当会は、現在、保護課長通知に端を発して各地の福祉事務所でトラブルが発生している資産申告書提出問題について、2月1日、厚生労働大臣に対して、以下のとおり、保護課長通知の撤回等を求める要望書を提出いたしました。
なお、この件についてはQ&Aパンフレットを作成して頒布する予定です。



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2016(平成27)年2月1日

厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿

資産申告書に関する保護課長通知の
撤回等を求める要望書
 
             
生活保護問題対策全国会議
                       代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨

1 生活保護利用者に対して最低年1回の資産申告を行わせるよう求める平成27年3月31日付厚生労働省社会・援護局長保護課長通知(社援保発0331第1号)は,生活保護法28条1項,60条及び61条の趣旨に反するので撤回されたい。

2 上記通知を撤回しないのであれば,通知の運用にあたって以下の諸点に留意し,生活保護利用者に対しても十分な周知説明を行うよう実施機関に周知されたい。
(1)上記通知が求める定期的な資産申告は生活保護利用者の義務ではなく,あくまでも被保護者の自発的協力を求める範囲で許容されるものであり,ましてや,保護の停廃止を前提とする生活保護法27条に基づく指導指示の対象となり得ないこと。
(2)保護費のやり繰りによって生じた預貯金等については,
① その使用目的が生活保護の趣旨目的に反しない場合には保有が容認されること,
② 使用目的はある程度抽象的でも良いこと,
③ 使用目的が生活保護の趣旨目的に反することの立証責任が実施機関の側にあること,
④ 目的がない場合でも生活基盤の回復に向けた助言指導が必要であること。

第2 要望の理由
1 はじめに

 厚生労働省社会・援護局保護課長は,平成27年3月31日,実施要領の取扱いを変更する通知(社援保発0331第1号。以下,「本件通知」という。)を発した。そこでは,「被保護者の現金,預金,動産,不動産等の資産に関する申告の時期及び回数については,少なくとも12箇月ごとに行わせること」とされ,これまでは保護申請時のみに要求していた資産申告について,今後は最低年1回資産申告を求めることとされている。
これを踏まえ,各地で,生活保護利用中の者に対し,資産申告書の提出や通帳の提示等を求める運用が始まっているが,単に任意の協力を求めるにとどまらず,事実上これを強制する扱いが横行しているため,生活保護利用者の中に不安と動揺が広まっている。

2 会計検査院の指摘は金銭管理能力の不十分な被保護者に対するものである
本件通知発出の契機となった会計検査院の指摘は,「金銭の管理を委ねている救護施設入所者」及び「金銭の管理を委ねているグループホーム等入居者」の手持金に関するものである。換言すれば,金銭管理能力が不十分で,かつ,施設等に入所しているため累積金費消の必要性が類型的に乏しい被保護者の手持金に関するものである。
このような場合であっても,後述する東京都のような丁寧なケースワークが求められるところであるが,かかる会計検査院の指摘を一般の保護利用世帯(金銭管理能力があり,後述するような累積金費消の必要性があるのが通常である)の保護費の累積金にまで拡大することは明らかな過剰反応である。

3 本件通知は生活保護法の趣旨に反する
生活保護法61条は,「被保護者は,収入,支出その他生計の状況について変動があったとき(略)は,すみやかに,保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない」と規定している。これは,生計の状況に変動があった場合に限り届け出義務を課すもので,こうした変動がないにもかかわらず機械的定期的な届け出義務を課すものではない。
また,同法28条1項は,「保護の実施機関は,保護の決定若しくは実施(略)のため必要があると認めるときは,要保護者の資産および収入の状況(略),当該要保護者に対して,報告を求め(略)ることができる」と規定している。これは,具体的な必要性が認められる場合に限り調査権限を認めるもので,かかる必要性が認められない場合に一般的抽象的な調査権限を認めるものではない。
 しかるに,本件通知が生活保護利用者の任意の協力を求めるものではなく義務を課すものであるとすれば,生計の状況に変動がない被保護者に対して機械的定期的に届け出義務を課し,具体的必要性が認められない場合に一般的抽象的に調査をする点において,生活保護法61条及び同法28条1項の趣旨に反し違法であると解される。
 ところで,厚生労働省は,本件通知について,「平成26年7月に施行された改正法の第60条において,生活保護受給者の適切な家計管理を促す観点から,生活保護受給者が主体的に生計の状況を適切に把握する責務を法律上に具体的に規定し,福祉事務所が必要に応じて円滑に支援することを可能としたことを踏まえ,生活保護受給者から少なくとも年に1回の資産申告を求め,福祉事務所が預貯金等の資産の状況を適切に把握することについて,実施要領等の改正を行う」ものと説明している(平成27年3月全国生活保護主管課長会議資料3(2)イ(イ)43頁)。しかしながら,同条の改正案の審議にあたり,桝屋厚生労働副大臣(当時)は,「あくまでも受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であって,この責務を果たさないことをもって保護の停廃止を行うというようなことは考えておりませんし,あってはならないと思っております。議員御懸念のようなことがないよう,こうした法改正の趣旨について,周知徹底を図ってまいりたいと思います。」と明確に答弁している(平成25年5月31日衆議院厚生労働委員会における中根康浩議員に対する答弁)。これを踏まえ,厚生労働省も,「健康管理や金銭管理は,あくまで受給者が主体的に取り組んでいくことが重要であるため,本規定に定める生活上の義務を果たさないことだけをもって,保護の停廃止を行うことは想定していないことに十分ご留意いただくようお願いする。」と実施機関に対し特段の留意を求めていたのである(平成26年3月3日全国生活保護主管課長会議資料33ページ,3(4))。
したがって,改正法60条が,本件課長通知が求める資産申告を生活保護利用者に義務付ける根拠になり得ないことは明らかである。
以上から,本件課長通知は,あくまで生活保護利用者の自発的協力を求める範囲で許容されるものであり,同通知を根拠として資産申告書の画一的提出等を事実上強制する運用が行われれば,生活保護法28条1項,60条及び61条に違反し違法であることとなる。本件課長通知は,実施機関がかかる違法な運用を行う契機となり,現場に無用の混乱を発生させるものであるから撤回されるべきである。少なくとも,生活保護利用者に対して自発的協力を求めることが許されるにとどまり,資産申告書の提出を義務付けるものでないことについて周知徹底するべきである。

