジャンパー」を着て生活保護利用当事者に接しているケースワーカーは,全国の福祉事務所に多数存在する。
 今回の報告書で指摘された問題点と改善策が,全国の生活保護の現場でも「他山の石」として是非とも生かされることとなるよう,私たちは,そのための活動を今後さらに強めて行く決意である。

以 上



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2018(平成30)年度の生活保護基準見直しに向けて、本年5月から、社会保障審議会・生活保護基準部会の審議が再開されています。当会は、本日、同基準部会と部会委員の方々に対して、質問及び要望書を発送し提出しました。



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社会保障審議会 生活保護基準部会 御中
同 生活保護基準部会委員 各位

今般の生活保護基準の検討にあたっての質問及び要望書


生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾藤 廣喜


 第1 はじめに
 去る本年5月27日,2018(平成30)年度に予定される5年に1度の生活保護基準の見直しに向けた生活保護基準部会が再開されました。

基準部会による検証の無視・軽視
前回の見直しについての基準部会報告書は2013年1月にまとめられましたが,厚生労働省は,同報告書の検証結果をふまえた数値について,同部会に何ら諮ることなく独断で,減額となる世帯だけでなく増額となる世帯についても2分の1としました(資料1・北海道新聞2016年6月18日朝刊
資料2・厚生労働省保護課作成「取扱厳重注意」文書参照)。さらに,厚生労働省は,基準部会では全く検討されなかった「物価」下落を考慮し,しかも,「生活扶助相当CPI」なる通常のCPIとは全く異なる偽装数値を用いて,最大10%・平均6.5%という保護世帯の96%に対する生活扶助基準の引き下げを強行しました(資料3・中日新聞2013年4月10日朝刊参照)。
集団違憲訴訟における国の不誠実な態度
これに対しては,約2万人が審査請求を提起し,さらに現在,全国27都道府県において900名を超える原告が違憲裁判を提起して争っています(資料4・朝日新聞2015年11月3日朝刊参照)。しかし,後述するとおり,訴訟の場においても被告国は,引き下げの具体的な過程やデータを明らかにすることなく,時に必ずしも基準部会の意見を踏まえる必要はないという一方,時に基準部会の了解を得たという,不誠実な態度に終始しています。
今般の検証によるさらなる生活保護基準引下げの懸念
今般,厚生労働省が基準部会に示した「平成29年検証における検討課題(案)」には,「有子世帯の扶助・加算の検証」,「級地区分の在り方の検討」等があげられていますが,前回検証後の経過を踏まえると,民主党政権下で復活された母子加算の再度の廃止等子どものいる世帯の扶助基準の引き下げや,1級地等都市部の扶助基準の引き下げが既定路線とされ,基準部会の検証が,その免罪符として都合よく利用されることが強く懸念されます。

 そこで,私たちは,貧困問題に深い見識をもつ専門家によって構成される基準部会が,その本来的役割を果たすことを念願し,以下のとおり質問をするとともに,以下の諸点をご考慮のうえ審議されることを要望いたします。

第2 質問事項及び説明
1 基準部会の検証の目的について
上記集団違憲訴訟において,国は,「基準部会においては,当初,年齢・人員・級地の3要素を踏まえた相対的な不公平さの是正と生活扶助基準の絶対水準の適正化を同時に検証する予定であったが,第11回部会における複数の委員の異論を踏まえて,絶対水準の検証までは行わないこととなった」旨主張していますが,そのような事実はありますか。
【説明】
(1)被告国の主張
上記集団違憲訴訟において,国は,「前2回の検証(生活保護制度の在り方に関する専門委員会と平成19年の生活扶助基準検討会の検証)は,生活扶助基準が高いか低いかという絶対水準の妥当性を評価し,絶対値としての給付水準を適正化することを目的としていた。しかし,平成25年の基準部会における検証は,かかる絶対値としての給付水準の適正化は目的としておらず,年齢体系,世帯人員体系及び地域(級地)体系における生活保護利用世帯間での相対的な不公平さの是正(ゆがみ調整)のみを目的としていた。」と主張しています。
(2)原告の反論
これに対し,原告側は,第10回基準部会資料2(4頁)に「体系の検証と水準の検証も一体的に行ってはどうか」等の記載があること,同部会において岩田委員が「今回の方法は,(略)単純にモデルで数字比較をするだけではなくて,同時にこの体系検証を行いながらそれをしようとした」と発言していること等から,基準部会の検証は,上記の絶対水準の検証と相対的不公平さの検証を一体的に(同時に)行った点に特徴があったと反論しました。
(3)被告の再反論
これに対し,被告側は,第11回基準部会において,厚生労働省事務局が,「前回の部会におきまして,今回の検証は年齢及び人員並びに級地の3つの要素(略)に焦点を当て,詳細な消費実態の分析に基づく評価検証を行い,その結果を踏まえたうえで水準の検証を行うといったことを基本方針として御了解いただいたところでございます」と発言したのに対し,岩田委員と栃本委員から異論が唱えられたことから,結果的に「絶対水準の検証」までは行わないこととされたと再反論しています(資料6・大阪訴訟における被告第2準備書面14頁)。

