2015(平成27)年10月6日


「就学援助実施状況等調査」結果発表をふまえた緊急声明

生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


 本日,文部科学省は,就学援助実施状況等に関する調査結果を発表した。
→「平成25年度就学援助実施状況等調査」等結果

 同省の発表によると,次のとおり,平成27年度の準要保護認定基準にかかる生活扶助基準の見直しに伴う影響が生じていない市町村数は1734(98.5%)で対前年度比で2.5ポイント改善しているという。
 しかしながら,実際は,影響が生じていると思われるにもかかわらず,「影響が生じていない市町村数」に分類されている自治体が少なからず存在し,上記の文科省の発表には,生活保護基準の引き下げによる就学援助認定基準への波及効果を小さく見せるための看過しがたい数値操作がなされている。

 まず,「25年度に対象であった世帯等については,25年8月以前の基準を踏まえて認定」するという179の自治体においては,新規ケースは生活保護基準の引き下げに伴って下げられた認定基準によって判断されることになるので,本来は「影響が生じる自治体」に分類されるべきである。「特別な事情のある世帯については,別の生活保護基準に一定の係数を掛けた基準額を用いて認定」するという6の自治体についても,特別の事情のない世帯については影響が生じるので,同様である。そうすると,少なくとも212(179+6+27)の自治体が影響を受けるのであり,その割合は12.0%にのぼる。
 また,就学援助の準要保護認定基準に「生活保護基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額が変わると自動的に要件が変わるもの)」を採用している865自治体のうち,「係数を維持した」という自治体が188,「その他」と回答した自治体が218もあり,同基準に「生活保護の基準額に一定の係数を掛けたもの(生活保護の基準額を参照して額を定めているもの)」を採用している265の自治体のうち,「認定基準を下げた」という自治体が18,「その他」と答えた自治体が38もある。これらの自治体も,少なくとも潜在的には生活保護基準引き下げの影響を受ける可能性がある。実際,文科省の発表によっても,「直接的な対応を行っていない自治体」の数は,昨年9月時点の17から27に大きく増えている。現在は影響が出ないよう特別対応を行っている自治体も,自治体財政厳しき折柄,時の経過とともに特別対応を止めることが容易に予想される。そうすると,674(188+218+18+38+212)の自治体が影響を受ける可能性があるのであり,その割合は実に38.3%に上る。
 私たちは,生活保護基準の引き下げによって,同基準を参照して認定基準を定めている多くの低所得者施策が影響を受けることになる旨繰り返し指摘してきた。これに対し,国は,「影響が及ばないよう対応するから問題ない」と弁明してきた。しかし,今回の調査結果の発表によっても,国の弁明が単なる建て前に過ぎないことが明らかとなった。そして,生活保護基準が憲法25条の保障する生存権保障水準を示すナショナル・ミニマムである以上,時の経過とともに,生活保護基準引き下げの影響を受ける諸制度の利用者数が激増していくことは火を見るよりも明らかである。
 問題の根本的解決のためには,根幹となる生活保護基準をもとに戻すしかない。私たちは,国が道理なく強行した生活保護基準の引き下げを撤回するよう,改めて強く求めるものである。

以上


当会が6月14日に発表した、住宅扶助・冬季加算引き下げについてのQ&A「あきらめないで!闘うすべはある!」について、A5版のパンフレットを作成いたしました。
ぜひ、団体内や生活保護利用者への周知、相談活動などにお役立て下さい。
団体だけでなく、個人からの申込みも可能です。各地での運動にご活用下さい。


申込みの方法
(1)ネットから申し込む  
  申込みフォーム→http://my.formman.com/form/pc/4yGeACW4HMu3isGg/
(2)FAXで申し込む
  ①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を明記の上、072-970-2233までFAXをお送り下さい。
(3)メールで申しこむ
  メール(seihokaigi@hotmail.co.jp)にて①申込み口数、②申込者名、③郵便番号、④住所、⑤連絡先を、お送り下さい。

なお、恐縮ですが、印刷協力金として費用のご負担(1口50部:1500円)をお願いしております。
福祉事務所に例外措置・特別基準の活用を徹底させ、一人でも多くの生活保護利用者が住宅難民とならないよう、なるべく多く印刷して、拡散させたいと思いますので、ご協力の程、よろしくお願いします!
 