4 資産申告書不提出の者に対して指導指示違反の停廃止を行うことは許されない
 本件通知に基づいて資産申告書の提出等を求められたにもかかわらず,協力しない生活保護利用者がいた場合,指導指示違反により保護の停廃止を行うことは許されない。その意味において,生活保護利用者は本件通知に基づく資産申告書の提出に従う法的義務があるわけではない。
 なぜなら,生活保護法62条3項による保護の停廃止の前提となる同法27条に基づく指導指示は,「被保護者の自由を尊重し,必要の最少限度に止めなければならない」とされているところ(同条2項),上記のとおり,具体的必要性が認められないにもかかわらず機械的に年1回の資産申告を求める本件通知に基づく指導指示は,生活保護法61条及び28条1項の趣旨に反し「必要の最少限度」のものとは言えないからである。ましてや,先にも述べたとおり,生活保護利用者の自発的努力を求めるに過ぎない改正法60条が法27条に基づく指導指示の根拠となり得ないことは,より一層明らかである。実施機関の側がどうしても年1回預貯金の状況を確認する必要があると考えるのであれば,協力を得られない生活保護利用者については,生活保護法29条に基づいて金融機関等に対する調査を実施すれば良い話であって,生活保護利用者からの資産申告書等の提出に固執する必要はない。
また,仮に指導指示が有効であるとしても,指示違反の程度と課される制裁の重さは比例均衡している必要があり,軽微な指示違反に対して保護の停廃止という重大な制裁を課すことは許されないこと(比例原則)からすれば,具体的必要性が認められないのに単に資産申告書等を提出しないという軽微な指示違反を理由に保護の停廃止という重大な不利益処分を課すことは比例原則に反し許されない。前述のとおり,生活保護法29条に基づく金融機関等に対する調査の結果,未申告の収入(不正受給)が発覚したとすれば,当該不正受給に対して厳正に対処すれば良いのであって,法的義務ではない年1回の資産申告書等の不提出に対する制裁等を科す必要はない。
厚生労働省は,かかる法的解釈についても,実施機関に対して十分に周知するべきである。

5 保護費の累積金の収入認定は原則として許されない
 本件通知に基づいて資産申告書の提出等が行われた場合,保護費をやりくりした貯蓄の存在が明らかになることが予想される。かかる預貯金の存在が判明することで保護を打ち切られるのではないかとの不安を抱く生活保護利用者も少なくない。
 しかし,現行生活保護制度上,資産の保有は認めるが購入費用までは支給されない耐久消費財(テレビ、冷蔵庫、洗濯機等)などについては,保護費のやり繰りをした累積預貯金で購入することが当然の前提とされている。また子どもの進学,就学費用で高校等就学費等の保護費で賄えない費用や大学入学にかかる費用,さらに高齢者の葬儀費用で葬祭扶助では不足する額や墓石等も同様である。不意の入院等に必要な雑費等の備えも必要である。
生活保護制度自体がこのような保護費累積金を当然の前提としている以上,累積金があることがわかっても,このような経費のための費用として保有を容認することが基本的な姿勢とされなければならない。
 このような観点から,最高裁判決を含めた裁判例(※1※2)や厚生労働省通達(※3)も,保護費を原資とした預貯金は,預貯金の目的が生活保護費支給の目的や趣旨に反するものでない限り,収入認定せず保有を認めるべきとしている。そして,秋田地裁判決(※1)は,保有目的が抽象的であっても保護の趣旨目的に反しなければ保有が容認される旨判示しており,近時,「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて預貯金を収入認定して保護廃止した事案(※4)や,累積金の使途が不明であることのみをもって生活保護の趣旨目的に反するとして収入認定を行った事案(※5)について処分の取り消しを命じる裁決も言い渡されている。
 また,東京都運用事例集問8-34は,一定額を超える預貯金等の保有が判明した場合には,まずは預貯金の目的等を確認し,「保有を容認できない資産性のあるものの購入(略)や一般低所得者との均衡を失するような消費(略)に充てる目的であれば,法の趣旨を説明し目的を変更するよう指導助言すること」とし,「特に目的等がなく単に累積したものである場合」でも,「直ちにこれを収入認定することは適当でなく,まず,最低限度の生活に欠ける部分を補い,生活基盤を回復させるために使うよう指導助言する。必要に応じては,自立更生計画書等の作成を通じて累積金の費消目的を定めながら,より安定した自立の助長を促すことが望ましい」として,事案に応じた適切なケースワークを求めている(※6)。
 したがって,資産申告書等の提出を求めるに先立ち,保護費の累積金については,預貯金の目的が生活保護の趣旨目的に反しない限り収入認定されないこと,当該目的はある程度抽象的なものでも良いこと及び目的がない場合でも生活基盤の回復に向けた助言指導が必要であることを実施機関及び生活保護利用者に対して周知徹底すべきである。
以 上
 
