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 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、厚生労働省に緊急要望をしました。



2018年7月26日

厚生労働大臣 加藤勝信 殿
いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護問題対策全国会議


厚労省通知の改善・周知と夏季加算創設等を
求める緊急要望書


第1 要望の趣旨
 記録的な酷暑が続く中、全国各地で熱中症で亡くなる方が続出しています。異常気象ともいえる状況の中、高齢・障害・傷病・幼少等の生活保護利用者の命と健康が危険にさらされていることを踏まえ、以下の諸点を緊急に要望します。
1 生活保護利用者にエアコン購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認める厚労省通知に関し、実施機関の柔軟な運用が可能であり必要であることを含め、改めて周知徹底してください。
2 上記通知について、本年3月以前に保護開始された者も対象とするよう改正してください。
3 実施要領局長通知第7-4(2)アの「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給も可能であることを周知してください。
4 生活保護利用者が電気代を心配せずエアコンを使えるように、この間引き下げられ続けている生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算を元に戻し、夏季加算を創設してください。

第2 要望の理由
1 エアコン購入費等の支給を認める本件厚労省通知の内容
 厚生労働省は、近年、熱中症による健康被害が数多く報告されていることを踏まえ、本年6月27日に発表した社会・援護局長、保護課長通知で保護の実施要領を改正し、一定の条件を満たす場合にエアコン等の冷房器具購入費(上限5万円)と設置費用の支給を認めることとしました(以下、「本件厚労省通知」といいます。)。
 通知の内容は以下のとおりです。

(1)エアコン購入費等が認められる場合
 以下の5つのいずれかに該当し、かつ、世帯内に「熱中症予防が特に必要とされる者」がいる場合
(ア)2018年4月1日以降に保護開始された人でエアコン等の持ち合わせがない
(イ)単身者で長期入院・入所後の退院・退所時にエアコン等の持ち合わせがない
(ウ)災害にあい、災害救助法の支援ではエアコン等をまかなえない
(エ)転居の場合で、新旧住居の設備の相異により、新たにエアコン等を補填しなければならない
(オ)犯罪等により被害を受け、又は同一世帯に属する者から暴力を受けて転居する場合にエアコン等の持ち合わせがない

(2) 「熱中症予防が特に必要とされる者」(局長通知第7の2の(6)のウ)の解釈
 課長通知問100は、「体温の調節機能への配慮が必要となる者として、高齢者、障害(児)者、小児及び難病患者並びに被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する。」としています。

2 本件厚労省通知の評価
(1)周知がまったく不十分である
 酷暑にあたり冷房器具購入費等の支給を認める本件厚労省通知が発出されたこと自体は評価できます。
 しかし、私たちの知る範囲でも、本件厚労省通知の内容を知らないケースワーカーも多く、福祉事務所の現場への周知はまったく進んでいません。通知の対象となり得る生活保護利用者にきちんと情報が届くよう、周知を徹底する必要があります。

(2)実施機関の柔軟な運用が可能であり、必要であることを周知すべき
 また、「熱中症予防が特に必要とされる者」について、例示されている高齢者、障害者、小児、難病患者だけでなく、「被保護者の健康状態や住環境等を総合的に勘案の上、保護の実施機関が必要と認めた者が該当する」とした点も、地域や世帯の実情を踏まえた柔軟な解釈の余地を実施機関に与えたものと理解できます。
 しかし、実施機関によっては、上記の例示の場合に限定した厳格な運用を行うことも想定されます。近年、日本全国において記録的猛暑が続き、健康な者でも熱中症を発症するリスクが高い以上、できる限り柔軟な運用が求められていることを重ねて周知することが必要です。

(3)本年3月以前に保護を開始された人も対象にすべき 
 一方、本件厚労省通知(ア)が本年3月より前に保護を開始された人を除外している点は問題です。その理由について、厚労省は、「日常生活に必要な生活用品については、保護受給中の場合、経常的最低生活費のやり繰りにより賄うこと」としていると説明しています。
 しかし、この間国は、2013年から生活扶助基準を平均6.5%最大10%引き下げ(年670億円)、期末一時扶助を引き下げ(年70億円)、2015年から住宅扶助基準(年190億円)と冬季加算(年30億円)も大幅に引き下げてきました。この相次ぐ基準の引き下げで、もともと「最低生活費」である保護費を節約して数万円単位の貯蓄をすることはほとんど不可能となっています。
 したがって、本年3月より前に保護を開始されたとしても、現に貯蓄のない人については、同様にエアコン購入費等の支給を認めるよう本件通知は改善されるべきです。

3 「住宅維持費」としてエアコン修理費の支給が可能であることも周知すべき
 本件厚労省通知によって、エアコンは最低生活維持のために必要とされる家具什器であることが明確になりました。
 したがって、エアコン等の修理費は、「被保護者が現に居住する家屋の…従属物の修理…のために経費を要する場合」の「住宅維持費」に該当するものとして、当然支給することができるはずです(実施要領局長通知第7-4(2)ア)。
 本件厚労省通知の改めての周知に際しては、この点についても併せて周知すべきです。

4 生活扶助基準・住宅扶助基準・冬季加算の復活と夏季加算の創設
 先に述べたとおり、この間のあいつく生活保護基準の引き下げのため、生活保護利用者の多くは、エアコンが自宅にあったとしても、電気代を節約するためにほとんど使わないようにしています。これでは、せっかくエアコンを設置したとしても熱中症対策にはならず「宝の持ち腐れ」です。
 悲劇が起きる前に、国は、一連の生活保護基準引き下げを撤回して元に戻し、夏季加算を創設すべきです。

以 上




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各通知書面

「一時扶助二おける家具什器費の見直しについて」

『「生活保護法による保護の実施要領について」の一部改正について』

『「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正について(通知)』

『「生活保護問答集について」の一部改正について』



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第12回総会記念集会


生活保護問題対策全国会議第12回総会 記念集会
「生活保護行政は変えられる!
  ~小田原市などの取り組みから~」


 生活保護の分野では、あいつぐ基準の引き下げや法「改正」など厳しい動きが続いています。そんな中、小田原市では生活保護ケースワーカーが「保護なめんな」などと書かれた揃いのジャンパーを着て業務にあたっていたことが問題になりました。しかし、同市は、元生活保護利用者を委員に迎えた検証委員会を設置するなど保護行政の改善に向けた前例のない取り組みを続け、それが「保護のしおり」の改善運動など全国各地での取り組みにも発展しています。
 地方から生活保護行政は改善できる!そのために必要なことは何か?
小田原市で実務の改善に取り組んでおられる現役職員の方々もお迎えして、皆さんとともに考えたいと思います。 

【日時】2018年7月14日(土)午後1時30分~午後5時

【場所】CIVI研修センター秋葉原(電気街口)D405

※資料代500円・申込不要



基調報告 「生活保護をめぐる状況と小田原市『ジャンパー事件』」


小久保 哲郎(弁護士・生活保護問題対策全国会議事務局長)



特別報告 「福島市・奨学金収入認定事件のその後」


関根未希さん(奨学金収入認定事件弁護団・弁護士)



パネルディスカッション「生活保護行政は変えられる!」

  

コーディネーター 雨宮 処凛 さん(作家)


パネリスト
塚田 崇 さん(小田原市 健康福祉部福祉政策課 総務係長)
加藤 和永 さん(同市 企画部企画政策課 企画政策係長)
和久井 みちる さん(元生活保護利用者・小田原市生活保護行政のありかた検討会委員)
田川英信さん(元生活保護ケースワーカー・査察指導員)


 

福祉事務所に「行ってみよう!見てみよう!聞いてみよう!」
各地の取り組み


●愛媛の取り組み(20分)
鈴木靜さん(いのちのとりで裁判愛媛アクション会長・愛媛大学教授)


●東北の取り組み(15分)
太田伸二さん(東北生活保護利用支援ネットワーク事務局次長・弁護士)



まとめ 尾藤廣喜(弁護士・生活保護問題対策全国会議代表幹事)


   
主催:生活保護問題対策全国会議
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 ℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
あかり法律事務所 弁護士 小久保 哲郎



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緊急院内学習内



緊急院内学習会
前基準部会部会長代理が語る
「生活保護基準の設定はいかにあるべきか」
 
           
2013年からの史上最大(平均6.5%、最大10%、年額670億円)の生活扶助基準引き下げに対して全国29都道府県において1000名近い原告が違憲訴訟を闘っているさなか、さらに2018年10月から3年間かけて、平均1.8%、最大5%、年額160億円の生活扶助基準引き下げが実行されようとしています。
下から10%の最貧困層の生活水準に合わせるという考え方に正当性があるのか。社会保障審議会生活保護基準部会部会長代理として、部会でも積極的に発言してきた貧困研究の第一人者が何を語るのか?
新進気鋭の若手研究者もコラボした超注目の学習会です。