 ※口数10口以上の場合は、費用のご相談に応じます。
 ※送料のご負担をお願いします。
 ※生活保護利用者のみの団体の方は、協力金は不要です。



Q&Aの本文
住宅扶助基準・冬季加算引き下げ問題Q&A「あきらめないで!闘うすべはある。」

パンフレットのPDFファイル(DLフリー) 
普通に資料にしたい(A4に2頁) click!
スマホに保存していつでも見られるようにしたい(A5 1頁ずつ) click!
両面印刷してパンフにしたい(割り付け済) click!


Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?1頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?2

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?3頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?4頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?5頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?6頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?7頁

Q&A住宅扶助・冬季加算引き下げにどう対抗する?8頁

※福祉事務所への申入書式はこちらをご覧下さい。 







当会は、生活保護の住宅扶助基準ならびに冬季加算の引き下げに際して、厚生労働省に対して、平成27年6月18日、以下のとおりの要望書を提出しました。

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2015(平成27)年6月18日


住宅扶助・冬季加算削減の例外措置の
周知徹底と柔軟適用を求める要請書


厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 殿
生活保護問題対策全国会議
代表幹事 尾 藤 廣 喜


第1 要望の趣旨
1 住宅扶助基準については,住まいは人権であり,住生活の基盤であることから,できる限り生活保護利用者の住環境に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年4月14日付社会・援護局長通知が定める,①1人基準の1.3倍から1.8倍の特別基準を設定できる場合(同2項),②引き続き旧基準を適用できる3つの場合(同3(1)(ア)(イ)(ウ))を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記①②の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される住宅扶助費の減額を回避すべきこと。
(3)生活保護法27条に基づく転居指導を行い得るのは,①限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており,②明らかに最低生活の維持に支障が生じている場合に限られること。
(4)当事者が望まない地域や,居住環境の劣悪な物件など,意に反した転居の勧奨は厳に慎むべきこと。

2 冬季加算については,寒冷地の命綱であることから,できる限り生活保護利用者の健康状態等に影響を与えないよう,次の諸点を各地の福祉事務所に対して周知徹底されたい。
(1)平成27年5月14日付保護課長通知が定める1.3倍基準を設定できる場合を具体的に記載したお知らせ文書を全生活保護利用世帯に送付して周知すべきこと。
(2)上記の例外措置を柔軟に適用し,最大限活用することで,支給される冬季加算の減額を回避すべきこと。


第2 要望の理由
1 住宅扶助基準・冬季加算削減による影響の重大性

 貴省は,住宅扶助基準については2015(平成27)年7月から,冬季加算については同年11月から(一部地域では10月から),いずれも殆どの地域で引き下げることを決めている(削減額は前者で年間190億円,後者で年間30億円規模)。
 住宅扶助基準の引き下げは,貴省の答弁によると44万世帯の生活の基盤を揺るがし,多くの生活保護利用世帯が住宅難民化するおそれがある。また,寒冷地の命綱である冬季加算の引き下げは,寒冷地に住む高齢者や障がい・傷病者等の健康に著しい悪影響を及ぼすおそれがある。
 いずれも,2013(平成25)年8月から3段階に渡って実施された史上最大の生活扶助基準の引き下げに加えて実施され,生活の基盤に大きな影響を与えることが必至であることから,生活保護利用者は大きな不安にさらされている。
 そもそも,これらの基準引き下げは,社会保障審議会生活保護基準部会が,2015(平成27)年1月9日,取りまとめた報告書の趣旨に反している点において違法であって許されない(2015年3月26日付け日弁連「生活保護の住宅扶助基準,冬季加算の引き下げの撤回を求める会長声明」参照)。しかし,本要望書は,事態の深刻さに鑑み,当事者への影響を最小限に止めるための緊急の要望を行うものである。

