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 厚労省は、本年6月27日、本年4月以降に保護開始等された生活保護利用世帯にエアコン購入費等の支給を認める通知を発出しました。しかし、この通知が現場に周知されていないことから、私たちが、本年7月26日、厚労省に対し、同通知の改善・周知等を求める緊急要望を行ったところ、厚労省は、本年8月4日、「実施機関の担当者がこの取り扱いを承知していない旨の指摘がある」として通知の内容の再周知依頼の事務連絡文書を発出しました(下記PDF参照)。
 私たちは、厚労省が要請を真摯に受け止め迅速な再周知を行ったことについては感謝し評価するとともに、本年3月以前に保護開始された者も対象とする等の運用改善を図るよう、改めて強く求めるものです。


第12回総会記念集会

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厚労省から、
エアコン購入費・設置費支給を認める通知!


要点を1枚にわかりやすくまとめたチラシを作成しました。ご活用ください!

チラシ


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〔厚労省通知改善〕
 本年4月1日以降に一定の条件を満たす方に対して、エアコン購入費(上限5万円)と設置費の支給が認められるようになりました。

 厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました。
 酷暑で熱中症が心配される中、通知を存分に活用しましょう!
 通知の内容は以下のとおりです。

エアコン購入費等が認められる場合
 以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合

2018年4月1日以降に
(ア)保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
(イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
(ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
(エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない


※「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)とは?
 課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。
 「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とされているのは、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものです。
 日本全国が灼熱列島となっている今、エアコンの持ち合わせがない方は、積極的に福祉事務所に申請しましょう。
 
※本年3月以前に保護を開始された人は?
 本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
 しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給が認められてしかるべきです。例えば、2月や3月に保護開始された人と4月に開始された人のおかれた状況に大差がないことは明らかです。積極的に申請し、仮に却下されたら審査請求や訴訟で争う余地があると考えられます。

「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能なはずです
 本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずで(実施要領局長通知第7-4(2)ア)。
エアコンが壊れていて使えない方は、「住宅維持費」として修理費を請求してみましょう。




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 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、厚生労働省に緊急要望をしました。



2018年7月26日

厚生労働大臣 加藤勝信 殿
いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護問題対策全国会議


厚労省通知の改善・周知と夏季加算創設等を
求める緊急要望書


第1 要望の趣旨
 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、以下の諸点を緊急に要望します。
1 生活保護利用者にエアコン購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認める厚労省通知に関し、実施機関の柔軟な運用が可能であり必要であることを含め、改めて周知徹底してください。
2 上記通知について、本年3月以前に保護開始された者も対象とするよう改正してください。
3 実施要領局長通知第7-4(2)アの「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能であることを周知してください。
4 生活保護利用者が電気代を心配せずエアコンを使えるように、この間引き下げられ続けている生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算を元に戻し、夏季加算を創設してください。

第2 要望の理由
1 エアコン購入費等の支給を認める本件厚労省通知の内容
 厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました(以下、「本件厚労省通知」といいます。)。
 通知の内容は以下のとおりです。

(1)エアコン購入費等が認められる場合
 以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合
(ア)2018年4月1日以降に保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
(イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
(ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
(エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない

(2) 「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)の解釈
 課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。

2 本件厚労省通知の評価
(1)周知がまったく不十分である
 酷暑にあたり冷房器具購入費等の支給を認める本件厚労省通知が発出されたこと自体は評価できます。
 しかし、私たちの知る範囲でも、本件厚労省通知の内容を知らないケースワーカーも多く、福祉事務所の現場への周知はまったく進んでいません。通知の対象となり得る生活保護利用者にきちんと情報が届くよう、周知を徹底する必要があります。

(2)実施機関の柔軟な運用が可能であり、必要であることを周知すべき
 また、「熱中症予防が特に必要とされる者」について、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とした点も、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものと理解できます。
 しかし、実施機関によっては、上記の例示の場合に限定した厳格な運用を行うことも想定されます。近年、日本全国において記録的猛暑が続き、健康な者でも熱中症を発症するリスクが高い以上、できる限り柔軟な運用が求められていることを重ねて周知することが必要です。

(3)本年3月以前に保護を開始された人も対象にすべき 
 一方、本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
 しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、もともと「最低生活費」である保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
 したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給を認めるよう本件通知は改善されるべきです。