 
※1 秋田地裁平成5年4月23日判決は,生活保護費で蓄えた約81万円の預貯金のうち約27万円を収入認定して保護費を減額する処分と,残額についてはその使途を弔慰の用途に限定する指導指示をしたケースについて,「収入認定を受けた収入と支給された保護費は,国が憲法,生活保護法に基づき,健康で文化的な最低限度の生活を維持するために被保護者に保有を許したものであって,こうしたものを源資とする預貯金は,被保護者が最低限度の生活を下回る生活をすることにより蓄えたものということになるから,本来,被保護者の現在の生活を,生活保護法により保障される最低限度の生活水準にまで回復させるためにこそ使用されるべきものである。したがって,このような預貯金は,収入認定してその分保護費を減額することに本来的になじまない性質のものといえる。更に,現実の生活の需要は時により差があり,ある時期において普段よりも多くの出費が予想されることは十分あり得ることであり,そのことは被保護世帯も同様であるから,保護費や収入認定を受けた収入のうち一部を預貯金の形で保有し将来の出費に備えるということもある程度是認せざるを得ないことである。」とし,「生活保護費のみ,あるいは,収入認定された収入と生活保護費のみが源資となった預貯金については,預貯金の目的が,健康で文化的な最低限度の生活の保障,自立更生という生活保護費の支給の目的ないし趣旨に反するようなものでないと認められ,かつ,国民一般の感情からして保有させることに違和感を覚える程度の高額な預貯金でない限りは,これを,収入認定せず,被保護者に保有させることが相当で,このような預貯金は法4条,8条でいう活用すべき資産,金銭等には該当しないというべきである。なお,被告は,具体的な耐久消費財の購入等預貯金の目的が相当具体的で,かつ,それが生活保護法の趣旨に反しない預貯金である場合以外は保有は許されず,将来の不時の出費に備えるという程度では足りないと主張するが,生活保護費と収入認定を受けた収入で形成された預貯金については,前記のような源資の性格からして目的がそこまで具体的でなくとも,生活保護法の目的ないし趣旨に反しないものであれば,これを保有させるべきである。」と判示している。

※2 最高裁平成16年3月16日判決(いわゆる中嶋学資保険訴訟)も,「生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(略)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。」として,上記秋田地裁の判断を追認した。

※3 実施要領問答第3の18「(預貯金の)使用目的が生活保護の趣旨目的に反しないと認められる場合については,活用すべき資産にはあたらない」。

※4 平成27年2月10日石川県知事裁決は,保護費の累積金による預貯金約150万円について「なんとなく貯めてきた」との回答を踏まえて収入認定し保護廃止した事案について,事後的に「生涯独り身であることから,将来の入院費用や介護施設入所のための保証金,階段の上り下りが困難になった時の転居費用等のためのものである」との説明がなされていることから,「累積預貯金の使途目的について新たに説明を行っていることについては(略),前審査請求に係る裁決後に判明した事実により,処分内容を検討することは可能であると認められ」,処分庁は,「新たな証言である前記の事実を踏まえ,あらためて累積預貯金の使用目的を聴取した上で処分を決定すべきであった」として保護廃止処分を取り消した。この裁決を受け,処分庁は累積金認定による保護廃止期間の保護費130万6,989円を支給した。

※5 平成27年12月7日高知県知事裁決は,転入移管前に消費した保護費の累積金の使途を確認し,使途不明金約6万円について使用目的が生活保護の趣旨目的に反するものとして収入認定した事案について,「使途不明であることのみを以て,生活保護の趣旨目的に反するとして(略)収入認定を行っている」のは,「生活保護の趣旨目的に反するとする合理的な根拠が示されていないことから,原処分には法第56条に規定する正当な理由があるとは認められない。」として,原処分を取り消し,「使用目的が生活保護の趣旨目的に反すること」の立証責任が実施機関側にあることを明らかにした。

※6 東京都運用事例集問8-34は,生活基盤の回復に向けた指導助言が必要な理由として,「保護費を繰越しして一定額を超える預貯金を保有するに至った経緯には,単に節約を図っただけでなく,食事や衣料品等の生活必需品を極度に切りつめた生活をしてきた結果当該被保護世帯はどこかに最低限度の生活に欠けるところが生じている可能性が推測される。」と説明している。なお,同問答は,「保有を容認する範囲を超えた額の基準(目安)」について,「一律に定めることは困難である。世帯の状況を把握したうえで,慎重に見極める必要がある」としつつも,「目安としては,累積金のすべてが目的のない状態であった場合,保護の停廃止の期間の考え方を用いれば,当該世帯の基準生活費の概ね6月分相当の額に達した場合と考えられる」としている点も参考になる。




2015(平成27)年10月6日


「就学援助実施状況等調査」結果発表をふまえた緊急声明

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


 本日,文部科学省は,就学援助実施状況等に関する調査結果を発表した。
→「平成25年度就学援助実施状況等調査」等結果

 同省の発表によると,次のとおり,平成27年度の準要保護認定基準にかかる生活扶助基準の見直しに伴う影響が生じていない市町村数は1734(98.5%)で対前年度比で2.5ポイント改善しているという。
 しかしながら,実際は,影響が生じていると思われるにもかかわらず,「影響が生じていない市町村数」に分類されている自治体が少なからず存在し,上記の文科省の発表には,生活保護基準の引き下げによる就学援助認定基準への波及効果を小さく見せるための看過しがたい数値操作がなされている。