2 厚生労働省による例外措置等の発表
 貴省は,平成27年4月14日付社会・援護局長通知(社援発0414第9号)及び平成27年5月13日付保護課長通知(社援保発0513第1号)において,冬季加算については,平成27年5月14日付社会・援護局長通知(社援発0514第1号)において,それぞれ経過措置・例外措置や留意事項を定め,各自治体・実施機関に対して通知した。
 これらの措置は必ずしも十分とは言い難いが,それでも,これが現場のケースワーカーと生活保護利用当事者に十分に周知され,柔軟に適用されれば,相当多くの当事者が削減から免れて救われる可能性がある。

3 例外措置の周知不足による現場の混乱
 既に全国各地の福祉事務所が,生活保護利用当事者に対して,住宅扶助基準の引き下げについて連絡を始めているが,各地で混乱が起きている。
 すなわち,生活保護利用当事者に送付されている「お知らせ文書」は,例外措置について全く記載がされていないか,その記載が極めて抽象的で不十分なものがほとんどである。中には,明らかに貴省の通知の内容を逸脱し,誤った情報を記載したものまである。
 また,現場のケースワーカー自身が,例外措置の内容を知らず,形式的・杓子定規に引き下げを強要しようとし,生活保護利用者に無用の不安を抱かせたり,軋轢を生じさせたりする例も見られる。

4 住まいは人権,冬季加算は寒冷地の命綱
 そこで,住宅扶助基準については,住まいは人権であり,生活の基盤であるという観点から,冬季加算については,それが寒冷地の命綱であるという観点から,各地の福祉事務所及び生活保護利用当事者に対して,貴省通知の定める例外措置を具体的に周知徹底すること,そして,それを柔軟に適用して,できる限り多くの生活保護利用者の生活基盤に変化が生じないよう最大限の努力を払うことを求めて,本要望を行うものである。

以  上



住宅扶助・冬季加算削減にかかる各地の問題事例
※自治体からの通知例(PDF)


① 枚方市・単身女性(74歳)  6/15 相談あり
 家賃(公団)49,000円(現行限度額42,000円・差額の7,000円は本人負担)
 6月初めころ、電話で「来月から家賃が42,000円から38,000に下がります。Aさんが38,000円の所に転居するか、今休んでいる(Aさんはヘルパーをしていたが事故などで体調を壊し休んでいる)仕事を再開すれば12月までは家賃を42,000円支給できます。それ以降は38000円になります。転居費用は19万円出ます」と言われた。
 Aさんは「ここは動けない、娘が近くに住んでいるので困ったときに助けてもらえる。なんとかここに居させてほしい」と訴えたが聞いてもらえず、「また説明に行きます」といわれた。不安で気が変になりそう。

② 枚方市・単身女性(80歳代)家賃44,000円(2,000円は自己負担) 5/30相談あり
 5月中頃、担当者から「家賃が下がりますので転居してください。」と電話があった。「40年間ここに住み続けているので転居したくない」と言ったが、「返事は6月12日までにお願いします」と言われた。

③ 枚方市・女性(42歳)精神障害2級・長男(22歳)発達障害 家賃55,000円(新基準46,000円)
  「家賃の基準が下がるので新基準内の所に転居が必要」と言われた。女性は今の家を見つけるまで何回も転居を繰り返し、やっと落ち着けるところが見つかった。精神状態の浮き沈みも激しく、環境に慣れるのも大変なのに転居を言われて強いショックを受けた。
 「役所から転居を言われて・・・。どんな死に方が良いかネットで調べたが」と主治医に相談。驚いた主治医が診断書を書いてくれた。
 女性の近所に住んでいる父親(視覚障害1級)も、生活保護を利用している。その父親も家賃(39,000円)が新基準を1,000円オーバーしているので転居を言われた。「そんなことおかしい」と抗議すると担当者は前言を取り消した。

※注 あまりにひどい対応が多いので、枚方・交野生活と健康を守る会が、文書で緊急申し入れをしたところ(6/3)、枚方市は、これまで通知の内容が理解できていなくて先に「転居」ありきだったことを認めた(6/15)。最近、大阪府から「経過措置」を最大限活用し、被保護者の住環境に変化を与えないよう配慮が必要、形式的な対応や強硬な転居指導をしないようとの「通知」らしきもの?が出されたことを受け、今後は裁量を活かした対応をするよう職員に伝えたということだった。
ある担当者は「これまではきつく対応していたが、これからは対象者に対して安心してもらえるような対応が出来る」と、数日前に聞いた声に比べてこれが同じ人物かと思えるほど、明るい声になっていた。多くの自治体が同様に通知の解釈を間違っているかもしれない。