【日時】2018年6月7日(木)午後4時30分~午後7時
【場所】衆議院第1議員会館・大会議室

地下鉄丸ノ内線・千代田線「国会議事堂前駅」1番出口徒歩3分
地下鉄有楽町線・南北線・半蔵門線「永田町駅」徒歩5分


入場無料・申込不要
※午後4時から上記議員会館ロビーにて通行証を配布します。



「生活保護基準部会は何を検証してきたのか
        ~水準均衡方式と全消データの限界」

岩田正美さん
(日本女子大学名誉教授・前生活保護基準部会部会長代理)

【プロフィール】中央大学大学院経済研究科修了。日本女子大学博士(社会福祉学)。東京都立大学人文学部助教授、教授を経て日本女子大学人間社会学部教授、2015年定年退職。厚生労働省の社会保障審議会委員、生活保護制度の在り方に関する専門委員会委員長などを歴任。主著に「社会的排除—参加の欠如と不確かな帰属」、「貧困の戦後史-貧困の『かたち』はどう変わったか」など。



「最低賃金から見た生活保護基準引き下げの意味」

桜井啓太さん
(名古屋市立大学准教授)

【プロフィール】元堺市ケースワーカー。大阪市立大学大学院創造都市研究科博士課程単位取得退学。博士(創造都市)。主著に「〈自立支援〉の社会保障を問う-生活保護・最低賃金・ワーキングプア」(法律文化社)など。


   
主催:いのちのとりで裁判全国アクション、生活保護問題対策全国会議
(連絡先)〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階 ℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
あかり法律事務所 弁護士 小久保 哲郎

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第10回生活保護問題議員研修会

“敬天愛人”のまち
鹿児島から生活保護を考える


今こそ問われる、地方行政のあり方


例年、ご好評いただいている地方議員の皆さま方を対象とする生活保護制度に関する研修会も10回目を迎えました。
今年も各分野の専門家を講師として迎え、地方行政に何ができるのかを考えます。
是非、多数ご参加いただけますよう、ご案内申し上げます。
※「敬天愛人(天を敬い、人を愛する)」とは、西郷隆盛が好んで使い、よく揮毫した言葉。

第10回生活保護問題議員研修会

★リーフレット(PDF/2.2MB)をダウンロード
★申込み書(PDF)のみダウンロード


【日時】8月24日(金)~8月25日(土)

【場所】鹿児島県市町村自治会館  アクセス

◆参加申し込みについて◆

【対象者】 地方議会議員

【定員】300名
(請求書を送付し、ご送金の順にお席を確保し領収書をお送りいたします。)

【参加費】1万5000円
(キャンセル料:8月1日以降 1万円、8月10日以降 1万5000円)

【お弁当】900円
(2日目昼食 ※8月15日以降のキャンセルはご遠慮ください)

【交流会】1日目 8月24日(金)18時から、研修会場で交流会を行います。
参加費1000円(茶菓・ソフトドリンク付き)

【問合せ先・申込先(宿泊先の手配も承ります)】
㈱国際ツーリスト・ビューロー 担当:大村・倉長
 電話:078-351-2110 FAX:078-351-2140
 E-mail:ktb-info@jupiter.ocn.ne.jp
 ①申込書をFAX、②メールを送信、の方法によりお申し込み下さい。
 ※会場の鹿児島県市町村自治会館では申し込みを受け付けておりませんのでご注意ください。



【主催】生活保護問題対策全国会議
    全国公的扶助研究会




 プログラム・1日目(12:00 受付開始) 
13:00 基調報告

「生活保護基準のたび重なる引下げと、あるべき生活保護制度」
吉永 純さん(全国公的扶助研究会会長・花園大学教授)


14:00 講演1

「地域の居住支援ネットワークの構築に向けて~新たな住宅セーフティネット制度の活用を~」
奥田 知志さん(NPO法人抱樸理事長)
稲葉 剛さん(一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事)
芝田 淳さん(NPO法人やどかりサポート鹿児島理事長)


15:45 講演2

「取材現場から見えた“貧困”」
西田 真季子さん(毎日新聞生活報道部元記者)


17:10 特別報告1

「地元からの報告~『身寄り』問題の解決に挑む~」


18:00 交流会(自由参加)

 プログラム・2日目(9:00 受付開始) 
9:15 分科会

第1分科会 生活保護なんでもQ&A
第2分科会 生活困窮者自立支援制度を有効に機能させるために
第3分科会 地方都市から子どもの貧困をなくす
第4分科会 実践!居住支援~各地の居住支援協議会、民間団体の取組み
第5分科会  生活を困難にする滞納処分の問題点
第6分科会 多様な課題を抱える方々への支援


12:45 講演3

「生存権はなぜ生まれ、何を保障しているのか」
木村 草太さん(首都大学東京大学院教授)


14:05 特別報告2

「私のまちの生活保護~議員としてのチェックポイント~」
田川 英信さん(社会福祉士)


14:35 まとめ

「あるべき生活保護法改革とは何か」
尾藤廣喜さん(弁護士・生活保護問題対策全国会議代表幹事)


 

 各プログラムの内容ご紹介 
【1日目】
基調報告「生活保護基準のたび重なる引下げと、あるべき生活保護制度」
市民生活の「岩盤」である生活保護基準額は、低きに合わせる手法によって、2013年からの引下げに続き2018年10月から更なる引下げが予定され、このままではナショナルミニマムの底抜けが危惧されます。引下げの意味とあるべき生活保護制度について、裁判事例や諸外国との比較なども踏まえて考えます。

講師:吉永純さん
全国公的扶助研究会会長・花園大学教授。福祉事務所20年、生活保護ケースワーカー12年の経験を生かして、貧困問題、生活保護等を研究。著書に「生活保護『改革』と生存権の保障」(2015年)、編著に「生活保護手帳の読み方、使い方」(2017年)いずれも明石書店など。



講演1 「地域の居住支援ネットワークの構築に向けて~新たな住宅セーフティネット制度の活用を~」
超高齢化社会の到来、血縁・地縁の希薄化、「身寄り」がなく社会的に孤立した方の増加等、住宅の確保に配慮を要する方々に対する支援の必要性が高まっています。2017年10月、住宅セーフティネット法が改正され、国交省と厚労省が協力して「新たな住宅セーフティネット制度」が始まりました。地域における「居住支援ネットワーク」を構築するために、新制度をいかに活用すべきか。地域での実施者を迎えてともに考えます。

講師:奥田 知志さん
NPO法人抱樸理事長。東八幡キリスト協会牧師。1990年より北九州越冬実行委員会に参加。事務局長、代表を経て2000年、同団体がNPO法人北九州ホームレス支援機構となり、理事長就任。2014年抱樸に改称。2007年NPO法人ホームレス支援全国ネット発足、理事長就任。著書(共著)に『ホームレス自立支援-NPO・市民・行政協働による「ホームの回復」』(明石書店)、「生活困窮者への伴走型支援」(同前)ほか

講師:稲葉 剛さん
一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。立教大学大学院特任准教授。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。著書に「ハウジングファースト」(共編著、山吹書店)、「生活保護から考える」(岩波新書)、「貧困の現場から社会を変える」(堀之内出版)など。

講師:芝田 淳さん
NPO法人やどかりサポート鹿児島理事長。司法書士。2004年ホームレス支援活動を始め、その後、居住支援や連帯保証を行うNPO、生活困窮者自立支援事業を行う一般社団法人等を展開。2017年、居住支援全国ネットワークの事務局長に就任。やどかりサポート鹿児島は鹿児島県第1号の居住支援法人に指定された。




講演2「取材現場から見えた“貧困”」
2度目の大幅な生活保護基準切り下げが間近となっています。生活保護利用者の現状と支援にあたるケースワーカー、利用者以外の声など多様な取材現場からみえてきた現状を報告します。また、保護に至るまでの貧困の連鎖や雇用、住宅の問題などについてもお話しします。

講師:西田 真季子さん
毎日新聞生活報道部元記者。2008年毎日新聞入社。09年、さいたま支局(埼玉県)で生活保護世帯への学習支援を取材してから、貧困問題、生活保護、労働をテーマとしてきた。小田原市の生活保護CWジャンパー問題や保護基準切り下げも取材した。



特別報告1「地元からの報告~『身寄り』問題の解決に挑む~」
「家族がいるのがあたり前」を前提にでき上がっている社会。そのために「身寄り」のない方が排除され差別されています。鹿児島では、こうした『身寄り』問題に当事者、支援者、事業者がそれぞれの立場から挑む取組みが始まっています。生存権裁判の原告らもこの取り組みに参加。鹿児島の実践を当事者の声を中心に報告します。