 まず,「25年度に対象であった世帯等については,25年8月以前の基準を踏まえて認定」するという179の自治体においては,新規ケースは生活保護基準の引き下げに伴って下げられた認定基準によって判断されることになるので,本来は「影響が生じる自治体」に分類されるべきである。「特別な事情のある世帯については,別の生活保護基準に一定の係数を掛けた基準額を用いて認定」するという6の自治体についても,特別の事情のない世帯については影響が生じるので,同様である。そうすると,少なくとも212(179+6+27)の自治体が影響を受けるのであり,その割合は12.0%にのぼる。
 また,就学援助の準要保護認定基準に「生活保護基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額が変わると自動的に要件が変わるもの)」を採用している865自治体のうち,「係数を維持した」という自治体が188,「その他」と回答した自治体が218もあり,同基準に「生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額を参照して額を定めているもの)」を採用している265の自治体のうち,「認定基準を下げた」という自治体が18,「その他」と答えた自治体が38もある。これらの自治体も,少なくとも潜在的には生活保護基準引き下げの影響を受ける可能性がある。実際,文科省の発表によっても,「直接的な対応を行っていない自治体」の数は,昨年9月時点の17から27に大きく増えている。現在は影響が出ないよう特別対応を行っている自治体も,自治体財政厳しき折柄,時の経過とともに特別対応を止めることが容易に予想される。そうすると,674(188+218+18+38+212)の自治体が影響を受ける可能性があるのであり,その割合は実に38.3%に上る。
 私たちは,生活保護基準の引き下げによって,同基準を参照して認定基準を定めている多くの低所得者施策が影響を受けることになる旨繰り返し指摘してきた。これに対し,国は,「影響が及ばないよう対応するから問題ない」と弁明してきた。しかし,今回の調査結果の発表によっても,国の弁明が単なる建て前に過ぎないことが明らかとなった。そして,生活保護基準が憲法25条の保障する生存権保障水準を示すナショナル・ミニマムである以上,時の経過とともに,生活保護基準引き下げの影響を受ける諸制度の利用者数が激増していくことは火を見るよりも明らかである。
 問題の根本的解決のためには,根幹となる生活保護基準をもとに戻すしかない。私たちは,国が道理なく強行した生活保護基準の引き下げを撤回するよう,改めて強く求めるものである。

以上


当会が6月14日に発表した、住宅扶助・冬季加算引き下げについてのQ&A「あきらめないで!闘うすべはある!」について、A5版のパンフレットを作成いたしました。
ぜひ、団体内や生活保護利用者への周知、相談活動などにお役立て下さい。
団体だけでなく、個人からの申込みも可能です。各地での運動にご活用下さい。


申込みの方法
(1)ネットから申し込む  
  申込みフォーム→http://my.formman.com/form/pc/4yGeACW4HMu3isGg/
(2)FAXで申し込む
  ①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を明記の上、072-970-2233までFAXをお送り下さい。
(3)メールで申しこむ
  メール(seihokaigi@hotmail.co.jp)にて①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を、お送り下さい。

なお、恐縮ですが、印刷協力金として費用のご負担(1口50部:1500円)をお願いしております。
福祉事務所に例外措置・特別基準の活用を徹底させ、一人でも多くの生活保護利用者が住宅難民とならないよう、なるべく多く印刷して、拡散させたいと思いますので、ご協力の程、よろしくお願いします!
 

 ※口数10口以上の場合は、費用のご相談に応じます。
 ※送料のご負担をお願いします。
 ※生活保護利用者のみの団体の方は、協力金は不要です。



Q&Aの本文
住宅扶助基準・冬季加算引き下げ問題Q&A「あきらめないで!闘うすべはある。」

パンフレットのPDFファイル(DLフリー) 
普通に資料にしたい(A4に2頁) click!
スマホに保存していつでも見られるようにしたい(A5 1頁ずつ) click!
両面印刷してパンフにしたい(割り付け済) click!


Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?1頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?2

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?3頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?4頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?5頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?6頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?7頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?8頁

※福祉事務所への申入書式はこちらをご覧下さい。 







当会は、生活保護の住宅扶助基準ならびに冬季加算の引き下げに際して、厚生労働省に対して、平成27年6月18日、以下のとおりの要望書を提出しました。

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2015(平成27)年6月18日


住宅扶助・冬季加算削減の例外措置の
周知徹底と柔軟適用を求める要請書


厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨
1 住宅扶助基準については,住まいは人権であり,住生活の基盤であることから,できる限り生活保護利用者の住環境に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年4月14日付社会・援護局長通知が定める,①1人基準の1.3倍から1.8倍の特別基準を設定できる場合(同2項),②引き続き旧基準を適用できる3つの場合(同3(1)(ア)(イ)(ウ))を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記①②の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される住宅扶助費の減額を回避すべきこと。
(3)生活保護法27条に基づく転居指導を行い得るのは,①限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており,②明らかに最低生活の維持に支障が生じている場合に限られること。
(4)当事者が望まない地域や,居住環境の劣悪な物件など,意に反した転居の勧奨は厳に慎むべきこと。

2 冬季加算については,寒冷地の命綱であることから,できる限り生活保護利用者の健康状態等に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年5月14日付保護課長通知が定める1.3倍基準を設定できる場合を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される冬季加算の減額を回避すべきこと。


第2 要望の理由
1 住宅扶助基準・冬季加算削減による影響の重大性

 貴省は,住宅扶助基準については2015(平成27)年7月から,冬季加算については同年11月から(一部地域では10月から),いずれも殆どの地域で引き下げることを決めている(削減額は前者で年間190億円,後者で年間30億円規模)。
 住宅扶助基準の引き下げは,貴省の答弁によると44万世帯の生活の基盤を揺るがし,多くの生活保護利用世帯が住宅難民化するおそれがある。また,寒冷地の命綱である冬季加算の引き下げは,寒冷地に住む高齢者や障がい・傷病者等の健康に著しい悪影響を及ぼすおそれがある。
 いずれも,2013(平成25)年8月から3段階に渡って実施された史上最大の生活扶助基準の引き下げに加えて実施され,生活の基盤に大きな影響を与えることが必至であることから,生活保護利用者は大きな不安にさらされている。
 そもそも,これらの基準引き下げは,社会保障審議会生活保護基準部会が,2015(平成27)年1月9日,取りまとめた報告書の趣旨に反している点において違法であって許されない(2015年3月26日付け日弁連「生活保護の住宅扶助基準,冬季加算の引き下げの撤回を求める会長声明」参照)。しかし,本要望書は,事態の深刻さに鑑み,当事者への影響を最小限に止めるための緊急の要望を行うものである。