2 生活保護世帯のサンプルからの除去について
生活保護受給世帯のサンプルが第1・十分位のデータから除外されなかったことを知っておられましたか。
比較対象をもって比較する(トートロジーになってしまう)という問題点は相対水準の調整にあたっても同様に妥当する以上,上記1における国の主張を前提としても,生活保護受給世帯のサンプルは除外すべきではないでしょうか。
【説明】
 第9回基準部会における議論の結果,生活保護受給世帯と考えられる世帯のサンプルを除去することになりましたが,被告国は,今回の検証にあたって「第1・十分位のデータから生活保護受給世帯と考えられるサンプルは除外していない」と回答しています。そして,それが妥当である理由としては,「データから生活保護受給世帯と考えられるサンプルを除外するか否かは,結果として行わなかった生活扶助基準の絶対水準の検証に関する論点」であるからと主張しています(資料5・大阪訴訟における被告求釈明に対する回答書(2)10頁)。

3 物価の考慮について
 基準部会は,物価を考慮すること,特に,今回厚生労働省が採用したような「生活扶助相当CPI」を考慮することについて了承し,お墨付きを与えたのでしょうか。
【説明】
被告国は,基準部会報告書に「他に合理的な説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合には,それらの根拠についても明確に示されたい。」との記載があることから,「厚生労働大臣が根拠を明示して物価などの経済指標を活用すること自体については,平成25年基準部会の委員全員の了承を得たものとみることができる」と,あたかも今回の物価考慮について基準部会委員全員のお墨付きが得られているかの如き主張をしています(資料6・同上12頁)。

4 基準部会の検証結果の2分の1について
 基準部会の検証結果を踏まえた数値を,増額も減額も2分の1にすることについて,事前事後を問わず,厚生労働省から説明を受け了承をしたことはありますか。
 「激変緩和」を理由とするのであれば,減額となる世帯のみを2分の1にすればよく,増額となる世帯も2分の1にする理由がないと思いますが,いかがでしょうか。
【説明】
「取扱厳重注意・生活保護制度の見直し」についてと題する文書(資料2)は,基準部会報告書とりまとめ直前の世耕弘成内閣官房副長官に対する説明資料として厚生労働省保護課が作成したものですが,基準部会の検証結果を踏まえた数値を減額となる世帯だけでなく,増額となるはずの世帯についても2分の1にしています。
その結果,本来,7万3000円から7万7000円に4000円増額になるはずであった高齢単身世帯や,10万6000円から10万8000円に2000円増額になるはずであった高齢夫婦世帯についても増額が半減され,さらにその後に物価を考慮した引き下げがされたため,結果的には,それぞれ7万1000円(▲2000円),10万3000円(▲3000円)に減額されました。

第3 要望事項及び理由
1 生活扶助基準引き下げの経過の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げに際し,生活保護基準部会に諮ることなく独断で,同部会の検証結果を踏まえた数値を2分の1とした点,及び,生活扶助相当CPIという独自の統計数値の捏造の上に成り立つ大幅な物価下落を考慮した点について,基準部会の議題として取り上げて検証し,基準部会または同部会委員としての見解を表明すること。
 【理由】
   前記のとおり,被告国は,訴訟の場において,物価考慮について基準部会委員全員の了承を得ていた旨の主張をする一方,「生活扶助基準の見直しは必ずしも専門家によって構成される審議会等の検討結果に従って実施しなければならないものではない」とも主張し(資料6・同上7頁),基準部会の検証結果をまさしく都合よく如何様にでも利用すればよいとの姿勢を露わにしています。私たちとしては,専門機関である生活保護基準部会として,また,同部会委員として,このような国・厚生労働省の姿勢を容認しないとの姿勢を明らかにされることを強く期待します。