【2日目】
分科会
■第1分科会 生活保護なんでもQ&A
生活保護相談でよく問題になる点、各自治体の生活保護行政が正しく運用されているのかのチェックポイントについて、「歩く生活保護手帳」と呼ばれ、あるべき実務運用を知り尽くした鉄壁コンビが解説します。当日は質問の時間を設け議員の皆さんの悩みや質問にも即座に回答。市民の方々から受ける生活保護の相談、議会での質問に役立ちます。

講師:觜本 郁さん
阪神・淡路大震災の支援活動の中で生まれた「神戸の冬を支える会」(ホームレスの方や生活に困った方への支動)や「NGO神戸外国人救援ネット」(ニューカマー外国人支援)の立ち上げに関わり、以降、相談支援活動にたずさわる。元神戸市職員。社会福祉士。

講師:田川 英信さん
社会福祉士。世田谷区でケースワーカー、保護係長を15年間経験。共著に「子どもの貧困ハンドブック」、「『生活保護なめんな』ジャンパー事件から考える」、「Q&A生活保護手帳の読み方・使い方」等。生活保護問題対策全国会議事務局次長、全国公的扶助研究会運営委員。

講師:森 弘典さん
弁護士。1999年弁護士登録。司法修習中に、野宿労働者の生活保護適用等が問題となった林訴訟に関わる。2002年、愛知県弁護士会の人権擁護委員会に生活保護問題チームを立ち上げ、2003年以降、炊き出しの場で行う野宿者総合法律相談を企画し実施。2010年から日弁蘭貧困問題対策本部セーフティネット部会で活動。



■第2分科会 生活困窮者自立支援制度を有効に機能させるために
生活困窮者自立支援制度が開始され3年が経過しました。この間、全国で先進的な取組みが進むと同時に様々な課題も表面化しています。現場での創意工夫による実践をもとに本制度が期待されている困窮者支援における意義や役割について検討します。

講師:丸野 光俊さん
社会福祉法人姶良市社会福祉協議会地域在宅福祉課地域福祉係長。大学卒業後、1年半のニート期間を経て、姶良市社会福祉協議会へ入職。現在は姶良市自立支援センターにて生活困窮者自立支援事業を担当している。

講師:藤原 奈美さん
大隅くらし・しごとサポートセンターセンター長。精神科病院、ホームレス支援団体・居住支援団体等で生活困窮者等の相談支援を経験し、現在は大隅くらし・しごとサポートセンターのセンター長兼主任相談支援員として従事している。

講師:仲野 浩司郎さん
社会福祉士。全国公的扶助研究会運営委員。平成21年に社会福祉専門職として羽曳野市に入庁。生活保護CWを経験し、現在は生活困窮者自立支援制度を担当。生活保護制度と積極的に連携しながら困窮者の支援を行っている。



■第3分科会 地方都市から子どもの貧困をなくす
「子どもの貧困」は今や重要な社会問題として認識されるようになりました。しかし、子どもの貧困の「存在を認識すること」と「その内容を知ること」は全く別です。本分科会では、「子どもの貧困」が何を意味しているのかを理解し、さらに現在の取組の意義と課題を明らかにしていきます。

講師:志賀 信夫さん
長崎短期大学講師。NPO法人「結い」理事。日向市子ども未来応援会議委員(副会長)。博士(社会学)。専門は貧困理論、社会政策。著書として単著「貧困理論の再検討」(2016年、法律文化社)、編著「地方都市から子どもの貧困をなくす」(2016年、旬報社)など。

講師:坂本 毅啓さん
北九州市立大学地域創生学群准教授。NPO法人「結い」理事。日向市子ども未来応援会議委員。社会福祉士。子どもの貧困に関する実態調査、学習支援や子ども食堂の事業評価に関わる。近著として共著「雇用創出と地域」(2017年、大学教育出版)など。



■第4分科会 実践!居住支援~各地の居住支援協議会、民間団体の取組み~
新たな住宅セーフティネット制度が始動する中、地域の居住支援ネットワークの構築はどこまで進んでいるのか?先進的な取組みを実践している福岡市居住支援協議会の事例を紹介するとともに、東京・鹿児島等各地の実践を紹介し、居住支援のあり方をともに考えます。

講師:稲葉 剛さん
講演1参照

講師:芝田 淳さん
講演1参照

講師:栗田 将行さん
福岡市社会福祉協議会 地域福祉課事業開発係長。行政書士、社会福祉士。飯塚市社会福祉協議会で権利擁護センターを立ち上げた後、福岡市社会福祉協議会にて死後事務事業「ずーっとあんしん安らか事業」や、民間賃貸住宅への入居支援事業「住まいサポートふくおか」を担当している。



■第5分科会 生活を困難にする滞納処分の問題点
第一部は、前橋市に代表される、強権的な地方徴収行政の現状を踏まえ、住民に身近な地方議員として、滞納問題の相談を受けた場合の対応を、国税徴収法の概略及び裁判例などで説明します。第二部では、地方財政の立場から強圧的な滞納処分の非合理性を明らかにして、野洲市に見られる先進的で効率的な徴税行政を紹介します。

講師:角谷 啓一さん
税理士(東京税理士会所属)、滞納処分対策全国会議代表、滞納相談センター代表。国税の職場を定年退職(2003年)するまで40年余、滞納整理事務に従事。並行して、全国税組合員として、組合分裂攻撃と闘いながら定年まで活動。2004年以降は、税理士業務のかたわら、納税者の視点に立った徴収実務の研究・相談活動に従事。書籍「差押え:滞納処分の対処法」を共同執筆。

講師:柴田 武男さん
聖学院大学政治経済学部教授、滞納処分対策全国会議副代表。1952年東京生まれ。東京大学大学院経済学研究科第二種博士課程満期退学。財団法人日本証券経済研究所主任研究員を経て、聖学院大学政治経済学科教授。2018年3月定年退職。現在、同大学講師。



■第6分科会 多様な課題を抱える方々への支援
高齢、障がい、非正規労働、ひとり親などの生活上の課題を抱え貧困に陥りやすい人々が増加する中、生きづらさからアルコールやギャンブルなどの依存に陥る方や、精神的な不具合を起こして孤立し援助を拒む方も少なくありません。複合的な課題を抱える世帯も多く、行政の相談窓口や地域の相談機関では、対応しにくい事例も増えています。制度のはざまから落ちこぼれないような相談援助のあり方を参加者の皆さんとともに考えます。

講師:横山 秀昭さん
横浜市旭福祉保健センターソーシャルワーカー・全国公的扶助研究会事務局長。精神障がい者福祉と社会福祉職の人材育成を専門としています。

講師:谷口 伊三美さん
33年にわたり、行政の現場で生活保護や生活困窮者支援に携わり、困難な状況を生きる人たちの支援を続ける。また、日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会副会長として、アルコールや薬物などアディクション問題全般に取り組んでいる。

講師:南川 久美子さん
社会福祉法人ジェイエイみえ会「ふれあいの家」施設長。基幹相談支援センターにて困難な事例や障がい者虐待の対応に従事している。精神保健福祉士・認定社会福祉士としてソーシャルワーカーの人材育成を担っている。



講演3 「生存権はなぜ生まれ、何を保障しているのか」
憲法25条が保障する“生存権”。生活保護はその“岩盤”ともいえる大切な制度のはずなのに、この間、心ないバッシングや相次ぐ基準の引き下げが続いています。この状況をどのように考えるべきか?気鋭の憲法学者が、“そもそも論”から説きおこします。

講師:木村 草太さん
首都大学東京大学院教授。1980年生まれ。東京大学法学部卒。同助手を経て、現職。テレビ朝日系列「報道ステーション」のコメンテータなど、メディア出演も多数。著書に「憲法という希望」(講談社現代新書)「憲法の新手」(沖縄タイムス出版)など。



特別報告2 「私のまちの生活保護~議員としてのチェックポイント~」
生活保護法や実施要領に基づいて実施される保護制度。しかし、いわゆる水際作戦や、憲法・不適切な運用による人権侵害が後を絶ちません。ホームページや「保護のしおり」は適切で分かりやすいか、専門性のある職員の配置はできているか等、各地で進んでいる「私のまちの生活保護」の見直し運動の意義を説明します。

講師:田川 英信さん
第1分科会参照



まとめ 「あるべき生活保護法改革とは何か」
今、生活保護基準の額引き下げだけではなく、法63条による費用返還債権回収の強化、後発医薬品使用の原則化などの法「改正」が提案されています。しかし、生存権を支え、権利として利用しやすい制度とするためにどのような法改正があるめきなのか、その構想と運動を提案します。

講師:尾藤 廣喜さん
弁護士、生活保護問題対策全国会議代表幹事。70年、厚生省入省。75年、京都弁護士会に弁護士登録後、数々の生活保護裁判を勝利に導いてきた。日弁連・貧困問題対策本部副本部長。著書に「生存権」「生活保護『改革』ここが焦点だ!」(共著)など。




<これまでの参加者の声>

  • 多様な講師を選ばれ、大変実りある研修会でした。次回も絶対参加希望します。

  • 毎年、来たい!