2 厚生労働省による例外措置等の発表
 貴省は,平成27年4月14日付社会・援護局長通知(社援発0414第9号)及び平成27年5月13日付保護課長通知(社援保発0513第1号)において,冬季加算については,平成27年5月14日付社会・援護局長通知(社援発0514第1号)において,それぞれ経過措置・例外措置や留意事項を定め,各自治体・実施機関に対して通知した。
 これらの措置は必ずしも十分とは言い難いが,それでも,これが現場のケースワーカーと生活保護利用当事者に十分に周知され,柔軟に適用されれば,相当多くの当事者が削減から免れて救われる可能性がある。

3 例外措置の周知不足による現場の混乱
 既に全国各地の福祉事務所が,生活保護利用当事者に対して,住宅扶助基準の引き下げについて連絡を始めているが,各地で混乱が起きている。
 すなわち,生活保護利用当事者に送付されている「お知らせ文書」は,例外措置について全く記載がされていないか,その記載が極めて抽象的で不十分なものがほとんどである。中には,明らかに貴省の通知の内容を逸脱し,誤った情報を記載したものまである。
 また,現場のケースワーカー自身が,例外措置の内容を知らず,形式的・杓子定規に引き下げを強要しようとし,生活保護利用者に無用の不安を抱かせたり,軋轢を生じさせたりする例も見られる。

4 住まいは人権,冬季加算は寒冷地の命綱
 そこで,住宅扶助基準については,住まいは人権であり,生活の基盤であるという観点から,冬季加算については,それが寒冷地の命綱であるという観点から,各地の福祉事務所及び生活保護利用当事者に対して,貴省通知の定める例外措置を具体的に周知徹底すること,そして,それを柔軟に適用して,できる限り多くの生活保護利用者の生活基盤に変化が生じないよう最大限の努力を払うことを求めて,本要望を行うものである。

以  上



住宅扶助・冬季加算削減にかかる各地の問題事例
※自治体からの通知例(PDF)


① 枚方市・単身女性(74歳)  6/15 相談あり
 家賃(公団)49,000円(現行限度額42,000円・差額の7,000円は本人負担)
 6月初めころ、電話で「来月から家賃が42,000円から38,000に下がります。Aさんが38,000円の所に転居するか、今休んでいる(Aさんはヘルパーをしていたが事故などで体調を壊し休んでいる)仕事を再開すれば12月までは家賃を42,000円支給できます。それ以降は38000円になります。転居費用は19万円出ます」と言われた。
 Aさんは「ここは動けない、娘が近くに住んでいるので困ったときに助けてもらえる。なんとかここに居させてほしい」と訴えたが聞いてもらえず、「また説明に行きます」といわれた。不安で気が変になりそう。

② 枚方市・単身女性(80歳代)家賃44,000円(2,000円は自己負担) 5/30相談あり
 5月中頃、担当者から「家賃が下がりますので転居してください。」と電話があった。「40年間ここに住み続けているので転居したくない」と言ったが、「返事は6月12日までにお願いします」と言われた。

③ 枚方市・女性(42歳)精神障害2級・長男(22歳)発達障害 家賃55,000円(新基準46,000円)
  「家賃の基準が下がるので新基準内の所に転居が必要」と言われた。女性は今の家を見つけるまで何回も転居を繰り返し、やっと落ち着けるところが見つかった。精神状態の浮き沈みも激しく、環境に慣れるのも大変なのに転居を言われて強いショックを受けた。
 「役所から転居を言われて・・・。どんな死に方が良いかネットで調べたが」と主治医に相談。驚いた主治医が診断書を書いてくれた。
 女性の近所に住んでいる父親(視覚障害1級)も、生活保護を利用している。その父親も家賃(39,000円)が新基準を1,000円オーバーしているので転居を言われた。「そんなことおかしい」と抗議すると担当者は前言を取り消した。

※注 あまりにひどい対応が多いので、枚方・交野生活と健康を守る会が、文書で緊急申し入れをしたところ(6/3)、枚方市は、これまで通知の内容が理解できていなくて先に「転居」ありきだったことを認めた(6/15)。最近、大阪府から「経過措置」を最大限活用し、被保護者の住環境に変化を与えないよう配慮が必要、形式的な対応や強硬な転居指導をしないようとの「通知」らしきもの?が出されたことを受け、今後は裁量を活かした対応をするよう職員に伝えたということだった。
ある担当者は「これまではきつく対応していたが、これからは対象者に対して安心してもらえるような対応が出来る」と、数日前に聞いた声に比べてこれが同じ人物かと思えるほど、明るい声になっていた。多くの自治体が同様に通知の解釈を間違っているかもしれない。