3 「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給が可能であることも周知すべき
 本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
 したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずです(実施要領局長通知第7-4(2)ア)。
 本件厚労省通知の改めての周知に際しては、この点についても併せて周知すべきです。

4 生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の復活と夏季加算の創設
 先に述べたとおり、この間のあいつく生活保護基準の引き下げのため、生活保護利用者の多くは、エアコンが自宅にあったとしても、電気代を節約するためにほとんど使わないようにしています。これでは、せっかくエアコンを設置したとしても熱中症対策にはならず「宝の持ち腐れ」です。
 悲劇が起きる前に、国は、一連の生活保護基準引き下げを撤回して元に戻し、夏季加算を創設すべきです。

以 上




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各通知書面

「一時扶助二おける家具什器費の見直しについて」

『「生活保護法による保護の実施要領について」の一部改正について』

『「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正について(通知)』

『「生活保護問答集について」の一部改正について』



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当会は、本日以下の緊急声明を発表しました。



2017年12月11日


子どもとお年寄りを狙い撃ちにし

市民生活の底下げをもたらす生活保護基準引下げの提案に強く抗議する緊急声明


生活保護問題対策全国会議


第1 引き下げの内容の過酷さ
1 前代未聞を更新する大幅引き下げ
 厚労省は,2017年12月8日の第35回生活保護基準部会において,2018年度から生活扶助基準本体や母子加算を大幅に引き下げる方針を示しました。
 最大で13.7%もの削減となる世帯(夫婦子2人世帯)も生じる可能性があり,これは,後に述べる2013年から2015年までに行われた「前代未聞」の削減をも上回る大幅削減案です。
2004年からの老齢加算の段階的廃止,史上最大であった2013年からの生活扶助基準の削減(平均6.5%,最大10%),2015年からの住宅扶助基準・冬季加算の削減に引き続くもので,生活保護利用世帯の厳しい生活をさらに追い詰める過酷な仕打ちというほかありません。
 特に,子どものいる世帯,高齢世帯が狙い撃ちされており,この国の生活保護バッシングは,国による一種の「児童虐待」「高齢者虐待」の域に達しつつ感があります。

2 子どものいる世帯の大幅削減
 部会で配布された資料(1・14~15頁)によると,生活扶助費は,夫婦子2人世帯(都市部)で18万5270円から15万9960円へと2万5310円(13.7%),子2人の母子世帯(都市部)で15万5250円から14万4240円へと1万1010円(7.1%)もの大幅削減となる可能性があります。また,母子加算についても,平均2割(都市部で2万2790円の場合4558円)削減の可能性があると報じられています(2017年12月9日付毎日新聞朝刊)。
 夫婦子2人の多人数世帯は2013年の引き下げでも,平均18万6000円から16万9000円へ1万7000円(9%)もの削減をされています。このような,子どものいる世帯に対する相次ぐ引き下げは,一方で,国が「子どもの貧困対策の推進に関する法律」で進めようとしている貧困の連鎖解消の方針に真っ向から反するものです。
 生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると「世帯分離」され当該子どもの保護費が打ち切られることもあり,一般世帯の大学等進学率が73.2%(浪人を含めると80%)であるのに対し,生活保護世帯の大学等進学率はわずか36%と半分以下です。
 このことが社会問題となり超党派の国会議員連盟が是正を求めたこともあり,国は,来年度,生活保護世帯の大学生等の住宅扶助費の削減を取りやめ,入学時の一時金を支給するという,ごく小幅の改善を検討していると報じられています。
 しかし,その原資を捻出するために,子どものいる世帯の保護費を大幅削減するというのであれば,全く本末転倒です。わずかな貧困対策をしても「焼け石に水」どころか,大学進学にたどり着く前に生活保護世帯の子どもたちの成長の芽を摘み,大学等進学率はより一層悪化することになるでしょう。