  • 会派として毎回参加しています。他の皆さんも毎回見えにくいものに気づかされるとの感想です。




 通院移送費の不支給決定の違法性が認められた奈良地裁判決は、奈良市が控訴せず4月11日確定しました。
 原告H氏は判決確定を見届けたうえ、翌12日未明に亡くなりましたが、「本件個別事案についての認定であり、通院方法に関する奈良市の認定方針に影響するものではない」との奈良市のコメントには疑問が残ります。原告弁護団と原告の声明をご覧ください。




[弁護団声明文]


生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書


2018(平成30)年4月12日


声明文


原告H氏代理人弁護士  古川雅朗
         

同       西村香苗
         

同      佐々木育子
         

同       幸田直樹



 生活保護の通院移送費制度のあり方が争われた奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求、国家賠償請求事件については、原告及び被告のいずれからも控訴はなされず、昨日、奈良地方裁判所の判決が確定しました。
 しかし、原告であるH氏は、判決確定を見届けたうえ、昨日未明に亡くなられました。
 私たちとしては、国家賠償請求を全く認めなかった判決には不満もありますが、当事者である原告H氏の体調等にも鑑み、早期の解決及び救済のため、あえて控訴をしないこととしていました。しかし、最終的な救済が間に合わなかったことは大変に残念です。
 今後、H氏の死去を受けて、奈良市が、判決で命じられた通院移送費の支給決定及びその支払をどのように取り扱うかは未だ不明です。しかし、奈良市においては、4月6日の時点でもはや控訴はしないということを対外的にも表明しており、そうであればその時点で速やかに決定及び保護費支払を行っていればよかったのですから、今更決定をしない、支払をしないということは許されないと考えます。

判決確定を受けての発表を準備していたH氏のコメントをここに掲載します。




 判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのかということです。
 奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
 様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を鳴らしてほしいと考えています。
 ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。




 私たちは、本件を受けて、奈良市及びその他の実施機関が、通院移送費制度を生活保護利用者にきちんと周知及び教示することを望みます。この点、奈良市は、奈良地裁判決について、「奈良市の保護費支給の基準ないし方針が誤ったものであるとは認定されておらず、本件はあくまで個別事案についての判断であり、本判決の確定によっても、今後の奈良市の方針変更を要する等保護行政の適正な執行に支障を来すものではなく、かつ過去の別件事案の適法妥当性に影響を与えるものではないことを確認しました」とコメントしていますが、確かに判決の判断はそこまで踏み込んだものでなかったとはいえ、しかし、奈良市のこれまでの通院移送費制度についての態度が法の趣旨に沿ったまっとうなものであったとは、私たちは必ずしも考えておりません。
 したがって、私たちは、H氏の遺志に沿って、引き続き、生活保護利用者及びその支援者と連携して、生活保護行政が真に利用者のためにあるように、改善の取り組みを続けていく所存です。
 最後になりましたが、本件活動を様々な面で支えていただいた奈良及び全国の支援者のみなさんに対し、ひとまず現時点でお礼を申し上げます。ありがとうございました。
以上




[原告声明文]

奈良市通院移送費裁判判決確定にあたって

                                     
2018年4月7日


原告H

 

一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。
判決は確定しますが、問題はこれからです。今回のことだけでなく、奈良市がこれからどのように考えてくれるのるかということです。
奈良市の対応はクエスチョンマークがつきます。奈良市には疑問の残る対応をしてほしくありません。
様々な意見があると思いますが、議論の上、受給者や対象となりうる市民に対応する立場にある人たちが、意思を継いで、福祉行政のあるべき姿を目指して取り組みを続けていってほしい、是非とも実行してほしいと考えています。視点を変えれば全てのものごとは分かります。それぞれが主体となって警鐘を慣らしてほしいと考えています。
ご支援いただいたみなさまには感謝申し上げます。ほんとうにありがとうございました。





 本来医療扶助から支給される通院移送費(交通費)について、奈良市福祉事務所が本人に制度を教示せず、また本人から相談があったにも関わらず生活扶助から費用を捻出するよう指導した事案で、奈良地方裁判所は、2018年3月27日、原告の訴えを認め、処分の取り消しを認めました。

 以下のとおり、原告は判決をふまえて声明を出し、弁護団は奈良市長に控訴をしないよう申し入れました。

 趣旨にご賛同いただける方は、奈良市長に控訴しないよう求めるファックスを送っていただくようお願いいたします。

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[弁護団申入書]


2018(平成30)年4月2日

奈良市長 仲川元庸殿


申入書


原告H氏代理人弁護士  古川雅朗
         

同     西村香苗
         

同    佐々木育子
         

同     幸田直樹



私たちは、奈良市を被告とする奈良地方裁判所平成27年(行ウ)第31号 保護変更申請却下処分取消等請求事件、国家賠償請求事件における原告H氏の訴訟代理人団として、次のとおり意見を述べます。


奈良市は、本件につき、控訴をするべきではありません。

1 頭書事件についての本年3月27日の奈良地方裁判所の判決では、H氏の通院交通費の平成25年8月以前の遡及分につき、奈良市側がいったんはその支給をすることを表明しながら、後にこれを覆してH氏の申請を却下したことが、「禁反言の法理」の適用によりもはや行政裁量の範囲を逸脱するものとして違法と宣言されました。
 「禁反言の法理」は行政関係にも適用され得る法の一般原則であり、あえていうならば子どもでも自然に理解できる社会の当然のルールです。すなわち、行政たるもの、市民に対していったん行政サービスを提供するとの態度を表明し、何らかの教示等を行ったならば、そのような態度をその後に易々と変えてはならないというのはごく当たり前のことであって、このようなことから、申請却下処分の違法を宣言した奈良地裁判決は、もし控訴審においてこの点が争われたとしても、そうそう覆るとは思われません。

2 更にいえば、私たちは、そもそも、奈良市側が当初に表明した「診療のレセプト等で確認できれば、可能な限り遡及して通院移送費の支給を行う」との考えが、むしろ、行政として正しい態度であったと考えます。
 奈良市側が通院移送費制度に関する周知文書を生活保護利用者に対し配布したのが平成26年10月ころに至ってであったことは、訴訟上も争いがなく、奈良地裁も判決の当然の前提にしています。本来、的確に保護利用者に周知されるべき通院移送費制度について周知を行っていなかったのはこと奈良市側の問題です。保護変更も申請主義とはいうものの、生活保護制度のすべてについて利用者の側に自ら知っているべきこと、調査して把握すべきことを前提に自発的な申請を求めるのは酷であり、むしろ支援する側が困窮している利用者の目線に立って必要・有益と思われる助言を行うのが福祉のケースワークのあり方であろうと思います。この点、奈良地裁判決は、平成22年通知は実施機関が通院移送費制度に関する周知を怠っている限りはそれまでに発生した交通費につきすべて事後申請を認める趣旨であるとの私たちの主張を必ずしも採用しませんでしたが、しかし、平成22年通知の趣旨如何に関わらず、奈良市は、生活保護利用者に対する的確なケースワークができていなかったという誹りを免れないと私たちは考えます。したがって、この点を認め、可能な限り遡及しての移送費支給を行うとした当初の態度こそが、行政としてあるべき態度だったのです。
 つまり、本件は、本来、「最初に誤った教示をしてしまったが、それでも後でそれを撤回・修正してはならない」という事案ではなく、「当初の態度こそが行政としてあるべき態度であったが、形式論に拘泥する余り後に態度を翻したことが違法と断罪された」事案というべきです。奈良地裁判決も、仮に本件が「最初に誤った、本来違法である内容の教示をしてしまったが、それでもいったんこれをしてしまった以上は後でそれを撤回・修正してはならないのか」という事案であれば禁反言の法理の適用を躊躇したと思われますが、そうではなかったということを念押ししておきたいと思います。