④ 大阪府下自治体・女性(50歳くらい・精神障害者)
 契約更新は来年の4月。家賃額は住宅扶助上限額。自宅から徒歩5分の障がい者作業所に通所(就労)。支援者から「例外措置ア、イ、ウに全て該当すると思うので、心配ならケースワーカーに話してみるように」と助言されて話してみたところ、「そんなケースを認めたらみんな認めなくてはならなくなるから駄目だ」と言われた。支援者が電話したところ、「無理に引っ越せとは言っていない。家賃を下げるように家主と交渉するように言っている。家賃が下がらず、引っ越さない場合3万9千円との差額は本人負担になる。」という返事だった。「厚労省の通達は知っているか」聞いたところ、「知っているが、所の方針として差額を本人負担してもらうことになっている」と言った。支援者が強く抗議して、上司と再検討のうえ回答をもらうことになった。

⑤ 大阪市平野区
 自己都合で転居費用を自分で用立てて6月中に42000円(現行基準内)のところに引越しをする人が、ケースワーカーから「40000円以下のところを探せ。42000円のところに転居したら、転居後、さらに転居指導する」と言われた。

⑥ 大阪府下自治体・男性(車いす利用の身体障害者)
 「家主に値下げを交渉するか、府営住宅に申し込むように」と言われる。相談した弁護士から例外措置があることを聞き、ケースワーカーに「例外措置はないのか」と尋ねたところ、「そんなものはない。知らない」と言われた。

⑦ 大船渡市・女性(化学物質過敏症、障害年金受給)
 冬季加算が今年度から月額14,230円から8,860円に減額。重度の化学物質過敏症のため外出時には酸素ボンベの携帯が不可欠であり、在宅時間が極めて長い。1.3倍基準が適用されないか福祉事務所長に問うたが、「それが適用されるのは寝たきりの人だけ」というニュアンスで答えられた。




住宅扶助・冬季加算引き下げ対抗チラシ
Q&Aのパンフレット版を作成しました!詳しくはこちらをご覧下さい。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-246.html


国は、今年度から生活保護の住宅扶助基準(7月~)と冬季加算(10月~)を多くの地域で大幅に削減する方針を決めました。削減が形式的に徹底されると44万人の利用者が住宅難民化するという深刻な影響が予想されています。

しかし、一方で厚生労働省は、これらについて、経過措置・例外措置を認める通知を出しています。

その内容を、以下のQ&Aにまとめましたので、これを拡散して下さい。
「あきらめないで!闘うすべはある。」を合い言葉に、対抗していきましょう!



住宅扶助基準・冬季加算引き下げ問題Q&A
あきらめないで!闘うすべはある。


住宅扶助編

【住宅扶助基準引き下げの内容】
Q1 2015(平成27)年7月から生活保護の住宅扶助基準が下がると聞きましたが本当ですか。

A 本当です。厚生労働省は、今年7月から生活保護の住宅扶助基準の改定を行います。一部基準が上がる地域もありますが、多くの地域で下がり、年間190億円の削減効果が見込まれています。厚生労働省は、削減の影響を受ける世帯が44万世帯(生活保護世帯の約3割)に及ぶことを明らかにしています(2015年4月8日参議院厚生労働委員会辰巳孝太郎議員の質問に対する答弁)。
例えば、埼玉県2級地では、単身者は4万8000円から4万3000円に5000円ダウン、2人世帯は6万2000円から5万2000円に1万円ダウン、大阪府1級地では、単身者は4万2000円から3万9000円に3000円ダウン、2人世帯は5万5000円から4万7000円に8000円ダウンと、大変な削減額となっています。
 これが杓子定規に適用されると、多くの生活保護利用者が住宅難民化し、ある面、生活扶助基準の引き下げ以上に深刻な事態が生じるのではないかという不安の声が高まっています。
しかし、以下のQ&Aで紹介するように、経過措置や例外措置も定められていますので、これを柔軟に適用させることができれば、かなりの人が救われます。あきらめないでください。

※各地域の新基準額→「H27.4.14社援発0414第9号厚労省社会・援護局長通知別記」 click!

【引き下げの時期】
Q2 改定された新基準はいつから適用されるのですか?


A 2015年7月以降に新たに生活保護を申請する人には新基準が適用されます。しかし、2015年7月以前から生活保護を利用している人に対しては、次の契約の更新時期が来るまで、新基準の適用は猶予されます。契約に更新時期の定めがない人は2016(平成28)年6月まで猶予されます。


【例外措置の内容】
Q3 私には身体障害があり、車いすを利用しているため、部屋の広さやマンションの設備(エレベーター等)が必要で、新基準の家賃で借りられる良い物件は見つかりません。また、高齢で病気もあるため、住み慣れた町を離れたくありませんし、引っ越すと通院に支障が生じると思います。これまでどおりの住宅扶助費を支給してもらって、今の住居に住み続けることはできないのでしょうか?


A あなたのような方は、これまでどおりの住宅扶助費を支給してもらって、今の住居に住み続けることができます。
厚生労働省は、通知(平成27 年4 月14 日社援発0414 第9 号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について」)を発出し、新基準を適用しなくてよい、幾つかの例外取扱いを示しています。

1 特別基準の設定
「世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ない」場合には一般基準の1.3倍~1.8倍の特別基準を設定してもらうことができます(「保護の実施要領について」局長通知第7の4(1)オ)。

 特別基準は、例えば、大阪市の場合(全国も同じ倍率です)、1人:52、000円(40、000円×1.3倍)、2人:56、000円(40、000円×1.4倍)、3人:60、000円(40、000円×1.5倍)、4人:64、000円(40、000円×1.6倍)、5人:68、000円(40、000円×1.7倍)、6人:(5人に同じ)、7人以上:72、000円(40000円×1.8倍)となっています。
多人数世帯の場合、車いす利用等でもともと特別基準を設定されていた場合、都市部等で新基準の家賃で借りられる適切な物件が近隣にない場合などには、この特別基準の設定を求めて福祉事務所と交渉してみましょう。