3 高齢世帯に対する相次ぐ削減
 部会で配布された資料(1・15頁)によると,単身高齢(75歳)世帯(都市部)で7万4630円から6万8840円へと5790円(7.8%),高齢(65歳)夫婦世帯(都市部)で11万9200円から10万6020円へと1万3180円(11.1%)の削減がされる可能性があります。
 しかし,単身高齢世帯については,2013年検証の際の生活保護基準部会報告書では,平均7万3000円から7万7000円に4000円(5%)の引き上げが必要とされていました。これは,2004年からの老齢加算(都市部で1万7930円)の段階的廃止で下げ過ぎたので,第1十分位(下位10%)の低所得層と比べても生活扶助基準が低くなり過ぎていたことによるものです。
 ところが,このとき国は,基準部会報告書を全く無視して,部会が出した数値を勝手に2分の1にし,さらに,「デフレ考慮」と称して「生活扶助相当CPI(消費者物価指数)」という全く独自の計算方法で,生活保護世帯は,一般世帯の消費者物価指数の下落率(2.34%)の2倍以上(4.78%)もデフレの恩恵にあずかっているというあり得ない数値を偽装しました。そして,結局,高齢単身世帯の生活扶助基準は,平均7万1000円へと2000円引き下げられたのです。
 このような,相次ぐ高齢世帯の生活保護費削減は,財政の削減効果を出すために,生活保護世帯の大多数を占める高齢世帯をターゲットにしたものとしか考えられません。

4 「引き下げありき」の「引き下げ部会」か
 現在,政府の政策もあり,物価は上昇局面にあります。ところが,今回の検証ではインフレを考慮するという話は一切出てきていません。「デフレは考慮するがインフレは考慮しない」というのは,まさしく「引き下げありき」で検証がされていることが明らかです。
 第25回の生活保護基準部会で岩田正美部会長代理が「次々と保護課の方からお題が出てきて,部会が開かれるごとに何かを下げている。引き下げ部会みたいなイメージがある」と指摘したとおり,生活保護基準部会は「引き下げ部会」に成り下がるのでしょうか。

第2 引き下げの根拠の乏しさ
 今回の引き下げの考え方は,第1十分位という,所得階層を10に分けた一番下(下位10%)の階層の消費水準に合わせて生活保護基準を引き下げるというものです。
 しかし,以下述べるとおり,この手法自体が根本的に間違っていますし,これまでの生活保護基準部会での議論の流れにも反しています。

1 引き下げスパイラルを招く
 日本では,生活保護の捕捉率(生活保護を利用する資格のある人のうち実際に利用している人が占める割合)が2割以下といわれ,先進諸国と比べても著しく低くなっています。つまり,第1十分位(下位10%)層の中には,生活保護以下の生活をしている人たちがもともと大量に含まれているのであり,その人たちが放置されていることこそが問題です。国に求められているのは,ドイツのように国が生活保護の利用を呼び掛けて捕捉率を上げること,最低賃金を上げ,最低保障年金制度をつくって低所得者層の生活水準を底上げすることです。
 生活保護を利用していない低所得者層と生活保護基準を比べれば,当然生活保護基準が高いという結果になり,これをもとに保護基準のあり方を考えれば,保護基準を下げるしかありません。これでは,どこまでも生活保護基準を下げ続ける引き下げスパイラルを招きます。
 生活保護基準は,ナショナル・ミニマム(国民生活の最低水準)ですから,最低賃金,住民税非課税基準,就学援助など様々な低所得者施策と連動しています。生活保護基準の引き下げスパイラルは,生活保護を利用していない市民全般の生活水準の引き下げスパイラルにつながります。実際,生活保護基準が下げられた後,就学援助の基準が下がる自治体が続出し,年金,医療,介護とあらゆる社会保障制度が削減,自己負担増となり,今や市民生活全般が危機に瀕しています。
 ドイツでは,2010年2月9日の連邦憲法裁判所が,「参照世帯に含まれるのは,統計上確実に社会扶助受給レベルを上回る個人及び世帯でなければならない」として基準額違憲判決を言い渡しています。
 これを契機として,「基準算出需要法」が制定され,単身世帯については下位15%,家族世帯については下位20%を参照世帯とすることが法律で定められました。それでもなお,「隠れた貧困層」(社会扶助を受けられるのに受けていない層)が参照世帯に含まれているのは問題ではないかという議論が続いているのです(ヨハネス・ミュンダー「貧困研究」14号34頁以下,嶋田佳広「ドイツにおける社会扶助基準設定の新たな展開」)。