3 一方、奈良地裁判決においては、H氏が生活保護受給開始後間もなくからケースワーカーに対し通院に要する交通費の支給如何に関する質問・相談を複数回していたという原告側の主張については、これを奈良市のケースワーカー側がみな否認する供述を行ったということもあり、立証が不十分とされてしまいました。
 しかし、H氏から直接聴き取りをし、事実関係を確認した私たち代理人団は、この主張は紛れもない真実であると確信しています。H氏が本当に正直な、実直な人柄であるゆえに、淡々と、質問・相談の日時等の詳細は特定できない旨供述されたことが立証不十分との評価を受けました。しかし、高齢・持病ありゆえに頻繁に通院治療を受けておりしたがって交通費の負担も重かったと思われるH氏が、ただでさえ十分でない生活扶助費からこれを支出することに苦労し、困ったであろうことは、想像に全く難くないところです。H氏は、転居の際の敷金や、眼鏡の購入費用については保護費として支給されないのかとケースワーカーに尋ねていたことはケース記録票にも記載されていますから、通院の際の交通費についても、同様に尋ねたと考える方が全く自然です。他方で、奈良市側の担当ケースワーカーの通院移送費制度に関する知識・理解が本来の制度のあり方に比べて全く不十分・不正確・誤りであったことは、本件訴訟において行われた各ケースワーカーに対する証人尋問結果からも明らかであり(多くの傍聴者は一様にこの点について義憤や失望を感じたとのことです。)、そのようなケースワーカーが、H氏からの質問・相談に対し的確な対応をしなかったであろうことも、ほぼ間違いないものと考えます。
 奈良市においては、訴訟上の勝訴・敗訴という結論如何に関わらず、このことを真摯に受け止めていただきたいと思います。

4 これに関連して、証拠保全申立に関する大阪高裁決定(大阪高等裁判所平成28年(行ス)第103号)において指摘された「開示されたケース記録票の不自然さ」の問題についても、目を背けないでいただきたい。
 真実は私たちにはわかりませんが、H氏がケースワーカーに対し通院交通費に関する相談をしたはずの時期のみ全く記載がないとされるケース記録票は、大阪高裁決定も「ケース記録にこのような長期間の空白があることは、その間に7日間の入院があることを併せ考えれば、余りに不自然といわなければならない」と述べるとおり、やはり不自然としかいえません。
 昨今様々なところで問題が発覚しているような公文書の改ざんや抜取りが奈良市にもあったとは想像したくありませんが、爾後、そのような疑念を抱かせることのないよう、ケース記録票には通しページ・番号を付すなどの改善策を直ちにとるべきです。

5 判決は保護費の支払を義務付けるものであったために、控訴如何は厚生労働省との協議が必要である、ということなのかもしれません。
 しかし、仮にそうであれば、奈良市においては、厚生労働省に対し、控訴を断念すべきである旨主張するとともに、むしろ、本件訴訟を機に、改めて、各実施機関に対し、通院のために合理的に必要な交通費については移送費の支給が可能であること、そのことを実施機関は生活保護利用者に対し一般的に周知し、かつ、個別的に教示すべきこと、逆に「原則的には生活扶助費から捻出すべきものである」とか「一定額を超えない限り支給されない」とかいった誤った教示を行うべきでないことを通知して徹底周知し、「現場」の混乱を招かないようにすべきことを進言すべきです。
 私たちは、前述のとおり、奈良市においてケースワーカーを担当された職員たちが、不十分・不正確・誤った知識によりH氏に対し苦痛を与えたであろうことを厳しく批判しつつも、個々の職員についての人格非難まで行いたくはありません。根本的には、通院移送費制度に関する厚生労働省のスタンスが「現場」からわかりにくい、あるいは、支給について抑制的であるようにみえる、といったことが問題なのだろうとも考えています。仮にそうであれば、奈良市は、本件を機に、過ちを真摯に振り返ってこれを正すとともに、生活保護行政全体のあり方を改める先頭を走っていただきたい。

6 最後に、H氏は、現在、重篤な疾病により生命の危機にありながらも、「生活保護行政が利用者のためにあってほしい」との思いのもとに、当事者として訴訟を遂行してこられました。保護受給中に通院移送費の支給がなされないばかりに通院治療の受け控えもしたことと、現在の病状の因果関係の有無はわからないにしても、いずれにせよ、市民が命を賭して「正しいこと、あるべきこと」を追及していることに対し、かたちばかりの控訴をして救済を先延ばしにするような、あるいは救済を与えないような不誠実で応えるべきではありません。H氏が存命の間に適切な救済がなされることが当然であり、是非とも必要です。
したがって、私たちは、本件につき、奈良市が控訴しないことを求めます。
以上




[原告声明文]

奈良市通院移送費裁判判決にあたって

                                     
2018年3月22日


原告H
 

一ヶ月約6万円の暮らし。私の悩みや質問、相談について役所はまるでひとごとのように接し、相手を理解しようとしませんでした。
移送費の問題は私だけの問題じゃない、そして移送費だけの問題ではない、受給者・貧困者・対象となりうる市民に対する行政の考え方を改めてほしいと願い多くの支援者に囲まれながら提訴に至りました。奈良市でも見えない小田原ジャンパーを着て職務にあたっていると感じています。
表面上は適当な答えや対応をするが基本的な考え方そのものは、意識しないうちに差別してしまっている、役所という組織が少しでも変われば意義がある、なんとか最後まで頑張りたい。最後を見ることができなくとも最後まで頑張りたい、この後、困っている多くの人たちのためにいい影響力を残すような方向ですすめたいと願っています。今後の生活保護行政のよりよい改善を求めています。
その後、奈良市は変わるのか、継続して役所のあり方を注視・監視していただきたいと思っています。



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  現在、国会に上程されており近々審議予定の生活保護「改正」法案(正確には「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案要綱」)等には、単なる払い過ぎの保護費の返還債権を税金同様に破産しても免責されなくしたり、生活保護利用者だけジェネリック医薬品の使用を強制したり、薬局の一元化を求めるなど大きな問題があります。
 問題点を詳しくまとめた意見書を厚生労働省に提出しましたので、ぜひご一読ください。






2018年3月19日


生活保護「改正」法案の一部削除等を求める意見書


生活保護問題対策全国会議


第1 意見の趣旨
1 現在,国会に上程され審議予定の生活保護「改正」法案(正確には「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案要綱」のうち「生活保護法の一部改正」部分)における次の各条文案は削除すべきである。

(1) 生活保護法63条に基づく「払いすぎた保護費の返還債権」について非免責債権化するとともに保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護「改正」法案77条の2及び78条の2


(2) 生活保護利用者については「原則として後発医薬品によりその給付を行う」とする生活保護「改正」法案34条3項


2 厚生労働省が2018年度に全国的に推進するとしている「被保護者が処方箋を持参する薬局をできる限り一か所にする事業(薬局一元化事業)」は実施するべきではない。

第2 意見の理由
1 63条債権を非免責債権化すること等の問題 
(1) 63条債権と78条債権の異同

意見書表
  生活保護法63条(以下,「生活保護法」の表記は省略する)と78条のいずれを適用すべきかの区別の基準について生活保護手帳別冊問答集問13‐1は,(法78条によることが妥当な場合)として次の4つを列挙している。
(a) 届出又は申告について口頭又は文書による指示をしたにもかかわらずそれに応じなかったとき。
(b) 届出又は申告に当たり明らかに作為を加えたとき。
(c) 実施機関又はその職員が届出又は申告の内容等の不審について説明等を求めたにもかかわらずこれに応じず,又は虚偽の説明を行ったようなとき。
(d) 課税調査等により,当該被保護者が提出した収入申告書又は資産申告書が虚偽であることが判明したとき。
  
  要するに、78条は故意に生活保護費を不正受給した場合の規定であって78条に基づく徴収債権(以下,「78条債権」という。)は不法行為に基づく損害賠償請求権の性質をもつ。その一方,63条は単に保護費を受け取りすぎた場合の規定であって,63条に基づく返還債権(以下,「63条債権」という。)は不当利得返還請求権の性質をもつものであって(東京地裁平成22年10月27日判決),その性質が全く異なる。
 そのため,78条債権については,実務上一部返還免除は認められておらず全額返還となるが,63条債権については,家財道具や介護用品の購入等その世帯の自立更生に資する使途に充てられるのであれば柔軟に返還免除が認められ(生活保護手帳別冊問答集問13-5),全額免除もあり得る。