④ 大阪府下自治体・女性(50歳くらい・精神障害者)
 契約更新は来年の4月。家賃額は住宅扶助上限額。自宅から徒歩5分の障がい者作業所に通所(就労)。支援者から「例外措置ア、イ、ウに全て該当すると思うので、心配ならケースワーカーに話してみるように」と助言されて話してみたところ、「そんなケースを認めたらみんな認めなくてはならなくなるから駄目だ」と言われた。支援者が電話したところ、「無理に引っ越せとは言っていない。家賃を下げるように家主と交渉するように言っている。家賃が下がらず、引っ越さない場合3万9千円との差額は本人負担になる。」という返事だった。「厚労省の通達は知っているか」聞いたところ、「知っているが、所の方針として差額を本人負担してもらうことになっている」と言った。支援者が強く抗議して、上司と再検討のうえ回答をもらうことになった。

⑤ 大阪市平野区
 自己都合で転居費用を自分で用立てて6月中に42000円(現行基準内)のところに引越しをする人が、ケースワーカーから「40000円以下のところを探せ。42000円のところに転居したら、転居後、さらに転居指導する」と言われた。

⑥ 大阪府下自治体・男性(車いす利用の身体障害者)
 「家主に値下げを交渉するか、府営住宅に申し込むように」と言われる。相談した弁護士から例外措置があることを聞き、ケースワーカーに「例外措置はないのか」と尋ねたところ、「そんなものはない。知らない」と言われた。

⑦ 大船渡市・女性(化学物質過敏症、障害年金受給)
 冬季加算が今年度から月額14,230円から8,860円に減額。重度の化学物質過敏症のため外出時には酸素ボンベの携帯が不可欠であり、在宅時間が極めて長い。1.3倍基準が適用されないか福祉事務所長に問うたが、「それが適用されるのは寝たきりの人だけ」というニュアンスで答えられた。




住宅扶助・冬季加算引き下げ対抗チラシ
Q&Aのパンフレット版を作成しました!詳しくはこちらをご覧下さい。
http://seikatuhogotaisaku.blog.fc2.com/blog-entry-246.html


国は、今年度から生活保護の住宅扶助基準(7月~)と冬季加算(10月~)を多くの地域で大幅に削減する方針を決めました。削減が形式的に徹底されると44万人の利用者が住宅難民化するという深刻な影響が予想されています。

しかし、一方で厚生労働省は、これらについて、経過措置・例外措置を認める通知を出しています。

その内容を、以下のQ&Aにまとめましたので、これを拡散して下さい。
「あきらめないで!闘うすべはある。」を合い言葉に、対抗していきましょう!



住宅扶助基準・冬季加算引き下げ問題Q&A
あきらめないで!闘うすべはある。


住宅扶助編

【住宅扶助基準引き下げの内容】
Q1 2015(平成27)年7月から生活保護の住宅扶助基準が下がると聞きましたが本当ですか。

A 本当です。厚生労働省は、今年7月から生活保護の住宅扶助基準の改定を行います。一部基準が上がる地域もありますが、多くの地域で下がり、年間190億円の削減効果が見込まれています。厚生労働省は、削減の影響を受ける世帯が44万世帯(生活保護世帯の約3割)に及ぶことを明らかにしています(2015年4月8日参議院厚生労働委員会辰巳孝太郎議員の質問に対する答弁)。
例えば、埼玉県2級地では、単身者は4万8000円から4万3000円に5000円ダウン、2人世帯は6万2000円から5万2000円に1万円ダウン、大阪府1級地では、単身者は4万2000円から3万9000円に3000円ダウン、2人世帯は5万5000円から4万7000円に8000円ダウンと、大変な削減額となっています。
 これが杓子定規に適用されると、多くの生活保護利用者が住宅難民化し、ある面、生活扶助基準の引き下げ以上に深刻な事態が生じるのではないかという不安の声が高まっています。
しかし、以下のQ&Aで紹介するように、経過措置や例外措置も定められていますので、これを柔軟に適用させることができれば、かなりの人が救われます。あきらめないでください。

※各地域の新基準額→「H27.4.14社援発0414第9号厚労省社会・援護局長通知別記」 click!