2 旧基準の適用
次の3つの場合には、引き下げ前の旧基準を適用できます。

(ア)「通院又は通所(以下「通院等」という)をしており、引き続き当該医療機関や施設等へ通院等が必要であると認められる場合であって、転居によって通院等に支障を来すおそれがある場合」
 高齢であったり、障害や病気があって、通院したり施設に通所している方で、主治医や施設職員との信頼関係等から引き続き当該病院等への通院通所が必要な場合で、引っ越すと通院等がしにくくなる場合が、これに当たると考えられます。

(イ)「現に就労や就学しており、転居によって通勤または通学に支障を来すおそれがある場合」
 世帯の誰かが働いていたり、学校に通っていたりしていて、引っ越すと通勤、通学がしにくくなる場合が、これに当たります。

(ウ)「高齢者、身体障害者等であって日常生活において扶養義務者からの援助や地域の支援を受けて生活している場合など、転居によって自立を阻害するおそれがある場合」
 介護が必要な高齢者、身体障害者等で、近隣に住む親族からの援助や、地域の事業所の支援を受けて生活している方で、病気や障害等の特性に対する理解や信頼関係等から、引き続き当該親族や事業所からの支援が必要な場合が典型的な場合です。
 しかし、この規定は、「・・場合など」としていますので、このような典型的な場合でなくても、個別具体的な事情から「転居によって自立を阻害するおそれがある場合」には、幅広く旧基準の適用を認めることができると解すべきです。例えば、介護保険法や総合支援法に基づく住宅改修をすでに行っている住居に居住する者も対象と考えられます。


【転居先の選択権は】
Q4 新基準の家賃で暮らせそうな物件を近隣で探しましたが見つかりませんでした。ケースワーカーにそう報告すると、「A市やB市なら安い物件があるから探す範囲を広げるように。府営住宅にも応募するように」と言われました。私は、今住んでいる町が気に入っているので離れたくありません。
 また、「物件を選ばなければ近隣でもあるはず」と言われるのですが、新基準で借りられる物件だと、今住んでいるアパートよりも広さも設備もかなり悪くなるので住みたいと思えません。
 私はケースワーカーの指示に従わなければならないのでしょうか?


A 従う必要はありません。
1 居住・移転の自由(憲法22条)があります
自己の選択するところに従い様々な自然や人に接し、コミュニケートすることは、個人の人格形成・精神的活動にとって決定的な重要性を持つことから、憲法22条1項は、自己の好むところに居住し、または移転するにつき、公権力によって妨害されないという、居住・移転の自由を保障しています(佐藤幸治「憲法・新版」485頁)。どこに住むかは個人の自由であって、遠い田舎や不便な場所への転居を強いられるいわれはありません。
 したがって、本人の意に反して、住む場所や地域を指定するようなケースワーカーの指導指示は、「保護の目的達成に必要」(生活保護法27条1項)でもなく、「必要の最少限度」
(同法27条2項)とも言えないので、違法無効であって従う必要はありません。

2 劣悪物件への転居は許されません
国は、住生活基本法に基づく住生活基本計画(平成23年3月15日閣議決定)において「最低居住面積水準」(健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準)」未達成率を早期に解消することを目標として掲げています。
最低居住面積水準は、単身者で25㎡、2人以上の世帯では10㎡×世帯人数+10㎡です(住生活基本計画別紙4)。また、設備基準(同別紙1)として、「専用の台所その他の家事スペース、便所(原則として水洗便所)、洗面所及び浴室を確保する。ただし、適切な規模の共用の台所及び浴室を備えた場合は、各個室には専用のミニキッチン、水洗便所及び洗面所を確保すれば足りる。」「中高層住宅については、原則としてエレベーターを設置する。」等の基準も定められています。
そして、社会保障審議会生活保護基準部会の平成27年1月9日付報告書(2頁)では、生活保護利用世帯の最低居住面積水準の達成率が一般世帯を大きく下回っていることから、「生活保護利用世帯において、より適切な住環境を確保するための方策を検討することが必要」と指摘されています。また、平成27年5月13日社援保発0513第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知「住宅扶助の認定にかかる留意事項について」の3項も、「福祉事務所は、生活保護受給世帯が(略)受給中に転居する必要がある場合には、最低居住面積水準を満たす等、適切な住宅の確保を図るため、(略)その仕組みづくりに努めること」を特に要請しています。
こうしたことからすると、現住居よりも居住水準が劣悪な物件(特に上記の最低居住面積水準(設備基準を含む)を満たさない物件)への転居は差し控えられるべきです。このような場合は、Q3で述べた「転居によって自立を阻害するおそれがある場合」にあたるものとして旧基準を適用すべきものと考えられます。


【転居指導への対応】
Q5 私たち夫婦は、家賃6万2000円の物件に住んでいます。これまで同額の住宅扶助費が支給されていましたが、基準改定によって5万2000円しか支給されなくなりました。私たちは、住み慣れた今の住居に住み続けたいので、差額の1万円は生活扶助費をやり繰りして支払っています。ところが、担当ケースワーカーからは基準内の物件に転居するよう繰り返し指導され、ついには、「○月○日までに転居しない場合は、指導指示違反で保護の停廃止等があり得る」という指導指示書が届きました。
転居しないと私たちの生活保護は打ち切られてしまうのでしょうか?