(2)破産による免責制度の趣旨と2013年の生活保護法「改正」内容
 破産法1条は,「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること」を同法の目的として規定している。すなわち,破産による免責制度とは,債権者による追及から解放することによって,債務者の経済的再生を図り,人間の尊厳を確保するためのものであるから,不誠実な行為を行っていない破産者については,その再生のために積極的に免責を付与すべきものとされている。債務負担の原因や動機を問わず,自己の支払能力を超えた債務を負担する者を債務負担から解放し,その経済的再生を図ることは,当該債務者やその家族の利益だけではなく,社会公共の利益からみても正当なものだからである(伊藤眞「破産法・民事再生法〔第3版〕」704頁)。
 とすれば,免責の効果が及ばない非免責債権を新たに創設することには慎重さが求められ,その合理性や必要性が厳格に問われなければならない。
 そのような中,2013年の生活保護「改正」の際,78条の2が新設され,78条債権について「国税徴収の例により徴収することができる」とされた。破産法253条1項1号は「租税等の請求権」を非免責債権として定めているため,これによって78条債権は,破産手続において免責許可決定を受けても免責されず引き続き支払わなければならなくなった。また,同時に78条の2が新設され,不正受給の徴収金について被保護者が申し出た場合に保護金品からの天引き徴収が可能とされた。
 租税債権が破産法253条1項1号によって非免責債権とされている理由が国庫の収入確保という徴税政策上の要求に基づくことからすると,78条債権を租税債権と同視することには疑問の余地がある。しかし,78条債権は,債務者に落ち度や非難可能性がある点において,非免責債権である「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」(同条項2号)に類似していることから非免責債権化することに全く合理性がないとはいえなかった。

(3)今回の「改正」法案の内容
ア 違法回収の合法化による生存権侵害

 ところが,今回の「改正」法案77条の2は,63条債権についても,78条債権と同様に「国税徴収の例により徴収することができる。」と規定した。これによって,63条債権も破産手続において免責許可決定を受けても引き続き支払わなければならない非免責債権とされることになる。
 しかし,先にも述べたとおり,63条債権は不当利得返還請求権の性質をもつものであって,78条債権とはまったく性質が異なる。債務者に落ち度がない場合であるのに非免責債権化することは,「不誠実な行為を行っていない破産者については,その再生のために積極的に免責を付与する」という免責制度の趣旨に真っ向から反する。このように免責制度の根幹にかかわる変更を破産法の専門家の意見を聞くことなく生活保護法の改正によって行うことも大きな問題である。
 これまで63条債権は一般債権であったから,自己破産前に福祉事務所にこれを返済することは偏頗弁済として許されず,破産管財人が否認権を行使すれば自治体側が敗訴していた(東京地裁平成22年10月27日判決,千葉地裁平成25年11月27日判決等)。今般の法改正は,これまで違法であった地方自治体による回収行為を合法化し,「最低限度の生活」をようやく営んでいる生活保護利用者から「自己の支払能力を超えた債務負担から解放され,その経済的再生を図る道」を奪うものであって,憲法25条が保障する生存権を侵害するものと言わざるを得ない。

イ 税を財源とする他の債権にも波及するおそれ
 生活保護費の財源が税金だから税金と同じに扱うことが正当化されるのであれば,その他の公債権や奨学金等の税金を財源とする他の債権にも同様の扱いが波及し,生活困窮者全般の経済的再生の道が閉ざされるおそれもある。
 現在,わが国では「奨学金破産」が社会問題化しているが,アメリカの連邦学生ローンは自己破産した後も免責とならないこともあり,大学の学費免除を軍に入る若者が少なくないことが「経済的徴兵制」であると指摘されている。日本でも,文科省の有識者会議「学生への経済的支援の在り方に関する検討会」メンバーの前原金一・経済同友会専務理事が,卒業後に就職できず奨学金の返還に苦しむ人たちについて「防衛省でインターンシップ(就業体験)をさせたらどうか」と発言をしたとの報道もあり(2014年9月3日付東京新聞),奨学金の非免責債権化と相まってわが国でも「経済的徴兵制」が現実化することも杞憂とはいえない。

ウ 保護費からの天引き徴収による生存権侵害
 しかも,「改正」法案78条の2は,63条債権についても,不正受給に関する徴収債権と同様に被保護者からの申出による保護費からの天引き徴収を可能としている。
 この点については,平成28年8月5日の第42回地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会で同種の提案がなされたのに対して,厚生労働省は,次のとおり,極めて正当に慎重な意見を述べていた。

「本人の申出があっても,実際の窓口で『申し出てください』と言われるような場合もあることから慎重に考えなければならない。だからこそ,前回の生活保護法改正の中ではあくまでも不正受給の場合に限って本人の申し出要件をつけて相殺をしているところであり,申し出があれば問題ないということには必ずしもならないと考えている。」
  「生活保護は,受給者が福祉事務所によって生活保護の支給を受けるという関係性にあり,そういう意味では片方が生活の扶助を決定する権限を持っている。一方で,生活保護受給者はそれによって生活が成り立つという関係にあり,申し出というのが形式上公平なものであっても,実質的に公平性が担保できるのかということについては十分考慮しなければならない。」
「被保護者にとっては,今回の提案は,保護費から返還金が天引きされる形になるため,最低生活の水準の給付の中から天引きされるということが,被保護者の不正受給でもないものについてもできるとすることは,被保護者の生存権との関係も含めて,慎重に議論する必要があると考えている。」



 それが,今回,何の根拠もなく,あっさりと慎重意見を覆したのは,不可解というほかない。

エ 違法な過回収が頻発する懸念
 さらに問題なのは,今般の法「改正」によって,本来回収することが許されない63条債権についてまで徹底回収される事態の頻発が懸念されることである。
 すなわち,先に述べたとり,本来,63条債権は,全額返還を原則とする不正受給徴収債権とは異なり,家財道具や介護用品の購入等その世帯の自立更生に資する使途に充てられるのであれば柔軟に返還免除が認められ得る(一般に「自立更生控除」という。生活保護手帳別冊問答集問13-5)。しかし,実務の現状としては,福祉事務所がこうした検討をすることなく安易に全額返還決定する例が極めて多く,かかる返還決定を違法と断ずる裁判例も多数存在する(大阪高裁平成25年11月13日判決,福岡地裁平成26年2月28日判決,福岡地裁平成26年3月11日判決,東京地裁平成29年2月1日判決)。しかも,上記のような自立更生控除が認められ得ることについて,福祉事務所職員が生活保護利用者に対して説明することはほとんどないため,上記裁判例のように違法な63条返還決定が問題視されて是正されるのは氷山の一角であると考えられる。
 生活保護利用者に対し自立更生控除の仕組みについての周知説明を徹底するという運用改善がなされないままに今回の法「改正」が実現すれば,違法な63条決定が是正されることなく,保護費からの天引き徴収等によって過大に回収される事態が頻発することが懸念されるのである。かかる事態は,本来返す必要のない保護費の返還を強いられるとともに,保護費からの天引き徴収によって健康で文化的な最低限度の生活を下回る生活を余儀なくされるという二重の意味で生活保護利用者の権利を侵害するものである。
  平成29年12月15日付社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書(39頁)も,「福祉事務所の算定誤りに係る返還金を,保護費との調整対象とすることについては,慎重に検討すべきである。」としているが,条文案上,かかる場合の別異取扱いは何ら明記されていない。

 エ 違法な滞納処分発生のおそれ
 「国税徴収の例による」ということは,「改正」後は滞納処分として司法手続によらずに直接被保護者の資産の差押えができるようになったようにも思われる(国税徴収法47条以下)。
 しかし,広島高裁松江支部平成25年11月27日判決は,当日に児童手当が振り込まれることを認識しながら,その大部分が児童手当によって形成された預金債権を差し押さえることは実質的に差し押え禁止債権である児童手当受給権を差し押えたのと変わりがなく違法としている。それに加え,生活保護法58条は保護受給権のみならず「既に給与を受けた保護金品」の差押えも禁止していることからすれば,保護費が振り込まれる口座の預金債権の差押えは法「改正」前後を問わず違法であって許されないと解される。
 また,国税徴収法153条1項が定める「滞納処分の執行を停止することができる」場合の一つである「滞納処分の執行等をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」(同条項2号)について,国税徴収基本通達(「第153条関係 滞納処分の停止の要件等」)は,「滞納者(略)の財産につき滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収(略)をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(略)になるおそれのある場合をいう。」と定めている。とすれば,「改正」法案がそもそも生活保護を利用し,または利用していた者に対して「国税徴収の例による」徴収を許容するものであることに照らせば,同法案は国税徴収法153条1項の趣旨に抵触するおそれが大といわなければならない。
 すなわち,「改正」法案77条2が国税徴収法153条との関係において許容されるのは、63条債権の対象とされた者が十分な資産を得たことによって既に生活保護が廃止され,かつ「国税徴収の例による」徴収を行ったとしても同人が再び「生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態・・・になるおそれのある場合」には該当しないことが明白な,極めて限定的な場合に限られるものと解される。
 したがって,現に生活保護を利用している者については,保有を認められた居住用不動産や通院・通勤のための自動車に対する差押えも許されず,保護を廃止された者についても,これは原則として同様であると考えられる。
 しかし,これらの点に関する扱いがどのようになるのかについては一切議論や検討がなされていない。上記のような生活保護利用者の資産に対する滞納処分は許されないことが明確にされないまま,法「改正」が実施されれば,63条債権を回収するために生活保護利用者の預金口座,居住用不動産,通院用に保有を認められた自動車等の資産を違法に差押える事態が発生しかねない。