【引き下げの時期】
Q2 改定された新基準はいつから適用されるのですか?


A 2015年7月以降に新たに生活保護を申請する人には新基準が適用されます。しかし、2015年7月以前から生活保護を利用している人に対しては、次の契約の更新時期が来るまで、新基準の適用は猶予されます。契約に更新時期の定めがない人は2016(平成28)年6月まで猶予されます。


【例外措置の内容】
Q3 私には身体障害があり、車いすを利用しているため、部屋の広さやマンションの設備(エレベーター等)が必要で、新基準の家賃で借りられる良い物件は見つかりません。また、高齢で病気もあるため、住み慣れた町を離れたくありませんし、引っ越すと通院に支障が生じると思います。これまでどおりの住宅扶助費を支給してもらって、今の住居に住み続けることはできないのでしょうか?


A あなたのような方は、これまでどおりの住宅扶助費を支給してもらって、今の住居に住み続けることができます。
厚生労働省は、通知(平成27 年4 月14 日社援発0414 第9 号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について」)を発出し、新基準を適用しなくてよい、幾つかの例外取扱いを示しています。

1 特別基準の設定
「世帯員数、世帯員の状況、当該地域の住宅事情によりやむを得ない」場合には一般基準の1.3倍~1.8倍の特別基準を設定してもらうことができます(「保護の実施要領について」局長通知第7の4(1)オ)。

 特別基準は、例えば、大阪市の場合(全国も同じ倍率です)、1人:52、000円(40、000円×1.3倍)、2人:56、000円(40、000円×1.4倍)、3人:60、000円(40、000円×1.5倍)、4人:64、000円(40、000円×1.6倍)、5人:68、000円(40、000円×1.7倍)、6人:(5人に同じ)、7人以上:72、000円(40000円×1.8倍)となっています。
多人数世帯の場合、車いす利用等でもともと特別基準を設定されていた場合、都市部等で新基準の家賃で借りられる適切な物件が近隣にない場合などには、この特別基準の設定を求めて福祉事務所と交渉してみましょう。

2 旧基準の適用
次の3つの場合には、引き下げ前の旧基準を適用できます。

(ア)「通院又は通所(以下「通院等」という)をしており、引き続き当該医療機関や施設等へ通院等が必要であると認められる場合であって、転居によって通院等に支障を来すおそれがある場合」
 高齢であったり、障害や病気があって、通院したり施設に通所している方で、主治医や施設職員との信頼関係等から引き続き当該病院等への通院通所が必要な場合で、引っ越すと通院等がしにくくなる場合が、これに当たると考えられます。

(イ)「現に就労や就学しており、転居によって通勤または通学に支障を来すおそれがある場合」
 世帯の誰かが働いていたり、学校に通っていたりしていて、引っ越すと通勤、通学がしにくくなる場合が、これに当たります。

(ウ)「高齢者、身体障害者等であって日常生活において扶養義務者からの援助や地域の支援を受けて生活している場合など、転居によって自立を阻害するおそれがある場合」
 介護が必要な高齢者、身体障害者等で、近隣に住む親族からの援助や、地域の事業所の支援を受けて生活している方で、病気や障害等の特性に対する理解や信頼関係等から、引き続き当該親族や事業所からの支援が必要な場合が典型的な場合です。
 しかし、この規定は、「・・場合など」としていますので、このような典型的な場合でなくても、個別具体的な事情から「転居によって自立を阻害するおそれがある場合」には、幅広く旧基準の適用を認めることができると解すべきです。例えば、介護保険法や総合支援法に基づく住宅改修をすでに行っている住居に居住する者も対象と考えられます。


【転居先の選択権は】
Q4 新基準の家賃で暮らせそうな物件を近隣で探しましたが見つかりませんでした。ケースワーカーにそう報告すると、「A市やB市なら安い物件があるから探す範囲を広げるように。府営住宅にも応募するように」と言われました。私は、今住んでいる町が気に入っているので離れたくありません。
 また、「物件を選ばなければ近隣でもあるはず」と言われるのですが、新基準で借りられる物件だと、今住んでいるアパートよりも広さも設備もかなり悪くなるので住みたいと思えません。
 私はケースワーカーの指示に従わなければならないのでしょうか?