2 これまでの生活保護基準部会での議論の流れに反する
(1)2013年検証の際の議論
 2013年検証の際の第9回と第11回の生活保護基準部会では,富裕層が「富の取り分」を増やす一方,中間層を含む低所得層が「富の取り分」を減らしているデータが示されました。
緊急声明グラフ
 これを見ると上位30%はいずれも「富の取り分」を増やし,全体所得の約6割を占めていること,「平均的世帯」とされてきた第5・6十分位(=第3五分位)以下の階層のシェアは全体の3割の位置にあること,第1十分位のシェアも減少傾向でほとんど地べたに張り付いていることが分かります。
 この点に関する議論をふまえ,駒村部会長は,このような傾向が続くのであれば,「今後もこの方法(第1十分位を比較対象とする方法)でいいのだろうか。将来この方法を使えるだろうかという懸念がある」と言及していました(第11回部会)。

(2)2013年検証の際の部会報告書~「新たな検証手法の開発が部会の使命」
 こうした議論も踏まえ,どうやって水準均衡方式の相対比較をするのかという手法の開発こそが基準部会の使命と責任である旨の岩田部会長代理の意見で(第12回部会),2013年の基準部会報告書(9頁)に「本部会の議論においては,国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり,将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。」と記載されました。

(3)突然登場した第1十分位との比較論
 こうした経緯から,今回の2017年検証に際しても当初は,「新たな検証手法の検討」が検討課題としてあげられる一方,第1十分位を比較対象とするといった議論はなされてきませんでした。むしろ,岩田部会長代理や山田委員などから第1十分位などの低所得層を比較対象とすることに対して否定的な意見が述べられ,駒村部会長や阿部委員,岡部委員など多くの委員が,その意見に賛意を示していたのです。
 それが,「新たな検証手法の検討」については,2017年6月6日開催の第29回部会の参考資料1における,「現行の水準均衡方式が導入された昭和59年に比べて,雇用基盤や世帯構成などの変化によって社会経済情勢は大きく変化しており,今日の状況により相応しい生活扶助基準の改定方式の開発を目指して,新たな検証手法を検討する必要がある。」等の記述を最後に消えてしまいました。そして,報告書のとりまとめ直前になって,なぜ突然,2013年検証においても疑問視され始め,今回の2017年検証においても委員の多くが疑問を呈していた第1十分位との比較をすることが結論とされたのか,全く理解できません。
 第35回の部会資料1によると,第1十分位と比較する方法と全所得層と比較する方法がありうる(4頁)としながら,後者をとらなかった理由については一応の説明があるものの(13頁「18~64歳の年齢別指数に特異な傾向がみられたほか,2類費について3級地で費用が増加する結果となった」。要はデータに不具合があったということのようですが,中身が分からないので本当かどうかも不明です。),なぜ前者をとるのかの説明は一切ありません。
 (4)アで紹介する2007年検討会報告書が示唆したように,またドイツの法律が定めているように,第1五分位(下位20%)層と比較するなど,別の方法がなぜ検討されていないのか不可解というほかありません。

(4)これまでの検証手法とも矛盾
ア 第1十分位の高齢単身世帯の消費水準が著しく低いことが無視されている
 第35回基準部会資料1(17頁)によると,第3・五分位(平均的所得階層)と比較した第1十分位の消費水準は,夫婦子1人世帯は66%ですが,高齢夫婦世帯は61%,高齢単身世帯は50%にとどまっています。
 2007年検証でも,同様に「平均的所得階層」とされていた第3五分位と第1十分位の消費水準の比較がなされ,夫婦子1人世帯は70%だが,単身高齢世帯は50%にとどまることから,単身高齢世帯について第1十分位を比較対象とすることについて委員から強い異論が出ました。
 そのため,検討会報告書にも,「単身世帯(60歳以上)では,第1十分位の消費支出は第3五分位の消費額の5割程度にとどまっていて低いことから,第1十分位を比較基準とすることが適当であるかどうかは,その消費支出が従来よりも相対的に低くなってしまうことに留意すべきである(5頁脚注6)」こと,そして,この点を考慮して,「仮に第1五分位を基準にした場合,現在の生活扶助基準額は均衡した状態にあると評価される(5頁2つ目の〇)」ことが記述されました。そして,引下げに反対する世論が高まる中,検討会委員5名全員が連名で出した「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」という異例の文書でも,「『生活扶助基準額の引き下げには,慎重であるべき』との考えを意図し,全委員の総意により,確認されたところである」と説明されているのです。
 このように,2007年検証では,第3五分位と比較した第1十分位の消費水準が単身高齢世帯で50%に止まることが引き下げ見送りの理論的根拠とされました。にもかかわらず,今回の検証では,この点が全く問題とされていないのは一貫性を欠きます。 今の基準部会には,2007年の検討会と同じ委員(駒村康平部会長,岡部卓委員)もおられるのに,なぜこの点を無視した案が提出されているのか不可解でなりません。
イ 必需的耐久消費財の保有率の検討がされていない
 また,2007年検証,2013年検証では,いずれにおいても,「必需的な耐久消費財の保有率」が第1十分位層と第3五分位層とで遜色ないことが,第1十分位を比較対象とすることの正当性として検討されていました。
 上記の2007年検証,2013年検証が必需的耐久消費財のみを検討対象としたこと,何を「必需的」と見るかの選別方法も厳格に過ぎることから,私たちには,両検証の結論そのものに強い異論があります。しかし,それを措くとしても,今回はその検討がされた形跡さえありません。なぜ検討されていないのか,仮に同じような検討をしたらどうなるのか,この点にも疑問が残ります。