(4)小括
  以上のとおり,63条債権を非免責債権化し,保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護法改正案77条の2及び78条の2は,破産免責制度の根幹に反するとともに生活保護利用者の権利を侵害するものであるから削除されるべきである。

2 後発(ジェネリック)医薬品による給付を原則とすることの問題
(1)生活保護利用者に対する後発医薬品処方を「強制」化する経緯

  平成20年4月1日付厚生労働省保護課長通知は,「福祉事務所が被保護者に対して後発医薬品を選択するよう求める」のを「基本原則」としたが,生活保護利用者に対する不当な差別であるとの強い批判を浴び,わずか1カ月後の同年4月30日に撤回された。
  平成25年5月16日付同省保護課長通知「生活保護の医療扶助における後発医薬品の取扱いについて」は,処方医が銘柄名処方を行っている場合でも薬局の判断で後発品の処方を原則とした。
  平成25年12月13日(平成26年1月1日施行),前回の生活保護法「改正」にあたり,

「前項に規定する医療の給付のうち,医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(略)を使用することができると認めたものについては,被保護者に対し,可能な限り後発医薬品の使用を促すことによりその給付を行うよう努めるものとする。」



という法34条3項が新設された。
 そして,今回の「改正」法案34条3項は,
 

「前項に規定する医療の給付のうち,医療を担当する医師又は歯科医師が医学的知見に基づき後発医薬品(略)を使用することができると認めたものについては,原則として,後発医薬品によりその給付を行うものとする。」



 として,努力義務を原則規定に改めた。
  このように,生活保護利用者に対して後発医薬品の利用を強制する契機が一貫して強められてきた。その結果,後発医薬品の使用割合は,次のとおり,医療全体に比して生活保護利用者の方が明らかに高くなってきている。
意見書表

(2)後発医薬品とは
 後発医薬品とは,「物質特許」が切れた医薬品を他の製薬会社が製造又は供給するものという。薬効は先発医薬品と同じとされるが、開発に費用がかからない分安価である。
 ただし、薬の特許には,物質本体の「物質特許」のほか,添加物に関する「製法特許」,剤形に関する「製造特許」があるため,主成分が同じでも添加物や剤形が変わると,見た目,味,溶け方が変わるため,薬効が異なると感じたり不安に感じる患者もいる。日本ジェネリック製薬協会のHP(「ジェネリック医薬品に不安・疑問のある方へ」)でも添加剤の違いでアレルギー反応を起こす可能性が指摘されている。

(3)生活保護利用者に対してだけ後発医薬品の使用を原則化することの問題点
 世界医師会総会が1981年に採択した「患者の権利に関するリスボン宣言」は,「すべての人は,差別なしに適切な医療を受ける権利を有する」,「患者は,民間,公的部門を問わず,担当の医師,病院,あるいは保健サービス機関を自由に選択し,また変更する権利を有する」,「患者は、自分自身に関わる自由な決定を行うための自己決定の権利を有する」として,患者には「良質の医療を受ける権利」,「選択の自由の権利」,「自己決定の権利」があることを謳っている。そして,わが国も1979年に批准した国際人権規約(経済的,社会的,文化的権利に関する国際規約,以下「社会権規約」という。)12条が「到達可能な高水準の身体及び精神の健康を享受する権利」を保障していることからすれば,リスボン宣言が述べる上記諸権利は,わが国においても憲法13条及び25条の内実として保障されているものと解すべきである。
 こうした考え方を背景とし,平成22年3月30日社援発0330第1号厚生労働省社会・援護局保護課長通知も,「生活保護法による医療扶助における指定医療機関の診療方針及び診療報酬については,国民健康保険の診療方針及び診療報酬の例によ」るとして,生活保護の医療扶助の水準については一般市民が利用する国民健康保険と同水準を保障するものとしている。
 しかるに,「医師が医学的知見に基づき(略)使用することができる」と認めさえすれば,患者本人の意思に反していても後発医薬品の使用を原則とすることは,生活保護利用者の「選択の自由の権利」及び「自己決定の権利」を侵害するものであって,憲法13条,25条及び社会権規約12条に違反する。
 また,薬効が先発医薬品と同じで患者に不利益がなく医療費削減にも資するというのが理由であれば,国民市民全員に後発医薬品の使用を義務付けるのがスジである。にもかかわらず,生活保護利用者についてだけ後発医薬品の使用を原則化するのは,明らかに不合理な差別であって生活保護利用者の「差別なく医療を受ける権利」を侵害するものであり,法の下の平等を定める憲法14条,25条及び社会権規約12条に違反する。こうした取扱いは,生活保護利用者に対しても差別なく一般市民と同水準の医療を保障するという従来の考え方を大きく転換し,生活保護利用者に対する劣等処遇を容認することにつながるものであって到底許されない。

3 「薬局の一元化」について
  厚生労働省は,2018年3月2日付生活保護関係係長会議において,「被保護者が複数の処方せんを一つの薬局に持参することにより,(略)薬剤師が重複処方等について医師に情報提供を行うことは,重複調剤の適正化や被保護者の健康管理に資するとともに,医療扶助の適正化効果も見込まれる。」として,平成29年度に実施したモデル事業を踏まえて,「被保護者が処方せんを持参する薬局をできる限り一か所に」する事業を全国で推進したいとしている(同会議資料「Ⅱ一般事項(文章編資料)」45頁)。
  しかしながら,生活保護利用者の中には,精神科と皮膚科と内科といった複数の医療機関を受診している者も少なくない。当然のことながら,精神科クリニックの近くの薬局には精神科に関する薬が,皮膚科クリニックの近くの薬局には皮膚科に関する薬が中心に置かれており,すべての薬局においてすべての薬が万遍なく取り揃えられているわけではない。利用する薬局を一元化されれば,処方薬が置かれていない可能性もあるし,受診した医療機関とは異なる場所にある薬局までわざわざ移動しなければならない。通院交通費の支給制度はあっても薬局に行くための交通費を支給する制度はないことからすれば,通院や服薬自体を抑制する事態の発生が容易に想定され,これは生活保護利用の患者の生命や健康を害することにつながる。
  厚生労働省は,「重複処方・重複調剤の適正化」と「医療扶助の適正化(医療扶助費の抑制)」を根拠として挙げる。しかし,「重複処方・重複調剤」はごく一部の病理現象であり,これが蔓延しているというデータは何ら存在しない。レセプト等の事後的チェックで個別に是正していくことが十分に可能であることからすれば,真の意図が「医療扶助の適正化(医療扶助費の抑制)」にあることが明らかである。
  医療費抑制が目的であれば,国民市民一般について利用できる薬局を一か所に制限することがスジであるが,人権保障の観点からそのようなことは許されるはずがない。にもかかわらず,生活保護利用者についてのみ,このような事業を全国展開しようとすることは,生活保護利用者の「差別なしに適切な医療を受ける権利」,「選択の自由の権利」及び「自己決定の権利」を侵害することが明らかである。かかる事業は憲法13条,25条及び社会権規約12条に明確に違反するものであって断じて容認できない。

以 上




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 定塚由美子厚生労働省社会・援護局長と面談し、生活保護基準引き下げの撤回と生活保護「改正」法案の一部削除を求める要請書を署名(追加提出分1万2946筆、これまでの総計7万8860筆)とともに渡しました。山井和則衆議院議員(希望)、初鹿明博衆議院議員(立民)、高橋千鶴子衆議院議員(共産)、山本太郎参議院議員(自由)も立会いのもと、当事者4名と支援者らが厳しい生活の実情を訴えました。残念ながら今回はかないませんでしたが、安倍首相が3月5日の予算委員会で山本議員の質問に対して「当事者の声は担当の厚生労働大臣がしっかり聞く」旨答弁したとおり、私たちは引き続き政務三役(大臣、副大臣、政務官)が直接当事者の声を聴く場の設定を求めていきます。




2018年3月19日


生活保護基準の引き下げと生活保護法「改正」等に
関する要望事項


厚生労働大臣 加藤 勝信 殿


いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護問題対策全国会議
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階
℡06-6363-3310 FAX 06-6363-3320
事務局長 弁護士小久保哲郎