A 従う必要はありません。
1 居住・移転の自由(憲法22条)があります
自己の選択するところに従い様々な自然や人に接し、コミュニケートすることは、個人の人格形成・精神的活動にとって決定的な重要性を持つことから、憲法22条1項は、自己の好むところに居住し、または移転するにつき、公権力によって妨害されないという、居住・移転の自由を保障しています(佐藤幸治「憲法・新版」485頁)。どこに住むかは個人の自由であって、遠い田舎や不便な場所への転居を強いられるいわれはありません。
 したがって、本人の意に反して、住む場所や地域を指定するようなケースワーカーの指導指示は、「保護の目的達成に必要」(生活保護法27条1項)でもなく、「必要の最少限度」
(同法27条2項)とも言えないので、違法無効であって従う必要はありません。

2 劣悪物件への転居は許されません
国は、住生活基本法に基づく住生活基本計画(平成23年3月15日閣議決定)において「最低居住面積水準」(健康で文化的な住生活を営む基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準)」未達成率を早期に解消することを目標として掲げています。
最低居住面積水準は、単身者で25㎡、2人以上の世帯では10㎡×世帯人数+10㎡です(住生活基本計画別紙4)。また、設備基準(同別紙1)として、「専用の台所その他の家事スペース、便所(原則として水洗便所)、洗面所及び浴室を確保する。ただし、適切な規模の共用の台所及び浴室を備えた場合は、各個室には専用のミニキッチン、水洗便所及び洗面所を確保すれば足りる。」「中高層住宅については、原則としてエレベーターを設置する。」等の基準も定められています。
そして、社会保障審議会生活保護基準部会の平成27年1月9日付報告書(2頁)では、生活保護利用世帯の最低居住面積水準の達成率が一般世帯を大きく下回っていることから、「生活保護利用世帯において、より適切な住環境を確保するための方策を検討することが必要」と指摘されています。また、平成27年5月13日社援保発0513第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知「住宅扶助の認定にかかる留意事項について」の3項も、「福祉事務所は、生活保護受給世帯が(略)受給中に転居する必要がある場合には、最低居住面積水準を満たす等、適切な住宅の確保を図るため、(略)その仕組みづくりに努めること」を特に要請しています。
こうしたことからすると、現住居よりも居住水準が劣悪な物件(特に上記の最低居住面積水準(設備基準を含む)を満たさない物件)への転居は差し控えられるべきです。このような場合は、Q3で述べた「転居によって自立を阻害するおそれがある場合」にあたるものとして旧基準を適用すべきものと考えられます。


【転居指導への対応】
Q5 私たち夫婦は、家賃6万2000円の物件に住んでいます。これまで同額の住宅扶助費が支給されていましたが、基準改定によって5万2000円しか支給されなくなりました。私たちは、住み慣れた今の住居に住み続けたいので、差額の1万円は生活扶助費をやり繰りして支払っています。ところが、担当ケースワーカーからは基準内の物件に転居するよう繰り返し指導され、ついには、「○月○日までに転居しない場合は、指導指示違反で保護の停廃止等があり得る」という指導指示書が届きました。
転居しないと私たちの生活保護は打ち切られてしまうのでしょうか?