第3 これ以上の引き下げは許されない
 2013年からの生活扶助基準の引き下げに対しては,現在,全国29都道府県において955名の原告が違憲訴訟(いのちのとりで裁判)を提起して闘っています。
 既に憲法が保障する「健康で文化的な生活」を維持し得ていない生活保護利用者をさらに追い詰め,市民生活全般の底下げをもたらす生活保護基準の引き下げは断じて容認できません。
 私たちは,この暴挙に対して最大限の抗議の意思を表明するとともに,全国の当事者,支援者に対して,ともに声をあげることを呼びかけます。

以 上




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 大阪市の4区が顔写真付きの「確認カード」を作成交付している問題で、本日、浪速区の生活保護利用当事者14名(うち7名は代理人弁護士への委任)が「確認カード」を返上し、保管されている写真の廃棄を求めました。これは、10月18日の協議の際、大阪市が「作成はあくまで任意であり、カードの返上、写真の廃棄の要請があれば応じる」旨述べたことを受けたものです。
 当事者代表が下記声明文を読み上げた後、同区の保護課長が、順次、手動シュレッダーでカードと写真を裁断しました。
 保護課長が一人でシュレッダーを回そうとするとうまくいかず、当事者代表が手を添えてシュレッダーを固定するとスムーズにいきました。課長と当事者の共同作業で14人分のカードと写真が裁断されたのです。役所が上から監視管理しようとすると空回りし、役所と当事者が信頼に基づいて手を携えればうまくいくことを象徴しているようで印象的でした。
 私たちは、確認カードの返上が自由であることを当事者に周知するとともに、引き続き大阪市に対して制度の廃止を求めていきます。



2017年11月17日

声明文


大阪市浪速区長 榊  正文 殿


浪速区生活保護利用者一同


 私たちは、貴区に顔写真を撮られ、その顔写真がついた確認カードを交付されました。しかし、この確認カードは、生活保護行政において、全く不要のものであることから、本日これを返却しますので、貴区において保管している私たちの顔写真とともに私たちの面前で廃棄処分をするよう求めます。

確認カードの交付の際、カードの作成が任意であることやこれを拒否しても不利益がないこと、大阪市の4区だけの特別な制度であることについて一切説明がなかったので、私たちはカードの作成は必要なものだと誤解してしまいました。このように何ら説明無く、まるで犯罪者のように顔写真と番号の入った確認カードを作成したことに対し、強く抗議いたします。

確認カード導入の理由について、窓口での生活保護費の支払時や医療券発行時に本人確認を確実に行い、保護費の誤支給やなりすましによる不正受給を防止するとともに窓口での本人確認を速やかに行うためと説明されております。しかし、誤支給はそもそも職員側の事務ミスによって生じるものであり、またなりすましについても、実際に窓口での支給の際になりすましたという例は全くありません。さらに、「確認カード」以外の本人確認の方法と「確認カード」による本人確認で交付の時間にそれほど差が生じるとも考えられません。

このように確認カードは有害無益なものですので、直ちに廃止してください。
そして、このような有害無益なカードにではなく、子どもの学習支援など生活保護利用者にとっても行政にとっても有益なことに力を入れ、血の通った生活保護行政を行ってください。



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