2 各種生活保護基準引き下げの影響の検証
2013年8月からの生活扶助基準の引き下げ,2015年7月からの住宅扶助基準の引き下げ,同年10月からの冬季加算の引き下げについて,以下の影響を検証すること。
(1) 生活保護世帯にどのような影響を及ぼしたか,世帯類型ごとの影響額,保護廃止世帯数,減額によって支出を抑制した経費などを検証すること。
(2) 生活保護基準と連動している他の制度(地方税,最低賃金,就学援助等の低所得者対策等)への影響の有無及び内容を検証すること。
【理由】
上記の度重なる生活保護基準の引き下げによって,生活保護利用世帯はその生活に多大な影響を受けています。実際,2015年9月から2016年1月にかけて,原告ら653人を対象にして,厚生労働省が2010年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」と同じ質問をしたところ,食生活,衣類,親族・近隣との付き合い等の面で明らかに水準の低下が見られます(資料7・山田壮志郎日本福祉大学准教授による2016年6月11日引下げアカン!関西交流集会における報告レジュメ「生活保護基準引下げ違憲訴訟原告アンケート分析報告」)。国においても,同様に,2010年と同じ調査をすることで,生活保護基準引き下げの影響の有無を検証すべきです。

3 検証方法について
生活扶助基準を検証するにあたっては,問題が多い第1十分位(下位10%)との比較という手法は止め,何が健康で文化的な生活なのかを具体的に検討する手法を開発し,その新たな方法によって今回の検証を行うこと。
【理由】
  第1・十分位世帯の中には,膨大な漏給層(生活保護基準以下の生活水準の層)が含まれており,前回の部会報告書においても,「第1・十分位の等価可処分所得の平均は92万円,最大では135万円となっている。これは第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあることを示している」と指摘されています。このような所得水準の層と比較すれば,生活保護基準引き下げの方向に導かれることが目に見えています。
  本来,水準均衡方式とは,「一般国民の消費水準(全世帯の平均的消費水準)」と比較し,それの6割程度に達していることをもって生活扶助基準の相当性を判断する方式です。基準部会報告書においても,「全所得階層における年間収入総額に占める(略)構成割合の推移をみると,中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり」,全世帯の平均的消費水準との対比における第1・十分位層が占める位置が相対的に低下していることから,「これまで生活扶助基準検証の際参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については,なお今後の検証が必要である。」と指摘されていることからしても,今回の検証に際して,第1・十分位を比較対象とすることは許されないと考えます。

4 有子世帯への扶助・加算
一般低所得世帯の子どもとの均衡から安易に基準を引き下げることがあってはならず,子どもの貧困対策の推進に関する法律が求める,貧困の連鎖・貧困の固定化を防ぐ観点から,子どもの最低生活費がどうあるべきかを検証すること。
【理由】
  私たちは,今般の検証において,母子加算の再度の廃止等有子世帯の扶助・加算の削減が既定路線とされているのではないかと強く懸念しています。
実際,5月27日の基準部会において,鈴木保護課長は,「全体として世帯としては子どもの育成をしていただくということでありますので,そういう意味で,高さを切り離して議論をしてはいけないのではないかと」,「高さ,家計全体を見なければいけない」,「生活保護世帯の中で今の加算が本当にフェアなのかとか,(略)そういう意味では予断なく見直しの検討をする」と母子加算等有子世帯の扶助基準全体の「高さ」を問題にし,引き下げに誘導したい意向をにじませています。

以 上

【連絡先】〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16 西天満パークビル3号館7階
      あかり法律事務所 TEL 06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
E-mail tk-akari@wmail.plala.or.jp
生活保護問題対策全国会議 事務局長 弁護士 小久保 哲 郎


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資料のダウンロードはこちらから
資料1・北海道新聞2016年6月18日朝刊
資料2・厚生労働省保護課作成「取扱厳重注意」文書
資料3・中日新聞2013年4月10日朝刊
資料4・朝日新聞2015年11月3日朝刊
資料5・大阪訴訟における被告求釈明に対する回答書(2)
資料6・大阪訴訟における被告第2準備書面
資料7・山田壮志郎日本福祉大学准教授による2016年6月11日引下げアカン!関西交流集会における報告レジュメ「生活保護基準引下げ違憲訴訟原告アンケート分析報告」

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