A このような指導指示は違法であり、仮に停廃止等がなされれば、それもまた違法であって許されません。設問のような事例では転居をする必要はありません。 
 福岡高等裁判所平成10年10月19日判決(中嶋訴訟)は、「生活保護制度は、被保護者に人間の尊厳にふさわしい生活を保障することを目的としているものであるところ、人間の尊厳にふさわしい生活の根本は、人が自らの生き方ないし生活を自ら決するところにあるのであるから、被保護者は収入認定された収入はもとより、支給された保護費についても、最低限度の生活保障及び自立助長といった生活保護法の目的から逸脱しない限り、これを自由に使用することができるものというべきである。」と判示しています。したがって、生活扶助費をやり繰りして超過家賃分を支払うことは、例えばそのために家賃滞納を繰り返していて生計が破綻している等の事情がない限り、当然許されます。
 このような観点から、生活保護手帳別冊問答集問7-97(単身者が転居指導に応じない場合の取扱い)も、生活保護法第27条に基づく転居指導を行い得るのは「限度額を相当に上回る家賃のアパートに入居しており明らかに最低生活の維持に支障があると認められる場合」に限られるとしています。東京都の運用事例集(2006年)問6-57は、さらに具体的に、「実家賃が少額の基準超過に過ぎない場合については、転居指導を行うその他の合理的な理由を必要とする。すなわち転居費用の扶助額と比較した場合に著しく均衡を欠くような効果しか得られない場合には、転居指導そのものを当面の間留保することも考えられる。合理的な理由に基づく転居指導に従わないことをもって、保護を停廃止する場合には、①当該住宅が地域との均衡を著しく失していることによって、適正な水準の保護が実施できない客観的な根拠の明示を必要とし、さらに、②事前に適切な指導指示を十分に行っていること、③弁明の機会の提供等、適正な手続が行われていることが前提となる。」としています。
 設問のように、生活扶助費のやり繰りで超過家賃分を支払い、何とか生計を維持できている場合には、そもそも27条による指導指示を行うこと自体が許されません。仮に、指導指示書を出したとすれば、当該指導指示は無権限による無効であり、指導指示違反による保護の停廃止も当然違法ということになります。


【転居する場合】
Q6 私は、やむを得ず転居しようと思うのですが、その場合、転居費用はどうなるのでしょうか?


A 転居先住居の敷金・日割り家賃や引っ越し代については生活保護費から支給されます。


冬季加算編

【冬季加算削減の内容】
Q7 生活保護基準の改定によって、冬季加算額が大幅に減額されると聞きましたが、本当でしょうか?


A 本当です。冬季加算については、下記のとおり、一部地域では支給月数が増やされる一方、各月の支給金額は大幅に減らされ、単年度で30億円の削減効果が見込まれています。このため、特に寒冷地では暖房費を削らざるを得ず、高齢者や傷病者等の健康に悪影響が出ることが懸念されています。
(地区) (支給月) (見直し幅)
 Ⅰ区 10~4月  △19%
 Ⅱ区 10~4月  △20%
 Ⅲ区 11~4月  △17%
 Ⅳ区 11~4月  △1%
 Ⅴ区 11~3月  △17%
 Ⅵ区 11~3月  △6%



【例外措置(1.3倍)の内容】
Q8 私の世帯では、母が寝たきりで1日中家の中にいるため光熱費が大変かさみます。基準改定で冬季加算が大幅減額されると暖房費が支払えなくなり家計が破綻してしまうのではないかと大変心配です。何とかならないのでしょうか?


A 厚生労働省社会・援護局保護課長は、平成27年5月14日付けで「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」という通知を出して、実施要領第7の問29と問29の2を改正・新設し、設例のようなケースを含め、以下のような場合に地区別冬季加算額の1.3倍の額を認定してよい、とする例外措置を認めています。
 ぜひ、この例外にあたることを福祉事務所に積極的に訴えていきましょう。

① 重度障害者加算を算定している者又は要介護度が3、4若しくは5である者であって、日常生活において常時の介護を必要とするため、外出が著しく困難であり、常時在宅している生活実態にある者(介護人の支援を受けて、通院等のために外出することがある者を含む)(問29)
② 医師の診断書等により、傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない状態にある者(問29)
③ 傷病、障害等による療養のため外出が著しく困難であり、常時在宅せざるを得ない者又は乳児が世帯員にいる場合(問29の2)



対応策編

【どう闘うか】
Q9 さまざまな例外措置があることは分かりました。私も、「この例外措置にあたるのではないか」と思う点がいくつかありますので、ケースワーカーに言ってみましたが聞き入れてくれません。どのようにすれば良いでしょうか?
 結果的に例外扱いが認められずに原則どおり引き下げられてしまった場合や、転居指導に違反したとして保護を停廃止されてしまった場合、争う方法はありますか?
 