A このような指導指示は違法であり、仮に停廃止等がなされれば、それもまた違法であって許されません。設問のような事例では転居をする必要はありません。 
 福岡高等裁判所平成10年10月19日判決(中嶋訴訟)は、「生活保護制度は、被保護者に人間の尊厳にふさわしい生活を保障することを目的としているものであるところ、人間の尊厳にふさわしい生活の根本は、人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるのであるから、被保護者は収入認定された収入はもとより、支給された保護費についても、最低限度の生活保障及び自立助長といった生活保護法の目的から逸脱しない限り、これを自由に使用することができるものというべきである。」と判示しています。したがって、生活扶助費をやり繰りして超過家賃分を支払うことは、例えばそのために家賃滞納を繰り返していて生計が破綻している等の事情がない限り、当然許されます。
 このような観点から、生活保護手帳別冊問答集問7-97(単身者が転居指導に応じない場合の取扱い)も、生活保護法第27条に基づく転居指導を行い得るのは「限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており明らかに最低生活の維持に支障があると認められる場合」に限られるとしています。東京都の運用事例集(2006年)問6-57は、さらに具体的に、「実家賃が少額の基準超過に過ぎない場合については、転居指導を行うその他の合理的な理由を必要とする。すなわち転居費用の扶助額と比較した場合に著しく均衡を欠くような効果しか得られない場合には、転居指導そのものを当面の間留保することも考えられる。合理的な理由に基づく転居指導に従わないことをもって、保護を停廃止する場合には、①当該住宅が地域との均衡を著しく失していることによって、適正な水準の保護が実施できない客観的な根拠の明示を必要とし、さらに、②事前に適切な指導指示を十分に行っていること、③弁明の機会の提供等、適正な手続が行われていることが前提となる。」としています。
 設問のように、生活扶助費のやり繰りで超過家賃分を支払い、何とか生計を維持できている場合には、そもそも27条による指導指示を行うこと自体が許されません。仮に、指導指示書を出したとすれば、当該指導指示は無権限による無効であり、指導指示違反による保護の停廃止も当然違法ということになります。


【転居する場合】
Q6 私は、やむを得ず転居しようと思うのですが、その場合、転居費用はどうなるのでしょうか?


A 転居先住居の敷金・日割り家賃や引っ越し代については生活保護費から支給されます。


冬季加算編

【冬季加算削減の内容】
Q7 生活保護基準の改定によって、冬季加算額が大幅に減額されると聞きましたが、本当でしょうか?


A 本当です。冬季加算については、下記のとおり、一部地域では支給月数が増やされる一方、各月の支給金額は大幅に減らされ、単年度で30億円の削減効果が見込まれています。このため、特に寒冷地では暖房費を削らざるを得ず、高齢者や傷病者等の健康に悪影響が出ることが懸念されています。
(地区) (支給月) (見直し幅)
 Ⅰ区 10~4月  △19%
 Ⅱ区 10~4月  △20%
 Ⅲ区 11~4月  △17%
 Ⅳ区 11~4月  △1%
 Ⅴ区 11~3月  △17%
 Ⅵ区 11~3月  △6%



【例外措置(1.3倍)の内容】
Q8 私の世帯では、母が寝たきりで1日中家の中にいるため光熱費が大変かさみます。基準改定で冬季加算が大幅減額されると暖房費が支払えなくなり家計が破綻してしまうのではないかと大変心配です。何とかならないのでしょうか?


A 厚生労働省社会・援護局保護課長は、平成27年5月14日付けで「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」という通知を出して、実施要領第7の問29と問29の2を改正・新設し、設例のようなケースを含め、以下のような場合に地区別冬季加算額の1.3倍の額を認定してよい、とする例外措置を認めています。
 ぜひ、この例外にあたることを福祉事務所に積極的に訴えていきましょう。

① 重度障害者加算を算定している者又は要介護度が3、4若しくは5である者であって、日常生活において常時の介護を必要とするため、外出が著しく困難であり、常時在宅している生活実態にある者(介護人の支援を受けて、通院等のために外出することがある者を含む)(問29)
② 医師の診断書等により、傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない状態にある者(問29)
③ 傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない者又は乳児が世帯員にいる場合(問29の2)



対応策編

【どう闘うか】
Q9 さまざまな例外措置があることは分かりました。私も、「この例外措置にあたるのではないか」と思う点がいくつかありますので、ケースワーカーに言ってみましたが聞き入れてくれません。どのようにすれば良いでしょうか?
 結果的に例外扱いが認められずに原則どおり引き下げられてしまった場合や、転居指導に違反したとして保護を停廃止されてしまった場合、争う方法はありますか?
 

A 「この例外措置にあたるのではないか」と思う点があるのであれば、「かくかくしかじかの具体的な事情から、○○という例外措置にあたると思うので認めてほしい」ということを書面に書いて「申入書」などの形で福祉事務所に提出しましょう。その具体的事情があなたの抱えている傷病や障害に関係することであれば、主治医に診断書や意見書を書いてもらったり、介護サービスに関係することであれば、サービス事業所やケアマネージャー等に意見書を書いてもらって添付できるとより良いでしょう。
 原則どおりに引き下げられてしまった場合には、引き下げられた金額による保護変更決定通知書を受け取った日の翌日から60日以内に都道府県知事に対して審査請求をすることができます。また、転居指導違反で保護を停廃止された場合にも、同様に審査請求をすることができます。審査請求をしておけば、あとで決定の取消しを求める裁判を提起することもできます。非人道的な取り扱いに対して抗議の意思を示し、是正させるためにも積極的に審査請求をしていきましょう!



申入書書式
福祉事務所への申入書
印刷用(PDF)をダウンロードする


関連する通知
H27.4.14社援発0414 第9 号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について」
「H27.4.14社援発0414第9号厚労省社会・援護局長通知別記」
H27.5.13社援保発05133第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知「住宅扶助の認定にかかる留意事項について」
H27.5.14付け「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」(局長通知・課長通知)

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