1 2013年度からの史上最大(平均6.5%、最大10%、総額670億円)の生活扶助基準の引き下げを撤回してください。

2 2018年10月からのさらなる生活扶助基準の引き下げ(平均1.8%、最大5%、総額160億円)はしないでください。

3 今国会で審議予定の生活保護「改正」法案(正確には「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案要綱」)のうち次の各条文案は削除してください。

①  生活保護法63条に基づく「払いすぎた保護費の返還債権」について非免責債権化するとともに保護費からの天引き徴収を可能とする生活保護「改正」法案77条の2及び78条の2


② 生活保護利用者については「原則として後発医薬品によりその給付を行う」とする生活保護「改正」法案34条3項



4 2018年度から全国的に推進するとしている「薬局一元化事業」は実施しないでください。

5 すみやかに政務三役が直接当事者・支援者の声を聴く機会をもうけるとともに,今後,生活保護基準の見直しや法改正を行う場合には,必ず当事者や支援者の意見を聞くようにしてください。

以 上




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生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケース。
国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める福島地裁の判決について福島市が控訴を断念したため、本日、原告勝訴の判決が確定しました。

福島市に「控訴するな」の声を寄せた全国の皆さまに感謝するとともに、今後の取り組みの決意を表明する声明を、原告弁護団が発表しました。

声明にも触れられているとおり、今後、福島市には、原告に対する真摯な謝罪と、保護行政全般の運用改善に向けた取り組みが求められています。




福島市奨学金収入認定事件の判決確定を受けての声明


2018年1月31日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


 去る1月16日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。この判決について,被告福島市福祉事務所長は,控訴期限である1月30日までに控訴をしなかったことから,本判決は確定し,本件訴訟は終了した。
 本判決の後,原告本人や原告の支援者をはじめ,全国の心ある市民から,福島市に対し,「本判決を真摯に受け止め,控訴をしないでほしい」との申入れなどが多数寄せられた。こうした全国からの声は,福島市が本判決について控訴しないという態度を決定する上で,大きな力となった。私たち弁護団は,全国の皆さんからのご支援ご協力に心から感謝の意を表明する。
 しかし,本件は,福島市が控訴せず本判決により命じられた慰謝料を支払っただけで完全解決に至ったという評価をすることはできない。様々な困難を乗り越えて本件訴訟を提起してたたかってきた原告らの真の思いは,福島市が本件処分の誤りを自ら認め謝罪するとともに,このような誤りが二度と生じないよう,生活保護の運用等の改善を図ってほしいという点にある。福島市は,違法な処分を行った行政庁として,また要保護者に対し最低生活の保障と自立助長に向けた支援を行うべき生活保護実施機関として,本判決確定を機に,これらの原告らの思いに真摯に向き合うことが求められている。
 各種報道によると,福島市長は,本判決を受けて「裁判の結果を,重く受け止めております。生活保護は,生活に困窮する方々の最低限度の生活を保障するとともに,自立を助長することを目的としております。本件の訴えは,この点への配慮に欠けていたことが原因であると考えております。生活保護法,実施要領等を遵守した支援につながるよう,研修を充実させるなど努めて参ります」旨のコメントを発表したとのことである。こうしたコメントに見られる福島市長の姿勢は,本判決について控訴しないという福島市の態度にも反映していると考えられ,私たち弁護団は,このような福島市長の姿勢を前向きなものと評価し,このコメントの内容を着実に実行することを求める。
 その第一歩は,本件への真摯な反省の上に立ち,原告らに対して謝罪するとともに,原告らとの話し合いのテーブルにつき,今後の運用改善などについて,原告らの意見に真剣に耳を傾けることである。
 原告ら及び原告団は,本件について,福島市との対話による完全解決を目指していくことを表明し,完全解決に向け,福島市民をはじめ,全国の皆さんの引き続きのご支援をお願いするものである。

以上



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福島市の生活保護を利用している母子世帯の高校生が、せっかく給付型奨学金を受けたのに福島市が全額収入認定して保護費を減額したという鬼のようなケースで、1月16日、福島地裁が、国家賠償(各5万円の慰謝料支払い)を認める、原告勝訴の判決を言い渡しました。

奨学金の収入認定に関する厚生労働省通知の改善や、生活保護世帯の子どもの大学進学問題の社会問題化の切っ掛けともなったこの事件で、当たり前とはいえ、当事者の方の精神的苦痛を認める国賠判決が出たことには大きな意味があります。

福島市が控訴して、これ以上母子につらい思いをさせることのないよう、福島市に対して、「控訴するな!」の声を寄せていただければと思います。

<福島市HP「福島市へのご意見」>
http://www.city.fukushima.fukushima.jp/skyodo-kocho/shise/kocho/300.html





福島市奨学金収入認定事件の判決を受けての声明


2018年1月16日

福島市奨学金収入認定事件弁護団


  本日,福島地方裁判所(金澤秀樹裁判長)は,福島市奨学金収入認定事件(平成27年(行ウ)第6号。以下,「本件」という。)につき,原告勝訴の判決(以下,「本判決」という。)を言い渡した。

1 福島市福祉事務所長の処分の違法性及び過失
 本判決は,給付型奨学金は自立更生のための恵与金(次官通知第8の3の⑶のエ)に該当し,給付型奨学金が保護費で賄うことができない費用等に使用されることを確認すれば収入認定除外されるということを前提に,次のとおり,違法性及び過失を認めた。

(1)保護費で賄えない就学費用が現実に発生した場合には,生活費に不足する結果となることが十分にありえるのであるから,給付型奨学金を収入認定することについては慎重な態度で臨むべきである。

(2)保護の実施機関としては,給付型奨学金の収入認定除外を検討することなく収入認定をした場合には,生活扶助費を割り込むおそれがあることに照らすと,被保護者に対して適切に助言するとともに,自ら調査すべき義務があった。

(3)被告福祉事務所は,本件各奨学金について収入認定除外の対象となるか否かの検討を行わず,したがって,原告Aから提出された自立更生計画書や添付資料の検討をせずに,除外認定に当たって必要な資料の追加提出等の指示もしないままに,本件各処分を行ったものであって,公務員に与えられた裁量権を逸脱したものということができ,本件各処分はいずれも国家賠償法1条1項にいう違法がある。
 本判決は,生活保護法等に照らし処分が法的に違法であることを認めており,行政による違法な運用を是正し,生存権をよりよく保障しようとするものであるとともに,子どもの積極的な学びの機会を保障し子どもの貧困をなくすという観点から極めて当然かつまっとうな司法的な判断であると評価できる。福島市のみならずすべての自治体において本判決を真摯に受け止め,給付型奨学金を一方的に収入認定することがないよう求める。

2 原告らが受けた損害
 本判決は,事後的に奨学金相当額を追加支給したために損害は発生していないとの福島市の主張を排斥し,次の要素に着目して,原告親子にそれぞれ5万円(計10万円)の損害の発生を認めた。

(1)奨学金が収入と認定され,生活保護費が減額されたとしても,高等学校への通学を継続しなければならないから,その結果,生活費をきりつめて困窮した生活を送らなければならなくなる。このようなことから,事後調整や追加支給は合理性がない。

(2)実際にきりつめた生活を余儀なくされ,高校就学を経済的に支えることができなくなるかもしれない母親の深刻な不安,努力して奨学金を獲得したにもかかわらず,これを事実上没収されたことにより,自らの努力を否定されるような経験をした子どもの精神的苦痛を認定し,賠償に値する損害が現に生じたことを認めた。
 通常,経済的な損害が補填されれば精神的な苦痛はないとみる裁判例が多い中,本判決は,生活保護世帯の母親と子どものそれぞれの精神的苦痛に踏み込んで損害の発生を認めたもので,その点は高く評価できる。

3 最後に
 原告ら,支援者及び弁護団は,福島市を含む自治体において本件と同様に奨学金を奪われるという事件が再び起こらないことを願い,闘いを継続してきた。本判決を受け,我々は次の事項を求める。

(1)子どもの貧困対策の観点から,そもそも奨学金は収入認定の対象とすべきではない。訴訟において原告らが提出した末冨芳氏の意見書にも,自立更生計画の弊害が言及されている。それにもかかわらず,その点を適法として十分な検討をしていない本判決には不十分な点がある。
 奨学金の充実・拡充が検討され,実現されようとしている現在,かかる取り扱いは,法の趣旨・政府の方針とそぐわない。我々は,厚生労働省に対し,早急に生活保護実施要領を見直し,奨学金を収入認定の対象から除外するよう求める。

(2)また,福島市を含むすべての生活保護実施機関に対し,生活保護世帯の子どもが奨学金を学びのために有効かつ適時に使用することができるよう,生活保護法が掲げる自立助長の観点から適法な運用をするよう求める。

以上



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