A 「この例外措置にあたるのではないか」と思う点があるのであれば、「かくかくしかじかの具体的な事情から、○○という例外措置にあたると思うので認めてほしい」ということを書面に書いて「申入書」などの形で福祉事務所に提出しましょう。その具体的事情があなたの抱えている傷病や障害に関係することであれば、主治医に診断書や意見書を書いてもらったり、介護サービスに関係することであれば、サービス事業所やケアマネージャー等に意見書を書いてもらって添付できるとより良いでしょう。
 原則どおりに引き下げられてしまった場合には、引き下げられた金額による保護変更決定通知書を受け取った日の翌日から60日以内に都道府県知事に対して審査請求をすることができます。また、転居指導違反で保護を停廃止された場合にも、同様に審査請求をすることができます。審査請求をしておけば、あとで決定の取消しを求める裁判を提起することもできます。非人道的な取り扱いに対して抗議の意思を示し、是正させるためにも積極的に審査請求をしていきましょう!



申入書書式
福祉事務所への申入書
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関連する通知
H27.4.14社援発0414 第9 号厚生労働省社会・援護局長通知「生活保護法による保護の基準に基づき厚生労働大臣が別に定める住宅扶助(家賃・間代等)の限度額の設定について」
「H27.4.14社援発0414第9号厚労省社会・援護局長通知別記」
H27.5.13社援保発05133第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知「住宅扶助の認定にかかる留意事項について」
H27.5.14付け「『生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて』の一部改正について」(局長通知・課長通知)

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当会は、本日、以下のとおりの声明を発表いたしました。

2015年1月8日


住宅扶助基準と冬季加算の削減を既定路線とすることに厳重に抗議する声明

生活保護問題対策全国会議



 現在、社会保障審議会の生活保護基準部会において、住宅扶助基準と冬季加算のあり方が検討されている。前回の第21回部会(平成26年12月26日開催)において事務局(厚生労働省)から報告書案が提示され、次回第22回部会(平成27年1月9日開催予定)において報告書がとりまとめられる方向である。
 同部会では、委員らから安易な引き下げに否定的な慎重意見が多く出されているにもかかわらず、厚生労働省が住宅扶助基準等を引き下げる方針であるとの報道が昨年末から相次いでいる。

 本年1月中旬にも閣議決定されるという平成27年度予算は、過去最大の予算規模となると報じられている。しかし、当該予算の前提とされるであろう財政制度等審議会による「平成27年度予算の編成等に関する建議」(平成26年12月25日)では、社会保障については、医療、年金、介護、障がい福祉等の諸分野について、軒並み削減方針が明示されている。特に、生活保護の分野では、平成25年8月から史上最大(平均6.5%、最大10%)の生活扶助基準の引き下げを段階的に実施している最中に、住宅扶助基準と冬季加算の引き下げを既定路線とし、さらに平成27年4月から施行される生活困窮者自立支援制度についても、「政策効果が生活保護受給者の減少として確実に表れているか、事後的にしっかりと検証を行う必要がある」とまで述べている。

 一方において史上最大規模の大型予算編成を行いながら、最も声をあげることが困難な生活保護利用者を始めとする弱者に対しては情け容赦なく給付を削減し続けることは不公平極まりなく、不正義である。また、生活保護基準部会での慎重意見にもかかわらず、財政目的での削減が当初からの既定路線として結論づけられているのでは、社会保障審議会は、その存在意義を喪失する。

 生活保護制度は、憲法25条が保障する生存権の基盤となる制度である。「健康で文化的な最低限度の生活」の水準としてのあるべき姿を虚心坦懐に探ることなく、財政目的で安易に引き下げ続けることは到底許されない。
当会は、住宅扶助基準と冬季加算の引き下げに改めて強く反対するとともに、それを既定路線とする動きに対して厳重に抗議するものである。

以 上



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